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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1177366
審判番号 不服2005-16047  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-22 
確定日 2008-05-07 
事件の表示 平成 9年特許願第524738号「少なくとも2つのハウジング部分から成る制御装置」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 7月17日国際公開、WO97/25846、平成12年 3月 7日国内公表、特表2000-502843〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.本願発明
本願は、平成8年12月20日(優先日:平成8年1月10日、優先権主張国:ドイツ)を国際出願日とする出願であって、その発明は、明細書の特許請求の範囲の請求項1?12に記載された事項により特定されるものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】少なくとも2つのハウジング部分(18,26)と、出力構成素子(14)を備えた少なくとも1つのプリント配線板(10)とから成る制御装置であって、プリント配線板(10)が、少なくとも部分的に、熱伝導性の材料から成る層を有している形式のものにおいて、プリント配線板(10)が、冷却したい少なくとも1つの出力構成素子(14)の載置面よりも大きいかまたは該載置面に等しく形成された範囲(28)を備えた、両ハウジング部分のうちの少なくとも一方のハウジング部分(26)に載置されており、冷却したい少なくとも1つの出力構成素子(14)と第1のハウジング部分(18)との間に機械的補助手段(30)が設けられていて、第2のハウジング部分(26)が、少なくとも、冷却したい出力構成素子(14)の範囲(28)で、間接的または直接的にプリント配線板(10)に均一に接触することが可能になっていることを特徴とする、少なくとも2つのハウジング部分から成る制御装置。」

2.原査定の理由の概要
原審の拒絶査定の理由の概要は、本願の請求項1?3及び同5?9に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された以下の刊行物1?4に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないというものである。
刊行物1:特開平6-252573号公報
刊行物2:実願平1-62440号(実開平3-2699号)のマイクロフィルム
刊行物3:特開平7-50373号公報
刊行物4:米国特許第5461541号明細書

3.刊行物の記載事項
原審の拒絶査定に引用された刊行物1には、次の事項が記載されている。
〔a〕「【産業上の利用分野】本発明は、回路基板をその放熱を兼ねて筐体に固定する回路基板の筐体取付構造に関する。」(【0001】)
〔b〕「【実施例】図6は、実施例のプリント基板取付構造の説明図である。・・・
図6において、パワー素子61が搭載されたプリント基板62の表面には、パワー素子61の外装に接触させて、放熱専用の金属パターン64、65が形成される。プリント基板62の表面には、その他にも、パワー素子61以外の多数の素子とこれらを相互に結線する電気回路パターンが配置されている。プリント基板62の裏面の全体を覆って放熱専用の金属パターン63が面状に形成され、金属パターン63の表面は厚さ40μmの薄いレジスト膜層で覆われる。レジスト膜層は、リード付き部品を搭載してフローハンダを実施した際に、不要なハンダの付着を防止するためのもので、表面側の金属パターン64、65の表面も同様に覆っている。
プリント基板62の表面側の一方の金属パターン64は、部分的にレジスト膜層を剥離してあり、鉤状の起立部57の折り曲げ部分58に対するハンダ付けを容易にしている。・・・」(【0035】?【0037】)
〔c〕「鉤状の起立部57は、筐体55の一部を折り曲げ加工して持ち上げた頂部56の一方のエッジから折り曲げて立ち上げられ、鉤状の起立部57の鉤状の部分が根本から折り曲げられて折り曲げ部分58を構成する。折り曲げ部分58は、プリント基板62を頂部56に向かって付勢しつつ、金属パターン64のレジスト膜層を剥離した表面に摩擦ロックされている。そして、折り曲げ部分58と金属パターン64はハンダ付け59によって固定されている。従って、パワー素子61の発熱の一部は、金属パターン64から鉤状の起立部57を通じて筐体55に直接バイパスされる。」(【0038】)
〔d〕「プリント基板62の表面側の他方の金属パターン65は、スルーホール66によって裏面側の金属パターン63に導通し、熱的な接続を確保している。裏面側の金属パターン63の中央部分は、鉤状の起立部57がプリント基板62を頂部56に向かって付勢した状態で、頂部56に密着している。従って、パワー素子61の発熱の他の一部は、金属パターン65からスルーホール66を通じて裏面の金属パターン63に達して裏面全体に面状に拡散し、同時に、頂部56との接触を通じて筐体筐体55に流出する。」(【0039】)

