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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
無効2008800037 審決 特許
無効2007800196 審決 特許
無効200580005 審決 特許
無効2007800138 審決 特許
無効2009800029 審決 特許

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審決分類 審判 全部無効 5項1、2号及び6項 請求の範囲の記載不備  A61K
審判 全部無効 1項3号刊行物記載  A61K
審判 全部無効 特36 条4項詳細な説明の記載不備  A61K
審判 全部無効 2項進歩性  A61K
管理番号 1176219
審判番号 無効2007-800080  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 無効の審決 
審判請求日 2007-04-17 
確定日 2008-04-09 
事件の表示 上記当事者間の特許第3742672号発明「皮膚外用組成物」の特許無効審判事件について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 審判費用は、請求人の負担とする。 
理由 1.手続の経緯

本件特許第3742672号の請求項1及び請求項2に係る発明についての出願は、平成7年3月20日に出願され、平成17年11月18日にその発明についての特許の設定登録がされた。
これに対し、請求人は、平成19年4月17日に請求項1及び請求項2に対し、特許無効審判を請求し、被請求人は、平成19年7月13日付け答弁書及び訂正請求書(特許法第134条の2第4項の規定によりみなし取り下げ)を提出した。さらに、請求人は、平成19年9月4日付け弁駁書を提出し、被請求人は、平成19年11月26日付け答弁書及び訂正請求書を提出した。これに対し、請求人は、平成19年12月27日付け弁駁書を提出した。

2.訂正請求について

(1)訂正の内容

平成19年11月26日付の本件訂正請求は、本件特許明細書を訂正請求書に添付した明細書(以下、「訂正明細書」という。)のとおりに訂正することを求めるものであり、その訂正の内容は以下のとおりである。
(訂正事項a)
請求項1に係る発明における「海藻の抽出物」を、「海藻を0?40体積%の低級アルコールを含有する水を用い5?50℃において抽出することにより得られる抽出物」に訂正する。

(訂正事項b)
請求項1に係る発明における「グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸およびその塩から選ばれる少なくとも1種」及び「オゴノリ科(Gracilariaceae)、テングサ科(Gelidiaceae)、ミリン科(Solieriaceae)、ヒトエグサ科(Monostromataceae)、ミル科(Codiaceae)、ウシケノリ科(Bangiaceae)、スギノリ科(Gigartinaceae)、カギノリ科(Bonnemaisoniaceae)、イバラノリ科(Hypneaceae)、ダービリア科(Durvilleaceae)、およびダルス科(Rhodymeniaceae)に属する海藻の抽出物から選ばれる少なくとも1種」の配合量を、0.05?20.0%に限定する。

(訂正事項c)
請求項2の、「(A)を0.05?20.0%、(B)を0.05?20.0%」を、「(A)を0.1?10%、(B)を0.1?10%」に訂正する。

(訂正事項d)
明細書の表2、表3及び表6中の「本発明品」を削除する。

(訂正事項e)
明細書の段落【0054】の、「表1?3の結果より」の前に、「表2及び表3において、No18及びNo.25が本発明品であり、その他は参考品である。」を追加する。

(訂正事項f)
明細書の段落【0059】の表6の下に、「表6において、No.10が本発明品であり、その他は参考品である。」を追加する。

(訂正事項g)
明細書の段落【0065】の「実施例4」を、「参考例1」に訂正する。

(訂正事項h)
明細書の段落【0066】【0067】【0068】の「本発明品」を「参考例1」に訂正する。

(訂正事項i)
明細書の段落【0068】の「実施例5」を、「参考例2」に訂正する。

(訂正事項j)
明細書の段落【0069】【0070】【0071】の「本発明品」を「参考例2」に訂正する。

(訂正事項k)
明細書の段落【0068】【0071】の「本発明品」を「参考例」に訂正する。

(2)訂正の適否
訂正事項aは、「海藻の抽出物」を、明細書の段落【0026】及び【0027】の「抽出温度は・・・好ましくは5?50℃の範囲で」、「水と低級アルコールの比率は、低級アルコール/水が・・・より好ましくは0/100?40/60である」及び「抽出温度は・・・好ましくは5?50℃の範囲で」という記載に基づいて、「海藻を0?40体積%の低級アルコールを含有する水を用い5?50℃において抽出することにより得られる抽出物」に限定するものであり、訂正事項b及び訂正事項cは、明細書の段落【0012】【0030】の「ヒドロキシカルボン酸およびその塩は任意の濃度で配合できるが、0.01?50%(%は重量%、以下同様)が好ましく、さらに0.05?20%が好ましく、特に0.1?10%が好ましい。」及び「海藻抽出物は任意の濃度で配合できるが、0.01?50%が好ましく、さらに0.05?20%が好ましく、特に0.1?10%が好ましい。」という記載に基づいて、配合量を限定するものであり、いづれも、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
また、訂正事項d?jは、明細書の「実施例」「本発明品」中に、特許請求の範囲外のものが含まれており、それを「参考例」等とするものであり、明瞭でない記載の釈明を目的とするものである。
よって、これらの訂正は、願書に添付した明細書に記載した事項の範囲内のものであり、且つ実質上特許請求の範囲を拡張し、又は変更しないものであることが明らかである。
なお、請求人は、訂正前の明細書の発明の詳細な説明には、「本発明の(B)成分を抽出する方法に制限はなく、通常の抽出法が採用され」と記載(段落【0025】)されており、上記抽出条件については好ましい条件として記載されてはいるものの、その理由については一切記載も示唆もされていないので、訂正前の明細書には、「特定の抽出溶媒を用いて特定の範囲の温度で抽出した抽出物に格別優れた皮膚刺激緩和作用がある」ことが開示されているとは認められず、訂正後の請求項1に記載の発明は、訂正前のものとは別発明であり、実質上特許請求の範囲を変更するものであると主張しているが、明細書に、具体的記載があることは、前記のとおりであり、請求人の主張は採用できない。
したがって、本件訂正は、特許法第134条の2第1項及び同条第5項で準用する同法第126条第3項及び第4項の規定に適合するので、訂正を認める。

3.本件特許発明
前記2.のとおり訂正が認められたので、本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、訂正請求書に添付された訂正明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1及び請求項2に記載された事項により特定される次のとおりのものであると認められる。

「【請求項1】
(A)0.05?20.0%のグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸およびその塩から選ばれる少なくとも1種と、
(B)0.05?20.0%のオゴノリ科(Gracilariaceae)、テングサ科(Gelidiaceae)、ミリン科(Solieriaceae)、ヒトエグサ科(Monostromataceae)、ミル科(Codiaceae)、ウシケノリ科(Bangiaceae)、スギノリ科(Gigartinaceae)、カギノリ科(Bonnemaisoniaceae)、イバラノリ科(Hypneaceae)、ダービリア科(Durvilleaceae)、およびダルス科(Rhodymeniaceae)に属する海藻を0?40体積%の低級アルコールを含有する水を用い5?50℃において抽出することにより得られる抽出物から選ばれる少なくとも1種とを含有することを特徴とする皮膚外用組成物。
【請求項2】
(A)を0.1?10%、(B)を0.1?10%の量で含有することを特徴とする請求項1記載の皮膚外用組成物。」(以下、「特許発明1」等という。)

