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審決分類 |
審判 査定不服 1項3号刊行物記載 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08J 審判 査定不服 特36 条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C08J |
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管理番号 | 1176166 |
審判番号 | 不服2003-16063 |
総通号数 | 102 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2003-08-21 |
確定日 | 2008-04-09 |
事件の表示 | 平成 4年特許願第328605号「透明・反射面の曇り止め方法」拒絶査定不服審判事件〔平成 6年 5月24日出願公開、特開平 6-145397〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
I.手続の経緯 本願は、平成4年11月13日の出願であって、平成11年11月11日に手続補正書が提出され、平成14年5月9日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年7月22日に意見書及び手続補正書が提出され、同年7月24日に手続補足書が提出され、同年8月1日に上申書が提出され、平成15年2月14日付けで再度拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年4月25日に意見書及び手続補正書が提出され、同年5月6日に上申書が提出されたが、同年7月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月21日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正書が提出され、さらに同年9月18日に手続補正書が提出され、同年10月7日に審判請求書の手続補正書(方式)が提出され、同年10月9日に手続補足書が提出され、平成16年4月8日付けで前置報告がなされ、平成18年6月13日付けで審尋がされ、同年8月21日に回答書が提出され、同年8月23日に手続補足書が提出され、平成19年9月5日付けで拒絶理由が通知され、その指定期間内である同年11月8日に意見書が提出され、同年11月12日に手続補足書が提出されたものである。 なお、平成15年8月21日付け手続補正及び平成15年9月18日付け手続補正は平成19年5月31日付けで却下され、この補正却下の決定は平成19年7月21日付けで確定している。 II.本願発明について 平成15年8月21日付け手続補正及び平成15年9月18日付け手続補正は、上記のとおり却下されこの補正却下の決定は確定しているので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成15年4月25日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定された次のとおりのものであると認める。 「【請求項1】 ガラス表面,プラスチック表面,又は金属板表面上に、気体分子を取り込んだ物質を付着させ、薄膜様の物質を作成することにより、ガラス,プラスチック,金属板表面上に難溶性の曇り止めを施すことを特徴とする透明・反射面の曇り止め方法。 【請求項2】 気体分子を捕らえて離さない物質が化学ゲッターであることを特徴とする請求項1記載の透明・反射面の曇り止め方法。 【請求項3】 化学ゲッターがチタンであることを特徴とする請求項2記載の透明・反射面の曇り止め方法。 」(以下、「本願発明1」?「本願発明3」という。) III.拒絶理由 当審において平成19年9月5日付けで通知された拒絶理由の概要は、以下のとおりである。 1.この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物1、2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.この出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前に日本国内において頒布された下記の刊行物1、2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 3.この出願は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第5項第2号及び第6項に規定する要件を満たしていない。 4.