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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G06F
管理番号 1176502
審判番号 不服2003-16557  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2003-08-28 
確定日 2008-04-14 
事件の表示 平成10年特許願第114797号「送信装置および送信方法、受信装置および受信方法、並びに送受信システムおよび送受信方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年11月 5日出願公開、特開平11-306155〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年4月24日の出願であって、平成15年2月27日付けで拒絶の理由が通知され、同年4月30日付けで手続補正がなされたものの、同年7月25日付けで拒絶査定がなされた。これに対し、同年8月28日に審判請求がなされるとともに、同年9月29日付けで手続補正がなされたところ、平成18年7月21日付けで平成15年9月29日付け手続補正は却下されるとともに同日付けで当審より拒絶の理由が通知され、同年9月22日付けで手続補正がなされたところ、平成19年11月7日付けで当審より拒絶の理由が通知され、平成20年1月7日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項4に係る発明(以下「本願発明」という)は、平成20年1月7日付け手続補正によって補正された特許請求の範囲の請求項4に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。

「受信装置に提供されうるマスタデータを記憶するマスターデータベースを備え、前記受信装置のデータベースの更新を行うための更新データを各受信装置に送信する送信方法であって、
前記マスターデータベースに記憶されている前記マスタデータが更新されると、前記更新データが前記データベースのどの部分におけるデータの更新を行うためのものであるかに関する情報を含んだ複製方針を構成し、
更新位置を示し、かつ更新内容を含まない前記複製方針を、一斉同報可能な同報ネットワークを介して同報送信し、
前記複製方針に設定された複製モードに応じて、更新内容を示す更新データを、一斉同報可能な前記同報ネットワークを介して同報送信し、
前記更新データは、前記データベースの更新を報知するための第1のデータと、その更新を、更新前の前記データベースに反映させるための第2のデータとがある
ことを特徴とする送信方法。」

3.引用文献
当審における、平成19年11月7日付けで通知した拒絶の理由に引用した、本願の出願の日前の平成9年10月20日に頒布された「X.500 ディレクトリ入門,第1版,東京電機大学出版局,p.88-97」(以下、「引用文献1」という)には、以下の事項が記載されている。

A.「5.6 複製
5.6.1 複製の概要
1993年版勧告では,ディレクトリのエントリ情報の複製を複数のDSAで管理するメカニズムが新たに規定されている.このメカニズムを,シャドウイング(shadowing)と呼ぶ.シャドウイングは,複製の提供元DSAと提供先DSAとの間で定められた合意に従い,定められた手続きに従って行われる.
シャドウイングによって複製されるもとの情報はマスタ情報(master information)と呼ばれ,複製された情報はシャドウ情報(shadowed information)と呼ばれる.シャドウ情報は,読出し,比較,一覧,検索といった参照系操作の対象としてのみ利用することができる.エントリ更新などの更新系操作の対象としては常にマスタ情報を用いる.」(第88頁第1-11行)

B.「5.6.2 シャドウイングの機能モデル
シャドウイングは,常に2つのDSAの間で行われる.3つ以上のDSA間で情報を共有する場合でも,2つのDSA間でのシャドウイングの組み合わせとして行われるにすぎない.シャドウイングに携わるDSAのペアのうち,シャドウ情報を提供する側のDSAをシャドウサプライヤ(shadow supplier)またはサプライヤDSA(supplier DSA)と呼び,提供される側のDSAをシャドウコンシューマ(shadow consumer)またはコンシューマDSA(consumer DSA)と呼ぶ.
また,マスタ情報をもつDSAは,特にマスタDSA(master DSA)と呼ぶ.シャドウ情報は,マスタDSAから他のDSAに直接的に提供するだけでなく,提供された情報をさらにその他のDSAに間接的に提供することもできる.(…中略…)
以上の概念を図5.13に示す.」(第88頁第12行-第89頁第11行)

