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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1177251
審判番号 不服2005-19917  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-10-13 
確定日 2008-05-08 
事件の表示 平成10年特許願第159907号「同期積算回路」拒絶査定不服審判事件〔平成11年12月10日出願公開、特開平11-338854〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成10年5月26日の出願であって、平成17年1月7日付けで拒絶理由が通知され、同年3月14日付けで手続補正がなされたものの、同年9月6日付けで拒絶査定がなされた。その後、同年10月13日に拒絶査定不服審判請求がなされ、同年11月7日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明は、平成17年11月7日付け手続補正書によって補正された明細書又は図面の記載からみて、次のとおりのものと認める。

「 【請求項1】 データ入力端子にデータが入力され、データ出力端子からデータが出力される一つのメモリと、この一つのメモリの前記データ入力端子に接続され、外部信号入力信号と帰還信号とを加算する加算器とを有し、前記加算器の加算出力を前記データ入力端子へ入力し、前記データ出力端子から読み出したメモリ出力を前記加算器へ帰還するように構成され、第1クロックを受け、前記メモリの書込み及び読み出しアドレスを生成する一つのアドレスカウンタと、
前記第1クロックを受け、前記メモリの書込み及び読み出しクロックを生成するクロック分配回路と、
前記メモリのデータ出力端子と、前記加算器の帰還路に前記メモリから読み出されたメモリ出力又は「0」を選択する2:1選択部と、
前記アドレスカウンタのキャリービットを受けて、前記2:1選択部の出力を制御する信号を生成する回数カウンタと、を備え、
前記メモリの前記書込みアドレスは、前記読み出しアドレスとなる前記アドレスカウンタの出力を受けるフリップフロップを介して得ることを特徴とする同期積算回路。 」

3.引用文献
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭62-144240号公報(以下、「引用文献1」という。)には、図面と共に以下の事項が記載されている。

A.「以下本発明の一実施例を第1図により詳細に説明する。アナログの受信データ14を10MHzで8ビットのディジタル信号に変換するA/Dコンバータ回路1と、このA/D変換回路への出力を後述するバッファメモリからの読出しデータと同期をとるための複数のラッチ回路2および3と、前記ラッチ回路2とラッチ回路3の出力データを加算する16ビットの加算回路4と、基本クロック発生と合せて後述するバッファメモリおよび同期加算回数等をマイクロプロセッサにより制御できるタイミング制御回路5と、後述するバッファメモリのデータバスを制御する複数のバスコントロール回路6および7と、一方が読出しサイクル時他方は書込みサイクルとなる二重のインタリーブ構成を有する複数のバッファメモリ8および9と、前記バッファメモリ8および9の読出しデータのどちらかを選択出力し、同期加算の初回だけゼロを出力するセレクタ回路10と、バッファメモリ8および9のアドレスを発生するアドレス発生回路11と、前記バッファメモリ8および9からの17ビットのデータの同期加算結果のどの8ビットを出力するかをマイクロプロセッサから制御することにより平均値を求めるバレルシフト回路12と、回路全体の制御を行うマイクロプロセッサ13とから構成されている。」(公報2頁左上欄1行?右上欄5行)

B.「 本発明の高速同期加算回路は以上の如く構成されており、以下の高速同期加算回路の概略動作をレーダ装置に実施した例をもって、第2図に示すタイミングチャートに従って説明する。タイミング制御回路5でプリノック15を発生し、アンテナからパルスを送信する。パルス周期は1KHzである。送信パルスを直接検波したマグビデオ信号17からタイミング制御回路5で、受信データの有効期間を示すレシーバゲート信号16を発生する。このレシーバゲート信号16がアクティブの間、受信データの同期加算を実行する。また同期加算の初回には、加算信号19をタイミング制御回路5で発生する。この信号によりセレクタ回路10の出力がゼロになる。すなわち初回のデータはゼロと加算されることになり、そのままのデータが加算回路4から出力され、バッファメモリに記憶される。2のN乗回の同期加算終了後、レシーバゲート信号16がインアクティブの間、同期加算結果を出力する。これら一連の動作を繰返し行っている。 」(公報2頁右上欄6行?左下欄4行)