この出願は、明細書の記載が不備のため、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 記 ・刊行物1;特開昭61-91042号公報 ・刊行物2;特開昭61-283629号公報 IV.当審の判断 前記拒絶の理由が妥当であるか否か検討する。 1.本願発明1?3が、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない、とする理由(III.1.)について 1-1.刊行物2との対比・判断 1-1-1.刊行物2(特開昭61-283629号公報)に記載の事項 (ア) 「(1)プラスチック表面上に、チタニアヒドロゾルを主成分とするコーティング組成物を用いて透明な皮膜を形成せしめてなるプラスチック複合材料。」(特許請求の範囲第1項) (イ) 「〈産業上の利用分野〉 本発明は、プラスチックの表面に無機質皮膜を形成せしめた複合材料に関する。詳しくは本発明はチタニアヒドロゾルを主成分とするコーティング組成物を用いプラスチック表面上に堅牢な、かつ透明な皮膜を形成せしめたプラスチック複合材料に関するものである。このプラスチック複合材料は、プラスチックに帯電防止性、光選択透過性、防曇性、光干渉性、耐熱性、耐薬品性・・・等を与えるものであり、」(1頁右下欄3?13行) (ウ) 「〈発明が解決しようとする問題点〉 本発明は、このような従来技術の欠点を克服するものであり、プラスチック表面に、チタニアゾルを主成分とするコーティング組成物を用いて安価に作業性良く、密着性の良い透明なチタニア皮膜を形成せしめ、当該プラスチックに帯電防止性、光選択透過性、防曇性、光干渉性、耐熱性、耐薬品性および生医学分野における免疫担体としての機能等を与えてなるものである。」(2頁左下欄9?17行) (エ) 「チタニアヒドロゾルを含むコーティング組成物を用いて、実際プラスチックに塗布するに際してはスプレー法、ディッピング法、バーコーター、アプリケーター、ハケ塗りなど従来公知の方法が適用しうる。このようにしてプラスチック表面に塗膜を形成させた後、風乾あるいは200℃までの加熱乾燥、室温での減圧乾燥などによりプラスチック表面との密着性の高い、かつ大きな膜強度を有する膜が形成される。」(3頁右下欄6?14行) (オ) 「上記で得られた3種のチタニアヒドロゾル(A)、(B)、(C)それぞれ100gに対してエタノール200gを加えて均一溶液としたあと、バーコーターで各種プラスチック基板に塗布し、風乾後80?120℃の温度で3分間熱処理しプラスチック基板上にチタニアの皮膜を形成させた。」(4頁右上欄14?19行) (カ) 「皮膜処理された各種プラスチック基板表面の表面固有抵抗値、製膜性、膜強度、可視光透過率および防曇性を測定した。その結果を表-1に示す。」(4頁左下欄5?8行) (キ) 表-1には、皮膜処理された各種プラスチック基板表面の防曇性について測定結果が記載されている。 1-1-2.刊行物2に記載された発明 摘示記載(ア)?(キ)からみて、刊行物2には、「プラスチック表面上に、チタニアヒドロゾルを主成分とするコーティング組成物を用いてチタニア皮膜を形成させ、プラスチック表面上に防曇性を施す処理法」の発明(以下、「刊行物2発明」という。)が記載されている。 1-1-3.対比・判断 (本願発明1について) 本願発明1と刊行物2発明とを対比すると、 刊行物2発明の「皮膜」は、本願発明1の「薄膜様の物質」に相当するから、両者は、「プラスチック表面上に、薄膜様の物質を形成させ、プラスチック表面上に曇り止めを施す処理法」の発明である点で一致し、次の点で一応相違している。 相違点 (a)薄膜様の物質の形成について、本願発明1は、「気体分子を取り込んだ物質を付着させ、薄膜様の物質を作成する」としているのに対し、刊行物2発明は、「チタニア皮膜を形成させ」としている点 (b)曇り止めについて、本願発明1は、「難溶性の曇り止め」としているのに対し、刊行物2発明は、明記していない点 相違点(a)、(b)について検討する。 相違点(a)について 本願明細書段落【0008】?【0012】の記載からして、本願発明1における「気体分子を取り込んだ物質」には、チタンの酸化物(チタニア)が含まれるものと認められるから、刊行物2発明のチタニアは、本願発明1の「気体分子を取り込んだ物質」に相当するものである。 また、本願明細書段落【0017】には、唯一「曇り止め物質の取付方法」に関する記載がされており、(イ)?(へ)の取付方法が示され、(ホ)として吹付法も記載されている。 一方、刊行物2発明の皮膜形成方法としてはスプレー法が示されており(摘示記載(エ))、当該スプレー法が本願明細書でいう「吹付」法に該当するものであることは明らかである。 そうすると、刊行物2発明の「チタニア皮膜を形成させ」は、本願発明1の「気体分子を取り込んだ物質を付着させ、薄膜様の物質を作成する」に相当するものであるから、この点は実質的な相違点ではない。 