C.「5.6.3 シャドウ情報の表規方法
(1) 複製単位とシャドウ情報
シャドウイングを正しく行うためには,まず複製する範囲を表す複製単位(unit of replication)を正確に定義する必要がある.
複製単位は,サブツリー仕様の形式で規定される.この規定範囲に含まれるエントリの集合を複製領域(replicated area)と呼ぶ.…(中略)…
シャドウサプライヤでは,このように定義された複製単位に基づき,実際にシャドウコンシューマに転送するシャドウ情報を切り出す.…(中略)…
以上の概念を,図5.14に示す.」(第89頁第12行-第90頁第13行)

D.「5.6.4 シャドウイング合意
DSA間では,シャドウイングを実行する前に,シャドウ情報を提供する上での条件に関する合意をとり決める必要がある.
ここでとり決められる合意の内容としては,複製単位や更新モードなどがあげられる.ここで,更新モード(update mode)とは,シャドウ情報をどのような契機で更新するかに関するとり決めである.具体的には,サプライヤ側とコンシューマ側のどちらが更新要求を送るかといった点や,マスタ情報に変更があるたびに更新するか,それともある程度まとめて定期的に更新するかといった点がとり決められる.
各合意には,識別子が一意に付与され,その合意に基づいて行われる実際のシャドウ情報の転送時の識別情報として用いられる.」(第90頁第28行-第91頁第5行)

E.「5.6.6 ディレクトリ情報シャドウサービス
サプライヤDSAとコンシューマDSAは,シャドウ情報の更新を実現するためのサービスを互いに提供しあう.…(中略)…
パスの確立後,シャドウ更新(updateShadow)操作,シャドウ更新依頼(requestShadowUpdate)操作,シャドウ更新同期(coordinateShadowUpdate)操作の3種類の操作を行うことにより,シャドウ情報の更新を行う.シャドウ情報の更新には,サプライヤDSAが主体となってコンシューマDSAに転送するモードと,コンシューマDSAが主体となってサプライヤDSAから獲得するモードの2種類がある.
サプライヤが主体となるモードの場合,まず,サプライヤはコンシューマにシャドウ更新同期要求を発行する.シャドウ更新同期要求では,シャドウイング合意の識別子や,更新の戦略に関する情報が転送される.この要求に対する結果が正常に返却されると,次に,サプライヤはシャドウ更新要求を発行し,シャドウ情報を転送する.
一方,コンシューマが主体となるモードの場合,まず,コンシューマはサプライヤにシャドウ更新依頼要求を発行する.シャドウ更新依頼要求では,シャドウ更新同期要求と同様の情報が転送される.この要求に対する結果が正常に返却されると,次に,サプライヤがシャドウ更新要求を発行し,シャドウ情報を転送する.
以上のシーケンスを,図5.16に示す.」(第92頁第3行-第93頁第16行)

F.「5.7 運用結合
5.7.1 運用結合の概要
DITの分割管理や複製管理などの側面においてDSAが機能的に協調動作するためには,協調動作に携わる個々のDSA間の関係を厳密に定義し管理していく必要がある.これを実現するために,各DSAは,協調動作の内容に関するとり決めを通信相手のDSAごとに定めておく.このようなとり決めを,合意(agreement)と呼ぶ.
DSA間で合意の締結や更改を行うためには,これらの情報を通知しあうためのパスが必要となる.このパスを,運用結合(operational binding)と呼び,運用結合を介して行われる情報のやりとりを運用操作(operation)と呼ぶ(図5.17).」(第93頁第17行-第94頁第5行)

G.「5.7.2 運用結合の規定事項
運用結合では,以下の事項が規定される.
(1) DSAの役割
運用結合では,その結合に携わる2つのDSAの役割が規定される.…(中略)…これに対して,一方のDSAが主で他方が従であるなど,2つのDSAの役割が異なる場合,その運用結合は非対称的運用結合(asymmetric operational binding)と呼ばれる.
(2) 運用結合種別
運用結合には,合意の対象に応じて複数の種別が存在する.この種別を,運用結合種別(operational binding type)と呼ぶ.運用結合種別としては,…(中略)…シャドウサプライヤとシャドウコンシューマとの間で結ばれるシャドウ運用結合(SOB: Shadow Operational Binding)の3種類が規定されている.これらの詳細については,5.7.5項で述べる.なお,これら3種類は,いずれも非対称的運用結合である.
(3) 合 意
合意は,2つのDSAの関係を具体的に規定した情報である.」(第94頁第8-27行)