C.「以下第3図に示す同期加算動作タイミングチャートに従い同期加算動作を説明する。基本クロックは、タイミング制御回路5で発生しており、周波数は10MHzとしている。前述したレシーバゲート信号16がアクティブ後、第1のバッファメモリ(A)8に与える第1のアドレス信号23を基本クロックの2倍の周期で0からM/2までインクリメントしていく、また第2のバッファメモリ(B)9に与える第2のアドレス信号24は、前記アドレスから1基本クロック遅れて0からM/2までインクリメントする。セレクタ回路10に与えるセレクタ信号20は、初め第1のバッファメモリ(A)8の読出しデータA0を選択出力するようになっている。よってラッチ回路3は、A0データをラッチする。このラッチしたデータA/D変換回路1のデータをラッチしたラッチ回路2のAD0のデータを加算回路4で加算する。この加算回路4の出力は、8ビツトデータを最大2の9乗回すなわち512回加算するため、17ビットである。この加算したデータADD0を第1のバッファメモリ(A)8の読出したアドレスと同じアドレスにAWE信号21で書込む。この間に、第2のバッファメモリ(B)9からの読出しデータB0は、セレクタ回路10を通り、次の基本クロック18でラッチ回路3でラッチされる。そして同じ基本クロック18でラッチ回路2でラッチしたA/D変換器データAD1と加算回路4で加算し、第2のバッファメモリ(B)9の読出したアドレスと同じアドレスにBWE信号22で書込む。この一連の動作をレシーバゲート信号16がアクティブの間実行する。これを2のN乗ライン実行し同期加算結果が求まる。何ラインの同期加算を実行するかは、タイミング制御回路5をマイクロプロセッサ13で制御することにより制御できる。このようにバッファメモリを第1および第2のバッファメモリと2つのブロックに分け、片側のバッファメモリが読出しサイクルの時、他方は書込みサイクルになるように2重のインタリーブ構成にし、高速同期加算を可能にしている。」(公報2頁左下欄5行?3頁左上欄3行)

上記Aの記載及び第1図によれば、バッファメモリ8および9は、一方が読出しサイクル時、他方は書込みサイクルとなるインターリーブ構成となっている。
上記AおよびCの記載によれば、アナログ受信データはA/D変換回路でデジタル信号に変換され、ラッチ回路2にラッチされるから、ラッチ回路2の出力データは外部信号のものということができる。
上記Aの「基本クロック発生と合せて後述するバッファメモリおよび同期加算回数等をマイクロプロセッサにより制御できるタイミング制御回路5」の記載および上記Cの「この一連の動作をレシーバゲート信号16がアクティブの間実行する。これを2のN乗ライン実行し同期加算結果が求まる。何ラインの同期加算を実行するかは、タイミング制御回路5をマイクロプロセッサ13で制御することにより制御できる。」との記載によれば、タイミング制御回路5とマイクロプロセッサ13が協働して、同期加算結果を求めるまでの加算回数を計数するものである。
上記BおよびCによれば、タイミング制御回路5は、同期加算の初回はセレクタ回路10に「0」を発生させ、初回以外はバッファメモリ8,9の出力データを選択するようにセレクタ回路10を制御している。
上記AおよびCの記載によれば、タイミング制御回路は、基本クロックを発生し、基本クロックの2倍の周期でアドレス発生回路をインクリメントし、バッファメモリ8,9の読出しアドレスと書込みアドレスを発生している。

これらの記載より、引用文献1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

入力端および出力端を有するインターリーブ構成のバッファメモリ8,9と、前記バッファメモリ8,9の入力端に接続され、外部信号であるラッチ回路2の出力データとセレクタ回路10の出力データとを加算する加算回路4とを有し、前記加算回路4の加算出力が前記バッファメモリ8,9の入力端に接続された同期加算回路において、
基本クロックの2倍の周期でインクリメントされ、バッファメモリ8,9の読出しアドレスと書込みアドレスを発生するアドレス発生回路と、
「0」を発生し出力するか、バッファメモリ8,9の出力データを選択出力するかするセレクタ回路10と、
同期加算結果を求めるまでの加算回数を計数すると共に、同期加算の初回はセレクタ回路10に「0」を発生させ、初回以外はバッファメモリ8,9の出力データを選択出力するようにセレクタ回路10を制御するタイミング制御回路及びマイクロプロセッサと、
タイミング制御回路は、更にインターリーブ動作に必要な制御信号を発生することを特徴とする同期加算回路

