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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1176667
審判番号 不服2005-11159  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-15 
確定日 2008-04-24 
事件の表示 特願2003-379097「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 2日出願公開、特開2005-137716〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成15年11月7日に出願された特願2003-378647号(国内優先権主張 平成14年11月20日)の一部を特許法44条1項の規定により新たな特許出願(同条4項の規定により、特願2003-378647号と同じ優先権主張がされているものとみなされる。)としたものであって、平成17年5月10日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年6月15付けで本件審判請求がされるとともに、同年7月14日付けで特許請求の範囲についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成17年7月14日付けの手続補正を却下する。

[理由]
1.補正事項
本件補正は特許請求の範囲(単一請求項からなる。)を補正するものであり、補正後の特許請求の範囲は次のとおりである。
「【請求項1】 遊技に関する結果を表示する遊技結果表示手段と、
該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段と
を備えた遊技機において、
前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、該第2表示手段は前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域を有し、
該図柄表示領域に遊技情報を表示させる表示制御手段を備え、
前記第1表示手段は、複数の可変表示可能な図柄表示部を有し、
該図柄表示部の予め定められた一部の可変表示の停止表示と略同時期に、前記表示制御手段が、前記停止表示された図柄に関連しかつ前記図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報を前記図柄表示領域に表示させることを特徴とする遊技機。」(下線部が補正により追加された。)

2.新規事項追加
上記下線部を含む「該図柄表示部の予め定められた一部の可変表示の停止表示と略同時期に、前記表示制御手段が、前記停止表示された図柄に関連しかつ前記図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報を前記図柄表示領域に表示させること」、すなわち、遊技情報表示時期が「該図柄表示部の予め定められた一部の可変表示の停止表示と略同時期」であること、及び遊技情報が「前記停止表示された図柄に関連しかつ前記図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報」であることは、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、これら全体を「当初明細書」という。)の何れにも記載されていない。
請求人は審判請求理由において、遊技情報表示時期が「該図柄表示部の予め定められた一部の可変表示の停止表示と略同時期」であることの根拠として、当初明細書の段落【0061】,【0062】及び【図10】をあげている。しかし、段落【0061】及び【0062】には、「遊技者が第1停止操作(リール3L,3C,3Rが変動後、停止ボタン11L,11C,11Rのうちから遊技者が任意に選択した1つの停止ボタンを遊技者が最初に押す操作)として停止ボタン11Lを押した場合の図柄表示領域21L,21C,21R及び演出表示領域23の表示態様を示している。ここでは、リール3Lの停止図柄は、「キャラクタ?キャラクタ?キャラクタ(ドンドンドン)」となっている。」及び「図10(4)において、図10(3)で説明したBBの内部当選を受けて、リール3Lに対応する表示領域である図柄表示領域21Lには、「ドーン」21aという遊技情報が表示され、遊技者に報知される。」と記載されているところ、この記載における「リール3L」は、遊技者が最初に押した停止ボタンに対応するリールであり、遊技者が最初に押すリールは予め定められていない(「任意に選択した」とある。)から、「リール3L」は「図柄表示部の予め定められた一部」に該当しない。