4.本願発明についての当審の判断
(1)刊行物1に記載された発明
刊行物1には、「回路基板をその放熱を兼ねて筐体に固定する回路基板の筐体取付構造」〔a〕に関する記載がされており、その実施例として、〔b〕には、回路基板について、「パワー素子61が搭載されたプリント基板62の表面には、パワー素子61の外装に接触させて、放熱専用の金属パターン64、65が形成される。・・・プリント基板62の裏面の全体を覆って放熱専用の金属パターン63が面状に形成され、・・・プリント基板62の表面側の一方の金属パターン64は、部分的にレジスト膜層を剥離してあり、鉤状の起立部57の折り曲げ部分58に対するハンダ付けを容易にしている」と記載されているから、この回路基板は、「冷却したいパワー素子61を備えたプリント基板62」であって、「表面及び裏面に放熱専用の金属パターン63,64,65からなる層を有する」ものといえる。
また、回路基板を固定する筐体については、〔c〕に「鉤状の起立部57は、筐体55の一部を折り曲げ加工して持ち上げた頂部56の一方のエッジから折り曲げて立ち上げられ、鉤状の起立部57の鉤状の部分が根本から折り曲げられて折り曲げ部分58を構成する。折り曲げ部分58は、プリント基板62を頂部56に向かって付勢しつつ、金属パターン64のレジスト膜層を剥離した表面に摩擦ロックされている。そして、折り曲げ部分58と金属パターン64はハンダ付け59によって固定されている」と記載されているから、この筐体は、「プリント基板62を載置する頂部56を有し、頂部56のエッジから折り曲げて立ち上げられた鉤状の起立部57の鉤状の部分が折り曲げられた部分58によって、プリント基板62を筐体55の頂部56に付勢している」ものといえる。
そして、プリント基板62の表面の金属パターン64は、〔b〕によると、「パワー素子61の外装に接触させて」形成され、かつ「リード付き部品を搭載してフローハンダを実施した際に、不要なハンダの付着を防止するため」のレジスト膜層で覆われているから、金属パターン64はパワー素子61の外装に接触する位置からその外側に亘って設けられているといえ、その金属パターン64と頂部56のエッジ部分に存在する折り曲げ部分58とがハンダ付けされるのであるから、プリント基板62は、パワー素子61の載置面積よりも大きい範囲において頂部56と接しているといえる。また、図6を参酌しても、プリント基板62と頂部56の接触範囲はパワー素子61の載置面積よりも大きい。
以上によると、刊行物1には、次の発明が記載されているといえる。
「筐体と、冷却したいパワー素子を備えたプリント基板とからなる取付構造であって、該プリント基板が、部分的に放熱専用の金属パターンを有しており、該プリント基板が、該パワー素子の載置面よりも大きく形成された範囲を備えた該筐体の頂部に載置されており、該頂部のエッジ部には、該プリント基板を該頂部に付勢する鉤状の起立部の折り曲げ部分が設けられていて、該筐体が、該パワー素子の載置面よりも大きく形成された範囲で、プリント基板に接触することが可能になっている取付構造」
以下、これを「刊行物1発明」という。

(2)本願発明と刊行物1発明との対比
本願発明(前者)と刊行物1発明(後者)とを対比すると、後者の「筐体」、は、前者の「一方のハウジング部分(26)」又は「第2のハウジング部分(26)」に相当し、後者の「(冷却したい)パワー素子」は、前者の「(冷却したい)出力構成素子(14)」に相当し、後者の「プリント基板」「放熱専用の金属パターン」、及び「鉤状の起立部の折り曲げ部分」は、それぞれ、前者の「プリント配線板(10)」、「熱伝導性の材料から成る層」、及び「機械的補助手段(30)」に相当し、後者の「筐体の頂部」は、パワー素子の載置面よりも大きい範囲に形成された筐体の一部分である点で、前者の一方の(第2の)ハウジング部分(26)の一部分である「出力構成素子(14)の載置面よりも大き・・・く形成された範囲(28)」又は「冷却したい出力構成素子(14)の範囲(28)」に相当し、後者の「筐体と、パワー素子を備えたプリント基板とからなる取付構造」は、「筐体」に「パワー素子を備えたプリント基板」を取り付けた回路装置の構造である点で、前者の「ハウジング部分」と「出力構成素子を備えたプリント配線板」とからなる回路装置である「制御装置」と一致するから、両者は、
「ハウジング部分と、出力構成素子を備えた少なくとも1つのプリント配線板とから成る回路装置であって、プリント配線板が、少なくとも部分的に、熱伝導性の材料から成る層を有している形式の回路装置において、プリント配線板が、冷却したい少なくとも1つの出力構成素子の載置面よりも大きい範囲を備えたハウジング部分に載置されており、機械的補助手段が設けられていて、ハウジング部分が、少なくとも、冷却したい出力構成素子の範囲で、間接的または直接的にプリント配線板に接触することが可能になっている、ハウジング部分から成る回路装置」である点で一致し、次の点で相違する。
相違点1:前者は、「少なくとも2つのハウジング部分(18,26)」を備えるのに対し、後者は、少なくとも2つのハウジング部分を備えるのかどうか不明である点
相違点2:前者は、回路装置が「制御装置」であるのに対し、後者は、制御装置であると特定されない点
相違点3:前者は、機械的補助手段が、「冷却したい少なくとも1つの出力構成素子(14)と第1のハウジング部分(18)との間」に設けられるのに対し、後者は、第2のハウジング部分の範囲(筐体の頂部)のエッジ部に設けられる点
相違点4:前者は、「第2のハウジング部分(26)が・・・冷却したい出力構成素子(14)の範囲(28)で、プリント配線板(10)に均一に接触することが可能になっている」のに対して、後者は、第2のハウジング部分(筐体)がパワー素子の範囲(頂部)で、プリント基板に均一に接触することが可能になっているかどうか不明である点

