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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01G |
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管理番号 | 1175655 |
審判番号 | 不服2005-13879 |
総通号数 | 101 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-05-30 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-07-21 |
確定日 | 2008-04-04 |
事件の表示 | 平成11年特許願第233105号「積層セラミック電子部品の外部電極形成方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 3月 6日出願公開、特開2001- 60532〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成11年8月19日の出願であって、平成17年6月15日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年7月21日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年8月19日付けで手続補正がなされ、その後、当審において平成18年8月1日付けで審尋がなされ、これに対し、同年10月19日に回答書が提出されたものである。 第2 平成17年8月19日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成17年8月19日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1 補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、 「【請求項1】 内部電極と接続させて積層セラミック素体の両端に被着するAgまたはCuの下地電極層と、該下地電極層に被着する中間のNiメッキ層と、該Niメッキ層に被着する最外層のSnまたはSn/Pb,Sn/Cu,Sn/Bi,Sn/Znのうちいずれか一種のメッキ層とから外部電極を形成する積層セラミック電子部品の外部電極形成方法において、 スルホン酸アミドを含有し、その添加量が20?40ml/LのNiメッキ液により中間のNiメッキ層を形成したことを特徴とする積層セラミック電子部品の外部電極形成方法。」と補正された。 上記補正は、補正前の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「少なくとも一種以上のスルホン酸系化合物」を「スルホン酸アミド」と概念的に下位のものに限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。 2 独立特許要件について (1)刊行物に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された特開平6-196351号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「積層セラミックコンデンサの製造方法」(発明の名称)に関するもので、図1、2、3とともに以下の事項が記載されている。 「【請求項1】内部電極層、誘電体層が交互に積層され、焼結された積層体の端部に、端子電極としてAg系導体材料を塗布・焼き付けを行い、さらに、Ag系導体膜上にNiメッキ液でメッキ処理してNi中間層を形成し、さらに、Niメッキ層上に外部メッキ層を形成した積層セラミックコンデンサの製造方法において、 前記Niメッキ液に、=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物を添加して、Niメッキ層を形成することを特徴とする積層セラミックコンデンサの製造方法。」 「【0004】端子電極の具体的な製造方法としては、焼結された積層体の端面に、Ag系導体ペーストをディップ法で、塗布し、乾燥・焼きつけして、下地膜を形成した後、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硼酸、水を含むNiメッキ液中で、メッキ処理して、Ag系導体膜の下地膜上に、Niメッキ中間層を被覆していた。さらにその後、Niメッキ中間層上に、外部メッキ層、例えば、Snメッキ液中でメッキ処理してSnメッキ層を形成していた。」 「【0006】本発明は、上述の問題点に鑑みて案出されたものであり、その目的は、Niメッキ中間層の厚みを所定厚み以上に、且つのバラツキを少なくして、Ag系導体膜の下地膜の半田くわれを有効に防止できる積層セラミックコンデンサの製造方法を提供するものである。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明は、内部電極層、誘電体層が交互に積層され、焼結された積層体の端部に、Ag系導体材料を塗布・焼き付けを行い、さらに、Ag系導体膜上に、Niメッキ液でメッキ処理してNiメッキ中間層を形成し、さらに、Niメッキ中間層上に外部メッキ層を形成した積層セラミックコンデンサの製造方法において、前記Niメッキ液中に、=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物を添加して、Niメッキ中間層を形成した積層セラミックコンデンサの製造方法である。 