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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1176567
審判番号 不服2006-1347  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-19 
確定日 2008-04-17 
事件の表示 平成8年特許願第239978号「記録媒体、再生装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年3月6日出願公開、特開平10-64244〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯の概要
本願は、平成8年8月23日の出願であって、平成17年4月21日付けで拒絶理由を通知したところ、平成17年6月24日付けで手続補正がされたが、同年12月22日付けで前記拒絶理由のうち、本願の各請求項に係る発明は特許法第29条第2項により特許を受けることができないとの理由により、拒絶の査定がされた。これに対し、平成18年1月19日に拒絶査定不服審判が請求され、同年2月20日付けで手続補正がされたものである。


第2.平成18年2月20日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成18年2月20日付けの手続補正(以下、「本件手続補正」という。)を却下する。

〔理 由〕
1.本件手続補正前及び本件手続補正による本願発明
本件手続補正は特許請求の範囲についてするもので、本件手続補正前に、
「【請求項1】 複数の主データが記録される主データ記録領域と、上記主データ記録領域に記録された主データの管理を行う管理情報が記録される管理領域とを備える記録媒体に上記管理データを記録する記録再生装置において、
上記記録媒体から上記管理情報を再生する再生手段と、
上記再生された管理情報を記憶する記憶手段と、
ユーザーに情報を提示する提示手段と、
ユーザーの入力操作が行われる操作手段と、
上記記録媒体の管理領域に管理情報を記録する記録手段と、
上記記憶手段に記憶された上記管理情報から上記記録媒体に記録された上記複数の主データの再生順序のユーザーによる設定に必要な情報を生成して上記提示手段に提示されるように制御すると共に上記操作手段から入力される操作に基づいて上記複数の主データの再生順序情報と上記再生順序情報の識別情報とを生成し、上記記録媒体の管理領域に記録されるように上記記録手段を制御する制御手段と
を備える記録再生装置。
【請求項2】 上記記録領域に記録される再生順序情報は、複数記録されることを特徴とする請求項1に記載の記録再生装置。」
とあったものを、

「【請求項1】 複数の主データが記録される主データ記録領域と、上記主データ記録領域に記録された主データの管理を行う管理情報が記録される管理領域とを備える記録媒体に上記管理データを記録する記録再生装置において、
上記記録媒体から上記管理情報を再生する再生手段と、
上記再生された管理情報を記憶する記憶手段と、
ユーザーに情報を提示する提示手段と、
ユーザーの入力操作が行われる操作手段と、
上記記録媒体の管理領域に上記主データの管理を行う管理情報と複数の上記主データの再生順序を指定する再生順序情報とを記録する記録手段と、
上記管理領域に記録された再生順序情報に関連付けられる第2の操作手段と、
上記記憶手段に記憶された上記管理情報から上記記録媒体に記録された上記複数の主データの再生順序のユーザーによる設定に必要な情報を生成して上記提示手段に提示されるように制御すると共に上記操作手段から入力される操作に基づいて上記複数の主データの再生順序情報と上記再生順序情報の識別情報とを1以上生成し、上記記録媒体の管理領域に記録されるように上記記録手段を制御し、上記第2の操作手段が操作されたときに所定の再生順序情報が選択されるように上記第2の操作手段と所定の再生順序情報とを関連付ける制御手段と
を備える記録再生装置。
【請求項2】
上記制御手段は、上記第2の操作手段が操作されたときには、上記第2の操作手段に関連付けられた再生順序情報に基づいて上記主データの再生が行われるように制御する請求項1に記載の記録再生装置。」
と補正しようとするものである。

