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審判番号(事件番号) | データベース | 権利 |
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無効2007800236 | 審決 | 特許 |
不服200418401 | 審決 | 特許 |
不服20056940 | 審決 | 特許 |
不服200421574 | 審決 | 特許 |
不服20053934 | 審決 | 特許 |
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審決分類 |
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 特36条6項1、2号及び3号 請求の範囲の記載不備 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A61K 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1176513 |
審判番号 | 不服2004-18313 |
総通号数 | 102 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2004-09-03 |
確定日 | 2008-04-14 |
事件の表示 | 平成10年特許願第289540号「変形性関節症および他のMMP媒介疾患の治療のためのMMP-13選択的阻害剤の使用」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 7月27日出願公開、特開平11-199512〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成10年10月12日(パリ条約による優先権主張1997年10月24日米国)の出願であって、平成16年6月7日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年9月3日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同日付で手続補正がなされたものである。 2.平成16年9月3日付の手続補正についての補正の却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成16年9月3日付の手続補正を却下する。 [理由] 平成16年9月3日付の手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第1項第3号に係る手続補正であって、特許請求の範囲を補正するものであるから、その目的に関して同条第4項に規定する要件を満たす必要があるので、以下検討する。 (1)補正後の本願発明 平成16年9月3日付の手続補正書による補正(以下、単に「本件補正」という)は、特許請求の範囲を以下の通りに補正しようとするものである。 「【請求項1】 変形性関節症を治療するまたは予防する薬剤であって、コラゲナーゼ-3選択的阻害剤またはその薬学的に許容しうる塩を含み、該阻害剤は下記式: 【化1】 のN4-ヒドロキシ-2-イソブチル-N1-[2-(4-メトキシ-フェニル)-1-メチルカルバモイル-エチル]-サクシンアミド; 下記式: 【化2】 の2-[(4-ベンジルオキシ-ベンゼンスルホニル)-ピリジン-3-イルメチル-アミノ]-N-ヒドロキシ-アセトアミド;および 下記式: 【化3】 の(4-ベンジル-ベンジル)-{2-[2-(4-メトキシ-フェニル)-1-メチルカルバモイル-エチルカルバモイル]-6-フェノキシ-ヘキシル}-ホスフィン酸から選択される薬剤。」 (2)補正前の本願発明 本件補正前の特許請求の範囲は、平成15年12月24日付手続補正書に記載された以下の通りのものである。 「【請求項1】 コラゲナー-3を選択的に阻害することによって治療するまたは予防することができる疾患または状態を治療するまたは予防する薬剤であって、コラゲナーゼ-3選択的阻害剤またはその薬学的に許容しうる塩を含み、該阻害剤はコラゲナーゼ1酵素活性の少なくとも100倍の選択性を示し、MMP-13/MMP-1蛍光検定からのIC50結果によって定義された100nMより大きい力価を示す上記薬剤。 【請求項2】 変形性関節症を治療するまたは予防する薬剤であって、コラゲナーゼ-3選択的阻害剤またはその薬学的に許容しうる塩を含み、該阻害剤はコラゲナーゼ1酵素活性の少なくとも100倍の選択性を示し、MMP-13/MMP-1蛍光検定からのIC50結果によって定義された100nMより大きい力価を示す上記薬剤。 