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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06Q
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G06Q
管理番号 1176991
審判番号 不服2004-23526  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-17 
確定日 2008-05-01 
事件の表示 平成11年特許願第164167号「取引システム、取引サーバ、端末、及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年12月19日出願公開、特開2000-353203〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年6月10日の出願であって、平成16年10月12日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年11月17日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月16日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年12月16日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年12月16日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
平成16年12月16日付の手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲は以下のとおり補正された。
「 【請求項1】
ネットワークを介して接続された複数の端末と取引サーバとウェブサーバとを有し、所定の取引対象についての取引処理を実行する取引システムであって、
前記ウェブサーバは、
所定の処理を実行するためのモジュールと対応付けられているオークションページを記憶する記憶部と、
前記オークションページを前記端末に送信する送信制御部と
を有し、
前記端末は、
前記ウェブサーバから前記オークションページを読み込み、読み込んだ前記オークションページに対応付けられている前記モジュールを前記ウェブサーバに要求する読込要求を前記ウェブサーバに送信し、前記読込要求に基づいて前記ウェブサーバが送信した前記モジュールを読み込むページ読込部と、
前記ページ読み込み部が読み込んだ前記オークションページを表示するページ表示部と、
前記読込部が読み込んだ前記モジュールを実行するモジュール実行部と、
TCP/IPに従って前記取引サーバとの間の通信路を前記ネットワーク上に確立して維持する端末側通信路維持部と、
ユーザから前記所定の取引対象についての取引指示を示す取引指示情報を受け付ける取引指示受付部と、
前記取引指示受付部により入力された取引指示情報を前記通信路を介して前記取引サーバに送信する取引指示情報送信部と、
前記通信路を介して前記取引サーバから送信される前記取引処理の状況を受信する取引処理状況受信部と、
前記取引サーバから受信した前記取引処理状況を前記端末に表示された前記オークションページ上に表示する取引処理状況表示部と、
前記通信路が遮断されているか否かを検出する回線状況検出部と、
前記回線状況検出部により前記通信路が遮断されていると検出されたことに基づいて、前記通信路が遮断されていることを表示する遮断表示制御部と
を有し、
前記端末側通信路維持部、前記取引指示受付部、前記取引指示情報送信部、前記取引処理状況受信部、前記取引処理状況表示部の少なくとも一つは、前記モジュール実行部が前記モジュールを実行することにより構成され、
前記取引サーバは、
TCP/IPに従って前記複数の端末との間の通信路を前記ネットワーク上に確立して維持する通信路維持部と、
前記通信路を介して端末から取引指示情報を受信する取引指示情報受信部と、
前記取引指示情報に基づいて前記取引処理を実行する取引処理実行部と、
前記取引処理の状況が変化したことに基づいて、当該取引処理の状況を前記通信路を介して複数の前記端末に送信する取引処理状況送信部と、
を有することを特徴とする取引システム。
【請求項2】
前記端末は、
