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審判番号(事件番号) データベース 権利
不服200625301 審決 特許
不服200717080 審決 特許
不服20062586 審決 特許
不服20072731 審決 特許
不服2006876 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A61K
管理番号 1177228
審判番号 不服2005-10973  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-13 
確定日 2008-05-08 
事件の表示 特願2000-375812「経口投与後のトリメタジジンの持続性放出を可能とするマトリックス錠」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 6月26日出願公開、特開2001-172181〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続きの経緯・本願発明
本願は,平成12年12月11日(パリ条約による優先権主張1999年12月17日,フランス国)の出願であって,その請求項1に係る発明は,平成19年8月31日付けの手続補正書により補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される次のとおりのものと認める。(以下,「本願発明」という。)

「トリメタジジン又は薬学的に許容しうるその塩の持続性放出のためのマトリックス錠であって,持続性放出が,マトリックス中に存在するヒドロキシプロピルメチルセルロースの使用により制御され,ヒドロキシプロピルメチルセルロースの割合が,錠剤の総重量の25?50%であることを特徴とするマトリックス錠。」

2.引用例
これに対して,当審における,平成19年3月29日付けで通知した拒絶の理由に引用した本願の優先権主張の日前に頒布された特開昭61-293931号公報(引用例A),特開平7-258086号公報(引用例B),International Journal of Pharmaceutics, 24(1985)339-350(引用例C)及びInternational Journal of Pharmaceutics, 24(1985)327-338(引用例D)には,以下の事項が記載されている。

引用例A:
(1)「メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体,セルロース誘導体及び薬物からなることを特徴とする徐放性医薬品組成物。」(特許請求の範囲第1項)
(2)「またある種のセルロース誘導体,例えばヒドロキシプルピルセルロース,ヒドロキシプロピルメチルセルロース,メチルセルロース,エチルセルロース,キチン,キトサン等は,何れも水分によりゲル化することにより保形性が大であり共存する薬物の溶出が遅延することが期待されており,米国特許第4126672号明細書にはヒドロキシプロピルメチルセルロースを使った徐放性製剤の製造法が開示されている。」(2頁右上欄12行?左下欄1行)
(3)「本発明者らは,上記の事情に鑑み,メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体と,セルロース誘導体との混合物を用いて,かかる混合物の徐放性製剤への応用について検討したところ,該混合物に薬物を共存させて製剤化すると,生体接着性,生体親和性と,保形性とを兼ね備えた徐放性製剤が得られることを見出し,本発明に到達したものである。」(2頁右下欄5?12行)
(4) 徐放性医薬組成物に用いられる薬物として,インドメタシン等の解熱鎮痛消炎剤,塩酸トリメタジジン等の血管拡張剤及びその他多数の薬剤が例示されている。(3頁上欄1行?4頁左上欄末行)
(5)「かくして得られるメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体とセルロース誘導体と薬物の混合物は,経口投与……のための製剤に好適であり,……得られる混合物をそのまま,あるいは必要に応じて滑沢剤,結合剤,着色剤などを加えて直接圧縮することによって錠剤とすることができる。」(4頁左下欄4行?右下欄6行)
(6) メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体 43.5重量部,ヒドロキシプロピルメチルセルロース 43.5重量部,インドメサシン 12.5重量部及びステアリン酸マグネシウム 0.5重量部を配合した錠剤は30分,1時間,3時間の溶出率がそれぞれ9%,20%,29%であったこと。(7頁,表-4,実施例4)

引用例B:
(7) 「トリメタジジン,又はその薬剤学的に許容される塩類の1つの,持続的放出のための薬剤組成物であって,トリメタジジン又はその塩の持続的放出が,水不溶性ポリマー及び可塑剤の使用により制御される薬剤組成物。」(特許請求の範囲の請求項1)
(8) トリメタジジンの二塩酸塩は血管系由来のめまい(メニエール病のめまい,耳鳴り)の治療時及び脈絡網膜障害時の狭心症発症の予防処置のための冠状血管拡張剤として治療に用いられること。(【0005】)
(9) トリメタジジン二塩酸塩の溶解度は1000mg/mlを超えること。(【0016】)

