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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H04B |
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管理番号 | 1177358 |
審判番号 | 不服2007-6109 |
総通号数 | 102 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-06-27 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-02-28 |
確定日 | 2008-05-08 |
事件の表示 | 特願2005-228425「携帯型電子装置」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月16日出願公開、特開2006- 50643〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成8年12月16日に出願した特願平8-335336号の一部を平成17年8月5日に新たな特許出願としたものであって、平成18年3月3日付けで手続補正がなされ、同年9月14日付けで拒絶理由通知がなされ、これに対し、同年11月20日付けで手続補正がなされたものの、平成19年1月24日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年2月28日に審判請求がなされ、同年3月28日に手続補正がなされたが、当該手続補正は、同年8月10日付けの決定により却下されると共に、同日付けで当審より拒絶理由が通知され、これに対し、同年10月15日付けで手続補正がなされた。 そして、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりの次のものと認める。 「無線送信手段と無線受信手段とを有する携帯型電子装置であって、 予め設定される所定の受信回数と呼び出し信号回数とのパターンを記憶する記憶手段と、 受信する毎に呼び出し信号回数をカウントするカウント手段と、 受信した呼び出し信号回数のパターンが、前記記憶手段に記憶された前記パターンと一致した場合に、強制的に前記携帯型電子装置の機能を制限又は停止する保全処理を実行する制御手段と、を有し、 前記制御手段は、まず、受信した呼び出し信号回数のパターンが、前記記憶手段に記憶された前記パターンと一致した場合に前記保全処理を実行する保全システムを立ち上げ、 次いで、 受信する呼び出し信号回数が特定の前記保全処理を示す情報と一致する場合には、前記保全処理を実行する一方、 前記受信する呼び出し信号回数がいずれの前記保全処理を示す情報とも一致しない場合には、前記保全処理システムを終了する、 ことを特徴とする携帯型電子装置。」 2.引用発明 原査定の拒絶理由に引用された、特開平7-193865号公報(以下「引用文献」という。)には、次の事項が図面と共に記載されている。 (ア)「【目的】 紛失しても内部データの保護が可能で、かつ他人に使用されて課金されるという不具合を防止できる携帯端末装置およびそのセキュリティ方法を提供する。 【構成】 PHP2を紛失した場合、その所有者は電話機1のキー操作部1bから指令を入力してPHP2にリモート操作データを送信する。PHP2側ではリモート操作データを受信し、受信したリモート操作データに基づき内部の保護処理手段によりPHP2の所有者が不利になることを排除する保護処理を実行する。保護処理としては、例えばPHP2を使用して電話をかけようとするとき、予め記憶されたPHP2の所有者の連絡先の電話番号の所に全てつながって他にはかけれないようにしたり、PHP2の所有者のIDデータ等の電話をかけるうえで必要となるデータを全て消去して電話をかけられないようにしたり、あるいは他人に見られると困るようなPHP2の所有者に関連する特定のデータを消去する処理を行う。」 (イ)「【特許請求の範囲】 【請求項1】 外部より通信回線を介してリモート操作データを受信し、 受信したリモート操作データの内容を解析し、 この解析結果に基づいて携帯端末装置の所有者が不利になることを排除する所定の保護処理を行うことを特徴とする携帯端末装置のセキュリティ方法。 【請求項2】 外部より通信回線を介して入力されたリモート操作データに基づいて、携帯端末装置の所有者が不利になることを排除する所定の保護処理を行う保護処理手段を設けたことを特徴とする携帯端末装置。 【請求項3】 前記保護処理手段は、外部より通信回線を介して入力された暗証番号の一致が確認された後に、前記所定の保護処理を開始することを特徴とする請求項2記載の携帯端末装置。 【請求項4】 前記保護処理手段は、 A.携帯端末装置を使用すると、予め記憶された連絡先につながるようにする保護処理、 B.