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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) B60J
管理番号 1177004
審判番号 不服2005-10556  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-08 
確定日 2008-05-01 
事件の表示 特願2002-258471号「ミラー付き車両用サンバイザー」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月25日出願公開、特開2004- 90883号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年9月4日の出願であって、平成17年5月9日付けで拒絶査定がされた後、これに対し、同年6月8日に拒絶査定不服審判の請求がなされ、その後、当審において、平成19年10月31日付けで拒絶理由を通知したところ、同年12月18日に意見書及び手続補正書が提出されたものである。

2.本願発明
本願の請求項1?3に係る発明は、平成19年12月18日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?3に記載された事項により特定される次のとおりのものにある(以下、請求項3に係る発明を「本願発明」という。)。

「【請求項1】
車両のルーフに取り付けられ、有底の凹溝からなるミラー取付凹部が形成されたサンバイザー本体と、
前記ミラー取付凹部内に固定して取り付けられたミラー取付枠及びミラー取付枠内に取り付けられたミラー本体からなるバニティミラーと、
前記ミラー本体の前記ミラー取付凹部側となる背面に貼り付けられた粘着テープと、を備えてなるミラー付き車両用サンバイザーであって、
前記ミラー取付枠は、その一方の表面及び他方の表面のそれぞれに前記ミラー本体を抜止状態に保持する一対のストッパを有し、
前記粘着テープは、前記ミラー本体の前記背面と、前記一方の表面側のストッパと、前記ミラー取付枠の一方の表面及び側面とに跨って貼り付けられ、前記ミラー本体を前記ミラー取付枠に固定する
ことを特徴とするミラー付き車両用サンバイザー。
【請求項2】
前記バニティミラーの前記ミラー本体は、左右方向に細長な略長方形状に形成し、前記粘着テープは、ミラー本体の長さ寸法または幅寸法よりも長尺に形成してなる請求項1に記載のミラー付き車両用サンバイザー。
【請求項3】
車両のルーフに取り付けられ、有底の凹溝からなるミラー取付凹部が形成されたサンバイザー本体と、
前記ミラー取付凹部内に固定して取り付けられたミラー取付枠及びミラー取付枠内に取り付けられたミラー本体からなるバニティミラーと、
前記ミラー本体の前記ミラー取付凹部側となる背面に前面に亘って貼り付けられた第1の粘着テープと、
前記第1の粘着テープの長さ方向とほぼ直交する方向に配置され、前記第1の粘着テープの表面と前記ミラー取付枠とに跨って貼り付けられた第2の粘着テープとを備えてなるミラー付き車両用サンバイザー。」

3.引用刊行物とその記載事項
当審が平成19年10月31日付けの拒絶理由通知で引用した実願平5-55397号(実開平7-23611号)のCD-ROM(以下「第1引用例」という。)には、「ミラーユニット取付構造」に関して、図1?8とともに次の事項が記載されている。

(イ)「【0002】
【従来の技術】
図7に示すように、自動車用サンバイザ1は、フロント側乗員の斜め上方に設置され、太陽光線等を遮蔽し、乗員の走行視界を有効に確保する機能をもつが、特に、補助席側に設置されるサンバイザ1には、サンバイザ本体2のほぼ中央にミラーユニット3を付設したものが多い。」