【請求項3】 全身性結合組織毒性を生じることなくコラゲナー-3を選択的に阻害することによって治療するまたは予防することができる疾患または状態を治療するまたは予防する薬剤であって、コラゲナーゼ-3選択的阻害剤またはその薬学的に許容しうる塩を含み、該阻害剤はコラゲナーゼ1酵素活性の少なくとも100倍の選択性を示し、MMP-13/MMP-1蛍光検定からのIC50結果によって定義された100nMより大きい力価を示す上記薬剤。 【請求項4】 全身性結合組織毒性を生じることなく変形性関節症を治療するまたは予防する薬剤であって、コラゲナーゼ-3選択的阻害剤またはその薬学的に許容しうる塩を含み、該阻害剤はコラゲナーゼ1酵素活性の少なくとも100倍の選択性を示し、MMP-13/MMP-1蛍光検定からのIC50結果によって定義された100nMより大きい力価を示す上記薬剤。 【請求項5】 変形性関節症を治療するまたは予防する薬剤であって、 1-{[4-(4-フルオロフェノキシ)ベンゼンスルホニル]-ピリジン-3-イルメチルアミノ}-シクロペンタンカルボン酸、 2-{[4-(4-フルオロフェノキシ)ベンゼンスルホニル]-ピリジン-3-イルメチルアミノ}-N-ヒドロキシ-2-メチルプロピオンアミド、 (4-ベンジルベンジル)-[2-(2,2-ジメチル-1-メチルカルバモイルプロピルカルバモイル)-6-フェノキシヘキシル]-ホスフィン酸、 2-アミノ-3-[4-(4-フルオロフェノキシ)ベンゼンスルホニル]-N-ヒドロキシプロピオンアミド、 N-ヒドロキシ-2-[(4-フェノキシベンゼンスルホニル)-ピリジン-3-イルメチルアミノ]-アセトアミド、 (4-ベンジルベンジル)-{2-[2-(4-メトキシフェニル)-1-メチルカルバモイルエチルカルバモイル]-6-フェノキシヘキシル}-ホスフィン酸、 3-[4-(4-フルオロフェノキシ)ベンゼンスルホニル]-2,N-ジヒドロキシプロピオンアミド、 2-{1-[4-(4-フルオロフェノキシ)ベンゼンスルホニル]-シクロブチル}-2,N-ジヒドロキシアセトアミド、 3-(4-フェノキシベンゼンスルホニル)-7-オキサビシクロ[2.2.1]ヘプタン-2-カルボン酸ヒドロキシアミド、 2-[4-(4-フルオロフェノキシ)ベンゼンスルホニルアミノ]-N-ヒドロキシ-2-メチルプロピオンアミド、 1-[4-(4-フルオロベンジルオキシ)-ベンゼンスルホニル]-2-ヒドロキシカルバモイルピペリジン-4-カルボン酸、 4-(4′-クロロビフェニル-4-イル)-2-[2-(1,3-ジオキソ-1,3-ジヒドロイソインドール-2-イル)エチル]-4-オキソ酪酸、 4-[4-(4-クロロフェノキシ)ベンゼンスルホニルメチル]-テトラヒドロピラン-4-カルボン酸ヒドロキシアミド、 (S)-α-[2-(4′-クロロ[1,1′-ビフェニル]-4-イル)-2-オキソエチル]-1,3-ジヒドロ-1,3-ジオキソ-2H-イソインドール-2-ブタン酸; 4-[4-(4-クロロフェノキシ)フェニルスルホニルメチル]-テトラヒドロピラン-4-(N-ヒドロキシカルボキサミド)、および 3(S)-N-ヒドロキシ-4-(4-((ピリド-4-イル)オキシ)ベンゼンスルホニル)-2,2-ジメチルテトラヒドロ-2H-1,4-チアジン-3-カルボキサミド から成る群より選択される化合物またはその薬学的に許容しうる塩を含む上記薬剤。」 (3)補正の目的の検討 本件補正により唯一つの請求項となった請求項1に係る発明(以下、単に「補正後発明」という)が、補正前の何れかの請求項の減縮となっているか否かを検討するにあたり、薬剤に含まれる成分の点でのみ相違している補正前請求項2及び5から検討を行う。 ア.補正前請求項2について 補正後発明を補正前請求項2に係る発明と対比すると、薬剤に含まれるコラゲナーゼ-3選択的阻害剤についての特定が以下のように変更されている。 補正前;「該阻害剤はコラゲナーゼ1酵素活性の少なくとも100倍の選択性を示し、MMP-13/MMP-1蛍光検定からのIC50結果によって定義された100nMより大きい力価を示す」 補正後;「該阻害剤は下記式:【化1】(式及び名称省略); 下記式:【化2】(式及び名称省略);および 下記式:【化3】(式及び名称省略)から選択される」 したがって、補正後発明が、補正前請求項2の減縮にあたるとされるためには、化1?化3の化合物が、少なくとも「コラゲナーゼ1酵素活性の少なくとも100倍の選択性を示す」なる性質を有している必要がある。 