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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1177514
審判番号 不服2005-1658  
総通号数 102 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-06-27 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-31 
確定日 2008-03-26 
事件の表示 特願2000-567176「少なくとも一のポリウレタン及び/またはポリウレア単位を含む重縮合物を実装してなるエアロゾルディスペンサー」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 3月 9日国際公開、WO00/12055、平成14年 7月30日国内公表、特表2002-523439〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年8月16日(優先権主張1998年8月27日、仏国)を出願日とする国際出願であって、平成15年11月28日付けで拒絶理由が通知され、平成16年6月2日に意見書が提出され、そして、同年10月29日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成17年1月31に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年3月1日付で手続補正がなされたものである。
2.平成17年3月1日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年3月1日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「液体及び少なくとも一の推進剤から生成される髪用組成物を実装してなる容器並びに該組成物を分配するための手段を備えたエアロゾル装置であって、
(i)該組成物が、化粧品として許容される媒体中に、少なくとも一のポリウレタン及び/またはポリウレア鎖を含む少なくとも一の重縮合物を含み;
(ii)該装置が、0.33mmの内部制限口を有し、付加的なガス取り込み口を持たず、0.33から0.51mmのノズル口を有するバルブを備えてなり、エアロゾル組成物の最初の噴霧量を毎秒0.75グラム以下とすることを特徴とする装置。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「エアロゾル装置」について「0.33mmの内部制限口を有し」及び「0.33から0.51mmのノズル口を有するバルブを備えてなり」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。
(2)引用例の記載の概要
原査定の拒絶の理由に引用された本願出願前に頒布された刊行物である特開平6-321741号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下に示す事項が記載されている。
(A)「(A)(i)ポリウレタン1gあたり0.35?2.25ミリ当量のカルボキシル官能基を与えるに十分な量の下式
【化1】(構造式は省略する。)
(上式中、Rは水素、又はC_(1)?C_(20)アルキルを表す)で表される1種以上の2,2-ヒドロキシメチル置換カルボン酸(ii)ポリウレタンの重量を基準として10?90重量%の、活性水素原子を2個以下有する1種以上の有機化合物、及び(iii)前記2,2-ヒドロキシメチル置換カルボン酸のカルボキシレートの水素以外の、2,2-ヒドロキシメチル置換カルボン酸及び有機化合物の活性水素と反応するのに十分な量の、1種以上の有機ジイソシアネートの反応生成物を含む、有効量の完全に反応したカルボキシル化線状ポリウレタン、
(B)ポリウレタンを水又は水と極性有機溶媒の混合物に可溶にするに十分な割合のポリウレタンのカルボキシル基を中和するに有効な量の、1種以上の化粧品に許容される有機又は無機塩基、並びに
(C)(i)水、及び(ii)溶媒の0?85重量%の、1種以上の極性有機溶媒を含む溶媒、を含む、水性毛髪固定剤。」(【請求項1】)
(B)「エーロゾルシステムにより送出しする毛髪固定剤は噴射剤を必要とする。……他の好ましい噴射剤は、エーテル、例えばジメチルエーテル……を含む。……」(【0022】)
(C)「毛髪固定剤
製造したポリウレタンエマルジョンの各々をエーロゾルヘアースプレーに配合し、……。エマルジョンの各々をまず水で適当な粘度に希釈し、次いで2-アミノ-2-メチル-1-プロパノール(AMP)で中和し、ポリウレタンを溶液にした。……次いでこの溶液をジメチルエーテルもしくはエタノールとエーテルのブレンドの添加により4部の活性ポリマー固体までさらに希釈した。……」(【0049】)
(3)当審の判断
(3-1)対比
引用例1には、ポリウレタンを含む水性毛髪固定剤(摘記事項(A))をエーロゾルシステムにより送出しする毛髪固定剤はジメチルエーテルのような噴射剤を必要とすること(摘記事項(B))、及び、ポリウレタン溶液にジメチルエーテルを添加し、エーロゾルヘアースプレーに配合すること(摘記事項(C))が、記載されていることから、「化粧品に許容される有機又は無機塩基で中和されたポリウレタン溶液に噴射剤を添加してなる毛髪固定剤を配合したエーロゾルヘアースプレー。」(以下、「引用発明」という。)が、実質的に記載されている。
そこで、本願補正発明と引用発明を比較する。
引用発明の「ポリウレタン溶液」は、ポリウレタンエマルジョンを水で希釈したものであり、ここで水は溶媒であるから(摘記事項(A))、本願補正発明の髪用組成物を構成する「化粧品として許容される媒体中に、少なくとも一のポリウレタン及び/またはポリウレア鎖を含む少なくとも一の重縮合物」を含む液体に相当する。
また、エーロゾルヘアースプレーは通常配合された組成物を分配するための手段を備えたものであるから、引用発明の「溶液に噴射剤を添加してなる毛髪固定剤を配合したエーロゾルヘアースプレー」は、本願補正発明の「液体及び少なくとも一の推進剤から生成される髪用組成物を分配するための手段を備えたエアロゾル装置」に相当する。