4.当事者の主張
(1)請求人は、甲第1?20号証を提出して、以下の無効理由1?3により、本件特許は特許法第123条第1項第2号及び第4号に該当するので、無効とすべき旨を主張している。

[無効理由1]本件特許の請求項1に係る発明は、甲第1号証乃至甲第3号証に記載された発明と同一であるから、特許法第29条第1項第3号の規定により特許を受けることができないものである。

[無効理由2]本件特許の請求項1及び請求項2に係る発明は、(その1)甲第1号証?甲第3号証、(その2)甲第5号証?甲第14号証、及び甲第1?甲第3号証に記載された発明、(その3)甲第15号証に記載された発明、又は(その4)甲第16号証?甲第19号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。なお、(その1)については、平成19年12月27日付け弁駁書で、請求の理由が補正されたものである。

[無効理由3]本件特許の明細書には、記載不備があり、特許法第36条第4項、又は特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていない。なお、無効理由3については、平成19年9月4日付け弁駁書で、請求の理由が補正されたものである。

(2)被請求人は、請求人の主張はいずれも失当であると主張し、乙第1号証?乙第9号証を提出している。

5.当事者の提出した証拠

(請求人の提出した証拠)
(1)甲第1号証:特開平4-275228号公報
(1-1)「本発明は紅藻類きりんさい属および/またはいぎす属に属する海藻の抽出液を含んでなる消炎料である。きりんさい属の海藻としては、とげきりんさい、きりんさい、いぎす属の海藻としてはけいぎす、はりいぎす、いねいぎすが特に効果が大きい。」(段落【0009】)

(1-2)「通常、水100重量部に対し、この乾燥海藻10?30重量部、好ましくは15?25重量部を加え、温度70℃超、沸点未満の温度、好ましくは80?95℃程度に加熱して、どろどろにする。70℃以下では抽出に長時間を必要とし、沸騰させると粘性がかえって低下してきて好ましくない。」
(段落【0011】)

(1-3)「この抽出液は長時間放置すると腐敗することがあるので、サリチル酸、サリチル酸亜鉛、パラ安息香酸メチル等、通常皮膚外用剤に使用される防腐剤を0.1重量%以下添加することが好ましい。更に食酢、酢酸、くえん酸、りんご酸、酒石酸等の有機酸、大豆油、オリーブ油、サラダ油等の植物油から選んだ少なくとも1種を添加することが好ましい。」(段落【0012】)

(1-4)「皮膚の炎症箇所に適用するには、前記抽出原液を5?20倍に希釈した液(固形分濃度に換算して0.5?2.5重量%程度)にして、ガーゼ等に含ませて患部に添付する。」(段落【0013】)

(2)甲第2号証:特開平6-179624号公報
(2-1)「 紅藻類きりんさい属及び/又はいぎす属に属する海藻の抽出液成分を含む人体皮膚調整剤。」(段落【0013】)

(2-2)「本発明の海藻抽出物は、紅藻類きりんさい属のとげきりんさい、きりんさい、いぎす属のけいぎす、はりいぎす、いねいぎすから選んだ少なくとも1種を、よく洗浄した後、80?95℃の熱水によって熱処理し、この煮液から海藻固体を濾別した濾液が原抽出液である。この抽出液の1?10重量%液を使用する。人体皮膚に適用するのであるから、水による抽出液が最適であるが、勿論他の有機溶剤、好ましくは親水性有機溶剤を用いて抽出してもよい。エチルアルコール等人体に悪影響のない溶剤が好ましいことは勿論である。」(段落【0018】、【0019】)

(2-3)「このようなことを防ぐ目的で、軟膏やローションに、微量のパラオキシ安息香酸メチルのような防腐剤を配合してもよいが、合成薬品を避けたい場合には、酢酸、食用酢、くえん酸、りんご酸、酒石酸等の有機酸をpH2?5の範囲になるように添加混合することも好ましい。」(段落【0023】)

(3)甲第3号証:特開昭62-286907号公報
(3-1)「1.海藻を50?90%の含水有機溶剤で抽出したのち濃縮して有機溶剤を除去し、こうして得られた抽出液を有効成分とする化粧料又は浴剤の製法。
2.海藻が海苔であることを特徴とする、特許請求の範囲第1項に記載の方法。」 (第1頁左下欄特許請求の範囲)

(3-2)「本発明を実施するに際しては、まず海藻を濃度50?90%の含水有機溶剤で抽出する。含水有機溶剤の使用量は、海藻1重量部に対し、10?30重量部が好ましい。有機溶剤の濃度は50?90%好ましくは65?90%である。有機溶剤の濃度がこれより低いと、抽出液に粘質多糖が溶解してくるため、濾過することが困難となる。また有機溶剤の濃度がこれより高いと、水溶性成分の抽出量が減少する。抽出温度は通常50?100℃であり、抽出時間は通常20?120分間である。」(第2頁左上欄第1?11行)

(3-3)「実施例1
乾海苔2.5部に70%エタノール50部を加え、80°Cにて1時間抽出した。次いでろ過したのち、ろ液を減圧濃縮し、エタノールを除去した。さらにろ過し海苔エキス5部を得た。この海苔エキス0.6部にプロピレングリコール3部、ポリエチレングリコール2部及び精製水78.25部を加えて混合溶解した(A液)。POE(20モル)ソルビタン・モノラウレート1部、防腐剤0.1部及び香料0.05部をエタノール15部に溶解した(B液)。A液とB液を混合し、染料を添加したのちろ過して化粧水を得た。
・・・
実施例3 実施例1の海苔エキス0.6部に精製水46.75部及び乳酸0.1部を加えた(A液)。dl-α-トコフェロール0.05部、塩化ベンザルコニウム0.1部、グリチルリチン0.1部、1-メントール0.1部、POE(15モル)セチルエーテル2部及び香料0.2部をエタノール50部に溶解した(B液)。A液とB液を混合し、染料を添加したのち濾過してヘヤートニックを得た。」(第2頁左下欄、右下欄)

(4)甲第4号証 特開昭62-100294号公報
(4-1)「アマノリ属紅藻には、アサクサノリ、マルバアマノリ、スサビノリ、ワップルイノリ、オニアマノリ、クロノリ、ペンテンアマノリ、コスジノリ等があり一般に″海苔″と称されているところから、以下これを海苔という。」(第1頁左下欄最下行?右下欄第4行)