H.「5.7.5 運用結合の種別
…(中略)…
(3) シャドウ運用結合
この結合は,シャドウサプライヤDSAとシャドウコンシューマDSAとの間で確立される運用結合である.この結合での合意内容としては,複製の単位や複製モードなどが規定される.」(第96頁第29行-第97頁第17行)

a)「図5.13 シャドウイングの機能モデル」(第88頁)を参照すれば、データベースを表すために用いられる記号中に「マスタ情報」が記入されており、上記Aに記載された、マスタ情報を対象とするエントリ更新などの更新系操作は、一般にデータベースに対して行われる操作である。したがって、同図及び上記A,Bの記載からみて、マスタ情報を記憶するデータベースを、マスタDSAが備えている。そのマスタ情報は、コンシューマDSAに提供されうる。
「図5.16 ディレクトリ情報シャドウサービスを用いた通信シーケンス」(第92頁)の「(a)サプライヤが主体となるモード」及び上記Eの記載からみて、引用文献1には、サプライヤDSAが、シャドウ更新同期要求及びシャドウ更新要求をコンシューマDSAに発行する発行方法が記載されている。「図5.16 ディレクトリ情報シャドウサービスを用いた通信シーケンス」の「通信シーケンス」との記載からみて、その発行は通信によりなされる。発行されるシャドウ更新同期要求及びシャドウ更新要求は、コンシューマDSAのシャドウ情報の更新を行うためのものである。
マスタ情報について上記したと同様に、「図5.13 シャドウイングの機能モデル」を参照すれば、データベースを表すために用いられる記号中に「シャドウ情報」が記入されており、上記Aに記載された、シャドウ情報を対象とする読出し,比較,一覧,検索といった参照系操作は、一般にデータベースに対して行われる操作である。したがって、コンシューマDSAは、シャドウ情報をデータベースに記憶し、その記憶されたシャドウ情報を更新することは、コンシューマDSAのデータベースを更新することでもある。
上記Bの記載からみて、上記した発行方法は、3つ以上のDSA間で情報を共有する場合にも行われる。その場合、シャドウ更新同期要求及びシャドウ更新要求は、複数のコンシューマDSAに発行される。

b)上記C,Dの記載からみて、シャドウイング合意は、複製する範囲を表す複製単位、及び、サプライヤDSAとコンシューマDSAのどちらが更新要求を送るかといった点のとり決めである更新モードを内容とし、識別子が一意に付与されて構成される。
上記Aに、更新系操作の対象として常にマスタ情報を用いることが記載されていることからみて、a)にて上記したマスタDSAが備えるデータベースに記憶されたマスタ情報が更新されると、その更新されたマスタ情報が、転送するシャドウ情報とされる。そうすると、シャドウイング合意の内容である複製単位とは、マスタ情報のどの部分を更新したのかに関する情報でもある。してみれば、その情報を内容とするシャドウイング合意は、マスタ情報が更新されると、構成されるものである。

c)「図5.17 運用結合」(第93頁)及び上記Fの記載からみて、DSA間のとり決めである合意の締結や更改の情報は、運用結合と呼ばれるパスにより通知される。上記Gの記載からみて、運用結合の一つの種別としてシャドウ運用結合が規定されており、上記Hの記載からみて、シャドウ運用結合での合意内容は、シャドウイング合意の内容である。したがって、シャドウイング合意は、パスにより通知される。
上記Dに記載されているように、シャドウイング合意は、シャドウイングを実行する前にとり決める必要があることから、シャドウイング合意の通知は、シャドウ更新同期要求及びシャドウ更新要求を発行する前に行われる。