【0008】 【作用】本発明によれば、Niメッキ中間層の形成にあたり、Niメッキ液(硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硼酸、水)に、さらに、=C-SO_(2) -構造を有するサッカリン、1・5ナフタリンジスルホン酸ナトリウム、1.3.6ナフタレントリスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホンアミドなどの有機化合物の少なくとも1種類を添加したため、Niメッキ中間層の厚みが1.3?2.7μm、特に好ましい範囲である1.5?2.5μmとなり、バラツキが少ないメッキ層を形成することができる。 【0009】これにより、プリント配線基板への半田接合時における耐熱信頼性が向上し、また、端子電極の半田食われを有効に防止できることになる。」 「【0010】 【実施例】以下、本発明の積層セラミックコンデンサの製造方法を詳説する。 【0011】積層セラミックコンデンサは、図1に示すように、誘電体層1と内部電極層2a、2bとを交互に積層した積層体10の両端に端子電極3a、3bが形成されている。 【0012】具体的には、誘電体層1となる誘電体セラミックのグリーンシート上に、内部電極層2aまたは2bとなる内部電極パターンをパラジウムまたはパラジウム合金の導体ペーストで印刷塗布し、その後、各グリーンシートを内部電極層2aと2bとが互いに対向し、且つ積層体10の対向する両端から各々露出するように積層・熱圧着し、積層セラミックコンデンサの形状に応じて裁断した後、所定焼成条件で焼結して、焼結された積層体10を得ていた。 【0013】次に、積層体10の両端に露出した内部電極層2a、2bに端子電極3a、3bを形成する。まず、積層体10の対向する両端面に、Ag系導体ペーストをディッピング法で塗布し、その後所定条件で焼きつけを行い、80?100μmの膜厚のAg系導体膜から成る下地膜31を形成する。続いて、硫酸ニッケル、塩化ニッケル、硼酸、水からなるNiメッキ液に、さらに、=C-SO_(2) -構造を有する例えばサッカリンを添加した液に、電解メッキを行い、2.0μm程度のNiメッキ中間層32を形成する。続いて、5?6μm程度のSnメッキ層33を形成する。その後、中和処理、水洗処理、アルコールによる置換、乾燥を行い、積層セラミックコンデンサが製造される。 【0014】ここで、端子電極3a、3bのAg系導体膜の下地膜31は、内部電極層2a、2bとの接続を確実におこなうために作用し、Niメッキ中間層32は、主にAg系導体膜の下地膜31の半田食われを防止するとともに、耐熱性を向上させるものである。例えば、Ag系導体膜の下地膜31が露出する場合には、270℃、10秒程度の熱でAg系導体膜の下地膜31が劣化してしまうが、Niメッキ中間層32を形成することにより、270℃、60秒程度にまで、耐熱性を向上させることができる。Snメッキ層33は、主に半田接合させる際の半田濡れ性を向上させるために作用する。 【0015】本発明は、上述したように、Niメッキ中間層32を形成するにあたり、Niメッキ液に、=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物を添加したことである。=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物としては、上述のサッカリンの他に、1.5ナフタリンジスルホン酸ナトリウム、1.3.6ナフタレントリスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホンアミドなどが挙げられ、その1種類、または2種類以上が添加される。また、その添加量は、Niメッキ液1l(リットル)に対して、5?15ml(ミリリットル)を添加する。」 「【0017】(実験例)本発明者は、3.2mm×1.6mmの積層セラミックコンデンサの端子電極3a、3bとして、Ag系導体膜の下地層31を形成した後、Niメッキ液1リットルに対して、0?15ミリリットルの=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物であるサッカリンを添加し、20A・20分の条件で、下地層31上にNiメッキ中間層32を形成して、そのサッカリンの添加量の変化によるNiメッキ中間層32の膜厚のバラツキを調べた。その結果を図2に示し、そのバラツキ度合を図3に示した。 【0018】図2において、サッカリンを添加しない通常のNiメッキ液では、Niメッキ中間層32が、膜厚約1.0?3.0μmと大きなバラツキが発生したの対して、5ml/l添加した場合には、約1.3?2.7μmであり、さらに10ml/l添加した場合には、約1.5?2.5μmであり、それ以上添加しても、略同一の膜厚であった。 【0019】尚、サッカリン以外の=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物であっても、同様の結果が得られた。 【0020】以上のように、Niメッキ中間層32を形成するにあたり、Niメッキ液に、=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物を添加することにより、Niメッキ中間層32の膜厚のバラツキが改善される。従って、このバラツキ、特に膜厚の薄い膜で発生していたAg系導体膜の下地膜31の半田食われが大幅に抑えることができ、歩留りが大幅に向上する。 