(5)甲第5号証 特開昭63-166837号公報
(5-1)「1.人間または動物の皮膚に対する局所的な塗布薬のための薬学上許容される賦形剤中の化粧品または薬剤を含む組成の治療効果を増強するための方法であって、前記組成に、ヒドロキシカルボン酸および関連のケトカルボン酸ならびにそれらのエステル、ラクトンまたは塩からなる群より選ばれた少なくととも1つの効果的な量の混合を備える、治療効果増強方法。
2.前記化粧品または薬剤が、しみ、しわおよび角質除去剤、鎮痛剤、麻酔剤、抗アクネ剤、抗菌剤、抗イースト剤、抗真菌剤、抗ウィルス剤、抗熱傷剤、ふけ止め、抗皮膚炎剤、かゆみ止め、制汗薬、抗炎症剤、抗老化剤、抗角質溶解剤、抗皮膚乾燥薬、抗乾癬薬、抗脂漏薬、収れん薬、皮膚軟化薬および緩和薬、コールタール、バスオイル、硫黄、リンスコンディショナー、育毛剤および脱毛剤、角質溶解剤、湿潤剤、粉剤、シャンプー、皮膚漂白剤、皮膚保護剤、石鹸、クレンザー、日除け薬、いぼ除去剤、ビタミン、日焼け剤、局所的な抗ヒスタミン薬、ホルモン、レチノイド、血管拡張薬、気管支拡張薬、局所的な心臓血管の薬および皮膚薬からなる群より選ばれたものである、特許請求の範囲第1項記載の方法。」(第1頁、特許請求の範囲)

(5-2)「この発明の増強させる化合物は、ヒドロキシカルボン酸および関連の化合物である。・・・代表的なヒドロキシモノカルボン酸を以下に掲げる。1.2-ヒドロキシ酢酸(グリコール酸)・・・2.2-ヒドロキシプロパン酸(乳酸)・・・代表的なヒドロキシジカルボン酸を以下に掲げる。・・・
6.2-ヒドロキシブタンジカルボン酸(リンゴ酸)・・・3.エリトラル酸およびトリアル酸(酒石酸)」(第9頁右上欄第15?16行、同右下欄第19行、第10頁左上欄第1行、第12頁右上欄第1?9行)

(5-3)「しみ、角質、皮膚のしわなどを含む種々の病気および疾患のための皮膚薬として、あるいは他の化粧品もしくは薬剤の治療効果を高めるための添加剤として有用なヒドロキシ酸および関連の化合物には、2-ヒドロキシ酢酸、2-ヒドロキシプロパン酸、・・・2-ヒドロキシブタンジカルボン酸、エリトラル酸、トリアル酸」(第23頁左下欄第7行?右下欄下から第2行)

(6)甲第6号証 特開昭59-110608号公報
(6-1)「1.海藻類の抽出成分またはそれを発酵させて得られた代謝産物を有効成分とする化粧料」(第1頁左下欄特許請求の範囲第1項)

(6-2)「本発明の化粧料は、海藻類から抽出された栄養価に富む天然の保湿因子・・・またはそれらの抽出液を発酵させ・・・た生理活性物質を皮膚に補給することにより、皮膚の新陳代謝を活性化する」(第2頁左上欄第21行?右上欄第3行)

(6-3)「海藻類にはラン草類、緑草類、紅草類などに属するノリ、エグサ、エゴ、テングサなど、また褐草類に属するワカメ、コンブ、モズク、ヒジキなどがあり、」(第1頁右下欄第13?16行)

(7)甲第7号証 特開昭60-13709号公報
(7-1)「1.化粧品添加物において、化粧品に紫外線遮蔽能を付与する目的で、藻体抽出物を添加することを特徴とする、化粧品添加物」(第1頁左下欄特許請求の範囲第1項)

(7-2)「本発明において適用しうる「藻体」(Algae)とは・・・紅藻植物門の中では、・・・アマノリ属、及びテングサ属に属する藻体が好ましく」(第2頁左上欄下から第2行?右上欄第9行)

(7-3)「本発明において藻体から抽出物を得る方法としては藻体を擂潰、圧搾して機械的に得る方法と、有機溶媒により抽出する方法があり、抽出方法が好ましい。使用される溶媒としては・・・中でも、メチルアルコール、エチルアルコール・・・が好ましい。」(第2頁右上欄下から第2行?左下欄第10行)

(8)甲第8号証 特開昭64-13号公報
(8-1)「4.炭酸塩と酸を含有する浴用剤において、酸としてポリカルボン酸を用いかつ海藻抽出物を含有することを特徴とする浴用剤。」(第1頁左下欄特許請求の範囲第4項)

(8-2)「本発明において、海藻抽出物を配合すると血行促進効果と皮膚感触、特に皮膚のしっとり感が相乗的に高められる。」(第2頁左下欄最下行?右下欄第2行)

(8-3)「海藻から有効成分を抽出する方法は特に制限されず、有機溶媒、無機溶媒の何れをも使用することができる。例えば褐藻植物から次のごとくして抽出物を得ることが出来る。褐藻類を細切りして、水で洗い、表面に付着している無機物及び不純物を取り除く。次に熱風で乾燥して、破砕後アセトンを用いて抽出する。」(第3頁右下欄下から第5行?第4頁左上欄第2

(9)甲第9号証 特開平2-88592号公報
(9-1)「(1)海藻から抽出したメラニン形成阻害物質」(第1頁左下欄特許請求の範囲第1項)

(9-2)「本発明に供される海藻類としては褐藻類(ワカメ、コンブ、カシメ、アラメ、オオバモク、モズク、ホンダワラ等)、緑藻類(アナアオサ、アオノリ、ミル等)、紅藻類(オゴナノリ、ヒラクサ、フタロノリ等)などが挙げられる。なかんずく褐藻類の活性が極めて高い。」(第2頁左下欄下から第6行?最下行)

(9-3)「上記のような海藻類を適当に裁断する等以外は未処理のまま適当な溶媒で抽出することにより得られる。抽出方法、温度等は特に限定されないが、抽出効率の面から溶媒を海藻と共に加熱還流ざせることによって行なうことが好ましい。還流温度は使用する溶媒によって異なるが、100℃以上の温度を使用しても本発明のメラニン形成阻害物質の活性は損なわれることはない。」(第2頁右下欄第1行?第9行)

(9-4)「この抽出物を化粧料に配合すると、優れた日焼け防止効果美白効果を持つ化粧料をつくることが可能である。」(第4頁右下欄第3?5行)

(10)甲第10号証 特開平3-251514号公報
(10-1)「(1)海藻から抽出したメラニン分解物質。
(2)海藻が褐藻類、緑藻類または紅藻類であることを特徴とする請求項1記載のメラニン分解物質。
(3)請求項1または2に記載のメラニン分解物質を含有する化粧料。」(第1頁左下欄特許請求の範囲第1?3項)

(10-2)「本発明は海藻より抽出したメラニン分解物質・・・を含有し、皮膚美白効果に優れ安全性の高い化粧料・・・に関する。」(第1頁左下欄第16行?右下欄第7行)