携帯端末装置の使用を禁止する保護処理、 C.携帯端末装置の内部データの表示を禁止する保護処理、 のうちの少なくとも1つ以上を実行することを特徴とする請求項2又は3記載の携帯端末装置。」 (ウ)「【0013】 ・・・(中 略)・・・ 図1、図2は本発明に係る携帯端末装置の第1実施例を示す図であり、PHP(Personal Handy Phone)に適用した例である。 A.PHPシステムのネットワーク構成 図1はPHPシステムのネットワーク構成図である。図1において、1は公衆回線網(PSTN、ISDN)に接続された電話機、2は携帯用電話としてのPHP、3は公衆回線網(PSTN、ISDN)に接続された通信回線、4は中継基地局、5は無線通信回線である。…(中略)… 【0014】電話機1には送受話器(ハンドセット)1aと、電話番号等の入力およびPHP2をリモート操作する指令を入力する操作部スイッチ1bが配置されている。また、操作部スイッチ1bは、例えば10桁の数字あるいは記号を含む暗証番号を入力することができるようになっている。この場合、PHP2から受信暗証番号と予め記憶された所定値とが一致したことを示す後述の一致確認信号が電話機1に送信され、電話機1でこの一致確認信号を受信した場合にのみリモート操作データの入力を受け付ける(例えば、リモート操作データ入力受け付けモードを許可する)ようになっている。 【0015】B.PHPブロック構成 図2はPHP2の詳細な構成を示すブロック図である。図2において、11は所定プロトコルに従い装置全体の制御を行なう制御部であり、CPU等から構成される。…(中略)…本実施例の場合、制御部(保護処理手段)11は電話機1から送信されたリモート操作データを受信した場合に、この受信したリモート操作データに基づいて、PHP2の所有者が不利になることを排除する所定の保護処理を実行するための制御を行う。 【0016】保護処理の内容は、次の通りである。 モードA:後述の表示部15に予めメモリ17に記憶しておいた所有者の電話番号を表示させ、PHP2を紛失したとき、仮にその紛失したPHP2を使用して他人が電話をかけようとするとき、予め記憶されたPHP2の所有者の連絡先の電話番号の所に全てつながるような保護処理 モードB:PHP2の所有者のIDデータ等の電話をかけるうえで必要となるデータを全て消去し、他人が電話をかけられないようにする保護処理 モードC:他人に見られると困るようなPHP2の所有者に関連する特定のデータを消去する保護処理 モードA?モードCの選択は、電話機1側の操作部スイッチ1bを操作することにより行う構成になっている。なお、保護処理の内容は上記例に限るものではなく、PHP2の所有者が不利になることを排除するものであれば他の保護内容であってもよい。…(中略)… 【0017】制御部11には、…(中略)…各種データを記憶するメモリ17が接続されている。ここで、制御部11は電話機1から送信された暗証番号を受信した場合に、この受信した暗証番号を予めメモリ17に記憶されている所定値(暗証番号)と比較し、両者が一致したとき、一致したことを示す一致確認信号を電話機1に送信するような制御を行うとともに、少なくともこの一致確認信号を送信した後に、電話機1から送信されてきたリモート操作データに基づいて前述した各種の保護処理(モードA?モードC)を開始する。したがって、制御部11は一致指令手段としての機能を有する。」 (エ)「【0019】C.PHPの送信/受信系統 次に、PHP2の送信/受信系統について説明する。PHP2は、アンテナ21からの送受信無線周波数(RF)周波数帯の信号を受信する若しくはモデム23によりディジタル変調した音声信号を送受信無線周波数(RF)に周波数変換してアンテナ21から空中に放出する高周波部22と、…(中略)…により構成されている。」 (オ)「【0028】F.保護処理動作 次に、本実施例の特徴部分である保護処理動作について説明する。まず、PHP2を所有者が紛失した場合、その所有者(すなわち、真の所有者)は電話機1のキー操作部1bを操作してPHP2に電話をかける。PHP2に電話がかかると、電話機1とPHP2との間にデータを送受信可能な相互の通信回線ネットが形成される。このとき、紛失したPHP2は、例えばそれを取得して所有している者(以下、取得者という)の手元にあるケースが多い。次いで、PHP2の所有者はキー操作部1bを操作して暗証番号入力モードをセレクトし、所定の暗証番号(例えば、10桁の番号で「#11223344#」)を入力する。暗証番号に代えて、例えばPHP2の所有者のIDコードでもよい。 【0029】暗証番号が入力されると、PHP2側では受信した暗証番号を予めメモリ17に記憶しておいた所定値(例えば、暗証番号と同じ値)と比較し、両者が一致したとき、一致したことを示す一致確認信号を電話機1に送信する。電話機1では、一致確認信号を受信した場合にのみリモート操作データの入力受け付けが可能となる。次いで、PHP2の所有者はキー操作部1bを操作してリモート操作指令を入力する。