2.補正の目的の適否の検討
まず、本件手続補正の目的が適法なものであるか否かについて検討する。
(1)補正後の請求項1に記載される「上記管理領域に記録された再生順序情報に関連付けられる第2の操作手段」は、補正により新たに加わった発明特定事項であるから、請求項1についての補正は、補正前の請求項1に記載された発明特定事項を限定したものとすることができない。
(2)補正後の請求項2では、再生順序情報について「複数記録される」ことが削除された。請求項2で引用する請求項1に「再生順序情報と上記再生順序情報の識別情報とを1以上生成し、上記記録媒体の管理領域に記録される」と記載されていることから、補正後の請求項2では、再生順序情報が「複数」に限定されず、「1」の場合も含まれることとなり、したがって、請求項2についての補正は、補正前の請求項2に記載された発明特定事項を限定したものとすることができない。
(3)上記(1)及び(2)で指摘した補正の内容は、請求項の削除、明りょうでない記載の釈明、及び誤記の訂正のいずれにも当たらないことが明らかである。
(4)以上のとおりであるから、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、したがって、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.独立特許要件の検討
(1)以上のとおり、本件手続補正は、補正の目的が不適法なものとして却下すべきものであるから、本件手続補正についてはこれ以上の検討は本来不要であるが、仮に、本件手続補正が平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものとした場合に、本件手続補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについても、補正後の請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-259937号公報(以下、「引用例」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。
(a)【請求項5】に、
「1又は複数単位の音声情報とともに記録動作又は再生動作のための管理情報が記録され、さらに該管理情報内には文字情報を記録することができる文字記録領域が用意されており、この文字記録領域にコマンドとして予め定められた文字列情報が記録される記録媒体に対応する記録又は再生装置であって、
前記記録媒体から、コマンドとされている文字列情報を読み込むコマンド読込手段と、
前記コマンド読込手段によって読み込まれた文字列情報に応じて、その指示された動作の実行を制御する制御手段と、
前記制御手段によって制御され、読み込まれた文字列情報によって指示された動作を実行する所要の入出力手段と、
を備えたことを特徴とする記録又は再生装置。」

(b)「【0016】記録再生装置30としては、その外筺上に各種の入出力手段が用意される。例えば入力手段として音声信号の入力端子17や操作キーが設けられる。操作キーとしては録音キー51、再生キー52、一時停止キー53、停止キー54、AMSキー55、サーチキー56、曲名入力モードキー57、ディスク名入力モードキー58、日付入力モードキー59、テンキー61、表示モードキー62、エンターキー63、対話モードキー64、対話キー65,66等がユーザー操作に供されるように設けられている。テンキー61の各数字キーにはそれぞれ3個又は2個アルファベット、或はスペースが対応され、文字入力の際に用いられる。
【0017】また、記録再生装置30の出力手段として、音声信号の出力端子16が設けられるとともに、各種文字、数字、画像等を表示する表示部20も筺体上部表面に配置されている。音声信号の出力端子16には例えばイヤフォン32がプラグ32aによって接続され、出力音声信号が音声として出力される。
【0018】図2に示されるように、記録再生装置30内では光磁気ディスク(又は光ディスク)1は、スピンドルモータ2により回転駆動されるようにローディングされる。3はディスク1に対して記録/再生時にレーザ光を照射する光学ヘッドであり、光磁気ディスクに対して記録時には記録トラックをキュリー温度まで加熱するための高レベルのレーザ出力をなし、また再生時には磁気カー効果により反射光からデータを検出するための比較的低レベルのレーザ出力をなす。なお、ディスク1がデータをCDと同様にピット形態で記録している光ディスクの場合は、光学ヘッド3は磁気カー効果ではなくCDプレーヤの場合と同様にピットの有無による反射光レベルの変化に応じて再生RF信号を取り出すものである。もちろん光ディスクに対しては後述する磁界記録動作は実行されない。」

(c)「【0020】また、6は供給されたデータによって変調された磁界を光磁気ディスクに印加する磁気ヘッドを示し、ディスク1を挟んで光学ヘッド3と対向する位置に配置されている。」

(d)「【0028】19はユーザー操作に供されるキーが設けられた操作入力部、20は前述した例えば液晶ディスプレイによって構成される表示部を示す。操作入力部19としては、図1において前述した各種操作キー(録音キー51?対話キー66)が該当する。
【0029】また、21は光磁気ディスク1におけるTOC情報を保持するRAM(以下、TOCメモリという)である。この実施例の記録再生装置が対応するディスクとしては、上述したように予め楽曲等が記録されているプリマスタードタイプ(光ディスク)のものとユーザーが音楽データ等を記録することのできるデータ書き換え可能とされるもの(光磁気ディスク)、及び楽曲等を予め記録したROMエリアと録音可能な光磁気エリアを設けたハイブリッドタイプのものがあり、これらのディスクにはそのタイプに応じて、既に楽曲等のデータが記録されているエリアや未記録エリアを管理するデータ等がTOC情報として記録されている。
【0030】そして、ディスク1が装填された時点或は記録又は再生動作の直前等において、システムコントローラ11はスピンドルモータ2及び光学ヘッド3を駆動させ、ディスク1の例えば最内周側に設定されているTOC領域のデータを抽出させる。そして、RFアンプ7、エンコーダ/デコーダ部8を介してメモリコントローラ12に供給されたTOC情報はTOCメモリ21に蓄えられ、以後そのディスク1に対する記録/再生動作の制御に用いられる。」