ユーザから前記取引処理への参加指示を受け付ける参加受付部と、
ユーザから前記取引処理からの退去指示を受け付ける退去受付部と
を有し、
前記端末側通信路維持部は、前記参加指示を受け付けたことに基づいて、前記通信路を確立し、前記退去指示を受け付けるまで前記通信路を維持し、
前記通信路維持部は、前記端末側通信路維持部により前記通信路が確立されることに基づいて前記端末の識別情報を記憶することにより前記通信路を確立し、前記通信路の維持がとかれることに基づいて前記端末の識別情報を削除して前記通信路の維持をとく
ことを特徴とする請求項1に記載の取引システム。
【請求項3】
端末から受け取った所定の取引対象についての取引指示を示す取引指示情報に基づいて、前記取引対象についての取引処理を実行する取引サーバであって、
複数の前記端末との間において、前記端末からの通信路の確立要求に基づいて前記端末の識別情報を記憶することにより前記通信路を確立及び維持し、前記端末からの通信の解除に基づいて前記端末の識別情報を削除して前記通信路の確立及び維持をとく通信路維持部と、
前記通信路を介して前記識別情報を有するいずれかの前記端末から前記取引指示情報を受信する取引指示受信部と、
前記取引指示情報に基づいて、前記取引処理を実行する取引処理実行部と、
前記取引処理の状況が変化したことに基づいて、当該取引処理の状況を前記通信路を介して前記識別情報を有する前記複数の前記端末に送信する取引処理状況送信部と
を有し、
前記通信維持部は、前記端末に、所定時間おきに前記通信路の接続状況を確認するための確認データを送信し、当該確認データが前記端末から受信できないことに基づいて当該端末との間の前記通信路の解除を行い、当該確認データが前記端末から送信されてきた場合には当該確認データに対応する応答データを当該端末に送信することを特徴とする取引サーバ。
【請求項4】
前記取引指示情報は、前記取引対象を取引するための希望額情報を有しており、
前記取引処理実行部は、前記端末から入力された希望額情報に基づいて前記取引対象を取引するための前記暫定取引額を更新し、
前記取引状況送信部は、前記暫定取引額が更新されたことに基づいて前記複数の端末に前記暫定取引額を送信する
ことを特徴とする請求項3に記載の取引サーバ。
【請求項5】
前記取引処理実行部は、前記暫定取引額と、当該暫定取引額に相当する前記希望額情報を送信した前記端末のユーザとを対応付けて管理する
ことを特徴とする請求項4に記載の取引サーバ。
【請求項6】
前記取引処理状況送信部は、前記暫定取引額と共に、当該暫定取引額に相当する前記希望額情報を送信した前記端末のユーザを示す情報を送信する
ことを特徴とする請求項5に記載の取引サーバ。
【請求項7】
前記取引処理が終了した時点における前記暫定取引額に相当する前記希望額情報を送信した前記端末のユーザに対して、取引処理が確定したことを示す取引確定通知を送信する取引確定通知部を更に備える
ことを特徴とする請求項5に記載の取引サーバ。
【請求項8】
前記取引処理実行部は、前記端末から前記暫定取引額より高い額を示す前記希望額情報が入力された場合に、前記暫定取引額を当該希望額情報が示す額に更新する
ことを特徴とする請求項5に記載の取引サーバ。
【請求項9】
前記取引処理実行部は、前記端末から前記暫定取引額より低い額を示す前記希望額情報が入力された場合に、前記暫定取引額を当該希望額情報が示す額に更新する
ことを特徴とする請求項3に記載の取引サーバ。
【請求項10】
前記取引指示情報は、取引対象の購入要求を有しており、
前記取引処理実行部は、前記取引対象の残り数量を管理し、前記購入要求に基づいて残り数量を更新し、
前記取引情報送信部は、残り個数が更新された場合に前記複数の端末に送信する
ことを特徴とする請求項3に記載の取引サーバ。
【請求項11】
前記取引指示情報は、取引対象の購入要求を有しており、
前記取引処理実行部は、所定の取引対象を取引するための暫定取引額を所定の時間が経過する毎に減らして更新し、
前記取引処理状況送信部は、更新された前記暫定取引額を複数の前記端末に送信する
ことを特徴とする請求項3に記載の取引サーバ。
【請求項12】
前記取引処理実行部は、取引終了までの残り時間を計測し、
前記取引情報送信部は、前記残り時間を前記複数の端末に送信する
ことを特徴とする請求項3に記載の取引サーバ。
【請求項13】
前記取引処理の開始又は終了の少なくとも一方について前記端末に通知する取引処理通知部を更に有する