d)「図5.16 ディレクトリ情報シャドウサービスを用いた通信シーケンス」(第92頁)の「(a)サプライヤが主体となるモード」及び上記Eの記載からみて、サプライヤDSAが主体となってコンシューマDSAに転送するモードの場合、サプライヤDSAは、シャドウ更新同期要求及びシャドウ更新要求を発行する。「図5.16 ディレクトリ情報シャドウサービスを用いた通信シーケンス」の「通信シーケンス」との記載からみて、その発行は通信によりなされる。シャドウ更新同期要求では、シャドウイング合意の識別子を転送し、シャドウ更新要求では、シャドウ情報を転送する。
上記b)にて述べたように、シャドウイング合意の内容である更新モードが、サプライヤDSAとコンシューマDSAのどちらが更新要求を送るかといった点のとり決めであることから、サプライヤDSAが主体となってコンシューマDSAに転送するモードとは、通知したシャドウイング合意の内容に含まれる更新モードである。また、シャドウ更新同期要求で転送されるシャドウイング合意の識別子は、通知したシャドウイング合意に付与された識別子であり、シャドウ更新要求で転送されるシャドウ情報は、上記Cの記載からみて、複製単位に基づき切り出されたシャドウ情報であり、その複製単位とは、通知したシャドウイング合意の内容に含まれる複製単位である。

してみれば、引用文献1には、次の発明(以下「引用発明」という)が記載されている。

コンシューマDSAに提供されうるマスタ情報を記憶するデータベースをマスタDSAが備え、前記コンシューマDSAのデータベースの更新を行うためのシャドウ更新同期要求及びシャドウ更新要求を複数のコンシューマDSAに通信により発行する発行方法であって、
前記データベースに記憶されている前記マスタ情報が更新されると、複製する範囲を表す複製単位、及び、サプライヤDSAとコンシューマDSAのどちらが更新要求を送るかといった点のとり決めである更新モード、を内容とし、識別子が一意に付与されるシャドウイング合意を構成し、
前記シャドウイング合意を、パスにより通知し、
前記更新モードが、サプライヤDSAが主体となってコンシューマDSAに転送するモードの場合、シャドウ更新同期要求及びシャドウ更新要求を通信により発行し、シャドウ更新同期要求では、前記シャドウイング合意に付与された識別子を転送し、シャドウ更新要求では、前記複製単位に基づき切り出されたシャドウ情報を転送する
発行方法

4.対比
本願発明と、引用発明とを対比する。

引用発明における「コンシューマDSA」、「コンシューマDSAに提供されうるマスタ情報」、「マスタ情報を記憶するデータベース」は、本願発明における「受信装置」、「受信装置に提供されうるマスタデータ」、「マスタデータを記憶するマスターデータベース」にそれぞれ相当する。
引用発明における「前記コンシューマDSAのデータベースの更新を行うためのシャドウ更新同期要求及びシャドウ更新要求」、「シャドウ更新同期要求及びシャドウ更新要求を複数のコンシューマDSAに通信により発行する」ことは、本願発明における「前記受信装置のデータベースの更新を行うための更新データ」、「更新データを各受信装置に送信する」ことにそれぞれ相当する。
また、引用発明の「発行方法」は、シャドウ更新同期要求及びシャドウ更新要求を通信により発行することから、本願発明の「送信方法」に相当する。

引用発明における「シャドウイング合意」は、「複製する範囲を表す複製単位」をその内容とするものであるから、本願発明における「前記更新データが前記データベースのどの部分におけるデータの更新を行うためのものであるかに関する情報を含んだ複製方針」に相当する。
引用発明において「前記データベースに記憶されているマスタ情報が更新されると、…シャドウイング合意を構成し」ていることは、本願発明において「前記マスターデータベースに記憶されている前記マスタデータが更新されると、…複製方針を構成し」ていることに相当する。

引用発明における「前記シャドウイング合意」は、複製単位を内容とし、シャドウ更新同期要求及びシャドウ更新要求とは別のものであることから、本願発明における「更新位置を示し、かつ更新内容を含まない前記複製方針」に相当する。引用発明が「前記シャドウイング合意をパスにより通知し」ていることは、複製方針を送信している点で、本願発明において「前記複製方針を、一斉同報可能な同報ネットワークを介して同報送信し」ていることに対応する。