よって、本願補正発明と引用発明は、「液体及び少なくとも一の推進剤から生成される髪用組成物を実装してなる容器並びに該組成物を分配するための手段を備えたエアロゾル装置であって、
該組成物が、化粧品として許容される媒体中に、少なくとも一のポリウレタン及び/またはポリウレア鎖を含む少なくとも一の重縮合物を含む装置」である点で一致し、本願補正発明が、該装置が、0.33mmの内部制限口を有し、付加的なガス取り込み口を持たず、0.33から0.51mmのノズル口を有するバルブを備えてなり、エアロゾル組成物の最初の噴霧量を毎秒0.75グラム以下とするのに対し、引用発明は、エアロゾル装置の内部制限口及びノズル口の大きさの特定がない点で、両発明は相違する。
(3-2)相違点についての判断
例えば、特開昭55-73774号公報におけるFig.1、Fig.2、Fig.3、Fig.10及び
「エーロゾル調剤の本発明による担体混合物は……種々の目的用調剤を……提供する。
活性成分としては……理髪用物質、毛髪噴霧樹脂……が含まれる。
本発明によるエーロゾル調剤で使用される水性担体混合物は……噴射剤としてジメチルエーテルを主成分とする。」(第5ページ左上欄第8?19行)という記載のとおり、一般に、液体及び少なくとも一の推進剤から生成される髪用組成物を実装してなる容器並びに該組成物を分配するための手段を備えたエアロゾル装置であって、付加的なガス取り込み口を持たないものは、当業者にとって周知である。そして、上記公報における「弁棒2の半径方向排出路7の直径は約0.2?0.3mm……絞し路(当審注:絞り路の誤記)33は……その直径は……排出路7と同じであ大きさである。……絞り部材32の導入孔及び排出孔の直径は0.5?1.0mm……である。……ウエブの高さと同じ路高、すなわち0.2?0.3mm……導入路40は幅0.15から0.30mmであり、ウエブ38の高さを有する。……ノズル孔36は……その直径は0.3?0.6mm……である。」(第7ページ左下欄第4行?右下欄第10行)という記載のとおり、絞り路、絞り部材の導入孔及び排出孔、及び、導入路のような内部制限口の大きさは0.15?0.30mmや0.5?1.0mm程度であるように、本願発明の0.33mmの内部制限口は当業者にとって周知であるといえるし、本願発明の0.33から0.51mmのノズル口も当業者にとって周知である。そして、エアロゾル組成物の最初の噴霧量を毎秒0.75グラム以下とすることについても、そのような付加的なガス取り込み口を持たない周知のエアロゾル装置において、周知の大きさの内部制限口を採用し、周知の大きさのノズル口を採用すれば、達成できるエアロゾル組成物の最初の噴霧量の範囲を、例えば、毎秒0.75グラム以下というある具体的な数値範囲として示したにすぎないものであり、その具体的数値自体が特別な技術的意義を有するものとはいえず、この点に特段の創意を見出すことはできない。
そして、本願明細書に記載の本願補正発明の効果にしても、引用例1から当業者が容易に予測し得るものである。
以下のとおりであるから、本願補正発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
なお、請求人は、審判請求書において、試験例の表1を提出し、本願発明に係る付加的なガス取り込み口を持たないバルブを用いたスプレー装置は、付加的なガス取り込み口を持つバルブを用いたスプレー装置と比較して、良好なスプレー特性をもたらす旨を主張しているが、本願明細書には、この点については、記載されておらず上記主張は本願明細書の記載に基づかないものであるから、本願発明の進歩性を判断するに際し、参酌できない。
したがって、本願補正発明は、本願出願前に頒布された前記引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
(4)むすび
以下のとおり、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
3.本願発明について
平成17年3月1日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成16年6月2日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「液体及び少なくとも一の推進剤から生成される髪用組成物を実装してなる容器並びに該組成物を分配するための手段を備えたエアロゾル装置であって、(i)該組成物が、化粧品として許容される媒体中に、少なくとも一のポリウレタン及び/またはポリウレア鎖を含む少なくとも一の重縮合物を含み;
(ii)該装置が、エアロゾル組成物の最初の噴霧量を毎秒0.75グラム以下とする、付加的なガス取り込み口を持たない装置。」
(1)引用例の概要
原査定の拒絶の理由に引用された引用例、および、その記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。
(2)対比。判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明の「エアロゾル装置」をそのまま包含するものである。
そうすると、本願補正発明が、前記「2.(4)」に記載したとおり、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様の理由により、引用例1及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)むすび
以下のとおり、本願発明は、引用例1に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-10-23 
結審通知日 2007-10-30 
審決日 2007-11-13 
出願番号 特願2000-567176(P2000-567176)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 高岡 裕美  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 瀬下 浩一
谷口 博
発明の名称 少なくとも一のポリウレタン及び/またはポリウレア単位を含む重縮合物を実装してなるエアロゾルディスペンサー  
代理人 実広 信哉  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  

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