(10-3)「本発明に供される海藻類としては褐藻類(ワカメ、コンブ、カシメ、アラン、オオバモク、モズク、ホンダワラ等)、緑藻類(アナアオサ、アオノリ、ミル等)、紅藻類(オゴノリ、ヒラフサ、フクロノリ等)などが挙げられる。なかんずく褐藻類の活性が極めて高い。」(第2頁右下欄第1?6行)

(10-4)「上記のような海藻類を適当に裁断する等以外は未処理のまま数種類の有機溶剤による溶媒抽出およびカラムクロマトグラフィーを組み合わせて抽出することにより得られる。抽出方法、温度等は特に限定されないが、抽出効率の面から溶剤を海藻と共に加熱還流させることによって行うことが好ましい。還流温度は使用する溶剤によって異なるが、比較的高い温度を使用しても本発明のメラニン分解物質の活性は損われることはない。」(第2頁右下欄第7?16行)

(11)甲第11号証 特開平5-504583号公報
(11-1)「特に超酸化ラジカルに対し抗ラジカル活性を有する医薬品、化粧品、食品もしくは農業組成物を製造するための、液相での抽出により得られる藻類抽出物またはこの種の抽出物から単離されまたは化学合成により得られる特にフコール、ポリフコール、ジフロレトール、ポリフロレトール、ビフハロール、ポリフハロール、フロレトールから選択される少なくとも1種の活性物質の利用。」(第1頁左下欄請求の範囲第1項)

(11-2)「褐色藻類のうち、本発明は特にフクス(Fucus)、ペルベチア(Pelvetia)、アスコフィルム(Ascophyllum)、ヒマンタリア(Himanthalia)、ラミナリア(Laminaria)、サルガスム(Sargassum) スぺシースの種類に適用することができる。
赤色藻類のうち、本発明は特にコンドルス(Chondrus)、マストカルプス(Mastocarpus )もしくはギルガチナ(Girgatina)、パルマリア(Palmaria)、ポルフィラ(Porphyra)、セラニウム(Ceranium)およびグラシラリア(Gracilaria)スペシースの種類に適用できる。緑色藻類のうち、本発明は特にウルバ(Ulva)、エンテロモルファ(Enteromorpha)およびコジウム(Codium)スペシースの種類に適用できる。」(第2頁左上欄最下行?右上欄第13行)

(11-3)「藻類抽出物は、液相での慣用の抽出法により、特に制御pHでの水性抽出および極性溶剤における抽出によって製造することができ、必要に応じ減圧乾燥もしくは逆浸透による濃縮またはクロマトグラフィーもしくは限外濾過による濃縮および精製の方法と組合わせることができる。」(第2頁左下欄第5?10行)

(12)甲第12号証 特開平6-263623号公報
(12-1)「 海藻または陸生植物から抽出した一種又は複数種の紫外線吸収物質を化粧料に混入させ、SPF2以上としたことを特徴とする天然紫外線吸収物質を含む化粧品。」(第2頁 特許請求の範囲第4項)

(12-2)「前記における海藻としては緑藻類(例えばミル、アオサ、アオノリ)、褐藻類(例えばエゾイシゲ、コンブ、ワカメ、ヒジキ、ホンダワラ、イソモク)および紅藻類(例えばアサクサのり、テングサ、アカハギンナンソウ、ベンモズク、ウシケノリ)がある。」(段落【0014】)

(12-3)「この発明の紫外線吸収物質は、試料を適当な溶媒により抽出することにより得られる。尚、抽出溶媒としては、水、アルコール類、アセトン等水に可溶な有機溶媒の他、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素やクロロホルム、四塩化炭素等の脂肪族炭化水素のハロゲン化化合物などが挙げられる。また、エーテル、エステル、ケトン等が使用される。」(段落【0011】)

(13)甲第13号証 フレグランス ジャーナル,Vol.16,No.2(昭和63年3月25日発行),第47?53頁
(13-1)「海藻中の活性成分は、保湿作用(保水力とアルギン酸による皮膚コーティング作用)、細胞賦活作用(細胞刺激作用)、皮下疎性結合組織の抗炎症作用を示す。」(第52頁左欄下から3行?最下行)

(13-2)「髭剃りクリームにおける海藻抽出液2?5%の配合は、過敏性皮膚が受ける刺激に対し保護する作用を示す例もある。」(第52頁右欄第14?16行)

(14)甲第14号証 フレグランス ジャーナル,臨時増刊No.6(昭和61年5月1日),第161?170頁
(14-1)「3.薬草類にどのような効果があるのか
生薬、民間薬を含めた薬草植物は、外用として香粧品に、内用として美容健康食品に使用されているものが多い・・・(3)皮膚の柔軟、粘滑性、刺激緩和作用 皮膚を柔軟にし、角質化を防ぎ、刺激緩和作用があり使用感を良くするものとして、多糖類、ペクチン、サポニンなどにその効用がある。・・・配糖体、粘液質、サポニンを含んだアロエやセイヨウボダイジュがある。」(第162頁左欄第14行?右欄第1行)

(14-2)第164頁のタイトルが香粧品素材(外用)と美容健康素材(内用)としての薬草類の表1には、海藻について、その主要成分がアルギン酸とヨードゴルゴ酸であること、外用として、皮膚柔軟・粘滑・刺激緩和、及び頭皮・毛髪調整、内用として、美容健康に、+と記載されている。

(15)甲第15号証 特開昭60-215614号公報
(15-1)「炭酸塩と酸を含有する弱酸性入浴剤において、海藻抽出物を配合したことを特徴とする弱酸性入浴剤」(第1頁左下欄特許請求の範囲)

(15-2)「酸としては・・・グリコール酸、乳酸・・・リンゴ酸、酒石酸・・・サリチル酸・・・が挙げられる。・・・本発明の海藻抽出物の原料の海藻としては、例えば・・・ミル・・・アサクサノリ、スサビノリ・・・トゲキリンサイ・・・ツノマタ・・・オゴノリ、イバラノリ等の紅藻植物等が挙げられる」(第2頁左上欄第7行?左下欄第8行)

(15-3)第3頁の実施例1には、第1表に示す組成の入浴剤を調製し、各入浴剤を0.01%水溶液になるように浴湯に投入し、パネラー30名に使用してもらった評価結果が示されている。第1表の入浴剤の組成は、無水芒硝29、炭酸水素ナトリウムを55、コハク酸を15、ワカメエキス、モズクエキス又はアラメエキスを1、色素、香料を適量と記載されている。

(16)甲第16号証 特開平5-229949号公報
(16-1)「クロタミトン、非イオン性界面活性剤及び水溶性高分子物質とサリチル酸とを混合することを特徴とするサリチル酸配合製剤」(第2頁特許請求の範囲第2項)

(16-2)「本発明のサリチル酸配合製剤は水溶性高分子物質を配合することにより、長期間の保存を可能とすることができた」(第2頁段落【0005】)

(16-3)「本発明に用いる水溶性高分子物質は・・・カラギーナン・・・
アルギン酸、寒天・・・などが挙げられ、これらは単独または2種以上組み合わせて配合することができる。」(第2頁段落【0007】)