そして、蛍光検定の結果を示した、本願明細書の表1(【0045】)の記載からみると、化2及び化3の化合物については、確かに選択性は100倍を超えるものであるが、化1の化合物の選択性は表1の数値からみてほぼ同程度のものであって、MMP-13のMMP-1に対する選択性は、到底100倍には満たないものと解される。すなわち、化1の化合物をコラゲナーゼ阻害剤として含有する薬剤については、補正前請求項2に係る発明には含まれなかったものとせざるを得ない。 よって、補正後発明は、補正前請求項2に係る発明を減縮したものとすることができない。 イ.補正前請求項5について 補正前請求項5に係る発明は、合計16からなる化合物の名称を列記し、これら化合物から成る群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩を含む薬剤、とするものである。 そして、補正後発明に係る化1?3の化合物を、上記16の化合物と突き合わせてみると、確かに化3の化合物については6番目に記載された化合物に相当するものであるが、化1及び化2に相当する化合物は16化合物の中には見あたらない。(化2の化合物については5番目の化合物が極めて類似するものではあるが、化2構造式の右端の置換基が「ベンジル基」となっているのに対して、補正前請求項5の5番目の化合物では対応する部分が「フェニル基」となっている点で相違する。) よって、上記補正後発明は、補正前請求項5に係る発明を減縮したものとすることもできない。 ウ.補正前の請求項1,3及び4について 補正前の請求項1,3及び4に係る発明は、薬剤に含まれる成分の特定に関して、補正前請求項2と同じ表現となっていることから、上記ア.に記載したように、補正後発明に含まれる成分は、補正前請求項1,3又は4に特定された成分をさらに限定したものとすることができない。 したがって、対象とする疾患等について検討するまでもなく、補正後発明は補正前請求項1,3又は4に係る発明を減縮したものとすることができない。 (4)むすび 以上の通りであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に該当するものとすることができないし、また、同項の他の各号にあたらないことも明らかであるので、同法第159条第1項で準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 なお、補正後発明の化2の化合物(すなわち実施例2の化合物)については、その入手方法に関し、本願明細書では「1995年6月6日出願の国際特許出願第PCT/IB95/00427号の実施例2…にしたがって製造された」(【0044】)とされているが、ここで引用されている国際出願の内容は現在に至るも公開されていないことから、本願発明のうち化2の化合物に関する部分については、発明の詳細な説明の記載が当業者が実施できる程度に明確かつ十分に記載されているものとすることができないものである。 したがって、本件補正後の発明は、特許出願の際、特許法第36条第4項の規定により、独立して特許を受けることができないものとされることも、ここで付言しておく。 3.本願発明について (1)本願発明 平成16年9月3日付の手続補正は上記の通り却下されたので、平成15年12月24日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?5に記載された事項により特定される、以下の通りのものである。 「【請求項1】 コラゲナーゼ-3を選択的に阻害することによって治療するまたは予防することができる疾患または状態を治療するまたは予防する薬剤であって、コラゲナーゼ-3選択的阻害剤またはその薬学的に許容しうる塩を含み、該阻害剤はコラゲナーゼ1酵素活性の少なくとも100倍の選択性を示し、MMP-13/MMP-1蛍光検定からのIC50結果によって定義された100nMより大きい力価を示す上記薬剤。 【請求項2】 変形性関節症を治療するまたは予防する薬剤であって、コラゲナーゼ-3選択的阻害剤またはその薬学的に許容しうる塩を含み、該阻害剤はコラゲナーゼ1酵素活性の少なくとも100倍の選択性を示し、MMP-13/MMP-1蛍光検定からのIC50結果によって定義された100nMより大きい力価を示す上記薬剤。 【請求項3】 全身性結合組織毒性を生じることなくコラゲナー-3を選択的に阻害することによって治療するまたは予防することができる疾患または状態を治療するまたは予防する薬剤であって、コラゲナーゼ-3選択的阻害剤またはその薬学的に許容しうる塩を含み、該阻害剤はコラゲナーゼ1酵素活性の少なくとも100倍の選択性を示し、MMP-13/MMP-1蛍光検定からのIC50結果によって定義された100nMより大きい力価を示す上記薬剤。 