• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1176293
審判番号 不服2005-15076  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-05 
確定日 2008-04-07 
事件の表示 平成10年特許願第270289号「電子部品の画像表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月 7日出願公開、特開2000-101299〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年9月24日にされた出願であって、平成17年3月29日付で拒絶理由が通知され、これに対し、同年6月3日付けで手続補正がなされたが、同年6月30日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年8月5日付けで審判請求がなされるとともに、同年9月5日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成17年9月5日付の手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成17年9月5日付の手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の記載につき、
「【請求項1】吸着した電子部品を撮像する撮像手段と、前記撮像手段による撮像され部品画像を記憶する記憶手段と、前記電子部品の形状データに基づいて、当該電子部品のグラフィック画像を作成する画像作成手段と、前記撮像手段により撮像された画像の認識結果により異常と判断されたとき、NGチェック指令に基づき、前記記憶手段に記憶された部品画像と作成した前記電子部品のグラフィック画像とを、重ねて画面表示する画面表示手段と、を備えたことを特徴とする電子部品の画像表示装置。
【請求項2】吸着した電子部品を撮像する撮像手段と、前記電子部品の形状データに基づいて、当該電子部品のグラフィック画像を作成する画像作成手段と、撮像した前記電子部品の部品画像と作成した前記電子部品のグラフィック画像とを、重ねて画面表示する画面表示手段と、を備え、前記画面表示手段は、前記部品画像および前記グラフィック画像を相互に異なる色彩で画面表示することを特徴とする電子部品の画像表示装置。
【請求項3】前記電子部品の撮像結果と前記電子部品の形状データとを比較して、両者間の異なる異常部位を判別する異常部位判別手段を、更に備え、前記画面表示手段は、異常部位判別手段の判別結果に基づいて、前記部品画像および前記グラフィック画像の異常部位を相互に異なる色彩で画面表示することを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品の画像表示装置。」(以下、それぞれ「旧請求項1」、「旧請求項2」及び「旧請求項3」という。)とあるのを、
「【請求項1】吸着した電子部品を撮像する撮像手段と、前記撮像手段による撮像され部品画像を記憶する記憶手段と、前記電子部品の形状データに基づいて、当該電子部品のグラフィック画像を作成する画像作成手段と、前記撮像手段により撮像された画像の認識結果により異常と判断されたとき、NGチェック指令に基づき、前記記憶手段に記憶された部品画像と作成した前記電子部品のグラフィック画像とを、重ねて画面表示し、且つ、異常と判断された電子部品のリードの異常内容を文字により画面表示する画面表示手段と、を備えたことを特徴とする電子部品の画像表示装置。
【請求項2】前記画面表示手段は、前記部品画像および前記グラフィック画像を相互に異なる色彩で画面表示することを特徴とする請求項1に記載の電子部品の画像表示装置。
【請求項3】前記電子部品の撮像結果と前記電子部品の形状データとを比較して、両者間の異なる異常部位を判別する異常部位判別手段を、更に備え、前記画面表示手段は、異常部位判別手段の判別結果に基づいて、前記部品画像および前記グラフィック画像の異常部位を相互に異なる色彩で画面表示することを特徴とする請求項1または2に記載の電子部品の画像表示装置。」(同じく、「新請求項1」、「新請求項2」及び「新請求項3」という。)と補正する補正事項を有するものと認める。

(2)判断
新請求項2は旧請求項2を補正したものであると考えられ、新請求項1の記載を引用する新請求項2を独立形式で記載すると、「吸着した電子部品を撮像する撮像手段と、前記撮像手段による撮像され部品画像を記憶する記憶手段と、前記電子部品の形状データに基づいて、当該電子部品のグラフィック画像を作成する画像作成手段と、前記撮像手段により撮像された画像の認識結果により異常と判断されたとき、NGチェック指令に基づき、前記記憶手段に記憶された部品画像と作成した前記電子部品のグラフィック画像とを、相互に異なる色彩で重ねて画面表示し、且つ、異常と判断された電子部品のリードの異常内容を文字により画面表示する画面表示手段と、を備えたことを特徴とする電子部品の画像表示装置。」となる。