(e)【0042】段落に
「また、このようなP-TOCについては、プリマスタードの楽曲データが記録されない光磁気ディスクについては、楽曲単位の管理情報は全て『00』とされ、楽曲管理は以下のU-TOCによって行なわれる。
【0043】図5に示すデータ領域、即ちU-TOCセクター0には、ヘッダに続いて所定アドレス位置に、マーカーコード、モデルコード、最初の楽曲の曲番(First TNO)、最後の楽曲の曲番(Last TNO)、セクター使用状況、ディスクシリアルナンバ、ディスクID等のデータが記録され、さらに、ユーザーが録音を行なって記録されている楽曲の領域や未記録領域等を後述する管理テーブル部に対応させることによって識別するため、対応テーブル指示データ部として各種のテーブルポインタ(P-DFA,P-EMPTY ,P-FRA ,P-TNO1?P-TNO255) が記録される領域が用意されている。」

(f)「【0056】図6のU-TOCセクター1の領域には、ユーザーが録音を行ない、U-TOCセクター0において管理された各楽曲に対応して、文字情報が記録できるようになされている。」

(g)「【0063】このようなTOC情報が記録された光磁気ディスク1(又は光ディスク)に対する本実施例の記録再生装置は、TOCメモリ21に読み込んだTOC情報を用いてディスク上の記録領域の管理を行なって記録/再生動作を制御する。そしてさらに本実施例では、上述したP-TOCセクター1、P-TOCセクター4、又はU-TOCセクター1、U-TOCセクター4において、楽曲に対応して入力される文字情報として、各種コマンドを記録しておき、記録再生装置側では、これらのTOC情報としてのコマンドに応じてユーザーとディスク1の間で対話形式でなされる制御により各種動作を行なうようにするものである。
【0064】以下、文字情報としてディスク1に各種コマンドが記録されている際の記録再生装置の動作について説明する。なお、文字列としてコマンドとしては、ディスク製造者が予め記録しておくもの、即ちP-TOCセクター1又はセクタ4に書き込んでおいたものと、ユーザーが独自にコマンドを記録したもの、即ちU-TOCセクター1又はセクター4に書き込んだものが考えられるが、いづれであってもよい。ユーザーがコマンドを書き込む場合としては、楽曲に対応して曲名を入力する場合と同様にテンキー61等を用いて行なうようにする。」

(h)「【0066】以下、例として、ディスク1に図8のように『FUN』として示される5曲の楽しい楽曲と、『SAD』として示される5曲の悲しい楽曲が記録され、全部で10曲が記録されているとする。そして、さらに文字情報としてP-TOCセクター1又はU-TOCセクター1において、通常ディスクタイトル等が記録されるパーツテーブル(ディスク名エリア、即ち図4もしくは図6のセクターの第76行目、77行目のエリア及びこれからリンクされるエリア)及び第1から第10の各楽曲に対応してテーブルポインタP-TNA1?P-TNA10 によって導かれるパーツテーブルに、次の『 』で示すようなコマンドが記録されている場合の動作を説明する。なお、テーブルポインタP-TNA1?P-TNA10 によってパーツテーブル(01)?(10)が導かれるように設定されているとする。
【0067】・ディスク名エリア
『PRINT “A:FUN B:SAD”:IF BUTTON A THEN TN01 BUTTON B THEN TN02』
・パーツテーブル(01)
『IF END THEN TN03』
・パーツテーブル(02)
『IF END THEN TN04』
・パーツテーブル(03)
『IF END THEN TN05』
・パーツテーブル(04)
『IF END THEN TN06』
・パーツテーブル(05)
『IF END THEN TN07』
・パーツテーブル(06)
『IF END THEN TN08』
・パーツテーブル(07)
『IF END THEN TN09』
・パーツテーブル(08)
『IF END THEN TN10』
・パーツテーブル(09)
『IF END THEN TN01』
・パーツテーブル(10)
『IF END THEN TN02』
【0068】このコマンドの内容は以下のとおりである。ディスク名エリアには、まず記録再生装置の動作として、表示部に『A:FUN B:SAD』という文字を表示させるコマンドが示され、さらに続いて、Aボタン(対話キー65)が操作されたらトラックナンバ01、つまり第1曲目を、またBボタン(対話キー66)が操作されたらトラックナンバ02、つまり第2曲目を、再生すべき命令を示している。
【0069】さらに各楽曲に対応するパーツテーブルについては、その楽曲の演奏が終了したら続いて演奏を行なうべき楽曲が指定されている。つまり、第1曲については続いて第3曲目を再生すべきことが示され、第2曲目については続いて第4曲目を再生すべきことが示され、第3曲目については続いて第5曲目を再生すべきことが示され、以下、同様に第10曲目まで続いて再生されるべき楽曲が指定される。つまりこの場合、楽しい楽曲の終了後は引き続き楽しい楽曲が再生されるように設定され、また悲しい楽曲の終了後は引き続き悲しい楽曲が再生されるように設定されている。」