ことを特徴とする請求項3に記載の取引サーバ。
【請求項14】
オークションページ及び前記オークションページに対応付けられたモジュールを送信するウェブサーバ、及び、所定の取引対象についての取引処理を実行する取引サーバとの間で取引に関する情報を送受信する端末であって、
前記ウェブサーバから前記オークションページを読み込み、読み込んだ前記オークションページに対応付けられている前記モジュールを前記ウェブサーバに要求する読込要求を前記ウェブサーバに送信し、前記読込要求に基づいて前記ウェブサーバが送信した前記モジュールを読み込むページ読込部と、
前記ページ読み込み部が読み込んだ前記オークションページを表示するページ表示部と、
前記読込部が読み込んだ前記モジュールを実行するモジュール実行部と、
TCP/IPに従って前記取引サーバとの間の通信路を前記ネットワーク上に確立して維持する端末側通信路維持部と、
ユーザから前記所定の取引対象についての取引指示を示す取引指示情報を受け付ける取引指示受付部と、
前記取引指示受付部により入力された取引指示情報を前記通信路を介して前記取引サーバに送信する取引指示情報送信部と、
前記通信路を介して前記取引サーバから送信される前記取引処理の状況を受信する取引処理状況受信部と、
前記取引サーバから受信した前記取引処理状況を前記端末に表示された前記オークションページ上に表示する取引処理状況表示部と、
前記通信路が遮断されているか否かを検出する回線状況検出部と、
前記回線状況検出部により前記通信路が遮断されていると検出されたことに基づいて、前記通信路が遮断されていることを表示する遮断表示制御部と
を有し、
前記端末側通信路維持部、前記取引指示受付部、前記取引指示情報送信部、前記取引処理状況受信部、前記取引処理状況表示部の少なくとも一つは、前記モジュール実行部が前記モジュールを実行することにより構成されることを特徴とする端末。
【請求項15】
端末から受け取った所定の取引対象についての取引指示を示す取引指示情報に基づいて、前記取引対象についての取引処理を実行する取引サーバを制御するプログラムであって、前記取引サーバに、
複数の前記端末との間において、前記端末からの通信路の確立要求に基づいて前記端末の識別情報を記憶することにより前記通信路を確立及び維持し、前記端末からの通信の解除に基づいて前記端末の識別情報を削除して前記通信路の確立及び維持をとく通信路維持機能、
前記通信路を介して前記識別情報を有するいずれかの前記端末から前記取引指示情報を受信する取引指示受信機能、
前記取引指示情報に基づいて、前記取引処理を実行する取引処理実行機能、および、
前記取引処理の状況が変化したことに基づいて、当該取引処理の状況を前記通信路を介して前記識別情報を有する前記複数の前記端末に送信する取引処理状況送信機能
を実現させ、
前記通信路維持機能は、前記端末により通信路が確立されることに基づいて前記端末の識別情報を記憶することにより前記通信路を確立し、前記通信路の維持がとかれることに基づいて前記端末の識別情報を削除して前記通信路の維持をとき、
前記通信路維持機能は、さらに、前記端末に、所定時間おきに前記通信路の接続状況を確認するための確認データを送信し、当該確認データが前記端末から受信できないことに基づいて当該端末との間の前記通信路の解除を行い、当該確認データが前記端末から送信されてきた場合には当該確認データに対応する応答データを当該端末に送信する
ことを特徴とするプログラム。
【請求項16】
前記端末側通信路維持部は、前記回線状況検出部により前記通信路が遮断されていると検出されたことに基づいて、前記通信路の再確立を行う請求項1に記載の取引システム。」

(2)補正の目的について
補正前の特許請求の範囲において、端末についての発明に関する請求項は請求項15のみであり、補正後の特許請求の範囲において、端末についての発明に関する請求項は請求項14のみであるので、補正後の請求項14は補正前の請求項15を補正したものと認められる。
そして、補正前の請求項15の記載は、平成16年8月5日付の手続補正書の特許請求の範囲の請求項15に記載された以下のとおりのものである。
「所定の取引対象についての取引処理を実行する取引サーバとの間で取引に関する情報を送受信する端末であって、
前記取引サーバとの間の通信路を前記ネットワーク上に確立して維持する端末側通信路維持部と、
ユーザから前記所定の取引対象についての取引指示を示す取引指示情報を受け付ける取引指示受付部と、