(2-1)旧請求項2を新請求項2とする補正は、画面表示手段につき、これを「前記撮像手段により撮像された画像の認識結果により異常と判断されたとき、NGチェック指令に基づき、前記記憶手段に記憶された部品画像と作成した前記電子部品のグラフィック画像とを、相互に異なる色彩で重ねて画面表示し、且つ、異常と判断された電子部品のリードの異常内容を文字により画面表示する画面表示手段」とするものである。この画面表示手段なるものが、以下の(イ)?(ハ)の点で不明りようであるから、上記補正は、いわゆる、特許請求の範囲の限定的減縮に該当しないし、請求項の記載を不明りようにするものであるが故に、明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る)とはいえず、また、請求項の削除や誤記の訂正に該当しないことも明らかである。
(イ)新請求項2に記載の「撮像手段により撮像された画像の認識結果により異常と判断されたとき」は、当該請求項の記載を見ても、装置上の発明特定事項として意味が不明である。
(ロ)新請求項2に記載の「異常」は、当該請求項の記載を見ても、何が「異常」なのか、何と上記認識結果とを比較して「異常」なのか等、この「異常」の技術的内容が不明である。
(ハ)新請求項2に記載の「NGチェック指令」は、当該請求項の記載を見ても、この「NGチェック指令」の技術的内容が不明である。

(2-2)旧請求項2を新請求項2にする補正は、「前記撮像手段による撮像され部品画像を記憶する記憶手段」を新たに追加するものである。しかしながら、旧請求項2に係る発明は、「記憶手段」を、いわゆる発明特定事項とするものではないから、上記補正は、新たな発明特定事項を付加するものであって、特許請求の範囲の限定的減縮には該当しないし、また、請求項の削除、誤記の訂正、明りようでない記載の釈明のいずれにも該当しないことも明らかである。すると、上記補正は、特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものであるとはいえない。

(3)まとめ
したがって、本件手続補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

よって、上記[補正の却下の決定の結論]のとおり、決定する。

3.本願発明について
平成17年9月5日付けの手続補正は上記のとおり却下されるので、本願の請求項1?3に係る発明は、平成17年6月3日付けの手続補正で補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうちの請求項2に係る発明は、次のとおりのものである。
「吸着した電子部品を撮像する撮像手段と、前記電子部品の形状データに基づいて、当該電子部品のグラフィック画像を作成する画像作成手段と、撮像した前記電子部品の部品画像と作成した前記電子部品のグラフィック画像とを、重ねて画面表示する画面表示手段と、を備え、前記画面表示手段は、前記部品画像および前記グラフィック画像を相互に異なる色彩で画面表示することを特徴とする電子部品の画像表示装置。」(以下、「本願発明2」という。)

4.原査定の理由の概要
原審の拒絶査定の理由の概要は、次のとおりのものである。
本件出願の請求項1?3に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1?4に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開平5-152797号公報
刊行物2:特開平10-135700号公報
刊行物3:特開平8-204096号公報
刊行物4:特開平7-192040号公報