PHP2側では、このリモート操作指令に対応するリモート操作データに基づいてPHP2の所有者が不利になることを排除する保護処理の何れか(モードA、モードBあるいはモードC)の実行が開始される。なお、制御部11は前述した一致確認信号を送信した後でなければ、保護処理を開始しない。」 (カ)「【0033】本実施例は携帯端末装置をPHPに適用した例であるが、本発明はPHPに限らず、他の携帯端末装置(例えば、家庭用のコードレス電話機)にも幅広く適用できるのは勿論である。また、電話機1とPHP2との間の同一所有性を確認する方法は、上記実施例の例に限らず、他の方法を用いてもよい。…(中略)…本発明の発展的形態として、例えば電話機1からでなく、緊急の場合には通常どこにでもある公衆電話からでも所定の暗証番号等を入力することにより、リモート操作により、本発明と同様の保護処理を行うことがてきるようにしてもよい。」 (キ)「【0038】(b)携帯端末におけるリモート操作データの処理 図4の処理が実行され、基地局55より無線にてリモート操作データが携帯電話機62に送信されると、図5に示す携帯端末におけるリモート操作データの処理ルーチンが実行される。まず、ステップS20でリモート操作データ(図5ではリモートデータと簡略化する)の受信によりシステムをウェークアップする。…(中略)…次いで、ステップS22で自分(携帯電話機62)に対してのリモート操作データであるか否かを判別する。…(中略)…自分へのリモート操作データでない…(中略)…場合には、システムをオフし、通常モードへ戻る(リターン)。」 上記(ウ)の「図1、図2は本発明に係る携帯端末装置の第1実施例を示す図であり、PHP(Personal Handy Phone)に適用した例である。」という記載と図1、図2、及び上記(エ)における「C.PHPの送信/受信系統」の記載から、引用文献は、無線送信系統と無線受信系統を有する携帯端末装置に関するものである。 また、上記(オ)の「予めメモリ17に記憶しておいた所定値(例えば、暗証番号と同じ値)」という記載から、引用文献に記載された携帯端末装置は、予め設定された所定値(暗証番号)を記憶するメモリを有する。 上記(ウ)の「制御部(保護処理手段)11は…(中略)…リモート操作データを受信した場合に、この受信したリモート操作データに基づいて、PHP2の所有者が不利になることを排除する所定の保護処理を実行するための制御を行う。」という記載から、引用文献の制御部(保護処理手段)は、リモート操作データを受信した場合に、携帯端末装置の所有者が不利になることを排除する所定の保護処理を実行するものである。 さらに、上記(ウ)の「ここで、制御部11は…(中略)…受信した暗証番号を予めメモリ17に記憶されている所定値(暗証番号)と比較し、両者が一致したとき、…(中略)…リモート操作データに基づいて前述した各種の保護処理(モードA?モードC)を開始する。」という記載及び上記(イ)の「【請求項3】 前記保護処理手段は、…(中略)…入力された暗証番号の一致が確認された後に、前記所定の保護処理を開始する」という記載から、引用文献の制御部(保護処理手段)は、受信した暗証番号を予めメモリに記憶されている所定値(暗証番号)と比較し、両者の一致が確認された後に、リモート操作データを受信し、この受信したリモート操作データに基づいて、携帯端末装置の所有者が不利になることを排除する各種の保護処理(モードA?モードC)を実行するものである。 ここで、受信した暗証番号によるリモート操作者の正当性が確認された後、引用文献の制御部(保護処理手段)における、受信されたリモート操作データによる処理としては、上記(キ)の「リモート操作データ(図5ではリモートデータと簡略化する)の受信によりシステムをウェークアップする。…(中略)…次いで、ステップS22で自分(携帯電話機62)に対してのリモート操作データであるか否かを判別する。…(中略)…自分へのリモート操作データでない…(中略)…場合には、システムをオフし、通常モードへ戻る(リターン)。」という記載と上記(オ)の「PHP2側では、このリモート操作指令に対応するリモート操作データに基づいてPHP2の所有者が不利になることを排除する保護処理の何れか(モードA、モードBあるいはモードC)の実行が開始される。」という記載がある。 つまり、引用文献の制御部(保護処理手段)は、まず、受信した暗証番号が、前記メモリに記憶されている所定値(暗証番号)と一致が確認された後、リモート操作データの受信によりシステムをウェークアップし、次いで、受信したリモート操作データに基づいて携帯端末装置の所有者が不利になることを排除する保護処理の何れか(モードA、モードBあるいはモードC)を実行する一方、自分へのリモート操作データでない場合は、システムをオフするものである。 したがって、上記(ア)乃至(キ)の記載から、引用文献には次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認める。 