当初明細書には「第1表示手段のリール3Lの停止図柄態様の表示(ドンドンドン)に迫力を持たせることができ、興趣向上につながる。」(段落【0063】)との記載があるけれども、これは「ドンドンドン」の停止態様と「ドーン」という遊技情報が合致したときの効果をいうにすぎず、この記載があるからといって、リール3L停止時のみ遊技情報を表示することも、「ドンドンドン」の停止態様のみ遊技情報を表示することも当初明細書に記載されていると認めることはできない。
加えて、【図10】(4)には、リール3Lに対応する図柄表示領域21Lのみに「ドーン」という遊技情報が表示されることが示されており、他方「「ドーン」21aが図柄表示領域21L,21C,21Rや演出表示領域23に表示される」(段落【0088】)等の記載によれば、「ドーン」という遊技情報は図柄表示領域21C,21Rにも表示される旨記載されているのだから、リール3C,3Rの停止時にも、遊技情報が図柄表示領域21C,21Rに表示されると解するべきである。そればかりか、補正後の請求項1によれば、「図柄表示部の予め定められた一部」に該当するリール3Lが2番目又は3番目に停止した場合であっても、1番目に停止した場合と同じく遊技情報が表示されなければならないが、そのようなことも当初明細書の記載からは読み取れない。
また、当初明細書の段落【0062】の上記記載によれば、「「ドーン」21aという遊技情報」はBBの内部当選を受けて表示されるのであって、リール3Lが【図10】(4)のように「キャラクタ?キャラクタ?キャラクタ(ドンドンドン)」の状態で停止するとは限らない。すなわち、【図10】は、BBの内部当選を受けて、左側のリール停止時の図柄が同図(3)となり、「ドーン」という遊技情報が表示情報が表されるという一連の工程を示すにすぎず、同図(4)が同図(3)を条件とすることを意味するわけではなく、停止態様と遊技情報は偶々関連しているにすぎない。請求人は平成17年1月19日付け意見書においては、当初明細書の段落【0016】及び段落【0041】をも補正根拠にあげている。段落【0016】には「液晶表示部2bの表示内容は、リール3L,3C,3Rの変動表示態様、停止態様、及び後述の液晶表示装置31の動作により変化するようになっている。」とあるけれども、「変動表示態様」については、リールが回転中、すなわち変動表示中は液晶を透過状態にすることを意味するにすぎず、「停止態様」については一部のリールの停止なのかすべてのリールの停止なのかが不明であるから、完全停止後のファンファーレ処理を意味する可能性もあり、さらに、図柄表示部の表示に関する記載であると認めることもできないから、上記補正事項を必ずしも意味するわけではない。段落【0041】には「副制御回路71は、内部当選役決定手段の決定結果及び遊技結果導出手段の出力に基づいて第2表示手段を制御する。」とあるけれども、一部のリールの停止状態は「遊技結果」ではない(完全停止が遊技結果である。)から、【図10】との関連がなく、これも上記補正事項には結びつかない。
以上のとおり、本件補正は当初明細書に記載された事項の範囲内でされたものではなく、自明な事項を追加したものと認めることもできないので、特許法17条の2第3項の規定に違反している。
なお、「図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報」であることは、平成17年1月19日付け手続補正後の請求項1にも記載されており、上記説示から、同手続補正も特許法17条の2第3項に規定する要件を満たさないことは明らかであるが、そのような拒絶理由は通知されていないので、本願を拒絶する理由とはしない。