【請求項4】 全身性結合組織毒性を生じることなく変形性関節症を治療するまたは予防する薬剤であって、コラゲナーゼ-3選択的阻害剤またはその薬学的に許容しうる塩を含み、該阻害剤はコラゲナーゼ1酵素活性の少なくとも100倍の選択性を示し、MMP-13/MMP-1蛍光検定からのIC50結果によって定義された100nMより大きい力価を示す上記薬剤。 【請求項5】(省略)」 (2)拒絶査定の理由の概要 原査定の拒絶の理由4及び5の概要は以下の通りである。 (2-1)理由4 本願明細書の発明の詳細な説明の記載は、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていないというものであって、具体的には、本願明細書の発明の詳細な説明に薬理試験方法とともに薬理データが記載されているのは、実施例1?3の化合物についての変形性関節症に関する試験方法及び薬理データに止まり、広範な範囲にわたるコラゲナーゼ-3選択的阻害剤が「コラゲナーゼ-3を選択的に阻害することによって治療するまたは予防することができる疾患または状態」(以下、単に「本願コラゲナーゼ関連疾患」ということもある)の全てに対して治療・予防効果があることを示しているとすることができず、本願発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されていないとするものである。 (2-2)理由5 本願明細書の特許請求の範囲の記載は、特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていないというものであって、具体的には、「コラゲナーゼ-3を選択的に阻害することによって治療するまたは予防することができる疾患または状態」なる事項が包含する具体的な疾患または状態が当業者にとって自明であるとはいえず、そのような事項の記載は、請求項に係る発明の特定事項を不明瞭にしている、というものである。 (3)当審の判断 ア.拒絶の理由4(特許法第36条第4項)について 一般に、医薬に関する用途発明においては、有効成分の物質名、化学構造だけからその有用性を予測することは困難であり、明細書に有効量、投与方法、製剤化のための事項がある程度記載されている場合であっても、それだけでは当業者が当該医薬が実際にその用途において有用性があるか否かを知ることができないから、明細書に薬理データ又はそれと同視すべき程度の記載をしてその用途の有用性を裏付ける必要があり、それがなされていない発明の詳細な説明の記載は特許法第36条第4項に規定する要件を満たさないというべきである。 ア-1 有効成分について 本願発明の有効成分は、「コラゲナーゼ-3選択的阻害剤またはその薬学的に許容しうる塩を含み、該阻害剤はコラゲナーゼ1酵素活性の少なくとも100倍の選択性を示し、MMP-13/MMP-1蛍光検定からのIC50結果によって定義された100nMより大きい力価を示す」化合物(以下、単に「本願選択的阻害剤」ということがある)である。 そして、本願明細書には、本願選択的阻害剤に関して、MMP-13/MMP-1選択性比が知られていないコラゲナーゼ阻害剤の製造方法として、多数の特許出願番号・公開公報番号を引用しつつ(【0025】)、「コラゲナーゼ-3選択的阻害剤は、上記の特許および公報にしたがって製造されたコラゲナーゼ阻害剤を、下記のMMP-13/MMP-1蛍光検定によってスクリーニングし、そして100またはそれ以上のMMP-13/MMP-1阻害IC50比率および100nM未満の力価を有する因子を選択することによって識別することができる。」(【0026】)と記載されているが、本願選択的阻害剤として、具体的にどのような化学構造を有する化合物が使用できるのかについての説明はなされていない。 また、本願明細書には、実施例1?3の三つの化合物について、MMP-13/MMP-1の選択性に関するデータ及び変形性関節症に関する薬理データが記載されているが、ここで、実施例1の化合物は、MMP-13/MMP-1の選択性が1.6倍(=2.5/1.5)であって100倍よりもはるかに低く、本願選択性阻害剤に該当しないものであることから、結局、本願明細書には、実施例2,3の二つの化合物が本願選択的阻害剤として記載されていることになる。 ところで、本願選択的阻害剤は、実施例2,3の二つの化合物に限定されることなく、上記したとおりの多数の特許文献に記載の候補化合物の中から選別される広範な化合物を含むものと解されるが、どのような化合物が本願選択的阻害剤となるかは、多数の候補化合物について実際にスクリーニングを実施しなければ分からない。さらに実施例2,3の二つの化合物を比較するとその化学構造は大きく異なるものであることだけからしても、本願選択的阻害剤全てが類似した化学構造を有し、実施例2,3の薬理データから本願選択的阻害剤全体の薬理効果が裏付けられているとは到底いえない。 