無線送信系統と無線受信系統を有する携帯端末装置であって、 予め設定された所定値(暗証番号)を記憶するメモリと、 受信した暗証番号を予めメモリに記憶されている所定値(暗証番号)と比較し、両者の一致が確認された後に、リモート操作データを受信し、この受信したリモート操作データに基づいて、携帯端末装置の所有者が不利になることを排除する各種の保護処理(モードA?モードC)を実行する制御部(保護処理手段)と、 前記制御部(保護処理手段)は、まず、受信した暗証番号が、前記メモリに記憶されている所定値(暗証番号)と一致が確認された後、リモート操作データの受信によりシステムをウェークアップし、 次いで、 受信したリモート操作データに基づいて携帯端末装置の所有者が不利になることを排除する保護処理の何れか(モードA、モードBあるいはモードC)を実行する一方、 自分へのリモート操作データでない場合は、システムをオフする ことを特徴とする携帯端末装置。 3.本願発明と引用発明との対比 本願発明と引用発明とを対比すると、両者はともに、携帯型電子装置の保全システムであって、 引用発明の「無線送信系統」、「無線受信系統」及び「携帯端末装置」は、それぞれ本願発明の「無線送信手段」、「無線受信手段」及び「携帯型電子装置」に相当する。 引用発明のメモリにおける「予め設定された所定値(暗証番号)」は、リモート操作者の正当性を確認する制御の予め設定される所定値であるから、引用発明の「予め設定された所定値(暗証番号)を記憶するメモリ」と本願発明の「予め設定される所定の受信回数と呼び出し信号回数とのパターンを記憶する記憶手段」とは、リモート操作者の正当性を確認する制御の予め設定される所定値を記憶する記憶手段として共通する。 引用発明の「各種の保護処理(モードA?モードC)」は、上記2.(イ)の【請求項4】や上記2.(ウ)の「モードA」?「モードC」の説明に記載されているように、携帯型電子装置の機能を制限又は停止する処理であるから、本願発明の「携帯型電子装置の機能を制限又は停止する保全処理」に相当する。 引用発明の「受信した暗証番号を予めメモリに記憶されている所定値(暗証番号)と比較し、両者の一致が確認された後」と、本願発明の「受信した呼び出し信号回数のパターンが、前記記憶手段に記憶された前記パターンと一致した場合」とは、リモート操作者の正当性を確認する制御の正当性が確認された場合として共通する。 また、引用発明の「携帯端末装置の所有者が不利になることを排除する各種の保護処理(モードA?モードC)を実行する」点は、携帯端末装置の所有者が不利になることを排除するために、各種の保護処理を実行するものであるから、各種の保護処理は強制的に行われるものである。 よって、引用発明の「受信した暗証番号を予めメモリに記憶されている所定値(暗証番号)と比較し、両者の一致が確認された後に、リモート操作データを受信し、この受信したリモート操作データに基づいて、携帯端末装置の所有者が不利になることを排除する各種の保護処理(モードA?モードC)を実行する制御部(保護処理手段)」と、本願発明の「受信した呼び出し信号回数のパターンが、前記記憶手段に記憶された前記パターンと一致した場合に、強制的に前記携帯型電子装置の機能を制限又は停止する保全処理を実行する制御手段」は、共に、リモート操作者の正当性を確認する制御の正当性が確認された場合に、強制的に前記携帯型電子装置の機能を制限又は停止する保全処理を実行する制御手段として共通する。 引用発明の「受信した暗証番号が、前記メモリに記憶されている所定値(暗証番号)と一致が確認された後、リモート操作データの受信によりシステムをウェークアップし」とは、リモート操作者の正当性が確認された場合に前記保護処理を実行するシステムを立ち上げるものであるから、本願発明の「受信した呼び出し信号回数のパターンが、前記記憶手段に記憶された前記パターンと一致した場合に前記保全処理を実行する保全システムを立ち上げ」と、リモート操作者の正当性が確認された場合に前記保全処理を実行する保全システムを立ち上げる点で共通する。 引用発明の「受信したリモート操作データに基づいて携帯端末装置の所有者が不利になることを排除する保護処理の何れか(モードA、モードBあるいはモードC)を実行する一方、自分へのリモート操作データでない場合は、システムをオフする 」場合として、引用発明において、受信するリモート操作データと特定の保護処理を示す情報との一致をみていることは自明である。 したがって、引用発明の「受信したリモート操作データに基づいて携帯端末装置の所有者が不利になることを排除する保護処理の何れか(モードA、モードBあるいはモードC)を実行する一方、自分へのリモート操作データでない場合は、システムをオフする 」ことと、本願発明の「受信する呼び出し信号回数が特定の前記保全処理を示す情報と一致する場合には、前記保全処理を実行する一方、前記受信する呼び出し信号回数がいずれの前記保全処理を示す情報とも一致しない場合には、前記保全処理システムを終了する」ことは、受信する信号が特定の前記保全処理を示す情報と一致する場合には、前記保全処理を実行する一方、前記受信する信号がいずれの前記保全処理を示す情報とも一致しない場合には、前記保全処理システムを終了する点で共通する。 