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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1175605
審判番号 不服2005-19696  
総通号数 101 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-05-30 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-12 
確定日 2008-04-07 
事件の表示 特願2001-190493「プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 4月19日出願公開、特開2002-118104〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成6年6月27日に出願した特願平6-167451号の一部を平成13年6月22日に新たな特許出願としたものであって、平成17年9月1日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年10月12日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。

II.平成17年10月12日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年10月12日付の手続補正を却下する。

[理 由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1?16のうち請求項1、2、3、15は、次のとおりに補正された。
「【請求項1】気密な処理容器内に配置された被処理体に対してプラズマ処理を施すプラズマ処理装置において、
前記処理容器の外に設けられたアンテナ部材と、
前記アンテナ部材に接続された高周波電源と、
前記被処理体を保持する載置台と、
複数のガス供給ノズルを備え、前記ガス供給ノズルの先端に設けられた処理ガス噴出孔から前記処理容器内に処理ガスを供給するためのガス供給部と、
前記処理容器内を排気するための排気口と、を備え、
前記ガス供給ノズルは、前記処理容器の側壁から前記処理容器内の中心側へ所定の長さで形成すると共に、前記被処理体面より上側に配置され、前記ガス供給ノズルの前記処理ガス噴出孔の位置が、前記処理容器の周方向に位置し、略均等に配置されて、前記処理容器内の中心部に向かって処理ガスを放出するようになされると共に、前記ガス噴出孔と前記被処理体との間の垂直方向の距離が75mm以上に設定されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項2】気密な処理容器内に配置された被処理体に対してプラズマ処理を施すプラズマ処理装置において、
前記処理容器の外に設けられたアンテナ部材と、
前記アンテナ部材に接続された高周波電源と、
前記被処理体を保持し、加熱可能な載置台と、
複数のガス供給ノズルを備え、前記ガス供給ノズルの先端に設けられた処理ガス噴出孔から前記処理容器内に処理ガスを供給するためのガス供給部と、
前記処理容器内を排気するための排気口と、を備え、
前記ガス供給ノズルは、前記処理容器の側壁から前記処理容器内の中心側へ所定の長さで形成すると共に、前記被処理体面より上側に配置され、前記ガス供給ノズルの前記処理ガス噴出孔の位置が、前記処理容器の周方向に位置し、略均等に配置されて、前記処理容器内の中心部に向かって処理ガスを放出するようになされると共に、前記ガス噴出孔と前記被処理体との間の垂直方向の距離が75mm以上に設定されていることを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項3】前記ガス噴出孔の先端と前記被処理体のエッジとの間の水平方向の距離は、0?70mmの範囲内に設定されることを特徴とする請求項1又は2記載のプラズマ処理装置。
【請求項15】真空引き可能になされた処理容器内に被処理体を収容し、前記処理容器の側壁から前記処理容器内へ突出された複数のガス供給ノズルを有し、前記ガス供給ノズルの先端に形成するガス噴出孔から前記処理容器内に処理ガスを供給すると共に、前記処理容器の外に設けたアンテナ部材から前記処理容器内に高周波電力を投入してプラズマを立て、前記被処理体に所定のプラズマ処理を施すようにしたプラズマ処理方法において、
前記ガス噴出孔は、前記処理容器の側壁から前記処理容器内の中心側に所定の長さで配置され、前記被処理体面の上側であって前記処理容器の周方向に沿って略均等に配置されると共に、前記ガス噴出孔と前記被処理体との間の垂直方向の距離が75mm以上に設定された位置から前記処理容器内の中心方向に向かって処理ガスを噴射するように構成したことを特徴とするプラズマ処理方法。」

上記補正のうち請求項3は、補正前の請求項3における「ガス噴射孔の先端と前記被処理体のエッジとの間の水平方向の距離は、膜厚の面内均一性を5%以下にするために0?70mmの範囲内に設定される」を、「ガス噴出孔の先端と前記被処理体のエッジとの間の水平方向の距離は、0?70mmの範囲内に設定される」に補正したものである。
この点について検討すると、補正により、補正前の「膜厚の面内均一性を5%以下にするために」との記載が削除され、その結果、本願明細書段落【0027】に記載された「尚、容器側壁とウエハエッジとの間は100mmに設定されており」の場合、図6の記載によると、ノズルの長さLが110mmならば、ガス噴出孔の先端と被処理体のエッジとの間の水平方向の距離は、110mm-100mm=10mmとなり、該水平方向の距離は0?70mmの範囲内に設定されることになるが、対応する膜厚の面内均一性(±%)は約8%となっている。そうすると、膜厚の面内均一性は5%以下にはなっておらず、補正前には含まれなかった範囲が含まれることになるから、上記補正は、特許請求の範囲を拡張するものであって、特許請求の範囲の減縮を目的としたものには該当していない。さらに、明らかに請求項の削除、誤記の訂正及び明りょうでない記載の釈明を目的としたものにも該当していない。