(ロ)「【0020】
図1,図2において、本実施例による自動車用サンバイザ10は、所望の遮光面積を有するサンバイザ本体20と、このサンバイザ本体20に取付けられるミラーユニット30とから構成されている。
【0021】
さらに詳しくは、上記サンバイザ本体20は、ループ状をなすワイヤフレーム21をインサートした発泡樹脂芯材22の表面にクロス,塩ビシート等の表皮材23を被包して構成されており、このサンバイザ本体20の表面には、上記ミラーユニット30を収容する凹所24が形成されており、この凹所24の全周に沿って、図2に示すアンダーカット状フランジ25が一体成形されている。
【0022】
一方、ミラーユニット30は、化粧用ミラー31の周縁に沿って額縁状の樹脂成形体からなるミラーケース32によりサポートされ、化粧用ミラー31の裏面には飛散防止用テープ33が貼着されている。
【0023】
次いで、図3に基づいて、本考案によるミラーユニット30の取付構造について説明すると、サンバイザ本体20に形成される凹所24における内側面24a間の距離、例えば上下寸法を図3中aで表わすと、ミラーユニット30の上下寸法bはほぼ同一寸法に設定されているとともに、凹所24の入口部分は、凹所24の周縁に沿ってアンダーカット状フランジ25が凹所24の開口を狭めるように突設形成されているため、アンダーカット状フランジ25の突出寸法(図中符号cで示す)を設定した分だけ凹所24の開口面積が小さく設定されることになる。
【0024】
尚、ミラーユニット30を取付けるに当たっては、サンバイザ本体20をその凹所24の入口の開口面積を広げるようにサンバイザ本体20を裏面側に反らせた状態で、ミラーユニット30をサンバイザ本体20の凹所24内に挿入する。
そして、ミラーユニット30の凹所24内への挿入作業が完了すれば、サンバイザ本体20の撓みを解除して原形に戻せば、ミラーユニット30は凹所24内に収容され、かつミラーユニット30の周縁に沿って、アンダーカット状フランジ25がその表面を押圧保持する構成となる。」

上記記載事項(イ)から自動車用サンバイザは、フロント側乗員の斜め上方に設置され、通常、「ルーフ」に取り付けられるものである。

したがって、上記記載事項(イ)、(ロ)及び第1?8図の記載を総合すると、第1引用例には、

「自動車のルーフに取り付けられ、ミラーユニット30を収容する凹所24が形成されたサンバイザ本体20と、
前記凹所24内に収容されアンダーカット状フランジ25により押圧保持された額縁状のミラーケース32及びミラーケース32内にサポートされた化粧用ミラー31からなるミラーユニット30と、
前記化粧用ミラー31の前記凹所24側となる裏面に貼着された飛散防止用テープ33を備えてなるミラー付き自動車用サンバイザ10」

の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

また、同じく当審が平成19年10月31日付けの拒絶理由通知で引用した特開昭58-7082号公報(以下「第2引用例」という。)には、第1?4図とともに次の事項が記載されている。

(ハ)「本発明は、窓ガラス等の破片の飛散を防止するようにしたガラス飛散防止方法に係わる。
最近、ガス爆発、地震等による災害で窓ガラス等の破片が飛散し、負傷事故が発生していることが社会間題化されている。一方、第1図及び第2図に示すように、固定枠体(11)に保持された窓ガラス(2)の表面に貼着し、ガラス破片の飛散を防止するようにした所謂ガラス飛散防止フイルム(3)が開発されている。このガラス飛散防止フイルム(3)は、一般的な窓ガラス等に貼着した状態で、この窓ガラスに物体が衝突した場合にはほぼ完全に窓ガラスの飛散を阻止する。しかし乍ら、問題のガス爆発等によるガラスの破壊と飛散に関しては、爆発エネルギーが小さい場合には窓ガラス飛散を防止する可能性があるにしても、爆発エネルギーが大きい場合には第2図の鎖線(5)に示すように窓ガラス(2)等は防止フイルム(3)と一体となつて飛散することが実験で判明した。
本発明は、上述の点に鑑み爆発エネルギ-が大きい場合においても、ガラス飛散をより確実に防止できるようにした改善したガラス飛散防止方法を提供するものである。」(第1ページ左下欄第9行?同ページ右下欄第10行)