なお、平成19年11月8日付け意見書及び平成19年11月8日付け(平成19年11月12日提出)手続補足書において、請求人は、本願発明1における「気体分子を取り込んだ物質を付着させる」薄膜形成法は「スパッタリングによる酸化チタン」の薄膜形成法である旨主張するが、本願発明1は、「気体分子を取り込んだ物質を付着させる」具体的方法についてまで限定しているものではないし、そもそも本願明細書には「気体分子を取り込んだ物質を付着させる」薄膜形成法として「スパッタリング法」が用いられるなどとは一切記載されてない。 また、刊行物2発明においては、「成膜された薄膜はX線回折装置によりTiO_(2) と確認されていない、非晶質のものである」旨主張するが、本願発明1は、薄膜が「TiO_(2) であること」も「非晶質のものでないこと」も特に限定しているものではないし、そもそも本願発明1についても本願明細書中で薄膜がX線回折装置によりTiO_(2) と確認されているものではなく、非晶質のものでないことも何ら確認されていないのであるから、請求人の主張は採用することができない。 相違点(b)について 刊行物2発明で用いられているチタニア(TiO_(2))が難溶性の化合物であることは本出願前周知の事項(必要ならば、「化学大辞典3 縮刷版 」共立出版株式会社 1989年8月15日縮刷版第32刷発行 第920頁 参照)である。 そうすると、刊行物2発明におけるプラスチック表面上に形成されたチタニア皮膜も、難溶性の曇り止め作用を有するものであるから、この点は実質的な相違点ではない。 したがって、本願発明1は、刊行物2に記載された発明である。 (本願発明2、3について) プラスチック表面上に曇り止めを施す物質として、チタニア(TiO_(2))を用いることは上記のように刊行物2に記載されている(摘示(ア)?(キ))。 そうすると、本願発明2、3も刊行物2に記載された発明である。 1-2.まとめ したがって、本願発明1?3は、刊行物2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。 2.本出願が、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない、とする理由(III.4.)について 2-1.判断 (1)請求項1には、「ガラス表面、プラスチック表面、又は金属板表面上に、気体分子を取り込んだ物質を付着させ」と記載されているが、「気体分子を取り込んだ物質」を具体的にどのようにしてガラス表面、プラスチック表面、又は金属板表面上に付着させるのか不明である。 明細書段落【0009】には、ガラス表面への曇り止め物質取付方法として、(イ)?(へ)が挙げられているが、これらを実際に使った具体的な取付方法は何ら記載されていないし、ましてや、チタンの酸化物を用いた具体的な曇り止め物質取付方法については一切記載されていない。 (2)請求項1には、「ガラス,プラスチック,金属板表面上に難溶性の曇り止めを施す」と記載されているが、 発明の詳細な説明には「難溶性の曇り止め 」の効果を示す実施例や比較例は1例も示されておらず、本願発明1?3が「難溶性の曇り止め 」の効果を奏するものであるのか全く確認できない。 そうすると、本願発明1?3について、発明の詳細な説明には当業者が容易に実施できる程度に発明の構成及び効果が記載されているということはできない。 なお、平成19年11月8日付け(平成19年11月12日提出)手続補足書において、別添資料A「本願発明によるチタンの酸化物薄膜の実験(実施例)」を示しているが、これはチタン酸化物を用いた一般的な薄膜実験例を示したに過ぎないものであって、上記したようにそもそも本願明細書にはチタン酸化物を用いた具体的な実施例は一切記載されていないのであるから、別添資料Aで示されたチタン酸化物の薄膜実験が、本願発明の実施例を裏付ける実験例と直ちにいえるものではない。 2-2.まとめ したがって、本願は、発明の詳細な説明の記載が不備であるから特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 V.むすび 以上のとおりであるから、本願発明1?3は、刊行物2に記載された発明であるから、特許法第29条第1項第3号に該当し、特許を受けることができない。また、本願は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2006-09-28 |
結審通知日 | 2006-10-03 |
審決日 | 2008-02-18 |
出願番号 | 特願平4-328605 |
審決分類 |
P
1
8・
531-
WZ
(C08J)
P 1 8・ 113- WZ (C08J) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | ▲吉▼澤 英一 |
特許庁審判長 |
宮坂 初男 |
特許庁審判官 |
福井 美穂 高原 慎太郎 |
発明の名称 | 透明・反射面の曇り止め方法 |
代理人 | 古田 剛啓 |