前記取引指示受付部により入力された取引指示情報を前記通信路を介して前記取引サーバに送信する取引指示情報送信部と、
前記通信路を介して前記取引サーバから送信される前記取引処理の状況を受信する取引処理状況受信部と、
前記取引処理状況を表示する取引処理状況表示部と、
前記通信路が遮断されているか否かを検出する回線状況検出部と、
前記回線状況検出部により前記通信路が遮断されていると検出されたことに基づいて、前記通信路が遮断されていることを表示する遮断表示制御部と
を有することを特徴とする端末。」
補正前の請求項15の記載からみて、補正後の請求項14に係る補正は、「前記ウェブサーバから前記オークションページを読み込み、読み込んだ前記オークションページに対応付けられている前記モジュールを前記ウェブサーバに要求する読込要求を前記ウェブサーバに送信し、前記読込要求に基づいて前記ウェブサーバが送信した前記モジュールを読み込むページ読込部と、前記ページ読み込み部が読み込んだ前記オークションページを表示するページ表示部と、前記読込部が読み込んだ前記モジュールを実行するモジュール実行部と、」の記載を追加する補正事項を含むと認められる。
補正後の請求項14に記載された「前記ウェブサーバから前記オークションページを読み込み、読み込んだ前記オークションページに対応付けられている前記モジュールを前記ウェブサーバに要求する読込要求を前記ウェブサーバに送信し、前記読込要求に基づいて前記ウェブサーバが送信した前記モジュールを読み込むページ読込部」、及び「前記ページ読み込み部が読み込んだ前記オークションページを表示するページ表示部」、及び「前記読込部が読み込んだ前記モジュールを実行するモジュール実行部」は、補正前の請求項15に記載された「前記取引サーバとの間の通信路を前記ネットワーク上に確立して維持する端末側通信路維持部」、「ユーザから前記所定の取引対象についての取引指示を示す取引指示情報を受け付ける取引指示受付部」、「前記取引指示受付部により入力された取引指示情報を前記通信路を介して前記取引サーバに送信する取引指示情報送信部」、「前記通信路を介して前記取引サーバから送信される前記取引処理の状況を受信する取引処理状況受信部」、「前記取引処理状況を表示する取引処理状況表示部」、「前記通信路が遮断されているか否かを検出する回線状況検出部」、及び「前記回線状況検出部により前記通信路が遮断されていると検出されたことに基づいて、前記通信路が遮断されていることを表示する遮断表示制御部」の下位概念ではなく、同位の概念であるので、当該補正事項は、補正前の請求項15に記載された「前記取引サーバとの間の通信路を前記ネットワーク上に確立して維持する端末側通信路維持部」、「ユーザから前記所定の取引対象についての取引指示を示す取引指示情報を受け付ける取引指示受付部」、「前記取引指示受付部により入力された取引指示情報を前記通信路を介して前記取引サーバに送信する取引指示情報送信部」、「前記通信路を介して前記取引サーバから送信される前記取引処理の状況を受信する取引処理状況受信部」、「前記取引処理状況を表示する取引処理状況表示部」、「前記通信路が遮断されているか否かを検出する回線状況検出部」、及び「前記回線状況検出部により前記通信路が遮断されていると検出されたことに基づいて、前記通信路が遮断されていることを表示する遮断表示制御部」に、「前記ウェブサーバから前記オークションページを読み込み、読み込んだ前記オークションページに対応付けられている前記モジュールを前記ウェブサーバに要求する読込要求を前記ウェブサーバに送信し、前記読込要求に基づいて前記ウェブサーバが送信した前記モジュールを読み込むページ読込部」、「前記ページ読み込み部が読み込んだ前記オークションページを表示するページ表示部」、及び「前記読込部が読み込んだ前記モジュールを実行するモジュール実行部」を新たに追加するものであるので、補正前の発明特定事項を限定的に減縮するものとは認められない。
したがって、当該補正事項は、特許法第17条の2第4項第2号に掲げられた「特許請求の範囲の減縮(第三十6条第5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものであつて、その補正前の当該請求項に記載された発明とその補正後の当該請求項に記載される発明の産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるものに限る。)」を目的とするものに該当するとは認められない。