【0021】また、その添加量としては、少なくとも5ml/l以上添加することが好ましく、上限としては、15ml/lである。5ml/l以上添加しなくては、バラツキの減少を行う効果を充分に得ることはできず、また、15ml/l以上添加すると、メッキが脆くなったり、割れが発生するという不具合が生じる。 【0022】尚、上述の実施例において、Niメッキ中間層32上には、Snメッキ層33を被着した例を示したが、Sn/Pbメッキでなどの半田濡れ性の良好な材料であればよく、また、単層または2種類以上のメッキ層を積層して形成しても構わない。 【0023】 【発明の効果】本発明によれば、積層セラミックコンデンサの端子電極のNiメッキ中間層を形成するにあたり、Niメッキ液中に、=C-SO2 -構造を有する有機化合物を添加したため、Niメッキ中間層の厚みのバラツキを大きく改善でき、特に膜厚が薄いことによるAg系導体膜の下地膜の半田食われを有効に防止でき、耐熱性にすぐれた端子電極を形成することができる。」 以上から、刊行物1には、「内部電極層2a、2bと接続させて積層体10の両端面に形成するAg系導体膜の下地膜31と、該下地膜31に形成するNiメッキ中間層32と、該Niメッキ中間層32に形成するSnメッキ層33またはSn/Pbメッキとから端子電極3a、3bを形成する積層セラミックコンデンサの端子電極3a、3bの製造方法において、 =C-SO_(2) -構造を有する有機化合物を添加したNiメッキ液によりNiメッキ中間層32を形成した積層セラミックコンデンサの端子電極3a、3bの製造方法。」(以下、引用発明という。)が記載されている。 (2)本願補正発明と引用発明との対比・判断 本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「内部電極層2a、2b」、「積層体10」、「両端面」、「形成」、「Ag系導体膜の下地膜31」、「Niメッキ中間層32」、「Snメッキ層33またはSn/Pbメッキ」、「端子電極3a、3b」、「積層セラミックコンデンサ」、「製造方法」、「添加」は、それぞれ本願補正発明の「内部電極」、「積層セラミック素体」、「両端」、「被着」、「AgまたはCuの下地電極層」、「中間のNiメッキ層」、「最外層のSnまたはSn/Pb,Sn/Cu,Sn/Bi,Sn/Znのうちいずれか一種のメッキ層」、「外部電極」、「積層セラミック電子部品」、「形成方法」、「含有」に相当する。 そして、引用発明の「=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物」と本願補正発明の「スルホン酸アミド」は、Niメッキ液に添加する添加物であるから、両者は、 「内部電極と接続させて積層セラミック素体の両端に被着するAgまたはCuの下地電極層と、該下地電極層に被着する中間のNiメッキ層と、該Niメッキ層に被着する最外層のSnまたはSn/Pb,Sn/Cu,Sn/Bi,Sn/Znのうちいずれか一種のメッキ層とから外部電極を形成する積層セラミック電子部品の外部電極形成方法において、 添加物を含有するNiメッキ液により中間のNiメッキ層を形成したことを特徴とする積層セラミック電子部品の外部電極形成方法。」で一致し、 相違点1:Niメッキ液の添加物として、本願補正発明では、「スルホン酸アミド」を用いているのに対して、引用発明では、「=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物」を用いている点、 相違点2:本願補正発明では、添加物の添加量を「20?40ml/L」としているのに対して、引用発明では、このような添加量の数値範囲が記載されていない点で、相違する。 そこで、上記相違点1、2について、検討する。 [相違点1] 刊行物1には、実施例の説明の中に、「【0015】本発明は、上述したように、Niメッキ中間層32を形成するにあたり、Niメッキ液に、=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物を添加したことである。=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物としては、上述のサッカリンの他に、1.5ナフタリンジスルホン酸ナトリウム、1.3.6ナフタレントリスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホンアミドなどが挙げられ、その1種類、または2種類以上が添加される。・・・」の記載、及び「【0019】尚、サッカリン以外の=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物であっても、同様の結果が得られた。」の記載がある。この記載から、引用発明において、「サッカリン」と同様に、「スルホン酸アミド」の一種である「パラトルエンスルホンアミド」を、Niメッキ液の添加物として用いることは、当業者が適宜なし得たことである。 [相違点2] (ア)本願明細書の実施例(【0012】?【0022】に記載。)には、 Niメッキ液に添加する添加物として、スルホン酸の水酸基をアミノ基で置換した化合物群である「スルホン酸アミド」が記載されており、「スルホン酸アミド」には、数多くの種類があり、この中の特定(個別)の物質を使用した実施例が記載されているわけではない。このことから、「スルホン酸アミド」に含まれる種々の物質において、その添加量を「20?40ml/L」とすれば、必ず、本願明細書に記載の効果(耐ヒートサイクル性及び半田付性の向上)が得られるとは言い難く、この点から、本願補正発明の「スルホン酸アミド」の添加量を「20?40ml/L」にした点に臨界的意義があるとは認められない。 (イ)仮に、「スルホン酸アミド」の添加量を「20?40ml/L」にしたことにより、本願明細書記載の効果(耐ヒートサイクル性及び半田付性の向上)があるとしても、本願当初明細書には、「【0014】・・・添加量1?40ml/Lのスルホン酸系化合物を含有するNiメッキ液により形成するとよい。・・・」、「【0018】耐ヒートサイクル性及び半田付性については、表2で示す如くメッキ液に対するSO_(3)H基を有するRSO_(2)NH_(2)(スルホン酸アミド)の添加量が1.0?40.0ml/LのNiメッキ液で中間層のNiメッキ層を形成した外部電極により良好な結果が得られた。」と記載され、さらに、【0017】に記載の【表2】には、 RSO_(2)NH_(2)(スルホン酸アミド)の添加量が1?20.0ml/Lの場合でも、添加量が20?40.0ml/Lの場合と同様の、耐ヒートサイクル性及び半田付性(の不良率)が0%である効果が得られることが明示されている。このことから、添加量の数値範囲を「20?40.0ml/L」と限定しても、当初明細書に記載の数値範囲である「1?40.0ml/L」にした場合と比べて、技術的意味があるとは認められない。 これに対し、刊行物1には、「【0015】本発明は、上述したように、Niメッキ中間層32を形成するにあたり、Niメッキ液に、=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物を添加したことである。=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物としては、上述のサッカリンの他に、1.5ナフタリンジスルホン酸ナトリウム、1.3.6ナフタレントリスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホンアミドなどが挙げられ、その1種類、または2種類以上が添加される。また、その添加量は、Niメッキ液1l(リットル)に対して、5?15ml(ミリリットル)を添加する。」、「【0021】また、その添加量としては、少なくとも5ml/l以上添加することが好ましく、上限としては、15ml/lである。・・・」と記載されている。このことから、引用発明においても、Niメッキ液の添加物として、パラトルエンスルホンアミド(スルホン酸アミドの一種)を用いた場合に、その添加量が5?15mlでは、本願補正発明と同様の効果(耐ヒートサイクル性及び半田付性の向上)を有するものであり、その効果において、本願補正発明と格別な差異は認められない。 (ウ)さらに、刊行物1の請求項1では、添加物の添加量は特に限定されていない。 (エ)以上のことから、引用発明において、スルホン酸アミドの添加量の数値範囲を「20?40ml/L」とした点に格別な困難性は認められず、それによる効果についても格別なものとは認められない。 ゆえに、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (3)独立特許要件についてのむすび したがって、本願補正発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、その特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。 3 むすび 以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合しないので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 本願発明 平成17年8月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年5月9日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。 「【請求項1】 内部電極と接続させて積層セラミック素体の両端に被着するAgまたはCuの下地電極層と、該下地電極層に被着する中間のNiメッキ層と、該Niメッキ層に被着する最外層のSnまたはSn/Pb,Sn/Cu,Sn/Bi,Sn/Znのうちいずれか一種のメッキ層とから外部電極を形成する積層セラミック電子部品の外部電極形成方法において、 少なくとも一種以上のスルホン酸系化合物を含有し、その添加量が20?40ml/LのNiメッキ液により中間のNiメッキ層を形成したことを特徴とする積層セラミック電子部品の外部電極形成方法。」 2 刊行物に記載された発明 原査定の拒絶の理由に引用された刊行物1、及びその記載事項は、前記「第2 2(1)」に記載したとおりである。 3 本願発明と引用発明との対比・判断 本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「内部電極層2a、2b」、「積層体10」、「両端面」、「形成」、「Ag系導体膜の下地膜31」、「Niメッキ中間層32」、「Snメッキ層33またはSn/Pbメッキ」、「端子電極3a、3b」、「積層セラミックコンデンサ」、「製造方法」、「添加」は、それぞれ本願発明の「内部電極」、「積層セラミック素体」、「両端」、「被着」、「AgまたはCuの下地電極層」、「中間のNiメッキ層」、「最外層のSnまたはSn/Pb,Sn/Cu,Sn/Bi,Sn/Znのうちいずれか一種のメッキ層」、「外部電極」、「積層セラミック電子部品」、「形成方法」、「含有」に相当する。 