引用例C:
ヒドロキシプロピルメチルセルロースを含有するマトリックス錠からの塩酸プロプラノロール及びアミノフィリンの放出と題して,次の事項が記載されている。
(10)「4種類のグレードのヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)を含有する持続性放出性錠剤からのアミノフィリン及び塩酸プロプラノロールの放出の影響を調べた。薬物:HPMCの比率……の影響についても調べた。すべての場合において,溶解している薬物の%を時間の平方根に対してプロットしたものは直線となった。同様の薬物:HPMCの比率において,HPMC K4M,HPMC K15M及び HPMC K100Mマトリックスから同様の放出速度が得られたが,同一の薬物:HPMCレベルにおいて,HPMC K100 マトリックスからは一貫してより早い放出速度が得られた。薬物放出を制御する主要な因子は薬物:HPMCの比率であり,ポリマー含有量の増加が薬物の溶解速度を減少させることが見出された。錠剤のHPMC含有量の対数と放出速度の対数(mg・min^(-1/2))との間には直線関係が成立し,様々な異なる薬物物質についての放出速度を予測可能にする。この関係は,HPMCの重量がマトリックスの表面積に直接的に影響を及ぼし,言い換えれば放出速度を調節するということを考慮することにより説明される。」(339頁 要約)
(11)「これらの知見を他の薬物へと拡張するためには,ある種の制限あるいは条件が作られねばならない。薬物の量はこれまでのところ25?225mgの間で研究されているが,……たとえばケイ酸3カルシウム等の多量の不溶性希釈物の存在がマトリックスの屈曲度を増加させることにより放出速度を減少させ,一方,例えばラクトース等の可溶性稀釈剤を添加するとマトリックスの屈曲度を減少させるのみであり,それによって速度を増加させることを示した。……不溶性成分の影響については未だ不明確である。」(346頁下10行?347頁下9行)
(12)「式5(注:上記(10)における錠剤のHPMC含有量の対数と放出速度の対数との間には直線関係が成立を意味する式 log R=m'log HPMC+constant A)は水溶性薬物のデータからも構成される。塩酸プロメタジン,アミノフィリン及び塩酸プロプラノロールはそれぞれ,水 0.6部中1部,5部中1部及び20部中1の溶解度をもち,そしてより低い溶解度の薬物に対して式5はあまり適切ではない。」(347頁下8?5行)
(13)「4種の粘度グレードのHPMC(メトセル;ダウケミカル,米国)が用いられた。これらはHPMC K100,HPMC K4M,HPMC K15M及びHPMC K100Mであり,それらの2%水溶液の粘度は106,3850,12449及び93000 cpsであった。」(341頁materials の項)
(14)「アミノフィリン225mg,上記4種のグレードのHPMC45?270mg及びステアリン酸マグネシウム 0.85%を含有するマトリックス錠及びプロプラノロール160mg,上記4種のグレードのHPMC57?285mg及びステアリン酸マグネシウム 0.75%を含有するマトリックス錠のアミノフィリン及びプロプラノロールの放出速度とHPMCの粘度グレードの影響について,HPMC K4M,HPMC K15M 及びHPMC K100Mではそれらの放出速度がほぼ同程度であること。」(344頁表1及び表2)

引用例D:
(15)「HPMC錠マトリックスからの塩酸プロメタジンの放出速度に対して,異なる複数の剤型についてその影響を調べた。主要な調節因子はプロメタジン:HPMCの比率であると思われ,ヒグチ型放出速度と錠剤のHPMC含有量の逆数との間に直線関係が存在した。……使用した最も低い粘度グレードの HPMC(HPMC K100)が,一定のHPMC:薬物比率の下,最大の放出速度をもたらした。その他の3種類のグレードのもの(HPMC K4C,K15M及び K100M)は,その分子サイズの違いにもかかわらず,同様の放出速度を示した。」(327頁の要約)