引用発明における「前記更新モードが、サプライヤDSAが主体となってコンシューマDSAに転送するモードの場合」は、「前記更新モード」が、シャドウイング合意の内容である更新モードであることから、本願発明における「前記複製方針に設定された複製モードに応じて」に相当する。
引用発明において、シャドウ更新同期要求では、シャドウイング合意の識別子を転送し、シャドウ更新要求では、シャドウ情報を転送しており、シャドウイング合意の識別子及びシャドウ情報は、シャドウ情報の更新内容を示すものといえる。したがって、引用発明において「シャドウ更新同期要求及びシャドウ更新要求を通信により発行し」ていることは、更新内容を示す更新データを送信している点で、本願発明において「更新内容を示す更新データを、一斉同報可能な前記同報ネットワークを介して同報送信し」ていることに対応する。

引用発明において、「シャドウ更新要求」の発行により、コンシューマDSAにシャドウ情報が転送され、そのシャドウ情報によりコンシューマDSAのデータベースが更新されるところ、「シャドウ更新同期要求」は、「シャドウ更新要求」に先だって転送されるから、コンシューマDSAに、データベースを更新することを、予め知らせるものであるといえる。したがって、引用発明における「シャドウ更新同期要求」は、本願発明における「前記データベースの更新を報知するための第1のデータ」に相当する。
引用発明における「前記複製単位に基づき切り出されたシャドウ情報」は、コンシューマDSAのデータベースを更新する内容の情報であるから、そのシャドウ情報を転送する「シャドウ更新要求」は、本願発明における「その更新を、更新前の前記データベースに反映させるための第2のデータ」に相当する。

したがって、本願発明と引用発明とは、以下に挙げる一致点で相違し、相違点で相違する。

(一致点)
受信装置に提供されうるマスタデータを記憶するマスターデータベースを備え、前記受信装置のデータベースの更新を行うための更新データを各受信装置に送信する送信方法であって、
前記マスターデータベースに記憶されている前記マスターデータが更新されると、前記更新データが前記データベースのどの部分におけるデータの更新を行うためのものであるかに関する情報を含んだ複製方針を構成し、
更新位置を示し、かつ更新内容を含まない前記複製方針を、送信し、
前記複製方針に設定された複製モードに応じて、更新内容を示す更新データを、送信し、
前記更新データは、前記データベースの更新を報知するための第1のデータと、その更新を、更新前の前記データベースに反映させるための第2のデータとがある
ことを特徴とする送信方法。

(相違点)
本願発明は、「複製方針」及び「更新データ」を「一斉同報可能な同報ネットワークを介して同報送信し」ているのに対して、引用発明は、それらのデータを同報送信するものではない点。

5.判断
(相違点)について
引用発明において、「複製方針」(シャドウイング合意)は、各受信装置のデータベースを更新するための更新位置を示し、「更新データ」(シャドウ更新同期要求及びシャドウ更新要求)は、各受信装置のデータベースにおける前記更新位置を更新するための更新内容を示す。そうすると、引用発明における「複製方針」と「更新データ」とは、両者を併せて、各受信装置のデータベースの更新に用いるデータと解される。
そして、あるデータベースの更新に基づいて他の複数のデータベースを更新するに際して、他の複数のデータベースの更新に用いるデータを「一斉同報可能な同報ネットワークを介して同報送信」することは、例えば、特開平4-335451号公報(第2-4段落)、特開平6-161859号公報(請求項1,第1,7-10段落)、特開平4-165437号公報(第2頁左下欄第20行-第3頁右上欄第3行)にそれぞれ記載されているように、本願出願前に周知の技術である。
そうすると、引用発明において、上記の周知技術を参酌し、各受信装置のデータベースの更新に用いるデータである「複製方針」と「更新データ」とを「一斉同報可能な同報ネットワークを介して同報送信」するように構成することは、当業者にとって格別困難なことではない。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明及び周知技術から当業者であれば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-15 
結審通知日 2008-02-18 
審決日 2008-03-04 
出願番号 特願平10-114797
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 赤川 誠一
特許庁審判官 中里 裕正
桑江 晃
発明の名称 送信装置および送信方法、受信装置および受信方法、並びに送受信システムおよび送受信方法  
代理人 稲本 義雄  
代理人 稲本 義雄  

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