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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G10L 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G10L |
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管理番号 | 1177063 |
審判番号 | 不服2005-25409 |
総通号数 | 102 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-12-28 |
確定日 | 2008-04-30 |
事件の表示 | 平成 8年特許願第348439号「音声合成方法および装置」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 7月14日出願公開、特開平10-187195〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続きの経緯 本願は、平成8年12月26日の出願であって、平成17年11月28日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年12月28日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに平成18年1月27日に手続補正がなされたものである。 第2 平成18年1月27日付けの手続補正の却下について 1 補正却下の決定の結論 平成18年1月27日付けの手続補正を却下する。 2 理由 (1) 補正後の本願発明 本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は次のとおり補正された。(請求項の数は全部で20項である。) 「【請求項1】 音声波形のパラメータ系列に基づいて合成音声を出力するための音声合成装置であって、 周波数空間における音声のパワスペクトル包絡を表す波形パラメータに基づいて決定される第1の余弦関数と、波形パラメータと合成音声の声の高さを表すピッチパラメータに基づいて決定される第2の余弦関数と、ピッチパラメータに基づいて決定される正弦関数と、前記波形パラメータに対応する周波数の変更によりパワスペクトル包絡の形状を変化させる変換関数との積和により各ピッチパラメータ毎に求まる波形生成行列を格納する格納手段と、 前記格納手段より得られるピッチパラメータに対応する波形生成行列と前記波形パラメータとの積を求めることによりピッチ波形を生成するピッチ波形生成手段と、 前記ピッチ波形生成手段で生成されたピッチ波形を接続して音声波形を生成する音声波形生成手段とを備えることを特徴とする音声合成装置。」 (2) 補正前の本願発明 本件補正前である拒絶査定時の特許請求の範囲(平成17年11月8日付け手続補正書)に記載された発明のうち請求項1、6、7、15、17、18及び22に記載された発明は、次のとおりである。 【請求項1】 音声波形のパラメータ系列に基づいて合成音声を出力するための音声合成装置であって、 周波数空間における音声のパワスペクトル包絡を表す波形パラメータ及び合成音声の声の高さを表すピッチパラメータに基づいてピッチ波形を生成するピッチ波形生成手段と、 前記ピッチ波形生成手段で生成されたピッチ波形を接続して音声波形を生成する音声波形生成手段とを備えることを特徴とする音声合成装置。 【請求項6】 前記ピッチ波形生成手段は、前記パワスペクトル包絡上の、合成音声のピッチ周波数の整数倍におけるサンプル値を、前記波形パラメータと余弦関数との積和により求め、得られた各サンプル値を係数とする正弦級数の積和を求めることでピッチ波形を生成することを特徴とする請求項1に記載の音声合成装置。 【請求項7】 前記余弦関数と前記正弦関数との積和を各ピッチパラメータ毎に予め求めて得られた波形生成行列を格納する格納手段を更に備え、 前記ピッチ波形生成手段は、前記格納手段より得られるピッチパラメータに対応する波形生成行列と前記波形パラメータとの積を求めることによりピッチ波形を生成することを特徴とする請求項6に記載の音声合成装置。 【請求項15】 前記ピッチ波形生成手段は、前記パワスペクトル包絡から合成音声のピッチ周波数の整数倍におけるサンプル値を獲得し、獲得されたサンプル値を余弦級数の係数として用いて、該係数と余弦関数との積和に基づいてピッチ波形を生成することを特徴とする請求項1に記載の音声合成装置。 【請求項17】 前記パワスペクトル包絡上のサンプル値は、前記波形パラメータと余弦関数との積和により求めることを特徴とする請求項15に記載の音声合成装置。 【請求項18】 前記パワスペクトル包絡を係数とする余弦級数と前記パワスペクトル包絡のサンプル値を係数とする正弦級数との積和を各ピッチパラメータ毎に予め求めて得られた波形生成行列を格納する格納手段を更に備え、 前記ピッチ波形生成手段は、前記格納手段より得られるピッチパラメータに対応する波形生成行列と前記波形パラメータとの積を求めることによりピッチ波形を生成することを特徴とする請求項17に記載の音声合成装置。 【請求項22】 前記ピッチ波形生成手段において用いる前記パワスペクトル包絡の形状を変化させる変更手段を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の音声合成装置。 (3) 補正の目的の適否 請求項1に関する本件補正は、補正前発明の請求項7に記載された発明を特定するために必要な事項である、請求項7により引用された請求項6に記載された「ピッチ波形生成手段は、前記パワスペクトル包絡上の、合成音声のピッチ周波数の整数倍におけるサンプル値を、前記波形パラメータと余弦関数との積和により求め、得られた各サンプル値を係数とする正弦級数の積和を求めることでピッチ波形を生成する」事項を省く補正といえる。 また、請求項1に関する本件補正は、補正前発明の請求項18に記載された発明を特定するために必要な事項である、請求項18と、請求項18により引用された請求項15及び17とに記載された「前記パワスペクトル包絡から合成音声のピッチ周波数の整数倍におけるサンプル値を獲得し、獲得されたサンプル値を余弦級数の係数として用いて、該係数と余弦関数との積和に基づいてピッチ波形を生成する」事項、「前記パワスペクトル包絡上のサンプル値は、前記波形パラメータと余弦関数との積和により求める」事項、及び波形生成行列を「前記パワスペクトル包絡を係数とする余弦級数と前記パワスペクトル包絡のサンプル値を係数とする正弦級数との積和を各ピッチパラメータ毎に予め求めて得」る事項を省く補正といえる。 さらに、請求項1に関する本件補正は、補正前発明の請求項22に記載された発明を特定するために必要な事項に、新たな「格納手段」を付加する補正といえる。 