2.むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、同法第159条第1項において準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
平成17年10月12日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?16に係る発明は、平成16年7月26日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?16に記載されたとおりのものであるところ、そのうち、請求項1に記載された発明(以下、「本願発明1」という。)は次のとおりのものである。
「【請求項1】気密な処理容器内に配置された被処理体に対してプラズマ処理を施すプラズマ処理装置において、
前記処理容器の外に設けられたアンテナ部材と、
前記アンテナ部材に接続された高周波電源と、
前記被処理体を保持する載置台と、
複数の処理ガス供給通路を備え、前記処理ガス供給通路と連通する処理ガス噴出孔から前記処理容器内に処理ガスを供給するためのガス供給部と、
前記処理容器内を排気するための排気口と、を備え、
前記ガス供給部は、前記被処理体面より上側に配置され、前記処理ガス供給通路と連通する前記処理ガス噴出孔の位置が、前記処理容器の周方向に位置し、略均等に配置されて、前記処理容器内の中心部に向かって処理ガスを放出するようになされると共に、前記ガス噴射孔と前記被処理体との間の垂直方向の距離が65mm以上に設定されていることを特徴とするプラズマ処理装置。」

2.引用刊行物とその摘記事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-79025号公報(以下、「刊行物」という。)には、次の事項が記載されている。
(1a)「(1)一の絶縁シールドによって少なくとも一部分を仕切られた一の内部を有する一の囲い部と、該囲い部の内部に処理用のガスを導入する手段と、
前記絶縁シールドに最も近い前記囲い部の外側に配置された電気的に導伝性である実質的に平面状の一のコイルと、
該コイルに一の無線周波電源を結合する手段とを備え、
前記結合する手段は、前記コイルに前記無線周波電源のインピーダンスを整合させる手段と、共振に備えるため共振回路を同調させる手段とを含むことを特徴とする磁気結合された平面状のプラズマを生成するための装置。」(特許請求の範囲(1))
(1b)「平面状のコイルは、半導体処理装置の操作において一般に用いられる型の無線周波(RF)発生器によって作動される。RF発生器は約13.56MHz乃至100MHzの範囲内にある周波数、典型的には13.56MHzの周波数で通常操作される。」(5頁左下欄3?7行)
(1c)「以下に、第1図及び第2図を参照して個々の半導体ウェハをエッチングするため適するプラズマ処理システムが説明される。
プラズマ処理システム10は、上壁16内に形成されるアクセス部14を有する囲い部12を含む。絶縁シールド18が上壁16下方に配置され、アクセス部14を横切って延びる。絶縁シールド18は、囲い部12の真空に耐える内部19を定めるため上壁16に強く密着される。
平面状コイル20が絶縁シールド18に隣接したアクセス部14内に配置される。平面状コイル20は渦巻状に形成され、中央タップ22及び外側タップ24を有する。平面状コイル20の平面は、絶縁シールド18及び半導体ウェハWを載置する支持載置面13の両方に対し平行に向けられている。この様にして、平面状コイル20は半導体ウェハWに平行である囲い部12の内部19内で平面状のプラズマを生み出すことができ、以下に更に詳細に説明される。平面状コイル20と支持載置面13との距離は一般には3cm乃至15cmの範囲内であるが、特有の適用に依存して通常5cm乃至10cmの範囲内の正確な距離である。
第1図乃至第3図を参照するに、平面状コイル20は上述された型のRF発生器30によって作動される。RF発生器30の出力は同軸ケーブル32によって整合回路34に供給される。整合回路34は、回路の効果的な結合を調整し、動作時の周波数での回路への負荷を考慮に入れて、相互に位置付けられる主要コイル36及び第2ループ38を含む。」(5頁左下欄17行?6頁左上欄7行)
(1d)「第2図乃至第4図を参照するに、処理用ガスは囲い部12の側壁を貫通して形成される入口部50を介して囲い部12の内部19内に導入される。入口部50の位置は重要なことではなく、内部19を貫通して均一に分配して与えられるいかなる地点からガスが導入されても良い。
ガス分配の均一さを更に高めるために、分配リング52が与えられても良い。分配リング52は、便宜上支持載置面13上方に配置され、アクセス部14の周囲を囲む。分配リング52は環状の高圧部54、及び該高圧部54から分配リング52の開口した中央部58へ延びる一連のノズル56群を含む。この様にして、入ってくる処理用ガスは平面状コイル20によって誘導される磁場の最大強度の領域の回りに等しく分配される。好ましくは、ノズル56は、入ってくる処理用ガスに渦巻状の流れパターンを分は与えるため、分配リング52の半径方向から外れた方向へ向けられても良い。」(6頁右上欄3行?左下欄1行)
(1e)第2図には、囲い部12の左下部に貫通孔とともに、矢印の先に「真空ポンプへ」と記載され、処理ガスを排気するための排気口を有すること、上壁16のアクセス部14には、平面状コイル20が示され、該コイルの下方には絶縁シールド18、ノズル56が示され、平面状コイル20の下面からノズル56までの距離は、平面状コイル20の下面から支持載置面13までの距離の約0.25倍になっていること、又第4図には、分配リング52に開口した中央部へ延びる一連の複数のノズル56が略均等に配置されていること、が示されている。