(17)甲第17号証 特開昭64-40542号公報
(17-1)「乳酸塩、カラギーナン、及び水を含有してなる透明ゲル状組成物」(第1頁左下欄特許請求の範囲第1項)

(17-2)「この発明に係る透明ゲル状組成物は、・・・食品、医薬品、化粧品、家庭用品等の各種の分野において、用途の拡大化が期待できる」(第3頁左下欄第11?15行)

(18)甲第18号証 フレグランス ジャーナル,Vol.13,No.4(昭和60年7月25日発行),第100?105頁
(18-1)「カラギーナンの原藻として数種が知られている。1.キリンサイ属・・・2.ツノマタ属・・スギノリ属・・・3.イバラノリ属・・イバラノリ科」(第102頁)

(19)甲第19号証 特開昭60-13797号公報
(19-1)「アルギン酸の原料となりうる褐藻類(表1に示すもの)のうち、ヒバマタ目、ダービリア科のDurvilleaを鉱酸処理したものを原料として用いると、経済的に安価に、しかも純度の高いフコステロールを得ることが出来るとともに、安価にアルギン酸を製造することに成功した」(第2頁右上欄下から第3行?左下欄第3行)

(被請求人の提出した証拠)
(1-1)乙第1号証の1 生化学辞典 株式会社東京化学同人発行、1984年4月10日、第272頁

(1-2)乙第1号証の2 生化学辞典 株式会社東京化学同人発行、1984年4月10日、第295頁

(2)乙第2号証 平成17年8月1日発送拒絶理由通知

(3)乙第3号証 理化学辞典 株式会社岩波書店発行、1976年4月5日、第47頁

(4)乙第4号証 光井赳夫編、「新化粧品学」、第370?371頁

(5)乙第5号証 「実験報告書」、平成19年11月19日作成、ライオン株式会社 ビューティケア研究所 山岸理恵子

(6)乙第6号証 特許第3720869号公報

(7)乙第7号証 特許第384812号公報

(8)乙第8号証 特許第3748941号公報

(9)乙第9号証 特許第3652382号公報

6.対比・判断
(1)無効理由1[特許法第29条第1項第3号]、及び
無効理由2[特許法第29条第2項(その1)]について
(A)特許発明1
ア)甲第2号証には、「紅藻類きりんさい属及び/又はいぎす属に属する海藻の抽出液成分を含む人体皮膚調整剤」において、「軟膏やローションに、防腐剤を配合してもよいが、合成薬品を避けたい場合には、酢酸、食用酢、くえん酸、りんご酸、酒石酸等の有機酸を添加混合することも好ましい」ことが記載[前記(2-1)(2-3)]されている。また、紅藻類きりんさい属は、植物分類上、ミリン科に属し、人体皮膚調整剤は、皮膚外用組成物に相当するので、甲第2号証には、リンゴ酸又は酒石酸と、ミリン科に属する海藻の抽出物とを含有する皮膚外用組成物(以下、「甲第2号証発明」という。)が実質的に記載されている。
そこで、特許発明1と甲2号証発明とを比較すると、
両者は、リンゴ酸又は酒石酸と、ミリン科に属する海藻の抽出物とを含有する皮膚外用組成物である点で一致する。
しかし、特許発明1の皮膚外用組成物における抽出物が、海藻を0?40体積%の低級アルコールを含有する水を用い5?50℃において抽出して得られたものであるのに対して、甲第2号証発明は、海藻を80?95℃の熱水によって抽出したものであるから、両者は、海藻の抽出温度の点で相違する。
海藻等の生物材料を原料とする抽出物は、抽出温度の相違に応じて、構成成分ないし組成も異なるものとなることは明らかであるから両者の抽出物は異なるものである。
次に抽出温度の相違に関して、被請求人の提出した乙第5号証について検討する。
乙第5号証には、ミリン科キリンサイ乾燥物を、25℃において水で抽出した特許発明1の海藻抽出物と、90℃において水で抽出した甲第2号証の海藻抽出物を、それぞれ、グリコール酸20%水溶液と混合して皮膚外用組成物を得、その皮膚刺激緩和効果を評価した実験結果が記載されている。それによれば、25℃において水で抽出した抽出物(特許発明1)の皮膚刺激緩和効果は、陰性対照と同程度であるのに対し、90℃において水で抽出した抽出物(甲第2号証)の皮膚刺激緩和効果は陽性対照と同程度であるから、当該結果は、90℃といった高温での抽出物に比べて、25℃といった低温での抽出物は、グリコール酸の緩和において、有意に優れた効果を奏することを示している。
したがって、特許発明1は、甲第2号証に記載された発明ではないし、甲第2号証には、抽出を低温で行うことは示唆されておらず、特許発明1は、5?50℃といった低い温度で抽出することにより有意に優れた効果を奏するものであり、甲第2号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることもできない。
イ)甲第1号証には、「紅藻類きりんさい属および/またはいぎす属に属する海藻の抽出液を含む消炎料」が記載され、「この抽出液は長時間放置すると腐敗することがあるので、サリチル酸等、通常皮膚外用剤に使用される防腐剤を0.1重量%以下添加することが好ましい。更に食酢、酢酸、くえん酸、りんご酸、酒石酸等の有機酸、大豆油、オリーブ油、サラダ油等の植物油から選んだ少なくとも1種を添加することが好ましい」と記載[前記(1-1)(1-3)]されている。また、紅藻類きりんさい属は、植物分類上、ミリン科に属し、消炎料は、皮膚外用組成物に相当するので、甲第1号証には、サリチル酸、リンゴ酸又は酒石酸と、ミリン科に属する海藻の抽出物とを含有する皮膚外用組成物(以下、「甲第1号証発明」という。)が実質的に記載されている。
そこで、特許発明1と甲1号証発明とを比較すると、
両者は、サリチル酸、リンゴ酸又は酒石酸と、ミリン科に属する海藻の抽出物とを含有する皮膚外用組成物である点で一致する。
しかし、特許発明1の皮膚外用組成物は、1)(A)成分、及び(B)成分の配合量が、0.05?20.0%であり、2)抽出物が、海藻を0?40体積%の低級アルコールを含有する水を用い5?50℃において抽出して得られたものであるのに対して、
i)甲第1号証には、抽出原液を5?20倍に希釈して皮膚に適用される[前記(1-4)]ものであること、また、サリチル酸などの防腐剤は、抽出原液中に、0.1重量%以下添加される[前記(1-3)]ことが記載されているから、サリチル酸の量は、多くても0.02%(5倍希釈の0.1÷5=0.02)であって、特許発明1における配合量(0.05?20.0%)を充足していない。これ以外に、配合量の記載はなく、他に特許発明1における程度の配合量を示唆する記載も認められない。また、ii)海藻の抽出温度は70℃超、沸点未満の温度、好ましくは80?95℃と記載されているから、特許発明1の、5?50℃を充足していない。
したがって、特許発明1は、甲第1号証に記載された発明とは認められない。また、甲第1号証には、低い温度で海藻を抽出することは記載も示唆もされていない。これに対し特許発明1は、ア)で述べたとおり、5?50℃という低い温度の水で抽出することにより、皮膚刺激の緩和といった優れた効果を奏するものである。したがって、特許発明1は、甲第1号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものと認めることもできない。
ウ)甲第3号証には、海藻を50?90%の含水有機溶剤で抽出することにより得られる抽出液を有効成分とする化粧料又は浴剤(以下、「甲第3号証発明」という。)が記載[前記(3-1)]されているが、甲第3号証発明における含水有機溶剤は、有機溶剤の濃度が、50?90%好ましくは65?90%であり、これによる抽出温度は50?100℃と記載[前記(3-2)]されている。また、実施例3には、海苔エキスと乳酸を含有するヘヤートニックの例が示されているが、当該海苔エキスは、70%エタノールにより、80℃で抽出されたものであることが示されている。
これに対して、特許発明1における抽出物は、0?40体積%の低級アルコールを含有する水を用い、5?50℃の温度で抽出されるから、甲第3号証発明の抽出液とは、抽出溶剤及び抽出温度がともに相違する。
したがって、特許発明1は、甲第3号証に記載された発明とは認められない。また、甲第3号証には、0?40体積%の低級アルコールを含有する水を用い5?50℃の低温で抽出することは記載も示唆もされていない。これに対し特許発明1は、ア)で述べたとおり、5?50℃という低い温度の水で抽出することにより、皮膚刺激の緩和といった優れた効果を奏するものである。したがって、特許発明1は、甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。