これらの補正は、いずれも平成18年改正前特許法17条の2第4項2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当する補正とはいえず、また、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明のいずれを目的としたものではないことは明らかである。 したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第4項の規定に違反するものであり、同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。 第3 本願発明について 1 平成18年1月27日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「第2 2(2)」に記載した平成17年11月8日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。 2 引用例 原査定の拒絶の理由で引用された特開平7-319491号公報(以下、「引用例」という。)には次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号等で表示) ア 「【請求項1】 入力された文字系列に従い音声波形のパラメータを生成するパラメータ生成手段と、 入力された合成音声の声の高さ情報と前記生成されたパラメータからピッチ波形を生成するピッチ波形生成手段と、 前記生成されたピッチ波形を接続して得た音声波形を出力する音声波形出力手段とを備えることを特徴とする音声合成装置。 【請求項2】 前記ピッチ波形生成手段は、音声の対数パワスペクトル包絡から求めたインパルス応答波形から、合成音声のピッチ周期を1周期とするピッチ波形を生成することを特徴とする請求項1に記載の音声合成装置。」 イ 「【0030】ピッチ波形の生成に用いる合成パラメータについて説明する。図2において、フーリエ変換の次数をN、合成パラメータの次数をMとする。ここでN、MはN>2Mを満たすようにする。音声の対数パワスペクトル包絡を 【0031】 【外1】(省略) とする。対数パワスペクトル包絡を指数関数に入力して線形に戻し、逆フーリエ変換して求めたインパルス応答は、 【0032】 【外2】(省略 となる。」 前記アの記載によると、引用例には、 「入力された文字系列に従い音声波形のパラメータを生成するパラメータ生成手段と、 入力された合成音声の声の高さ情報と前記生成されたパラメータからピッチ波形を生成するピッチ波形生成手段と、 前記生成されたピッチ波形を接続して得た音声波形を出力する音声波形出力手段とを備える音声合成装置であって、 前記ピッチ波形生成手段は、音声の対数パワスペクトル包絡から求めたインパルス応答波形から、合成音声のピッチ周期を1周期とするピッチ波形を生成する音声合成装置。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。 3 対比・判断 本願発明と引用発明とを対比する。 「音声合成装置」である引用発明のパラメータ生成手段で生成されるパラメータは、「入力された文字系列」に従ったものであるから、「パラメータ系列」といえ、また、前記パラメータから生成されるピッチ波形は、接続されて音声波形となるものであるから、本願発明と引用発明とはいずれも「音声波形のパラメータ系列に基づいて合成音声を出力するための音声合成装置」に関するものといえる。 引用発明の「入力された合成音声の声の高さ情報」は「合成音声の声の高さを表すピッチパラメータ」といえ、また、引用発明のピッチ波形を生成するための「パラメータ」は「波形パラメータ」といえるから、引用発明の「入力された合成音声の声の高さ情報と前記生成されたパラメータからピッチ波形を生成するピッチ波形生成手段」は、本願発明の「波形パラメータ及び合成音声の声の高さを表すピッチパラメータに基づいてピッチ波形を生成するピッチ波形生成手段」に対応する。 引用発明のピッチ波形生成手段で「生成されたピッチ波形を接続して得た音声波形を出力する音声波形出力手段」は、本願発明の「ピッチ波形生成手段で生成されたピッチ波形を接続して音声波形を生成する音声波形生成手段」に相当する。 以上を踏まえると、両者の一致点及び相違点は以下のとおりである。 【一致点】 音声波形のパラメータ系列に基づいて合成音声を出力するための音声合成装置であって、 波形パラメータ及び合成音声の声の高さを表すピッチパラメータに基づいてピッチ波形を生成するピッチ波形生成手段と、 前記ピッチ波形生成手段で生成されたピッチ波形を接続して音声波形を生成する音声波形生成手段とを備える音声合成装置。 【相違点】 本願発明の波形パラメータが「周波数空間における音声のパワスペクトル包絡を表す波形パラメータ」であるのに対し、引用発明の波形パラメータが「音声の対数パワスペクトル包絡から求めたインパルス応答波形」である点。 4 当審の判断 上記相違点について検討する。 引用例の前掲イに記載されているように、引用発明の波形パラメータである「インパルス応答波形」は、音声の対数パワスペクトル包絡を指数関数に入力して線形に戻し、逆フーリエ変換して求めたものである。 そして、指数関数に入力して線形に戻した音声の対数パワスペクトル包絡は「周波数空間における音声のパワスペクトル包絡」といえ、一方、引用発明の波形パラメータとして、「インパルス応答波形」に代えて、指数関数に入力して線形に戻した音声の対数パワスペクトル包絡を用いても、当該波形パラメータに逆フーリエ変換を施すことにより、引用発明と同様に機能させ得ることは当業者にとって自明の事項であるから、引用発明の波形パラメータに、指数関数に入力して線形に戻した音声の対数パワスペクトル包絡を適用し、引用発明の波形パラメータを「周波数空間における音声のパワスペクトル包絡を表す波形パラメータ」とすることは当業者が容易に想到し得る事項といえる。 一方、本願発明の奏する効果は、引用例に記載された発明から想定できる程度のものにすぎず、格別なものとはいえない。 したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 5 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-03-03 |
結審通知日 | 2008-03-07 |
審決日 | 2008-03-18 |
出願番号 | 特願平8-348439 |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G10L)
P 1 8・ 572- Z (G10L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 間宮 嘉誉、山下 剛史 |
特許庁審判長 |
西山 昇 |
特許庁審判官 |
脇岡 剛 松永 稔 |
発明の名称 | 音声合成方法および装置 |
代理人 | 木村 秀二 |
代理人 | 高柳 司郎 |
代理人 | 大塚 康徳 |
代理人 | 大塚 康弘 |