そして、引用発明の「=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物」は、本願発明の「少なくとも一種以上のスルホン酸系化合物」に相当するから、両者は、 「内部電極と接続させて積層セラミック素体の両端に被着するAgまたはCuの下地電極層と、該下地電極層に被着する中間のNiメッキ層と、該Niメッキ層に被着する最外層のSnまたはSn/Pb,Sn/Cu,Sn/Bi,Sn/Znのうちいずれか一種のメッキ層とから外部電極を形成する積層セラミック電子部品の外部電極形成方法において、 少なくとも一種以上のスルホン酸系化合物を含有するNiメッキ液により中間のNiメッキ層を形成したことを特徴とする積層セラミック電子部品の外部電極形成方法。」で一致し、 本願発明では、「少なくとも一種以上のスルホン酸系化合物」の添加量を「20?40ml/L」としているのに対して、引用発明では、このような添加量の数値範囲が記載されていない点(以下、相違点という。)において相違する。 そこで、上記相違点について、検討する。 (ア)本願明細書の実施例(【0012】?【0022】に記載。)には、 Niメッキ液に添加する添加物として、スルホン酸の水酸基をアミノ基で置換した化合物群である「スルホン酸アミド」が記載されており、「スルホン酸アミド」には、数多くの種類があり、この中の特定(個別)の物質を使用した実施例が記載されているわけではない。このことから、スルホン酸アミド(スルホン酸系化合物の一種)に含まれる種々の物質において、その添加量を「20?40ml/L」とすれば、必ず、本願明細書に記載の効果(耐ヒートサイクル性及び半田付性の向上)が得られるとは言い難く、この点から、本願発明の「スルホン酸系化合物」の添加量を「20?40ml/L」にした点に臨界的意義があるとは認められない。 (イ)仮に、「スルホン酸系化合物」の添加量を「20?40ml/L」にしたことにより、本願明細書記載の効果(耐ヒートサイクル性及び半田付性の向上)があるとしても、本願当初明細書には、「【0014】・・・添加量1?40ml/Lのスルホン酸系化合物を含有するNiメッキ液により形成するとよい。・・・」、「【0018】耐ヒートサイクル性及び半田付性については、表2で示す如くメッキ液に対するSO_(3)H基を有するRSO_(2)NH_(2)(スルホン酸アミド)の添加量が1.0?40.0ml/LのNiメッキ液で中間層のNiメッキ層を形成した外部電極により良好な結果が得られた。」と記載され、さらに、【0017】に記載の【表2】には、 RSO_(2)NH_(2)(スルホン酸アミド)の添加量が1?20.0ml/Lの場合でも、添加量が20?40.0ml/Lの場合と同様の、耐ヒートサイクル性及び半田付性(の不良率)が0%である効果が得られることが明示されている。このことから、添加量の数値範囲を「20?40.0ml/L」と限定しても、当初明細書に記載の数値範囲である「1?40.0ml/L」にした場合と比べて、技術的意味があるとは認められない。 これに対し、刊行物1には、「【0015】本発明は、上述したように、Niメッキ中間層32を形成するにあたり、Niメッキ液に、=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物を添加したことである。=C-SO_(2) -構造を有する有機化合物としては、上述のサッカリンの他に、1.5ナフタリンジスルホン酸ナトリウム、1.3.6ナフタレントリスルホン酸ナトリウム、パラトルエンスルホンアミドなどが挙げられ、その1種類、または2種類以上が添加される。また、その添加量は、Niメッキ液1l(リットル)に対して、5?15ml(ミリリットル)を添加する。」、「【0021】また、その添加量としては、少なくとも5ml/l以上添加することが好ましく、上限としては、15ml/lである。・・・」と記載されている。このことから、引用発明においても、サッカリン、パラトルエンスルホンアミド等のスルホン酸系化合物の添加量が5?15mlでは、本願発明と同様の効果(耐ヒートサイクル性及び半田付性の向上)を有するものであり、その効果において、本願発明と格別な差異は認められない。 (ウ)さらに、刊行物1の請求項1では、添加物の添加量は特に限定されていない。 (エ)以上のことから、引用発明において、「スルホン酸系化合物」の添加量の数値範囲を「20?40ml/L」とした点に格別な困難性は認められず、それによる効果についても格別なものとは認められない。 ゆえに、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 4 むすび 以上のとおり、本願発明は、刊行物1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができず、本願は拒絶されるべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-12-12 |
結審通知日 | 2008-01-15 |
審決日 | 2008-01-28 |
出願番号 | 特願平11-233105 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(H01G)
|
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 竹井 文雄、鈴木 匡明 |
特許庁審判長 |
橋本 武 |
特許庁審判官 |
山本 一正 浅野 清 |
発明の名称 | 積層セラミック電子部品の外部電極形成方法 |
代理人 | 竹下 和夫 |