(3)相違点についての判断
(i)相違点1について
プリント基板のハウジング(収納容器)が、プリント基板の取付部材と、プリント基板を覆って保護するカバー部材との少なくとも2つの部分よりなることは、刊行物1の図8(b)、刊行物3の図1、刊行物4の図1,2に示されるように、本願出願前周知慣用の事項である。
そうすると、刊行物1発明においても、プリント基板のハウジングは、取付部材である「筐体」と、プリント基板を保護するカバー部材とを備える、すなわち、「少なくとも2つのハウジング部分」を備えているものと認められるし、仮にそうでないとしても、筐体とプリント基板を保護するためのカバー部材とを組み合わせてハウジングとすることは、上記周知慣用の事項に基づいて当業者が容易に想到し得る事項である。

(ii)相違点2について
「回路装置」として、「制御装置」はありふれたものであるにすぎず、刊行物1発明の取付構造を「制御装置」に適用することに何ら阻害要因はない。
したがって、刊行物1発明の取付構造を「制御装置」に適用することに、格別の困難性はない。

(iii)相違点3について
刊行物1発明における「鉤状の起立部の折り曲げ部分」は、〔d〕によると、冷却したいパワー素子(以下、「発熱性素子」という。)が載置されたプリント基板の部分を筐体の頂部に向かって付勢することにより、プリント基板の裏面と筐体の頂部を密着させ、発熱性素子の発熱をプリント基板を介して筐体に流出させる作用を奏するものといえる。
これに対して、刊行物3には、ハウジング1と覆い7よりなる回路基板11の収納容器において、発熱性の電子部品3を、覆い7の下側に取り付けられた勾配付きコイルスプリング5でハウジング1の内面に設けられた熱伝導性のフィルム9に均一に押圧することにより、電子部品の熱をハウジング1に伝導させることが記載されている(【要約】、【0026】?【0028】、図1、2)。
また、刊行物4には、カバー部材30と底部材20とよりなる電子回路モジュールの封入構造において、カバー部材30の内面に係合固定するスプリングクリップ41により、発熱性の電子部品14を底部材20の内面に設けられたシリコンストリップ層27及びマウンティングパッド23に押し付けることにより、電子部品14の熱を底部材20に伝導することが記載されている(第5欄第31?44行、Fig.1,2)。
以上の刊行物3,4の記載によると、発熱性素子の放熱構造として、一方のハウジング部材と発熱性素子との間に弾性を有する機械的補助手段を介在させ、発熱性素子を他方のハウジング部材に押圧して密着させることにより、発熱性素子の熱を他方のハウジング部材に流出させることは、本願出願前公知の事項であるといえる。そして、上記の機械的補助手段を、発熱性素子の載置されたプリント基板の部分を介して発熱性素子の熱をハウジング部材への流出させる放熱構造に適用することは、何ら阻害されていない。
そうすると、刊行物1発明において、発熱性素子の発熱をプリント基板を介してハウジング部材である筐体に流出させる作用を奏する「鉤状の起立部の折り曲げ部分」を、「冷却したい少なくとも1つの出力構成素子(14)と第1のハウジング部分(18)との間」に設けられた弾性を有する機械的補助手段に代替することは、上記公知の事項に基づいて、当業者がなし得ることと認められる。

(iv)相違点4について
刊行物1発明の「鉤状の起立部の折り曲げ部分」が、プリント基板の裏面と筐体の頂部を密着させ、発熱性素子の発熱を筐体に流出させる作用を奏するものといえることは、(iii)に前述のとおりであり、筐体の頂部がプリント基板に均一に接触すると、より密着度が向上して上記作用をより効果的に奏することは、当業者が容易に予測できる事項であるから、刊行物1発明において、筐体がその頂部でプリント基板に均一に接触することが可能になるような構成とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項といえる。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、刊行物1発明、刊行物3,4の記載事項及び周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-30 
結審通知日 2007-12-06 
審決日 2007-12-18 
出願番号 特願平9-524738
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 博之  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 近野 光知
坂本 薫昭
発明の名称 少なくとも2つのハウジング部分から成る制御装置  
代理人 矢野 敏雄  
代理人 アインゼル・フェリックス=ラインハルト  
代理人 ラインハルト・アインゼル  

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