3.対比・判断
ア.引用例Aに記載された発明との対比・判断について
引用例Aの実施例4に記載の錠剤は,メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体 43.5重量部,ヒドロキシプロピルメチルセルロース 43.5重量部,インドメサシン 12.5重量部及びステアリン酸マグネシウム 0.5重量部を配合した徐放性マトリックス錠剤(上記(1),(5),(6))である。配合成分の合計は100重量部となるから,HPMCの割合は錠剤の総重量の 43.5%である。また,ヒドロキシプロピルメチルセルロースは,薬物の放出を遅らせるために使用されるものである(上記(2),(3))。そして,徐放性とは持続性放出のことである。
してみると,引用例Aには,「インドメサシンの持続性放出のためのマトリックス錠であって,持続性放出が,ヒドロキシプロピルメチルセルロースの使用により制御され,ヒドロキシプロピルメチルセルロースの割合が,錠剤の総重量の 43.5%であるマトリックス錠」(以下「引用発明A」という。)が記載されているものと認められる。

本願発明と引用発明Aとを対比すると,両者は薬物の持続性放出のためのマトリックス錠であって,持続性放出が,ヒドロキシプロピルメチルセルロースの使用により制御され,ヒドロキシプロピルメチルセルロースの割合が,25?50%であるマトリックス錠である点で一致し,前者は,薬物がトリメタジジン又は薬学的に許容し得るその塩であるのに対して,後者はインドメタシンである点で相違する。
しかし,引用例Aに記載の徐放性医薬品組成物は薬物が特に限定されるものでなく(上記 (1)),用いられる薬物としてインドメサシンと並列して塩酸トリメタジジンが例示されている(上記 (4))のであるから,引用発明Aにおいてインドメサシンをトリメタジジンの薬学的に許容し得る塩である塩酸トリメタジジンに代える程度のことは当業者が適宜なし得ることである。
本願発明の効果について,請求人は,本願発明は,マトリックス成分としてHPMCを25?50%と限定したことにより,一般的な予想と異なり,トリメタジジンがHPMCの等級及び量に影響を受けずに同等に放出されるとの予想外の効果を奏するものであると主張している。
しかしながら,引用例Cには,アミノフィリンとプロプラノロールを含有するHPMC(ヒドロキシプロピルメチルセルロースのこと,以下,個別に注釈はしない。)のマトリックス錠では,薬物の放出は,HPMCの粘度グレード(K4M,K15M及びK100M)に依存しないこと(上記(14)),引用例Dには,3種類のグレードのHPMC(HPMC K4C,K15M及び K100M)を用いたマトリックス剤で,同様の塩酸プロメタジンの放出速度を示したこと(上記(15))が記載されており,薬剤の放出速度がHPMCの等級に影響を受けないことは当業者が予想し得ることである。
また,請求人は,本願発明は,一般的な予想と異なり,トリメタジジンがHPMCの量に影響を受けずに同等に放出されるとの効果を奏するものとも主張するが,この効果を裏付けるために本願明細書に記載されている具体的な説明は実施例2だけであり,実施例2においては,他の賦形剤(ポリビドン,リン酸水素カルシウム二水和物)の配合量が異なるものである。引用例C,Dにも,薬物の放出を制御する主要な因子が薬物:HPMCの比率であると記載されているように一般的には,薬物の放出速度はHPMCの配合量に影響されると考えられるところ,上記の実施例2から,本願発明が,トリメタジジンがHPMCの量に影響を受けずに同等に放出されるとの効果を奏するものとは認められない。さらに,そもそも,トリメタジジンがHPMCの等級に限らず,量にも影響を受けずに同等に放出されるということは,放出速度を調整できないということであり,このことが徐放性の製剤において実際上の有利な効果をもたらすとは本願明細書の記載からはいえない。

なお,請求人は,引用発明Aは,メトキシエチレン無水マレイン酸共重合体を必須成分とするのに対し,本願発明は必須成分としていない点で相違すると主張しているが,本願発明は,有効成分及びヒドロキシプロピルメチルセルロース以外の成分を含みうるものであり(本願明細書の発明の詳細な説明には,「例えば結合剤,賦形剤,滑沢剤及び流動剤などの各種添加剤を親水性マトリックスに添加することができる。」(【0013】)と記載されている。),引用発明Aがメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体を必須成分とする点は相違点とはならない。そして,この点を相違点とした請求人の主張は採用することができない。