(i)「【0079】例えば、ディスク製作者が記録されている楽曲の曲順を通常の曲順とは別に複数種類設定してユーザーに選択させるようにした音楽ソフトや、例えば演奏に応じてコマンドに基づく所定の表示を行なったり、演奏中にユーザー操作を促して所定の対応を可能とし、キー操作やマイクロフォン入力に応じて演奏順序や演奏態様を変更したりすることができる音楽ソフトが実現される。
【0080】また、音楽を用いたクイズ、学習等のアプリケーションとして実現することもでき、この場合、ユーザーのキー入力(例えばクイズの解答入力)やマイクロフォン入力に対してブザー音やチャイム音を出力したりすることも可能である。さらにユーザーがコマンド書込を可能とした場合は、ユーザー自信が所望の動作設定を行なうことができ、応用範囲はさらに広げられる。」

上記引用例記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「1又は複数単位の音声情報とともに、ユーザーが録音を行なった楽曲や新たに録音可能な未記録エリアについて記録動作又は再生動作のための管理情報となるTOC情報が記録されるデータ領域(U-TOCセクター0)、ユーザーが録音を行なった楽曲についてユーザーが書き込んだ曲名、ディスクタイトル等の文字情報を記録することができる文字記録領域が用意されており(U-TOCセクター1または同セクター4)、この文字記録領域にコマンドとして予め定められた文字列情報が記録される記録媒体に対応する記録再生装置であって、
前記記録媒体に記録する際に磁界を変調する磁気ヘッド、
記録再生時にレーザ光を照射する光学ヘッド、
供給されたTOC情報を蓄えるTOCメモリ、
筺体上部表面に配置され、各種文字、数字、画像等を表示する、例えば液晶ディスプレイによって構成される表示部、
録音キー、再生キー、一時停止キー、停止キー、AMSキー、サーチキー、曲名入力モードキー、ディスク名入力モードキー、日付入力モードキー、テンキー、表示モードキー、エンターキー、対話モードキー、対話キー6等がユーザー操作に供されるように設けられ、テンキーの各数字キーにはそれぞれ3個又は2個アルファベット、或はスペースが対応され、文字入力の際に用いられるように構成された操作キー、
及びマイクロコンピュータによって構成され、各種制御を行うシステムコントローラを有し、
前記システムコントローラは、ディスクが装填された時点或は記録又は再生動作の直前等において、光学ヘッドを駆動させ、ディスクのTOC領域のデータを抽出させ、
U-TOCセクター1の、通常ディスクネーム、トラックネーム等が記録されるパーツテーブルに、ディスクに記録された「FUN」として示される5曲と、「SAD」として示される5曲をそれぞれ順次再生するコマンドが記録された場合、システムコントローラは当該コマンドに応じて、表示部に『A:FUN B:SAD』という文字を表示させ、Aボタンが操作されたら「FUN」として示される5曲を順に再生し、またBボタンが操作されたら「SAD」として示される5曲をそれぞれ順次再生するように制御し、
ユーザーがテンキー等を用いて入力してコマンド書込を可能として、ユーザー自身が所望の動作設定を行い、記録されている楽曲の曲順を通常の曲順とは別に、複数種類設定することができるようにした、
記録再生装置。」