(B)特許発明2
特許発明2は、特許発明1の構成要件である、(A)成分と(B)成分の配合量を限定したものである。前記のとおり、特許発明1が、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に該当せず、また、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとは認められない以上、同様の理由により、特許発明2は、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に該当せず、また、甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとも認められない。

(2)無効理由2[特許法第29条第2項(その2)]について
(A)特許発明1
甲第5号証には、化粧品または薬剤を含む組成の治療効果を増強するための方法として、ヒドロキシカルボン酸を混合することが記載されている[前記(5-1)]。化粧品または薬剤としては、しみ、しわおよび角質除去剤、抗アクネ剤、抗熱傷剤、抗皮膚炎剤、かゆみ止め等、皮膚外用剤が例示[前記(5-1)]されている。また、ヒドロキシカルボン酸の例として、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、及び酒石酸が示されている[前記(5-2)]。そうすると、甲第5号証には、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸又は酒石酸を含有する皮膚外用組成物(以下、「甲第5号証発明」という。)が実質的に記載されている。
そこで、特許発明1と甲第5号証発明とを対比すると、両者は、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸又は酒石酸を含有する皮膚外用組成物である点で一致しているが、以下の点で相違している。
(相違点1)特許発明1は、「グリコール酸、乳酸、リンゴ酸又は酒石酸」の配合量範囲が、0.05?20.0%であるのに対し、甲第5号証発明には、この配合量範囲が明示されていない点、
(相違点2)特許発明1は、配合成分として、他に、「0.05?20.0%のオゴノリ科(Gracilariaceae)、テングサ科(Gelidiaceae)、ミリン科(Solieriaceae)、ヒトエグサ科(Monostromataceae)、ミル科(Codiaceae)、ウシケノリ科(Bangiaceae)、スギノリ科(Gigartinaceae)、カギノリ科(Bonnemaisoniaceae)、イバラノリ科(Hypneaceae)、ダービリア科(Durvilleaceae)、およびダルス科(Rhodymeniaceae)に属する海藻を0?40体積%の低級アルコールを含有する水を用い5?50℃において抽出することにより得られる抽出物から選ばれる少なくとも1種」を配合しているが、甲第5号証発明は、該抽出物を配合することが記載されていない点。
しかし、相違点1については、甲第5号証に、ヒドロキシ酸の配合量が組成の0.01から99%と記載され、実施例には、グリコール酸について、5%、8%、19%、乳酸について2%、4%、20%、リンゴ酸について、1%という配合量が示されていて、いずれも特許発明1の0.05?20%の範囲内に含まれるから、実質的な相違とはならない。
そこで、以下、相違点2について検討する。
甲第6号証には、皮膚の新陳代謝を活性化させることを目的として化粧料に、海藻類の抽出成分またはそれを発酵させて得られた代謝産物を配合することが記載されている。海藻類として、ラン草類、緑草類、紅草類などに属するノリ、エグサ、エゴ、テングサ、褐草類に属するワカメ、コンブ、モズク、ヒジキなどが例示されているが、長コンブを水で抽出したものの発酵液の配合例が示されているにすぎず、発酵液ではなく抽出成分自体を化粧料に配合した例は示されていない。しかも、その抽出成分を、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸と配合することの示唆はないし、それによって、ヒドロキシカルボン酸による皮膚刺激を緩和されることの示唆もない。
甲第7号証には、紫外線遮蔽能を付与することを目的として、化粧品に、藻体抽出物を添加することが記載されている。藻体として、アマノリ属、及びテングサ属に属するものが例示されているが、その抽出物は、エチルアルコール等の有機溶媒による抽出物であって、水を主溶媒とする抽出物は記載されていない。抽出溶媒が相違すれば、抽出液の組成等が異なるものとなるから、甲第7号証には、特許発明1において用いる抽出物が記載されていることとはならないし、示唆もない。
甲第8号証には、炭酸塩と酸を含有する浴用剤において、さらに、血行促進効果と皮膚感触、特に皮膚のしっとり感を高めることを目的として、海藻抽出物を配合することが記載されている。海藻として、ヒトエグサ、ミル、マコンブ、ワカメ、ヒジキ、アサクサノリ、スサビノリ等が例示されていて、抽出溶媒としては、有機溶媒、無機溶媒の何れも使用することができると記載されているものの、アセトンによる抽出物が例示されているにすぎない。したがって、甲第8号証には、特許発明1における抽出物が実質的に記載されているとはいえない。
甲第9号証には、優れた日焼け防止効果、美白効果を持たせることを目的として、化粧料に海藻から抽出したメラニン形成阻害物質を配合することが記載されており、海藻類としては褐藻類(ワカメ、コンブ、カシメ、アラメ、オオバモク、モズク、ホンダワラ等)、緑藻類(アナアオサ、アオノリ、ミル等)、紅藻類(オゴナノリ、ヒラクサ、フタロノリ等)が例示されている。第1表には14例の抽出例が示され、そのうちアナアオサ及びヒラクサの抽出が、水を用い室温で行われたことが示されているが、その他の例では、有機溶媒による加熱還流(3頁左下欄第15?16行)、又は60度以上の熱水による抽出が行われていて、加熱還流が好ましい旨の記載がされている。また、その抽出成分を、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸と配合することの示唆はないし、それによって、ヒドロキシカルボン酸による皮膚刺激が緩和されることの示唆もない。
甲第10号証には、皮膚美白効果に優れた化粧料を得るために、海藻から抽出したメラニン分解物質を配合することが記載されている。海藻としては、褐藻類(ワカメ、コンブ、カシメ、アラン、オオバモク、モズク、ホンダワラ等)、緑藻類(アナアオサ、アオノリ、ミル等)、紅藻類(オゴノリ、ヒラフサ、フクロノリ等)が例示されている。メラニン分解物質は、数種類の有機溶剤による溶媒抽出及びカラムクロマトグラフィーの組み合わせにより得られ、溶媒抽出は、抽出効率の面から溶剤を海藻と共に加熱還流させて行うことが好ましい旨記載されている。そうすると、甲第10号証には、特許発明1における抽出物は実質的に記載されていない。また、その抽出物を、 グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸と配合することの示唆はないし、それによって、ヒドロキシカルボン酸による皮膚刺激が緩和されることの示唆もない。