また、当該補正事項が、特許法第17条の2第4項第1号に掲げられた「第三十6条第5項に規定する請求項の削除」を目的とするものにも、同項第3号に掲げられた「誤記の訂正」を目的とするものにも、同項第4号に掲げられた「明りようでない記載の釈明(拒絶理由通知に係る拒絶の理由に示す事項についてするものに限る。)」を目的とするものにも該当しないことは明らかである。
よって、当該補正事項は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていない。

(3)本件補正についてのまとめ
以上のとおり、当該補正事項は、特許法第17条の2第4項に規定する要件を満たしていないので、当該補正事項を含む本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明
平成16年12月16日付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項15に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成16年8月5日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項15に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「所定の取引対象についての取引処理を実行する取引サーバとの間で取引に関する情報を送受信する端末であって、
前記取引サーバとの間の通信路を前記ネットワーク上に確立して維持する端末側通信路維持部と、
ユーザから前記所定の取引対象についての取引指示を示す取引指示情報を受け付ける取引指示受付部と、
前記取引指示受付部により入力された取引指示情報を前記通信路を介して前記取引サーバに送信する取引指示情報送信部と、
前記通信路を介して前記取引サーバから送信される前記取引処理の状況を受信する取引処理状況受信部と、
前記取引処理状況を表示する取引処理状況表示部と、
前記通信路が遮断されているか否かを検出する回線状況検出部と、
前記回線状況検出部により前記通信路が遮断されていると検出されたことに基づいて、
前記通信路が遮断されていることを表示する遮断表示制御部と
を有することを特徴とする端末。」

4.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開平10-320470号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
(a)「【0048】(第2の実施の形態)次に、本発明の第2の実施の形態として、例えば、複数の利用者がそれぞれ希望価格を提示し、それらの価格のうち高価格を提示した利用者が商品を購入することができる競売形式の販売が可能な電子取引システムについて説明する。この電子取引システムは、図8に示すように、購入者端末31と、販売者端末33と、公証機関35と、決済機関37と、銀行ホスト39と、これらを接続するためのネットワーク40と、を備える。
【0049】購入者端末31は、競売に参加するための端末であり、表示部、記憶部、入力部、通信制御部等を有し、記憶部は、公証機関35に接続するための通信プログラム、競売時における動作プログラム、該端末を特定する端末ID、等を記憶する。販売者端末33は、販売者が競売に出品する商品を公証機関35に登録するための端末であり、表示部、記憶部、入力部、通信制御部等を有し、記憶部は、公証機関35に接続するための通信プログラム、商品の登録処理を行う動作プログラム、該端末を特定する端末ID、等を記憶する。決済機関37と銀行ホスト39は、第1の実施の形態における決済機関17と銀行ホスト19とそれぞれ同様の構成を有する。
【0050】公証機関35は、販売者により登録された商品について競売を行うための中立機関であり、サーバ等のコンピュータから構成される。公証機関35は、図9に示すように、登録DB41と、競売DB43と、履歴DB47と、制御部49と、を備える。