5.引用刊行物とその記載事項
刊行物2である特開平10-135700号公報には、次の事項が記載されている。
(1a)「吸着ノズルに保持された電子部品を撮像装置で撮像してその画像の認識結果を基に位置決めをしてプリント基板に装着する電子部品装着装置において、電子部品の寸法・形状等に関する部品データを記憶する記憶手段と、前記撮像手段が撮像した部品像に前記記憶手段に記憶された当該部品に関するデータに基づき生成されたグラフィックを重ねて表示する表示手段を設けたことを特徴とする電子部品装着装置。」(特許請求の範囲の請求項3)
(1b)「本発明は、電子部品の寸法・形状等に関する部品データを処理するデータ処理装置及び、吸着ノズルに保持された電子部品を撮像装置で撮像してその画像の認識結果を基に位置決めをしてプリント基板に装着する電子部品装着装置に関する。」(段落【0001】)
(1c)「該画面には、吸着ノズル14に吸着された当該部品IDの電子部品5が吸着され、認識ステーションIIに搬送され停止して撮像カメラ30に撮像された像が写し出されている。また、該画面には、格納された部品データから作成された部品5各部の寸法を示す輪郭線のグラフィック画像が部品画像に重ねて表示される。
グラフィック画像は角度ずれを含む位置ずれがない状態で吸着された電子部品5の最外形寸法を示す線、部品画像のモールド部分の外形を示す線及びリードの外形を示す線が互いの位置関係に合わせて表示されている。
(中略)
また、各々に回転方向を示す矢印が表示されたグラフィック回転スイッチ部41を適宜押し、各スイッチ部41に表示された回転方向にグラフィックを回転させ、部品画像にグラフィックが一致するようにする。その結果一致した画像が図1のように表示される。このように、完全に一致した場合には、部品データが正しいことが瞬時に判断できる。このとき、移動させる画像は部品画像であってもよい。
このようにして、グラフィックを移動させて、部品像に重ね合わせて一致しない場合には、記憶されている部品データに間違っている箇所があることが瞬時にわかり、その箇所がどこであるかも直ちに分かる。」(段落【0051】?【0055】)

同じく、刊行物4である特開平7-192040号公報には、次の事項が記載されている。
(2a)「CADデータから基板に関する諸情報を得、実装する部品の寸法形状や実装条件などを記録した実装データベースを用いて実装機のデータ生成を行う実装機データの生成方法であって、上位システムにおいて、その基板に対するCADデータをCADシステムで定義されている各部品に対する寸法形状,基準姿勢,中心座標等の諸情報を記録したデータベースを用いて基板図面をシミュレーション表示する工程と、生成したNCデータを前記実装データベースを用いて基板図面をシミュレーション表示する工程と、その基板に対する実装機での量産NCデータを前記実装データベースを用いて基板図面をシミュレーション表示する工程と、それらシミュレーション結果を同一画面上で同一の座標系に変換して重ねあわせ表示する工程とからなることを特徴とする実装機データの生成方法。」(特許請求の範囲の請求項1)
(2b)「本発明の実装機データの生成方法は、新機種あるいは設計変更の都度行われる実装機のNCデータ生成作業において、上位システムの同一画面上で、CADデータ,生成したNCデータ,量産NCデータのシミュレーション表示し、それら結果を重ねあわせ表示により、相違点の特定と誤りデータの特定を行う。これによりデータ生成の都度発生し、従来データのダンプリスト上で行っていたデータ検証作業がグラフィック画面上でソフト的に確認ができ、誤り箇所の絞り込みも、さらに誤りデータの特定もソフト的に行える。」(段落【0016】)
(2c)「図3に示すように、CAD座標系にあわせこみ、線の太さ,表現色を対象のデータ毎に変えて重ねあわせ表示する(ステップ9)。
ここで、部品表示がCADデータ表示に対し、ずれ込むものが相違箇所として特定される(ステップ10)。」(段落【0025】及び【0026】)

6.当審の判断
(1)引用発明
刊行物2には、(1a)の「吸着ノズルに保持された電子部品を撮像装置で撮像してその画像の認識結果を基に位置決めをしてプリント基板に装着する電子部品装着装置において、電子部品の寸法・形状等に関する部品データを記憶する記憶手段と、前記撮像手段が撮像した部品像に前記記憶手段に記憶された当該部品に関するデータに基づき生成されたグラフィックを重ねて表示する表示手段を設けたことを特徴とする電子部品装着装置」という記載によると、『吸着ノズルに保持された電子部品を撮像する撮像手段、電子部品の寸法・形状等に関する部品データに基づきグラフィックを生成する手段、前記撮像手段が撮像した部品像に前記グラフィックを重ねて表示する表示手段を設けた電子部品装着装置』が記載されているといえる。そして、この電子部品装着装置は、前記部品像とグラフィックとの画像を表示する表示手段を有するものであるから、『電子部品の画像表示装置』であるともいえる。