[補正の却下の決定のむすび]
以上によれば、本件補正は特許法17条2の第3項の規定に違反しているから、特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年1月19日手続補正により補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「遊技に関する結果を表示する遊技結果表示手段と、
該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段と
を備えた遊技機において、
前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、該第2表示手段は前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域を有し、
該図柄表示領域に遊技情報を表示させる表示制御手段を備え、
前記第1表示手段は、1又は複数の可変表示可能な図柄表示部を有し、
該図柄表示部の可変表示の停止表示と略同時期に、前記表示制御手段が、前記停止表示された図柄に関連しかつ前記図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報を前記図柄表示領域に表示させることを特徴とする遊技機。」

2.引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-124290号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?クの記載が図示とともにある。
ア.「複数の回転リールを横方向に並列し、各回転リールの外周の表面に複数のシンボルマークを所定間隔で表示し、各回転リールの外周の表面の一部をフロントパネルに開設した表示窓に臨ませるとともに、各回転リールを回転させてシンボルマークを移動表示するスロットマシンにおいて、
上記フロントパネルには、前記表示窓の位置に少なくとも液晶表示装置を配置し、ゲームの開始前には液晶を遮光状態とするとともに、その遮光面にインフォメーションを液晶表示し、ゲーム中は液晶を透光状態としたことを特徴するスロットマシン」(【請求項1】)
イ.「センターパネル21のほぼ中央には、図2に示すように、3個の表示窓22?24を横並びに形成している。各表示窓22?24の内部には、各回転リール30?32の表面をそれぞれ臨ませている。そして、各表示窓22?24には、回転リール30?32を回転させることにより、上下方向に3個のシンボルマークを所定間隔で高速で移動表示させることができる。」(段落【0016】)
ウ.「前記センターパネル21の裏側には、図1に示すように、液晶表示装置を構成する液晶パネル40が、センターパネル21の裏面のほぼ全体にわたって配置されている。」(段落【0018】)
エ.「液晶パネル40の制御は、スロットマシン10内に設けたマイクロコンピュータ等からなる電気的制御装置(図示せず)により行われている。前記液晶パネル40の裏側には、図1に示すように、液晶パネル40をその裏側から照明するためのバックライトユニット50が配置されている。」(段落【0019】)
オ.「上記バックライトユニット50は、図1に示すように、各表示窓22?24の位置を除き、液晶パネル40の裏面のほぼ全体にわたって配置された面発光板51と、この乱反射板51の端面に配置された蛍光灯52とから構成されている。なお、面発光板51を、各表示窓22?24の位置を除いて配置したことから、液晶パネル40の透光状態では、スロットマシン10の内部に配置された各回転リール30?32のシンボルマークを、センターパネル21を透してスロットマシン10の前面より見ることができる。」(段落【0020】)
カ.「液晶の透光面の一部を遮光状態として、図4に示すように、中央ライン60を液晶表示して、1本の有効ラインを表示する。」(段落【0024】)
キ.「3個のストップスイッチ13?15を全て操作し、全ての回転リール30?32を停止させる。その結果、有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせが形成されると、特別の賞態様、例えば、図7に示す右下がりの斜めライン63上に「7」の文字から成る図柄が3個揃うと、いわゆる「ビッグボーナス」の役が成立し、15枚のメダルが遊技者に払い出される。」(段落【0028】)
ク.「「ビッグボーナス」が成立すると、図8に示すように、上下に長く透光状態となっていた各表示窓22?24が、右下がりの斜めライン63上に揃った「7」の図柄を残して遮光状態となり、「ビッグボーナス」の当たり図柄を遊技者から見易いように強調する。さらに、各表示窓22?24の図7において向かって右側に表示されていた5個のメダル投入表示部70?74が、消灯し、その箇所に、図8に示すように、「ビッグボーナス」の文字が表示され、「ビッグボーナス」が成立したことを遊技者にわかり易く表示する。」(段落【0029】)

3.引用例1記載の発明の認定
引用例1の記載イ?オ及び【図1】?【図3】によれば、各表示窓22?24の位置に対応する液晶パネル部分にはバックライトユニットが設けられておらず、バックライトユニットと液晶パネルは略同サイズと認めることができ、表現を変えれば、液晶パネルと略同サイズのバックライトユニットに各表示窓22?24該当の開口部があるということができる。
遊技者側からみると、液晶パネル、バックライトユニット(表示窓22?24該当の開口部あり)及び3個の回転リールが並んでいる。
したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「遊技者側からみて、液晶パネル、バックライトユニット及び3個の回転リールが並んで配置されたスロットマシンであって、
各回転リールは、外周の表面に複数の図柄を所定間隔で表示したものであり、
バックライトユニットには3個の開口部が設けられ、液晶パネルが透光状態であれば、各開口部を通して背後の回転リールを各リールごとに3図柄を視認できるように構成され、
液晶パネルの透光面の一部を遮光状態として、有効ラインを表示し、
全ての回転リールが停止し、有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせとしてビッグボーナスが成立すると、特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態とし、常時はメダル投入表示部とされる液晶パネル部分にビッグボーナスの文字を表示するスロットマシン。」(以下「引用発明1」という。)