【0051】登録DB41は、第1の実施の形態における登録DB21と同様の構成を有する。本システムは、取引の安全性を保持するため、第1の実施の形態と同様、登録者のみが使用できるシステムとする。本システムへの登録方法は、第1の実施の形態における登録方法と同様である。競売DB43は、販売者が競売に出品する商品の情報(競売情報)を登録するためのDBである。競売情報は、例えば、出品対象の商品の商品名、商品の個数、販売者の利用者コード、等を含む。この競売DB43への登録処理については後述する。履歴DB47は、競売において、成立した取引の履歴情報を記憶する。制御部49は、販売者から登録された競売情報の管理、競売の実施等を行い、取引が成立した場合、その取引の決済に必要な決済情報(購入者/販売者の利用者コード、決済金額、等)を決済機関37に通知する。
【0052】次に、販売者が販売者端末33を用いて競売に出品したい商品を公証機関35に登録するための登録処理について説明する。まず、販売者は、販売者端末33に競売の登録要求を入力する。この入力に応答し、販売者端末33は、出品対象の商品の商品名、在庫数、販売者の利用者コード、等の情報(登録用データ)を販売者に入力させるための登録用画面を表示する。販売者は、これらのデータを全て入力し、例えば、入力完了ボタンを選択する。これに応答し、販売者端末33は、入力された登録用データを競売登録要求と共にネットワーク40を介して公証機関35に送信する。
【0053】公証機関35は、販売者端末33からの競売登録要求に応答し、受信した登録用データを競売データとして競売DB43に登録する。この登録の際、公証機関35は、競売データを特定するための競売コードを生成し、対応する競売データと共に競売DB43に記憶する。登録後、公証機関35は、販売者端末33に登録完了信号を送信する。販売者端末33は、登録完了信号を受信し、登録が完了した旨のメッセージを表示する。これにより、販売者は、競売に出品したい商品を公証機関35に登録することができる。
【0054】上記方法で競売DB43に登録された情報は、例えば、所定のタイミングで利用者に提示される。提示方法は、任意であり、例えば、公証機関35が、利用者からの要求に応じて、最新の競売情報(例えば、1ヶ月以内に予定されている競売の情報等)を送信してもよい。参加したい競売があった場合、利用者は、その競売について、参加の申し込みをする。例えば、利用者が購入者端末31に、利用者コードと所望の競売の参加申込要求を入力し、購入者端末31によりネットワーク40を介して公証機関35に送信される。なお、送信される参加申込要求は、競売を特定する競売コードを含む。公証機関35は、各競売について、参加者を登録するための参加者テーブルを有する。公証機関35は、購入者端末31からの参加申込要求に応答し、受信した利用者コードが登録DB41に登録されていることを確認し、その利用者コードを該当する競売の参加者テーブルに登録する。る。
【0055】なお、本システムはオンラインで取引を行うため、回線負荷によるレスポンスの低下を考慮して、各取引(競売)に対してそれぞれ定員を設定してもよい。この場合、例えば、公証機関35は、各競売において、申込が定員になった場合、受付を終了する。
【0056】公証機関35は、競売中、参加者へのデータ送信を一斉に行う(マルチキャスト)ため、競売開始前、競売コードに対応するグループIDを生成し、各参加者の購入者端末31に配布する。例えば、競売開始前、上記登録処理により競売参加の申込をした利用者は、購入者端末31に利用者コードと競売開始要求を入力する。入力された利用者コードと競売開始要求は、ネットワーク40を介して公証機関35に送信される。公証機関35は、購入者端末31からの競売開始要求に応答して、受信した利用者コードが記憶されている参加者テーブルを検索することにより、送信元の利用者が参加の申込をした競売の競売コードを特定する。次に、公証機関35は、競売コードに対応するグループIDを送信元の購入者端末31に送信する。購入者端末31は、受信したグループIDを記憶する。
【0057】競売開始時、公証機関35は、グループIDを配布した各購入者端末31に競売の開始を通知する。この通知の受信に応答して、グループIDを有する各購入者端末31は、競売開始のメッセージを表示する。参加者は、購入者端末31に所望の価格を入力する。このときの購入者端末31の表示画面(競売用画面)の一例を図10に示す。図示されるように、競売用画面には、商品名と在庫数とが表示され、所望の価格を入力するための入力欄C3がある。また、競売用画面は、競売の各参加者が提示した価格の推移を示すグラフが表示される領域(価格表示エリア)A1を備える。