してみると、本願明細書の記載からは、実施例2,3で示された化合物以外の広範な範囲にわたる本願選択的阻害剤が、変形性関節症を含む本願コラゲナーゼ関連疾患に対して治療効果があるものとすることができない。 ア-2 対象疾患について 本願発明は、コラゲナーゼ-3を選択的に阻害することによって治療するまたは予防することができる疾患または状態を治療または予防するものである。 本願明細書には、本発明は、MMP-13対MMP-1の特異性を示すMMP阻害剤の使用に関し、変形性関節症、慢性リウマチおよび癌の治療または予防において有用である旨(【0001】)記載され、実施例2,3の二つの本願選択的阻害剤について、変形性関節症に関する薬理データが記載されている。 上記した明細書【0001】の記載からは、本願コラゲナーゼ関連疾患には、少なくとも慢性リウマチおよび癌も含まれるものと解されるが、両疾患に関する薬理データは示されておらず、変形性関節症に関する薬理データが示されているだけである。 そして、変形性関節症に関する薬理データが、慢性リウマチおよび癌の治療または予防効果を裏付けるものといえる根拠は、本願明細書には何ら記載されていない。 してみると、本願明細書において、少なくとも本願コラゲナーゼ関連疾患に含まれると解される慢性リウマチおよび癌に対して、本願選択的阻害剤が治療または予防効果を奏することに関して、明細書に記載されているものとすることができない。 ア-3 小括 したがって、本願発明の詳細な説明の記載は、当業者が本願発明を実施することができる程度に明確かつ十分に記載されているものとすることができないので、特許法第36条第4項に規定する要件を満たしていない。 イ.拒絶の理由5(特許法第36条第6項第2号)について 本願発明は、「コラゲナーゼ-3を選択的に阻害することによって治療するまたは予防することができる疾患または状態」を発明を特定する事項とするものであるが、かかる特定事項に関して、本願明細書には、本願発明は、MMP-13/MMP-1の特異性を示す阻害剤の使用に関し、変形性関節症、慢性リウマチおよび癌の治療または予防において有用である旨(【0001】)の記載と、変形性関節症に関する薬理データが記載されているが、「コラゲナーゼ-3を選択的に阻害することによって治療するまたは予防することができる疾患または状態」については定義や説明は記載されておらず、また上記3疾患以外の具体的な疾患名は記載されていない。 ところで、本願明細書の記載によれば、本願発明は、「MMP-13対MMP-1活性を有する化合物は、驚くべきことに、全身性結合組織毒性を生じることなく作用する軟骨コラーゲン分解の優れた阻害剤である」という発見に基づくもの(【0009】)であり、当業者の技術常識を超える知見に基づくものであるから、「MMP-13対MMP-1活性を有する化合物」、すなわち本願選択的阻害剤が、如何なる疾患や状態に有効に作用するか、言い換えると「コラゲナーゼ-3を選択的に阻害することによって治療するまたは予防することができる疾患または状態」とは如何なる疾患又は状態なのかは当業者にとって自明なことであるとすることはできない。 したがって、本願特許請求の範囲の記載は、特許を受けようとする発明が明確であることとする特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。 (4)むすび 以上のとおりであるから、本願は、明細書の記載が、特許法第36条第4項及び第6項第2号の規定を満たしていないので、拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2007-11-13 |
結審通知日 | 2007-11-15 |
審決日 | 2007-12-04 |
出願番号 | 特願平10-289540 |
審決分類 |
P
1
8・
536-
Z
(A61K)
P 1 8・ 574- Z (A61K) P 1 8・ 573- Z (A61K) P 1 8・ 537- Z (A61K) P 1 8・ 571- Z (A61K) P 1 8・ 572- Z (A61K) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 瀬下 浩一、荒木 英則 |
特許庁審判長 |
星野 紹英 |
特許庁審判官 |
谷口 博 塚中 哲雄 |
発明の名称 | 変形性関節症および他のMMP媒介疾患の治療のためのMMP-13選択的阻害剤の使用 |
代理人 | 小林 泰 |
代理人 | 社本 一夫 |
代理人 | 増井 忠弐 |
代理人 | 千葉 昭男 |
代理人 | 富田 博行 |
代理人 | 栗田 忠彦 |