甲第11号証には、抗ラジカル活性を有する医薬品、化粧品を得ることを目的として、化粧品又は医薬品に抗ラジカル活性を持つ藻類抽出物を配合することが記載されている。藻類は、褐色藻類のうち、フクス、ベルベチア、アスコフィルム、ヒマンタリア、ラミナリア又はサルガスム スぺシース、赤色藻類のうち、コンドルス、マストカルプス、ギルガチナ、パルマリア、ポルフィラ、セラニウム又はグラシラリア スペシースが、緑色藻類のうち、ウルバ、エンテロモルファ又はコジウム スペシースの16種が例示されている。該藻類からの抽出物の抽出は、液相での慣用の抽出法により、特に水性抽出および極性溶剤における抽出によって製造することができることが記載され、水又は5%もしくは10%の低級アルコールを含有する水を用い、5?50℃において抽出する実施例が示されている。前記16種の藻類のうち、コンドルス(スギノリ科)、ポルフィラ(ウシケノリ科)、グラシラリア(オゴノリ科)及びコジウム(ミル科)の4種が本件特許発明1において特定する海藻に該当し、このうちコジウムとグラシラリアの2種について実施例が示されている。しかし、この2種の抗ラジカル活性は、実施例が示されている12種(第4頁表I)のうち、下から4番目及び最下位であり、その数値は、1番目の120000、2番目の11200に対し、200及び100という低い値であるから、その有効性については疑問がある。したがって、甲第11号証には、特許発明1において特定する抽出物が、実質的に有効な物質として記載されているとはいえないし、仮に、記載されているとしても、その抽出物を、 グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸と配合することの示唆はなく、それによって、ヒドロキシカルボン酸による皮膚刺激が緩和されることの示唆もない。
甲第12号証には、海藻または陸生植物から抽出した一種又は複数種の紫外線吸収物質を化粧料に混入させ、SPF2以上としたことを特徴とする天然紫外線吸収物質を含む化粧品が記載されており、海藻としては緑藻類(例えばミル、アオサ、アオノリ)、褐藻類(例えばエゾイシゲ、コンブ、ワカメ、ヒジキ、ホンダワラ、イソモク)および紅藻類(例えばアサクサのり、テングサ、アカハギンナンソウ、ベンモズク、ウシケノリ)が例示されており、抽出溶媒としては、水、アルコール類、アセトン等水に可溶な有機溶媒、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素やクロロホルム、四塩化炭素等の脂肪族炭化水素のハロゲン化化合物、エーテル、エステル、ケトン等が例示されているが、海藻抽出物に係る実施例としては、本件特許発明1の範疇には入らないエゾイシゲ及びアカハギンナンソウに関するものが記載されているにすぎない。しかも、その抽出成分を、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸等のヒドロキシカルボン酸と配合することの示唆はないし、それによって、ヒドロキシカルボン酸による皮膚刺激を緩和されることの示唆もない。
以上、甲第6号証?甲第12号証には、各種海藻の抽出物を皮膚外用組成物に含有させることは記載されているが、0?40体積%の低級アルコールを含有する水を用い5?50℃において抽出することにより得られる抽出物を、0.05?20.0%の配合量で、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸又は酒石酸とともに配合することについては、記載も示唆もされていない。
そして、特許発明1は、(1)ア)で述べたとおり、このような構成により、これらのヒドロキシカルボン酸およびその塩の有効性を保ちつつ、皮膚刺激を抑えることができるという特許明細書に記載されたとおりの効果を奏すると認める。
次に、甲第13号証には、髭剃りクリームにおける海藻抽出液の2?5%の配合は、過敏性皮膚が受ける刺激に対し保護する作用を示す例もあることが記載され、甲第14号証には、海藻類を香粧品として外用した場合、刺激緩和作用があることが示されているが、抽出物の具体的態様、すなわち、抽出溶媒、抽出温度等については、記載も示唆もされていない。
また、甲第1号証?甲第3号証についても、抽出溶媒、抽出温度が異なることは、前記7.(1)(A)に記載のとおりである。
したがって、特許発明1は、甲第5号証、甲第6号証?甲第14号証及び甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(B)特許発明2
特許発明2は、特許発明1の構成要件である、(A)成分と(B)成分の配合量を限定したものである。前記のとおり、特許発明1が、甲第5号証、甲第6号証?甲第14号証及び甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとは認められないのであるから、同様の理由により、特許発明2は、甲第5号証、甲第6号証?甲第14号証及び甲第1号証?甲第3号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

(3)無効理由2[特許法第29条第2項(その3)]について
(A)特許発明1
甲第15号証には、炭酸塩と酸を含有する弱酸性入浴剤において、海藻抽出物を配合した弱酸性入浴剤が記載されており、酸として、特許発明1の(A)に規定する、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸が例示され、(B)に規定する海藻に相当する、ミル、オゴノリ、イバラノリ等が例示されているが、甲第15号証には、特許発明1の(A)及び(B)に規定する配合量についての記載はない。また、海藻抽出物の抽出溶媒、抽出温度についても記載されていない。甲第15号証の実施例1では、コハク酸を15%含有する入浴剤を、浴湯に0.01%水溶液になるように投入しているから、浴湯中のコハク酸濃度は15ppm(0.000015%)となる。これは、特許発明1の0.05?20.0%と比べてはるかに低濃度であり、このような低濃度では、特許発明1が解決課題とした、ヒドロキシカルボン酸の皮膚刺激が現実に生じるとは考えにくい。また、実施例1では、入浴剤中に、ワカメの抽出物を1%配合しているが、浴湯中の濃度としては1ppmであるから、特許発明1の海藻抽出物の濃度0.05から20.0%と比べてはるかに低く、このような低濃度では、仮に、浴湯中に特許発明1と同程度の量のコハク酸が存在したとしても、コハク酸の皮膚刺激を緩和することは困難であると認める。結局、甲第15号証には、特許発明1における課題とその解決手段の関係が記載も示唆もされていないから、特許発明1は、甲第15号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(B)特許発明2
特許発明2は、特許発明1の構成要件である、(A)成分と(B)成分の配合量を限定したものである。前記のとおり、特許発明1が、甲第15号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとは認められないのであるから、同様の理由により、特許発明2は、甲第15号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