4.本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
引用発明1において、「全ての回転リールが停止し、有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせとしてビッグボーナスが成立」したこと(それ以外にも、全ての回転リールが停止後に表示されるリール図柄も同じである。)及び「ビッグボーナスの文字」は「遊技に関する結果」であるから、引用発明1の「3個の回転リール」及び「液晶パネル」は本願発明の「第1表示手段」及び「第2表示手段」にそれぞれ相当し、これらを併せたものが本願発明の「遊技結果表示手段」に相当する。
引用発明1において「有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせ」となることは、本願発明の「遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合」と異ならず、引用発明1においても「遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態」となることは明らかであるから、引用発明1は本願発明の「利益状態発生手段」を備える。
引用発明1における液晶パネルの開口部該当部分は、同部分に有効ラインの表示がされていても、3個の回転リールを視認できることは明らかであるから、上記開口部該当部分は本願発明の「前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域」に相当する。請求人は審判請求理由においてこれに反する主張をするが採用できない。「前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され」ることも、当然一致点である。
引用発明1における「有効ライン」は「遊技情報」の1つであるから、「該図柄表示領域に遊技情報を表示させる表示制御手段」を備えることも、本願発明と引用発明1の一致点である。
引用発明1では「有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせが成立すると、特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態とし、常時はメダル投入表示部とされる液晶パネル部分にビッグボーナスの文字を表示」するのであり、かかる液晶パネルの制御は「有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせが成立する」ことを条件として行われる行われるということができ、「特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態」とすること及び「常時はメダル投入表示部とされる液晶パネル部分にビッグボーナスの文字を表示する」ことは、本願発明でいう「図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報」の表示に当たり、「全ての回転リールが停止」した際に行われるのであるから、表示時期が「該図柄表示部の可変表示の停止表示と略同時期」であることも一致点である。
引用発明1の「スロットマシン」が本願発明の「遊技機」に含まれることはいうまでもない。
したがって、本願発明と引用発明1は、
「遊技に関する結果を表示する遊技結果表示手段と、
該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段と
を備えた遊技機において、
前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、該第2表示手段は前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域を有し、
該図柄表示領域に遊技情報を表示させる表示制御手段を備え、
前記第1表示手段は、1又は複数の可変表示可能な図柄表示部を有し、
該図柄表示部の可変表示の停止表示と略同時期に、前記図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報を表示させる遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。
〈相違点〉遊技情報の表示につき、本願発明が「前記表示制御手段が、前記停止表示された図柄に関連しかつ前記図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報を前記図柄表示領域に表示」と限定しているのに対し、引用発明1においては、ビッグボーナス成立時に特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態とし、常時はメダル投入表示部とされる液晶パネル部分にビッグボーナスの文字を表示する点。

5.相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断
原査定の拒絶の理由に引用された特開2000-350805号公報(以下「引用例2」という。)は、発明の名称を「スロットマシン」とする公開公報であって、以下のケ?スの記載が図示とともにある。
ケ.「前面パネル103の中央部には図柄表示窓103a?103cが形成され、前面パネル103の背面側にある3つの回転リール105?107の外周部の複数の図柄のうちの前面側の3つの図柄が正面から見える。」(段落【0003】)
コ.「前面パネルの背面または背面近傍に設けられた情報表示パネルは、例えば透明EL(エレクトロルミネッセンス)素子等を主体にして構成した光透過性のある発光可能なパネルで構成され、所定の色に発光可能な複数行複数列のドットを介してドットパターンで表示可能なマトリクス表示部に、メダル投入で有効化される入賞ラインだけを表示させたり、複数文字のメッセージや絵図や線画を表示させたりすることができる。・・・情報表示パネルのマトリクス表示部に、説明情報やメッセージなどの文字、「当たり」や「大当たり」や「リーチ状態」のときなどに、ゲームを盛り上げるような種々の絵図、メダル投入枚数に応じて有効化された入賞ラインなどの線画等の情報表示をドットパターンで表示することができる。しかも、情報表示パネルは光透過性のものであるため、情報表示パネルを通して図柄表示部に表示された図柄を含む下地の図柄等を見ることができる。つまり、情報表示パネルへの表示情報と下地の図柄等を重ね合せて見ることができる。」(段落【0012】?【0013】)
サ.「先ず左側のストップボタン14を操作したとき、図14に示すように、回転リール5の図柄表示部5aに表示された3つの図柄を図柄表示窓3aを通して確認できる。このとき、3つの表示図柄のうち、入賞に関係する特定図柄(例えば、「7」)が存在するときには、その特定図柄に関連する入賞ラインL1だけが表示される。次にストップボタン15を所望のタイミングで操作したとき、図15に示すように、入賞ラインL1に対応して「7、7」が揃ったリーチ状態になったときには、・・・文字列と線画からなるリーチマークM5が点滅表示される。」(段落【0039】)
シ.「図16に示すように、リーチ状態になった左端の図柄「7」と中央の図柄「7」とにわたるフラッシュマークM6を点滅表示させるようにしてもよい。」(段落【0040】)
ス.「最後に、右端のストップボタン16を操作したとき、図19に示すように、入賞ラインL1上に「7、7、7」が揃った大当たり状態になったときには、ビッグボーナスに移行したことを示す為に、12個のビッグボーナスのランプマークM1a(未点灯を示すランプマーク)とランプマークM1(点灯を示すランプマーク)とが表示され、大当たりマークM7が点滅にて表示される。こうして、大当たりマークM7から大当たり状態が明確に分かり、ゲームを面白くし、遊技性を高めることができる。また、どの入賞ラインL1に関連するかも明瞭に分かる。尚、図20に示すように、大当たり状態になった3つの図柄「7、7、7」を囲むようにフラッシュマークM8を点滅表示させてもよい。」(段落【0041】)