よって、両者は、 無線送信手段と無線受信手段とを有する携帯型電子装置であって、 リモート操作者の正当性を確認する制御の予め設定される所定値を記憶する記憶手段と、 リモート操作者の正当性を確認する制御の正当性が確認された場合に、強制的に前記携帯型電子装置の機能を制限又は停止する保全処理を実行する制御手段と、を有し、 前記制御手段は、まず、リモート操作者の正当性が確認された場合に前記保全処理を実行する保全システムを立ち上げ、 次いで、 受信する信号が特定の前記保全処理を示す情報と一致する場合には、前記保全処理を実行する一方、 前記受信する信号がいずれの前記保全処理を示す情報とも一致しない場合には、前記保全処理システムを終了する、 ことを特徴とする携帯型電子装置 の点で一致し、以下の点で相違している。 [相違点1] リモート操作者の正当性を確認する制御が、本願発明は「受信する毎に呼び出し信号回数をカウントするカウント手段」を有し、「受信した呼び出し信号回数のパターンが、前記記憶手段に記憶された前記パターンと一致した場合」であるのに対して、引用発明は「受信した暗証番号」と「予めメモリに記憶されている所定値(暗証番号)と比較し、両者の一致が確認され」るものである点。 [相違点2] 保全処理を特定するために受信する信号が、本願発明は「呼び出し信号回数」であるのに対して、引用発明は「リモート操作データ」である点。 4.当審の判断 上記相違点について、以下検討する。 [相違点1について] 電話回線を用いた遠隔制御におけるリモート操作者の正当性を確認する制御として、受信する毎に呼び出し信号回数をカウントするカウント手段を有し、受信した呼び出し信号回数のパターンが、記憶手段に記憶されたパターンと一致した場合に、リモート操作者の正当性を確認する構成は、特開昭50-127080号公報(特に、第2頁右上欄第13行?第3頁左上欄第9行、第1?3図参照。)、及び特開昭62-196966号公報(特に、第2頁左上欄第17行?同頁右上欄第18行、第1?4図参照。)に開示されているごとく、当業者にとって周知である。 また、引用発明のリモート操作者の正当性を確認する制御においては、上記2.(カ)に「電話機1とPHP2との間の同一所有性を確認する方法は、上記実施例の例に限らず、他の方法を用いてもよい。」と記載されているように、他の構成を採用できる点が記載されている。 したがって、引用発明のリモート操作者の正当性を確認する制御において、受信する毎に呼び出し信号回数をカウントするカウント手段と所定の受信回数と呼び出し信号回数とのパターンにより正当性を確認する構成とすることは、上記周知技術に基づき当業者が容易に成し得た事項にすぎない。 [相違点2について] 上記[相違点1について]で検討したごとく、引用発明のリモート操作者の正当性を確認する制御として、呼び出し信号回数を採用することは周知技術であり、また、上記周知技術を示すために引用した特開昭62-196966号公報には「第3の回数判定手段6は、第1の回数判定手段4から暗証一致信号Veが出力され、…(中略)…制御側からの5回目のダイヤリングに対応した呼出し音信号の受信回数を判定して予め設定された受信回数が得られた場合に負荷制御信号Vfを出力し、負荷制御手段7を介して被選択負荷8を制御する」(第2頁左下欄第13行?同頁右下欄第2行)と記載されているように、暗証一致後の遠隔制御する信号として、呼び出し信号回数を用いる点が記載されている。 よって、引用発明のリモート操作者の正当性を確認する制御として、上記周知技術の呼び出し信号回数を採用した場合、その後の保全処理を特定するために受信する信号として、リモート操作データの換わりに呼び出し信号回数を用いることは、当業者が容易に想到し得る事項にすぎない。 そして、本願発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が容易に予測できる範囲内のものである。 5.むすび したがって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-03-07 |
結審通知日 | 2008-03-11 |
審決日 | 2008-03-24 |
出願番号 | 特願2005-228425(P2005-228425) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(H04B)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 平井 誠 |
特許庁審判長 |
井関 守三 |
特許庁審判官 |
桑江 晃 野仲 松男 |
発明の名称 | 携帯型電子装置 |
代理人 | 鷲田 公一 |