【0058】参加者は、例えば、図10に示す競売用画面の入力欄C3に所望の価格を入力し、送信ボタンを選択する。この選択に応答し、購入者端末31は、入力された価格と利用者コードと、グループIDと、をネットワーク40を介して公証機関35に送信する。これに応答して、公証機関35は、受信した価格と利用者コードを一時的に記憶すると共に、受信した価格をグループIDを付与した各購入者端末31に一斉送信する。各購入者端末31は、公証機関35から受信した価格に従って競売用画面の価格表示エリアA1に表示しているグラフを更新する。これにより、各参加者は、他の参加者が提示した価格をリアルタイムで知ることができる。なお、各参加者が提示した価格の表示方法はグラフに限定する必要はなく、例えば、数値で表示してもよい。
【0059】競売開始から所定時間経過時、公証機関35は、参加者からの価格の受付を終了する。公証機関35は、受信した参加者からの価格を参照して、高価格の順番に、商品の在庫数と同一の数だけ利用者コードを選択し、落札決定のメッセージを送信する。また、それ以外の参加者には、落札できなかった旨のメッセージを送信して競売を終了する。競売終了後、公証機関35は、落札者の情報(氏名、住所、等)を販売者に通知すると共に、決済機関37に取引価格を含む取引の決済の指示を送信する。この際、公証機関35は、落札者が提示した価格のうち、例えば、最低価格を落札価格と決定する。決済機関37は、この指示に応答して、落札者の口座から販売者の口座に指示された金額(落札価格)をそれぞれ振り替えるよう銀行ホスト39に指示する。銀行ホスト39は、この指示に従って、振替処理をする。これにより、オンライン上でのリアルタイムな競売が可能となる。また、この場合も、競売に参加している利用者の情報は、他の参加者及び販売者には通知されないため、プライバシーが守られる。」(第10頁右欄第1行-第11頁右欄第44行)

そして、上記摘記事項(a)の段落【0050】の記載からみて、引用例1には、「公証機関(35)」をサーバで構成することが開示されており、引用例1に記載された事項において、「競売形式の販売」は取引の一種であると認められるので、その「公証機関(35)を構成するサーバ」は取引対象である商品について取引処理を実行していると認められる。
また、引用例1に記載された事項において、「購入者端末(31)」は、「公証機関(35)」との間で「価格」等の登録データの送受信を行っているので、「購入者端末(31)」は、購入者端末側通信路維持部と、情報送信部と、情報受信部を備えていることは明らかである。
また、同様に、「購入者端末(31)」は参加者から提示され、入力された価格を受け付けているので、価格受付部を備えていることも明らかである。
また、引用例1に記載された事項において、「購入者端末(31)」は、「公証機関(35)」から送られてきた価格等の情報を受信しているので、情報受信部を備えていることも明らかである。
さらに、引用例1に記載された事項において、「購入者端末(31)」は、その競売画面に価格の状況を表示しているので、価格状況表示部を備えていることは明らかである。
してみると、引用例1には、
『所定の取引対象について取引処理を実行する「公証機関(35)を構成するサーバ」との間で取引に関する情報を送受信する「購入者端末(31)」であって、
前記「公証機関(35)を構成するサーバ」との間の通信路を前記ネットワーク上に確立して維持する購入者端末側通信路維持部と、
参加者から、所定の商品について提示された価格を含む登録データを受け付ける価格受付部と、
前記価格受付部により入力された価格を前記通信経路を介して前記「公証機関(35)を構成するサーバ」に送信する情報送信部と、
前記通信経路を介して前記「公証機関(35)を構成するサーバ」から送信される各「購入者端末(31)」から入力された価格の状況を受信する取情報受信部と、
参加者が入札した価格の状況を表示する価格状況表示部と
を有することを特徴とする「購入者端末(31)」。』
との発明(以下「引用例発明」という。)が開示されている。

5.対比
本願発明と引用例発明とを比較すると、引用例発明の「公証機関(35)を構成するサーバ」、「購入者端末(31)」、「価格を含む登録データ」、「各購入者端末(31)から入力された価格の状況」、「参加者」、「商品」、「購入者端末側通信維持部」、「価格受付部」、「情報送信部」、「情報受信部」、「価格状況表示部」は、それぞれ本願発明の「取引サーバ」、「端末」、「取引指示情報」、「取引処理の状況」、「ユーザ」、「取引対象」、「端末側通信維持部」、「取引指示受付部」、「取引指示情報送信部」、「取引指示情報受信部」、「取引処理状況表示部」に相当するので、両者は、