イ.引用例Bに記載された発明との対比判断について
引用例Bには,「トリメタジジン,又はその薬剤学的に許容される塩類の1つの,持続的放出のための薬剤組成物であって,トリメタジジン又はその塩の持続的放出が,水不溶性ポリマー及び可塑剤の使用により制御される薬剤組成物。」(以下,「引用発明B」という。)((上記(7))が記載されている。
そこで,本願発明と引用発明Bと対比すると,両者は,トリメタジジン又は薬学的に許容しうるその塩の持続性放出のための製剤である点で一致し,前者が,持続性放出が,マトリックス中に存在するヒドロキシプロピルメチルセルロースの使用により制御され,ヒドロキシプロピルメチルセルロースの割合が,錠剤の総重量の25?50%であることを特徴とするマトリックス錠であるのに対して,後者は,水不溶性ポリマー及び可塑剤の使用により制御されるものである点で相違する。

そこで,この相違点について検討する。
引用例Cには,アミノフィリンとプロプラノロールを含有するHPMCのマトリックス錠では,薬物の放出は,HPMCの粘度グレード(K4M,K15M及びK100M(HPMCの2%水溶液の粘度が3850,12449及び93000 cpsである。(上記(13)))に依存せず,薬物の放出を制御する主要な因子が薬物:HPMCの比率であること及び様々な異なる薬物物質について放出速度を予測可能にする旨(上記 (10))が記載され,しかもこのことは水溶性薬物であれば適用できることも示唆されている(上記(12))。また,実験例で使われているマトリックス錠では,アミノフィリン225mgに対し,HPMCの量は45?270mg,ステアリン酸マグネシウム 0.85%,あるいはプロプラノロール160mgに対し,HPMCの量は57?285mg,ステアリン酸マグネシウム 0.75%であり(上記 (14)),それぞれHPMCの錠剤の総重量に対する含有量は,16.5?54.0%,26?63.6%である。さらに,引用例Dには,HPMCマトリックス錠からの塩酸プロメタジンの放出速度はHPMCの粘度グレードに影響されず,プロメタジン:HPMCの比率が主要な調節因子であること(上記 (15))が記載されている。そして,アミノフィリン,プロプラノロール及び塩酸プロメタジンはそれぞれ,水0.6部中1部,水5部中1部及び水20部中1部の溶解度を持ち(上記 (12))いずれも水溶性である点で共通するが,化学構造は全く異なる化合物である。
そうすると,引用例C,Dに接した当業者は,HPMCのマトリックス錠は,薬物の化学構造に関係なく,水溶性薬物の徐放性制御手段として使用できると考えるのが自然である。
一方,トリメタジジン二塩酸塩の溶解度は1000mg/ml を超えており(上記 (9)),水溶性である。
したがって,引用例Bのトリメタジジン又はその塩の徐放性製剤において,トリメタジジンの放出制御手段として,水不溶性ポリマー及び可塑剤の使用に代えて,引用例C及びDに示されている水溶性薬物の徐放性制御手段であるHPMCマトリックス錠を採用すること,そして,HPMCの配合割合を引用例Cにおいて,薬物がアミノフィリン,プロプラノロールである場合において共通して選択されている26.0?54.0%という範囲と重複する25?50%という範囲にすることは当業者が容易に想到できるものと認められる。
そして,本願発明の奏する効果については前記ア.で述べたとおりである。

なお,請求人は,引用例Bには,高度に水溶性である活性成分(トリメタジジン)の16時間以上に渡る放出を制御するマトリックス錠剤を得ることは非常に難しく,この問題は,リザーバー系の使用により解決された旨の記載があり(引用例Bの段落【0016】),この記載は,引用発明Bにおいてリザーバー系徐放性製剤に代えてマトリックス錠を採用することにとって阻害事由であると主張しているが,本願発明は一日2回の投与すなわち12時間の放出を課題とする徐放製剤であり,上記の引用例Bの記載は阻害事由とはならない。

4.むすび
したがって,本願発明は,引用例A,C及びDに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり,そして,引用例B,C及びDに記載された発明に基いて当業者が容易に発明をすることができたものでもあるので,特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって,結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-21 
結審通知日 2007-11-27 
審決日 2007-12-11 
出願番号 特願2000-375812(P2000-375812)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩下 直人  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 星野 紹英
弘實 謙二
発明の名称 経口投与後のトリメタジジンの持続性放出を可能とするマトリックス錠  
代理人 津国 肇  
代理人 齋藤 房幸  
復代理人 小澤 圭子  
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