(ニ)「以下、図面を用いて本発明を説明する。なお、図は窓ガラスの飛散防止に適用した場合である。
本発明においては、第3図及び第4図に示すように固定枠体(1)に保持されたガラス板即ち窓ガラス(2)の表面(外側面を可とする)にガラス飛散防止フイルム(3)を貼着すると共に、この防止フイルム(3)と枠体(1)とを高引張強度を有する粘着テープ(4)にて固定する。この粘着テープ(4)としては例えばガラスフイラメントテープ、ポリエステルフイラメントテープ等を用い得、この場合防止フイルム(3)の上辺を枠体(1)に固定するようになす。又粘着テープ(4)は透明又は着色されたもの等を使用でき、着色テープの場合は外部から防止処理が施されているのが確認できる利点がある。斬る構成によれば、爆発エネルギーが小さい場合には第1図及び第2図で説明したと同様に防止フイルム(3)によつて窓ガラス(2)の破片飛散は防止される。一方、爆発エネルギーが大きい場合には、第4図の鎖線(6)で示すように破損した窓ガラス(2)が防止フイルム(3)と一体となつて枠体(1)より外れるも、このとき高引張強度のテープ(4)により枠体(1)の上辺で保持され窓ガラス(2)の飛散が阻止される。これは実験によつて確認された。
このように、本発明は爆発事故等による衝撃波、爆風(圧)によるガラスの破損、飛散を小さな爆発エネルギーのみならず、エネルギーが大きい場合においてもガラス飛散防止の効果を奏するものであり、特にビルなどのガラス窓等に適用して好適ならしめるものである。」(第1ページ右下欄第13行?第2ページ左上欄第19行)

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「自動車」は、本願発明の「車両」に相当し、以下同様に、「サンバイザ本体20」は「サンバイザー本体」に、「ミラーケース32」は「ミラー取付枠」に、「化粧用ミラー31」は「ミラー本体」に、「ミラーユニット30」は「バニティミラー」にそれぞれ相当する。
また、引用発明の「凹所24」は、上記記載事項(ロ)や図面から分かるように、「有底の凹溝」の形状であって、本願発明の「ミラー取付凹部」に相当する。
引用発明のミラーケース32は、凹所24内に収容され、アンダーカット状フランジ25により押圧保持されているので、凹所24内に「固定して取り付け」られているといえる。
引用発明の化粧用ミラー31は、上記記載事項(ロ)や図面からも明らかなように、額縁状のミラーケース32にサポートされているので、ミラーケース32「内」に「取り付け」られている。
引用発明の「飛散防止用テープ33」は、化粧用ミラー31の裏面に貼着されていることから、「粘着テープ」であるといえ、本願発明の「第1の粘着テープ」に相当する。そして、化粧用ミラー31の裏面は、化粧用ミラー31の「背面」であるので、化粧用ミラー31の裏面に貼着されている飛散防止用テープ33は、化粧用ミラー31の「背面」に「貼り付け」られている。

そうすると、本願発明と引用発明とは、
「車両のルーフに取り付けられ、有底の凹溝からなるミラー取付凹部が形成されたサンバイザー本体と、
前記ミラー取付凹部内に固定して取り付けられたミラー取付枠及びミラー取付枠内に取り付けられたミラー本体からなるバニティミラーと、
前記ミラー本体の前記ミラー取付凹部側となる背面に貼り付けられた第1の粘着テープとを備えてなるミラー付き車両用サンバイザー。」

で一致し、次の点で相違する。

[相違点1]
本願発明では、第1の粘着テープがミラー本体のミラー取付凹部側となる背面に前面に亘って貼り付けらているのに対して、引用発明では、化粧用ミラー31の凹所24側となる裏面に貼着された飛散防止用テープ33の貼着範囲が不明である点。

[相違点2]
本願発明では、第1の粘着テープの長さ方向とほぼ直交する方向に配置され、第1の粘着テープの表面とミラー取付枠とに跨って貼り付けられた第2の粘着テープとを備えてなるのに対して、引用発明では、第1の粘着テープに相当する飛散防止用テープ33のみである点。