引用例2の上記記載における、「特定図柄に関連する入賞ラインL1だけが表示」(記載コ)、「文字列と線画からなるリーチマークM5が点滅表示」(記載サ)、「フラッシュマークM6を点滅表示」(記載シ)、「大当たりマークM7が点滅にて表示」(記載ス)及び「フラッシュマークM8を点滅表示」(記載ス)は、すべて図柄表示部の可変表示の停止表示と略同時期に行われる遊技情報の表示であって、回転リール対向部(本願発明の「図柄表示領域」に相当)にて表示されるものである(図柄表示領域以外においても、一部表示されているが、本願発明は「可変表示の停止態様を強調する遊技情報を前記図柄表示領域に表示させる」ことの限定はあるものの、同情報を図柄表示領域外に表示させないことの限定はない。)。しかも、「大当たり状態になった」は引用発明1におけるビッグボーナス成立と同義と認めることができる。
そうであれば、引用発明1におけるビッグボーナス成立時の表示として、引用例2記載の「大当たりマークM7が点滅にて表示」又は「フラッシュマークM8を点滅表示」を採用し、表示制御手段にそのような表示を行わせることは当業者にとって想到容易である。そして、上記各表示が「停止表示された図柄に関連しかつ前記図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報」であることも明らかである。この点請求人は、「引用例2に記載のスロットマシンは、・・・本願発明のように、停止表示された図柄に関連する遊技情報を表示する構成ではありません。」(平成17年7月14日付け手続補正書(方式)4頁21?23行)と主張するが、大当たり状態になった(停止表示された図柄が「7、7、7」)場合の表示である以上、大当たりマークM7又はフラッシュマークM8は「停止表示された図柄に関連する遊技情報」に該当する。請求人の主張は採用の限りでない。
以上のとおりであるから、引用発明1に引用例2記載の技術を採用して、相違点に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。
したがって、本願発明は引用発明1及び引用例2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。

6.予備的判断
遊技結果を示す情報(引用発明1の「特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態とし、常時はメダル投入表示部とされる液晶パネル部分にビッグボーナスの文字を表示」や引用例2記載の「大当たりマークM7」又は「フラッシュマークM8」)を「遊技情報」と称することには何の問題もないが、仮に本願発明の「遊技情報」がその回の遊技進行に影響を及ぼす情報の趣旨であって、遊技結果を含まない趣旨であるとした場合の検討を行う。
その場合には、「該図柄表示部の可変表示の停止表示と略同時期に、前記表示制御手段が、前記停止表示された図柄に関連しかつ前記図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報を前記図柄表示領域に表示させること」の有無すべてが、本願発明と引用発明1の相違点になる。
そこで、この相違点の容易想到性について検討するに、引用例2記載の「特定図柄に関連する入賞ラインL1だけが表示」(記載コ)、「文字列と線画からなるリーチマークM5が点滅表示」(記載サ)又は「フラッシュマークM6を点滅表示」(記載シ)は、その回の遊技進行に影響を及ぼす情報、すなわち本願発明でいう「遊技情報」の表示であって、これら情報は「該図柄表示部の可変表示の停止表示と略同時期に、前記表示制御手段が、前記停止表示された図柄に関連しかつ前記図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報を前記図柄表示領域に表示」されている。
そして、引用発明1を出発点として、引用例2記載のこれら情報を表示することは当業者にとって想到容易といわなければならないから、結局のところ、「遊技情報」を狭義に解釈しても、本願発明の進歩性判断は変わらない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-20 
結審通知日 2008-02-26 
審決日 2008-03-11 
出願番号 特願2003-379097(P2003-379097)
審決分類 P 1 8・ 561- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 池谷 香次郎鉄 豊郎  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 土屋 保光
中槙 利明
発明の名称 遊技機  
代理人 藤田 和子  

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