(3)対比
本願補正発明を、引用発明と比較すると、両者は「記録再生装置」に関する発明である点で共通している。
引用発明における「記録媒体」は、「音声情報」を記録することができるから本願補正発明の「複数の主データが記録される主データ記録領域」に相当する領域を備え、また「ユーザーが録音を行なった楽曲や新たに録音可能な未記録エリアについて記録動作又は再生動作のための管理情報となるTOC情報が記録されているデータ領域(U-TOCセクター0)、ユーザーが録音を行なった楽曲についてユーザーが書き込んだ曲名、ディスクタイトル等の文字情報を記録することができる文字記録領域が用意されており(U-TOCセクター1または同セクター4)」は、本願補正発明の「上記主データ記録領域に記録された主データの管理を行う管理情報が記録される管理領域」に相当する。「この文字記録領域にコマンドとして予め定められた文字列情報が記録される」ことは、「管理データを記録する」ことであるから、引用発明は、「複数の主データが記録される主データ記録領域と、上記主データ記録領域に記録された主データの管理を行う管理情報が記録される管理領域とを備える記録媒体に上記管理データを記録する記録再生装置」に相当する構成を備えている。
引用発明における「光ヘッド」は、「ディスク1のTOC領域のデータを抽出」するから、引用発明は、本願補正発明の「上記記録媒体から上記管理情報を再生する再生手段」に相当する構成を備えている。
引用発明の「供給されたTOC情報を蓄えるTOCメモリ」は、本願補正発明の「上記再生された管理情報を記憶する記憶手段」に相当する。
引用発明の「表示部」は、「筺体上部表面に配置され、各種文字、数字、画像等を表示する」ものであるから、当然ユーザに対して何らかの情報を提示するものであることは自明であり、「ユーザーに情報を提示する提示手段」に相当する。
引用発明の各種「操作キー」は、本願補正発明の「ユーザーの入力操作が行われる操作手段」に相当する。
引用発明は、「記録媒体に記録する際に磁界を変調する磁気ヘッドと、記録再生時にレーザ光を照射する光学ヘッドを有し」、「U-TOCセクター1の、通常ディスクネーム、トラックネーム等が記録されるパーツテーブルに、ディスクに記録された「FUN」として示される5曲と、「SAD」として示される5曲をそれぞれ順次再生するコマンドを記録」することができるのであるから、本願補正発明の「上記記録媒体の管理領域に上記主データの管理を行う管理情報と複数の上記主データの再生順序を指定する再生順序情報とを記録する記録手段」に相当する構成を備えている。
引用発明の「Aボタン」と「Bボタン」は、「ディスクに記録された「FUN」として示される5曲と、「SAD」として示される5曲をそれぞれ順次再生するコマンド」に対応付けられていることが明らかであるから、引用発明は本願補正発明の「上記管理領域に記録された再生順序情報に関連付けられる第2の操作手段」に相当する構成を備えている。
引用発明で「ユーザーがテンキー等を用いて入力してコマンド書込を可能として、ユーザー自身が所望の動作設定を行い、記録されている楽曲の曲順を通常の曲順とは別に、複数種類設定することができる」ことは、本願補正発明の「上記操作手段から入力される操作に基づいて上記複数の主データの再生順序情報と上記再生順序情報の識別情報とを1以上生成し、上記記録媒体の管理領域に記録されるように上記記録手段を制御し」に相当する。
引用発明では、「Aボタン」又は「Bボタン」の操作に応じて、それぞれ「FUN」として示される5曲か、又は「SAD」として示される5曲を順次再生するように制御されるのであるから、引用発明のシステムコントローラは「上記第2の操作手段が操作されたときに所定の再生順序情報が選択されるように上記第2の操作手段と所定の再生順序情報とを関連付ける制御手段」に相当する制御を行うものである。

すると、本願補正発明と、引用発明とは、次の点で一致する。
<一致点>
複数の主データが記録される主データ記録領域と、上記主データ記録領域に記録された主データの管理を行う管理情報が記録される管理領域とを備える記録媒体に上記管理データを記録する記録再生装置において、
上記記録媒体から上記管理情報を再生する再生手段と、
上記再生された管理情報を記憶する記憶手段と、
ユーザーに情報を提示する提示手段と、
ユーザーの入力操作が行われる操作手段と、
上記記録媒体の管理領域に上記主データの管理を行う管理情報と複数の上記主データの再生順序を指定する再生順序情報とを記録する記録手段と、
上記管理領域に記録された再生順序情報に関連付けられる第2の操作手段と、
上記操作手段から入力される操作に基づいて上記複数の主データの再生順序情報と上記再生順序情報の識別情報とを1以上生成し、上記記録媒体の管理領域に記録されるように上記記録手段を制御し、上記第2の操作手段が操作されたときに所定の再生順序情報が選択されるように上記第2の操作手段と所定の再生順序情報とを関連付ける制御手段と
を備える記録再生装置。