5.判断
次に、上記相違点1及び2について検討する。

[相違点1について]
まず、本願発明の発明特定事項が記載された請求項3には、「前記ミラー本体の前記ミラー取付凹部側となる背面に前面に亘って貼り付けられた第1の粘着テープ」と記載されているが、該「前面」について、「背面に前面」とは意味が不明であって、また、本願明細書を参酌すると「全面」の誤記であることが分かるので、以下、「前面」は、「全面」の誤記であるとして検討していく。
引用発明の飛散防止用テープ33は、化粧用ミラー31の凹所24側となる裏面のどの程度の範囲に貼着されているのか不明ではあるが、図面では、化粧用ミラー31と飛散防止用テープ33とは同じ大きさとして記載され、更に、飛散防止用テープ33が飛散防止を図るためには、飛散防止を図れるだけの十分な大きさであることは自明であり、また、第2引用例の飛散防止フイルム3が窓ガラス2のほぼ全面に貼着されていることを考慮すると、引用発明の飛散防止用テープ33を化粧用ミラー31の裏面の全面に亘って貼着して、上記相違点1に係る本願発明の構造とすることに格別の困難性はない。

[相違点2について]
第2引用例には、上記記載事項(ハ)、(ニ)や図面から分かるように、爆発エネルギーが大きい場合でもガラス飛散を確実に防止するために、窓ガラス2(本願発明の「ミラー本体」に対応。)の表面にガラス飛散防止フイルム3(本願発明の「第1の粘着テープ」に対応。)を貼着することによりガラス破片の飛散を防止すると共に、固定枠体1(本願発明の「ミラー取付枠」に対応。)の上辺とガラス飛散防止フイルム3の上辺とを高引張強度を有する粘着テープ4で固定し、窓ガラス2が固定枠体1から外れても窓ガラス2の飛散を阻止することが記載されている。
すなわち、窓ガラス2自体の飛散を防止するために、ガラス飛散防止フイルム3以外に、固定枠体1の上辺とガラス飛散防止フイルム3の上辺とを固定する高引張強度を有した粘着テープ4を設けている。
ここで、引用発明の化粧用ミラー31は、エアバッグ作動による干渉によって、衝撃力を受け得る位置(補助席側)に配置されるものであって、ミラーケース32から脱落し得る構造のものである。なお、第1引用例には、化粧用ミラー31はミラーケース32に「サポートされ」と記載され、具体的な取付構造は明らかではないが、エアバッグ作動による干渉によって衝撃力を受けた場合、化粧用ミラー31がミラーケース32から脱落しないとは技術的に考えにくい。このことから、引用発明には、化粧用ミラー31の脱落を防止しようとする課題が内在しているといえる。
以上のことから、引用発明において、第2引用例の上記記載事項を参酌して、化粧用ミラー31の脱落を防止するために、飛散防止用テープ33とミラーケース32とに跨って粘着テープを設けるに際し、化粧用ミラー31には重力が掛かることから、第2引用例の粘着テープ4のように、少なくともミラーケース32の上辺に粘着テープを貼り付けることが自然であり、落下防止を図り得る効率的な位置として、例えば、飛散防止用テープ33の長手方向とほほ直交する方向に飛散防止用テープ33とミラーケース32とに跨って貼り付け、上記相違点2に係る本願発明の構造とすることは格別困難であるとはいえない。

そして、本願発明の作用効果も、引用発明、第2引用例に記載された事項から当業者が予測できる範囲内のものである。

したがって、本願発明は、引用発明、第2引用例に記載された事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項3に係る発明)は、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、引用発明、第2引用例に記載された事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-01 
結審通知日 2008-02-05 
審決日 2008-03-19 
出願番号 特願2002-258471(P2002-258471)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (B60J)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 黒瀬 雅一  
特許庁審判長 高木 進
特許庁審判官 山内 康明
柿崎 拓
発明の名称 ミラー付き車両用サンバイザー  
代理人 磯野 道造  

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