(4)無効理由2[特許法第29条第2項(その4)]について
(A)特許発明1
甲第16号証には、サリチル酸配合製剤に、水溶性高分子物質として、カラギーナン、アルギン酸、寒天を配合することが、甲第17号証には、乳酸塩とカラギーナンを含有する透明ゲル状組成物がそれぞれ記載されているところ、甲第18号証及び甲第19号証によれば、これらの物質はいずれも海藻中に含まれる物質に相当する。
そこで、特許発明1と、甲第16号証及び甲第17号証の記載を対比すると、特許発明1の(B)成分が、特定種類の海藻の、特定の抽出溶媒及び抽出温度で抽出された抽出物であるのに対し、甲第16号証及び甲第17号証に記載されたものは、海藻中に含まれるとはいえ、単離された特定の物質である点で相違する。
以下、この相違点について検討する。
特許発明1の抽出物は、特定種類の海藻の溶媒抽出物であるから、海藻中の不特定の多数成分を含有することは容易に知り得るところであり、特許発明1は、これらの不特定の多数成分を含有する抽出物であることによって、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸等による皮膚刺激を緩和する作用効果を奏するものと認められる。
これに対し、甲第16号証及び甲第17号証には、各種添加剤の例示として、カラギーナン、アルギン酸、あるいは寒天が記載されるにすぎず、これらの物質が、グリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、サリチル酸等による皮膚刺激を緩和する作用を有することを示唆する記載もない。
したがって、特許発明1は、甲第16号証?甲第19号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものとは認められない。

(B)特許発明2
特許発明2は、特許発明1の構成要件である、(A)成分と(B)成分の配合量を限定したものである。前記のとおり、特許発明1が、甲第16号証?甲第19号証に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明することができたものであるとは認められないのであるから、同様の理由により、特許発明2は、甲第16号証?甲第19号証に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるとは認められない。

(5)無効理由3[特許法第36条第4項、第6項第1号]
請求人は、以下の(5-1)及び(5-2)の点で、本件特許の明細書には、記載不備があり、特許法第36条第4項、及び特許法第36条第6項第1号に規定する要件を満たしていないと主張している。
(5-1)発明の詳細な説明に記載された実施例には、A成分については、「0.5?4.0%」、B成分については、「2.0?8.0%」のものについてしか、実験データが示されておらず、また、海藻抽出物については、精製水を抽出溶媒として、室温で抽出された抽出物のみであり、それら以外の場合については、実施例による裏付けがなされていないので、特許法第36条第6項第1号違反である。
(5-2)特定の配合量や、抽出条件において、格別に優れた効果があることを示すためには、請求項に記載された、配合量や抽出条件の範囲内における効果と、該範囲外における効果の違いを、実験データなどで示す必要があるところ、そのようなデータは示されていないので、A成分、及びB成分の配合量、B成分の抽出条件を限定することの技術上の意義を当業者が理解するために必要な事項が記載されているとは認められず、特許法第36条第4項第1号の委任省令要件に違反している。
そこで、この点について、検討する。
(5-1)発明の詳細な説明には、「ヒドロキシカルボン酸およびその塩は任意の濃度で配合できるが、0.01%?50%・・・が好ましく、さらに0.05?20%が好ましく、特に0.1?10%が好ましい。」(段落【0012】)、「海藻抽出物は任意の濃度で配合できるが、0.01?50%が好ましく、さらに0.05?20%が好ましく、特に0.1?10%が好ましい。」(段落【0030】)、「本発明の(B)成分を抽出する方法に制限はなく・・・水、塩化ナトリウム溶液、親水性有機溶媒、含水親水性有機溶媒、その他の有機溶媒等を使用して海藻から抽出される。・・・特に、水または水とメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコールとの混合物を用いて抽出することが好ましい。その場合の水と低級アルコールの比率は、低級アルコール/水が0/100?70/30(V/V:体積比)であることが好ましく、より好ましくは0/100?40/60である。」(段落【0026】)、「抽出温度は特に制限はないが、5?80℃、好ましくは5?50℃の範囲で、」と記載されている。
そうすると、A成分、及びB成分の配合量「0.05?20%」、「0.1?10%」は、もともと、発明の詳細な説明に、配合量として好ましい範囲、又は特に好ましい範囲として示されていた範囲のものである。そして、具体的に、実施例として、「0.05?20%」及び「0.1?10%」の範囲内である、A成分については、「0.5?4.0%」、B成分については、「2.0?8.0%」の範囲で配合された皮膚外用組成物が、皮膚刺激緩和効果を奏することが示されているから、実施例に開示された設定条件のやや下方、あるいはやや上方の数値に変更したとしても、同様に実施し得るものと解するのが相当であり、これとは逆に解すべき積極的理由も認められない。
次に、(B)成分を抽出する際の、抽出溶媒、抽出温度についても、発明の詳細な説明に、もともと好ましいものとして記載されていた範囲のものである。そして、具体的に、実施例として、抽出溶媒については、水だけで、抽出温度については、「5?50℃」の間の、室温で抽出されたものを(B)成分として配合された皮膚外用組成物が、皮膚刺激緩和効果を奏することが示されているから、実施例に開示された設定条件のやや下方、あるいはやや上方の数値に変更したとしても、同様に実施し得るものと解するのが相当である。
実施例で示された範囲以外で実施したときに、皮膚刺激緩和効果はないという積極的理由も認められない。
(5-2)請求項1及び請求項2に記載された範囲の配合量であるA成分及びB成分、請求項1に記載された抽出溶媒、抽出温度で抽出されたB成分を含有する皮膚外用組成物が皮膚刺激緩和効果を有していることが明細書に示されていることは、前記(5-1)のとおりであるから、これらの技術上の意義については明らかであると認める。
よって、前記(5-1)及び(5-2)の請求人の主張は理由がないから、採用できない。

7.むすび
以上のとおりであるから、請求人の主張する理由によっては、特許発明1及び特許発明2についての特許を無効にすることはできない。
審判に関する費用については、特許法第169条第2項の規定で準用する民事訴訟法第61条の規定により、請求人が負担すべきものとする。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-12 
結審通知日 2008-02-14 
審決日 2008-02-27 
出願番号 特願平7-87566
審決分類 P 1 113・ 121- Y (A61K)
P 1 113・ 534- Y (A61K)
P 1 113・ 531- Y (A61K)
P 1 113・ 113- Y (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 清野 千秋  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 弘實 謙二
谷口 博
登録日 2005-11-18 
登録番号 特許第3742672号(P3742672)
発明の名称 皮膚外用組成物  
代理人 小川 信夫  
代理人 浅井 賢治  
代理人 熊倉 禎男  
代理人 小林 良平  
代理人 箱田 篤  
代理人 松田 七重  
代理人 平山 孝二  

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