一方で、以下の点で相違する。
<相違点>
本願補正発明では、「記憶手段に記憶された上記管理情報から上記記録媒体に記録された上記複数の主データの再生順序のユーザーによる設定に必要な情報を生成して上記提示手段に提示されるように制御する」のに対し、引用発明の記録再生装置では、ユーザがコマンド書き込みの際に、表示部にどのような表示が行われるように制御されるか特定されない点。

(4)判断
拒絶査定時に示した特開平6-309841号公報(以下、「周知例1」という。特に60,61段落、図14参照)に、全てのシーンファイルの番号から、シナリオファイルを編集するために表示することが記載されている。前記シーンファイルの番号は、「記憶手段に記憶された管理情報」であり、シナリオファイルは「記録媒体に記録された複数の主データの再生順序のユーザーによる設定」であるから、図14に示されるような「シナリオボード」を表示することは、前記設定に「必要な情報を生成して上記提示手段に提示されるように制御する」ことに相当する。すると、周知例1には、光ディスク再生装置において、「上記管理情報から上記記録媒体に記録された上記複数の主データの再生順序のユーザーによる設定に必要な情報を生成して上記提示手段に提示されるように制御する」ことが記載されている。
周知例1の他にも、例えば、特開平1-64186号公報(「プログラミングモード」についての記載、7頁左下欄?9頁左上欄、図1乃至図3参照)、実願昭62-134052号(実開平1-37991号)のマイクロフィルム(7頁以降の実施例の記載、第4図乃至第6図参照)、特開平2-265085号公報(2頁右下欄?3頁右上欄、第3図、第4図参照)等、再生プログラムを設定するに際して、TOCすなわち「管理情報」からトラック番号、曲の長さ(時間)等を表示しているもので、「記録媒体に記録された上記複数の主データの再生順序のユーザーによる設定に必要な情報を生成して上記提示手段に提示されるように制御する」ことは、周知事項にすぎないことが明らかである。
引用発明の記録再生装置は、操作手段から入力される操作に基づいて上記複数の主データの再生順序情報を生成する点において上記各周知例と共通するから、「操作手段から入力される操作に基づいて上記複数の主データの再生順序情報と上記再生順序情報の識別情報とを1以上生成」する際に、引用発明の記録再生装置の有する表示部に上記周知事項を適用して、「記憶手段に記憶された上記管理情報から上記記録媒体に記録された上記複数の主データの再生順序のユーザーによる設定に必要な情報を生成して上記提示手段に提示されるように制御する」ことは、当業者が容易に想到しうるものであり、その作用効果も当業者が予測しうるものにすぎない。

(5)独立特許要件についてのむすび
以上のとおりであるから、本件手続補正における請求項1に係る発明は、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に掲げる事項を目的とするものであると認められる場合であっても、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3.本願発明について
1.本願発明
平成18年2月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1及び2に係る発明は、平成17年6月24日付けで手続補正さ
れた請求項1及び2に記載されたとおりのものであるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、上記「第2 〔理由〕 1.」に本件手続補正前の請求項1として掲げたとおりである。

2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 〔理由〕 3.(2)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願補正発明は、上記「第2 〔理由〕」で検討した本願補正発明から、
「管理領域に上記主データの管理を行う管理情報と複数の上記主データの再生順序を指定する再生順序情報とを記録する」とあるところを、「管理領域に管理情報を記録する」と限定を削除し、「管理領域に記録された再生順序情報に関連付けられる第2の操作手段」を削除し、制御手段から「上記第2の操作手段が操作されたときに所定の再生順序情報が選択されるように上記第2の操作手段と所定の再生順序情報とを関連付ける」との限定を削除し、「再生順序情報と上記再生順序情報の識別情報とを1以上生成し」から「1以上」を削除したものに相当する。

すると、本願発明の特定事項を全て含み、更に他の事項を付加したものに相当する本願補正発明が前記「第2 〔理由〕 3.(4)」に記載したとおり、引用発明及び周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
したがって、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-15 
結審通知日 2008-02-19 
審決日 2008-03-04 
出願番号 特願平8-239978
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田付 徳雄  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 小松 正
早川 卓哉
発明の名称 記録媒体、再生装置  
代理人 脇 篤夫  
代理人 鈴木 伸夫  

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