上記認定事項を本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物2には、次のとおりの発明が記載されているといえる。
「吸着ノズルに保持された電子部品を撮像する撮像手段と、電子部品の寸法・形状等に関する部品データに基づきグラフィック画像を生成する手段と、前記撮像手段が撮像した部品像に前記グラフィック画像を重ねて表示する表示手段と、を備えた電子部品の画像表示装置」(以下、「引用発明」という。)

(2)本願発明と引用発明の対比
引用発明の「電子部品の寸法・形状等に関する部品データ」、「グラフィック画像を生成する手段」、「部品像」及び「表示手段」はそれぞれ、本願発明2の「電子部品の形状データ」、「画像作成手段」、「部品画像」及び「画面表示手段」に相当する。
すると、本願発明2と引用発明は、「吸着した電子部品を撮像する撮像手段と、前記電子部品の形状データに基づいて、当該電子部品のグラフィック画像を作成する画像作成手段と、撮像した前記電子部品の部品画像と作成した前記電子部品のグラフィック画像とを、重ねて画面表示する画面表示手段と、を備えた電子部品の画像表示装置」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点:画面表示手段が、本願発明2では、部品画像およびグラフィック画像を相互に異なる色彩で画面表示するのに対して、引用発明では、部品画像およびグラフィック画像を相互に異なる色彩で画面表示するものであるか否かが不明である点。

(3)相違点についての判断
そこで、上記相違点について検討する。
(1c)の「部品画像にグラフィックが一致するようにする。その結果一致した画像が図1のように表示される。このように、完全に一致した場合には、部品データが正しいことが瞬時に判断できる。このとき、移動させる画像は部品画像であってもよい。このようにして、グラフィックを移動させて、部品像に重ね合わせて一致しない場合には、記憶されている部品データに間違っている箇所があることが瞬時にわかり、その箇所がどこであるかも直ちに分かる。」という記載によると、引用発明において、部品像とグラフィックとを重ね合わせた表示は、それを見た者がグラフィックの間違い箇所を瞬時に分かるように表示される必要があることは明らかである。そして、両画像の違いを視覚的に瞬時に分かるようにするために、各画像を相異なる視覚効果のものとすることは、当業者が適宜行う設計的事項であるといえる。
一方、刊行物4には、(2a)?(2c)の記載によると、実装機データの生成方法において、CADデータ、生成したNCデータ、量産NCデータのシミュレーション表示し、それらを重ねあわせ表示により、相違部分の特定と誤りデータの特定を行う際に、表現色を対象のデータ毎に変えて重ねあわせ表示することが記載されているといえる。ここで、表現色を対象のデータ毎に変えて重ねあわせ表示することによって、各データのシミュレーション表示の相互の違いを視覚的に分かり易くしていることは明らかであるから、刊行物4には、複数の画像を重ね合わせて表示する場合に、該画像の相互の違いを分かり易くするために、色彩、すなわち、色を変えて表示することが開示されているといえる。
そこで検討すると、引用発明において、設計的事項である、各画像を相異なる視覚効果のものとする手段として、上記刊行物4に記載された発明を採用し、部品像とグラフィックとを相互に異なる色彩で画面表示することは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。
そうすると、上記相違点は、当業者が容易に想到し得たものであるといえる。

(4)小括
したがって、本願発明2は、当業者が容易に想到し得たものであるといえる。

7.むすび
以上のとおり、本願発明2は、引用発明及び刊行物4の記載に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-21 
結審通知日 2008-02-12 
審決日 2008-02-25 
出願番号 特願平10-270289
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H05K)
P 1 8・ 561- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 永安 真鳥居 稔  
特許庁審判長 鈴木 由紀夫
特許庁審判官 坂本 薫昭
近野 光知
発明の名称 電子部品の画像表示装置  
代理人 相澤 清隆  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