「所定の取引対象についての取引処理を実行する取引サーバとの間で取引に関する情報を送受信する端末であって、
前記情報処理手段との間の通信路を前記ネットワーク上に確立して維持する端末側通信路維持部と、
ユーザから前記所定の取引対象についての取引指示を示す取引指示情報を受け付ける取引指示受付部と、
前記取引指示受付部により入力された取引指示情報を前記通信路を介して前記取引サーバに送信する取引指示情報送信部と、
前記通信路を介して前記取引サーバから送信される前記取引処理の状況を受信する取引処理状況受信部と、
前記取引処理状況を表示する取引処理状況表示部と
を有することを特徴とする端末。」
の点で一致し、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願発明では、端末が、通信路が遮断されているか否かを検出する回線状況検出部と、前記回線状況検出部により前記通信路が遮断されていると検出されたことに基づいて、前記通信路が遮断されていることを表示する遮断表示制御部とを有するのに対し、引用例発明では、端末が、そのような回線状況検出部及び遮断表示制御部を有していない点。

6.当審の判断
(相違点1について)
例えば、特開昭62-200841号公報には、回線が切断されているか否かを検出する回線切断検出回路と、この回路切断回路の検出出力により消灯表示により回線が切断されていることを表示する表示装置とを備えることが記載されている。
そして、特開昭62-200841号公報に記載された事項の「回線」、「切断」、「回線切断検出回路」、「表示装置」は、本願発明の「通信路」、「遮断」、「回線状況検出部」、「遮断表示制御部」に相当する。
また、例えば、特開平10-89980号公報には、ネットワークへの接続が切断されていることを検出する通信状態検出手段と、通信状態検出手段により接続が切断されていることが検出された場合にネットワークへの接続の切断を表すアイコンを出力する出力手段とを備えることが記載されている。
そして、特開平10-89980号公報に記載された事項の「ネットワーク」、「接続の切断」、「通信状態検出手段」、「出力手段」は、本願発明の「通信路」、「遮断」、「回線状況検出部」、「遮断表示制御部」に相当する。
したがって、通信路が遮断されているか否かを検出する回線状況検出部と、前記回線状況検出部により前記通信路が遮断されていると検出されたことに基づいて、前記通信路が遮断されていることを表示する遮断表示制御部とを備えることは、特開昭62-200841号公報や特開平10-89980号公報において開示されているように当該技術分野で周知技術である。
してみると、当該周知技術を引用例発明に適用して、引用例発明において、通信路が遮断されているか否かを検出する回線状況検出部と、前記回線状況検出部により前記通信路が遮断されていると検出されたことに基づいて、前記通信路が遮断されていることを表示する遮断表示制御部とを設けることは当業者が容易に考えられる事項である。
したがって、相違点1に係る本願発明の構成は、引用例発明及び上記周知技術に基づいて、当業者が容易に想到しえたものである。

そして、本願発明の作用効果も、引用例1及び周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。
したがって、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

7.結び
以上のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-26 
結審通知日 2008-03-04 
審決日 2008-03-19 
出願番号 特願平11-164167
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06Q)
P 1 8・ 575- Z (G06Q)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 谷口 信行  
特許庁審判長 赤穂 隆雄
特許庁審判官 ▲吉▼田 耕一
森次 顕
発明の名称 取引システム、取引サーバ、端末、及び記録媒体  
代理人 龍華 明裕  

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