4.対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「入力端]「出力端」「外部信号」「加算回路4」「基本クロック」は、それぞれ、本願発明の「データ入力端子」「データ出力端子」「外部信号入力信号」「加算器」「第1クロック」に相当する。
引用発明では、バッファメモリ8および9によりインターリーブを構成しており、引用発明の「バッファメモリ8,9」と本願発明の「メモリ」とは記憶手段である点で共通している。
引用発明の「アドレス発生回路」は、基本クロックの2倍の周期でインクリメントして読出しアドレスと書込みアドレスを発生しているから、本願発明の「アドレスカウンタ」に相当する機能を有している。そして、本願発明では、読み出しアドレスとなるアドレスカウンタの出力をフリップフロップで受けて書込みアドレスを得ているから、引用発明の「アドレス発生回路」と、本願発明の「アドレスカウンタ」及び「書込みアドレスを得る」構成とは、アドレス発生手段である点で共通している。
引用発明のセレクタ回路10は、バッファメモリ8,9と加算回路に接続されているから、加算回路の帰還路に接続されていることになり、また、引用発明のセレクタ回路10の出力データは本願発明の帰還信号に相当するものである。
引用発明では、タイミング制御回路及びマイクロプロセッサが協働して、同期加算結果を求めるまでの加算回数を計数すると共に、同期加算の初回はセレクタ回路10に「0」を発生させ、初回以外はバッファメモリ8,9の出力データを選択出力するようにセレクタ回路10を制御しているから、引用発明の「タイミング制御回路及びマイクロプロセッサ」と本願発明の「回数カウンタ」とは、2:1選択部制御信号生成手段を有している点で共通している。
本願発明の同期積算とは、同一タイミングの入力信号を複数回加算していくものであるから、引用発明の同期加算と同義である。

よって、本願発明と引用発明とは、

データ入力端子にデータが入力され、データ出力端子からデータが出力される記憶手段と、この記憶手段の前記データ入力端子に接続され、外部信号入力信号と帰還信号とを加算する加算器とを有し、前記加算器の加算出力を前記データ入力端子へ入力し、前記データ出力端子から読み出したメモリ出力を前記加算器へ帰還するように構成され、第1クロックを受け、前記記憶手段の書込み及び読み出しアドレスを生成するアドレス発生手段と、
前記記憶手段のデータ出力端子と、前記加算器の帰還路に前記記憶手段から読み出されたメモリ出力又は「0」を選択する2:1選択部と
前記2:1選択部制御信号生成手段と、
を備えたことを特徴とする同期積算回路

である点で一致し、次の点で相違する。

相違点1
記憶手段が、本願発明では一つのメモリであるのに対し、引用発明ではインターリーブ構成のバッファメモリである点

相違点2
アドレス発生手段が、本願発明では読み出しアドレスとなるアドレスカウンタの出力をフリップフロップで受けて書込みアドレスを得ているのに対し、引用発明ではどのようにして読出しアドレスと書込みアドレスを発生しているのか不明である点

相違点3
本願発明では、前記第1クロックを受け、前記メモリの書込み及び読み出しクロックを生成するクロック分配回路を有するものであるのに対し、引用発明ではクロック分配回路を有していない点

相違点4
2:1選択部制御信号生成手段が、本願発明では、アドレスカウンタのキャリービットを受けて、前記2:1選択部の出力を制御する信号を生成する回数カウンタであるのに対し、引用発明では、タイミング制御回路及びマイクロプロセッサが協働して2:1選択部の出力を制御する信号を生成している点

5.検討
相違点1、2について
引用発明では、バッファメモリ8,9により、1つの2ウエイインターリーブメモリを構成しているとみることができる。そして、このインターリーブメモリに対して、アドレス発生回路11からAアドレスとAアドレスから1クロック遅れたBアドレスが供給されている。アドレス発生回路11は基本クロックをインクリメントしてアドレスを発生しているから、アドレスカウンタに相当する手段を有していることは明らかであり、また、同一信号の1クロック遅れた信号を発生するためにフリップフロップで1クロック分遅延させることは周知のものであるから、対象とするメモリに応じて読み出しアドレスをフリップフロップで遅延させて書込みアドレスを発生することは容易に為し得ることである。
従って、相違点1、2を格別のものと言うことはできない。

相違点3について
引用発明のタイミング制御回路は、バッファメモリやアドレス発生回路の他、同期加算に必要な各種のタイミング信号を基本クロックを元に発生している。従って、対象とするメモリが必要とする読み出しクロックや書込みクロックを生成する回路を有することは格別のことではない。

相違点4について
引用文献1には、引用発明の実施例として、プリノック信号に同期して受信データのM個の加算をN回実行する例が示されている。そして、加算を何回実行するかは、タイミング制御回路をマイクロプロセッサで制御することにより実現できる旨の記載がある。引用発明では実行回数制御をマイクロプロセッサで実現しているが、これをハードウエアで実現することは必要に応じて為されることであり、M個の加算をN回実行する制御のための手段をハードウエアで実現するときにはMを計数するカウンタのキャリービットを回数カウンタで計数すればよいことは当業者が容易に想到し得ることである。
従って、相違点4を格別のことと言うことはできない。

そして、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用例記載の発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
したがって、本願発明は、引用文献1に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-05 
結審通知日 2008-03-11 
審決日 2008-03-24 
出願番号 特願平10-159907
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鳥居 稔  
特許庁審判長 吉岡 浩
特許庁審判官 桑江 晃
中里 裕正
発明の名称 同期積算回路  
代理人 下坂 直樹  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 机 昌彦  

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