3.当審の判断
3-1.刊行物記載の発明
上記摘記(1d)によれば、処理用ガスは囲い部12の側壁を貫通して形成される入口部50を介して囲い部12の内部19内に導入されること、分配リング52は、支持載置面13上方に配置され、分配リング52は環状の高圧部54、及び該高圧部54から分配リング52の開口した中央部58へ延びる一連のノズル56群を含むことが記載され、摘記(1e)によれば、
分配リング52に開口した中央部に延びる一連のノズル56が略均等に配置されていることが示され、また、囲い部には処理ガスを排気するための排気口を有することも示されている。
そうすると、上記摘記(1a)?(1e)を総合すると、上記刊行物には、「絶縁シールドによって少なくとも一部分を仕切られた一の内部を有する囲い部と、該囲い部の内部に処理用のガスを導入する手段と、前記絶縁シールドに最も近い前記囲い部の外側に配置された電気的に導伝性である実質的に平面状のコイルと、該コイルに無線周波電源を結合する手段と、ウェハを保持する支持載置面とを備え、囲い部内に配置されたウェハに対してプラズマ処理を施す磁気結合された平面状のプラズマを生成するための装置において、
前記ガスを導入する手段が複数のノズル、ノズルの先端から囲い部内に処理用ガスを供給するための分配リングを備え、囲い部内の処理ガスを排気するための排気口と、前記分配リングは、ウェハ面より上側に配置され、ノズルの先端が、囲い部の周方向に位置し、略均等に配置されて、囲い部内の中心部に向かって処理用ガスを放出するようになされている磁気結合された平面状のプラズマを生成するための装置。」(以下、「刊行物記載発明」という。)が記載されているといえる。

3-2.対比・判断
本願発明1と刊行物記載発明とを対比する。
刊行物記載発明の「囲い部」は、プラズマを生成するための装置として、当然に気密であるから、本願発明1の「処理容器」に相当し、刊行物記載発明の「ノズルの先端」は、囲い部内に処理用ガスを噴出する孔を有することも自明である。また、刊行物記載発明の「平面状のコイル」、「無線周波電源」、「ウェハ」、「支持載置面」、「ノズル」、「分配リング」は、それぞれ本願発明1の「アンテナ部材」、「高周波電源」、「被処理体」「載置台」、「処理ガス供給通路」、「ガス供給部」に相当する。
そうすると、両者は、「気密な処理容器内に配置された被処理体に対してプラズマ処理を施すプラズマ処理装置において、前記処理容器の外に設けられたアンテナ部材と、前記アンテナ部材に接続された高周波電源と、前記被処理体を保持する載置台と、複数の処理ガス供給通路を備え、前記処理ガス供給通路と連通する処理ガス噴出孔から前記処理容器内に処理ガスを供給するためのガス供給部と、前記処理容器内を排気するための排気口と、を備え、前記ガス供給部は、前記被処理体面より上側に配置され、前記処理ガス供給通路と連通する前記処理ガス噴出孔の位置が、前記処理容器の周方向に位置し、略均等に配置されて、前記処理容器内の中心部に向かって処理ガスを放出するようになされるプラズマ処理装置。」の点で一致し、次の点で相違する。

相違点:本願発明1は、ガス噴射孔と被処理体との間の垂直方向の距離が65mm以上に設定されているのに対し、刊行物記載発明は、処理用ガス噴射口と被処理体との間の距離については不明である点。

そこで、上記相違点について検討する。
刊行物記載発明の該距離について精査すると、摘記(1c)には、「平面状コイル20と支持載置面13との距離は一般には3cm乃至15cmの範囲内である」と記載されており、この距離は、平面状コイルの下面から支持載置面までの距離ともいえ、該距離は150mmの場合も当然に取り得る。そうすると、この場合ノズルと支持載置面との間の垂直方向の距離は、約112.5mm(摘記(1e)の約0.25倍から、150mm-150mm×0.25=112.5mm)となっている。

また、プラズマ薄膜形成装置において、原料ガス供給ノズルとウエハ間の距離を65mm以上とすることは、例えば、次に示すとおり周知の技術である。
周知例1:特開平1-278716号公報、第6図、70mm、90mmとすること参照
周知例2:特開昭63-54934号公報、「第1図において、基体5とノズル1の間隔を数10mm?数100mm程度離せば」(4頁左上欄8?9行参照)

そうすると、刊行物記載発明において、ガス噴射孔と被処理体との間の垂直の距離を65mm以上とすることは、プラズマ処理の条件などに応じて当業者が適宜決め得る設計的事項にすぎない。
また、この距離を、平面状コイルの上面から支持載置面までの距離、または平面状コイルの幅方向の中間から支持載置面までの距離としても、格別の差は認められない。

そして、本願発明1における作用効果も刊行物の記載から予測することができる程度のものであって格別顕著なものとも認められない。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、本願の請求項2?16に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-02-20 
結審通知日 2007-02-27 
審決日 2007-03-15 
出願番号 特願2001-190493(P2001-190493)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 宮本 靖史今井 拓也池渕 立和瀬田 芳正  
特許庁審判長 城所 宏
特許庁審判官 市川 裕司
正山 旭
発明の名称 プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法  
代理人 浅井 章弘  

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