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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63B
管理番号 1178658
審判番号 不服2006-28889  
総通号数 103 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-07-25 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-28 
確定日 2008-05-07 
事件の表示 平成 9年特許願第506706号「耐衝撃顔面シールド」拒絶査定不服審判事件〔平成 9年 2月 6日国際公開、WO97/03579、平成11年 8月24日国内公表、特表平11-509448〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願請求項1の記載

本願は、1996年7月3日(パリ条約による優先権主張外国庁受理1995年7月14日、米国)を国際出願日とする出願であって、平成18年9月25日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年12月28日付けで拒絶査定に対する審判請求がなされたものである。

本願の特許請求の範囲の請求項1の記載は、平成18年8月14日付けの手続補正により補正された次のとおりのものである。

「スポーツ・イベントで使用するのに適したスポーツ用ヘルメットに装着される弧状に成形されたフェース・シールドにおいて、
機械的な衝撃に対して、スポーツ参加者の顔面の実質的な部分を保護する一体的で光学的に適正なレンズ部分を備えており、第1の向きにおいて、第1の曲率が水平方向に延び、第2の曲率が垂直方向へ延びており、前記垂直曲率が頂部および底部で終端しており、前記底部がスポーツ用ヘルメットに装着したときに頂部と底部の間に配置される前記レンズの中間部分に関して参加者の顔面に向かって相対的に内方へ延びているフェース・シールド。」

2.本願発明の認定

本願請求項1の記載は、以下に述べるように、日本語として意味不明な記載を含んでいるので、発明の詳細な説明を参酌する。

「一体的で光学的に適正な」レンズ部分とは、発明の詳細な説明第2ページ第22?24行目の「レンズの各曲面は、ひずみの公称レベルをつくり出すように実質上均一な半径を有する円弧を画定し、それによりプリズム効果、例えばレンズによってもたらされた視界の不均一なひずみを低減し、光学的に補正された観測窓を与える。」、第7ページ第1?16行目の「前述のように、平(すなわち一定厚さ)レンズでは、レンズに出入りする光が不均一に偏移するので、装着者の視野に歪みまたはプリズム偏差が導入される。・・・このプリズムの影響は、装着者が見る物体を例えば長くしたり転置するなどして歪ませ、この歪みはレンズの周辺の視野領域で特に大きくなる。・・・特に、レンズ12のレンズ効果は、比較的薄い縁部領域30とともに比較的低いレベルの歪みを導入し、レンズのほぼ全領域を通した視野を光学的に補正する働きをする。したがって、本明細書で使用する「光学的に補正する」という言葉は、・・・特定の設計および幾何学的形状によって生み出されるプリズム偏差を低下させることを指すものとし、さらに、装着者の視野のかなりの部分を介した比較的低い屈折力および比較的低いプリズム力を呈するフェース・シールドを含むものとする。」 及び第1図、第2図より、「単一の部材からなり、一定厚さのレンズに比べてその周辺の視野領域で生ずる視界の不均一なひずみを低減させた」レンズ部分を意味するものと解される。
また、「曲率」は、通常は「1/r」を意味するが、発明の詳細な説明第5ページ第1?2行目「レンズ部分12は、第1の水平曲面16(水平面内で見た場合)および第2の垂直曲面18を有する。」 及び第1図、第4図より、「湾曲した状態」を意味するものと解される。

したがって、本願請求項1に係る発明は、次の事項により特定されるとおりのものと認める。

「スポーツ・イベントで使用するのに適したスポーツ用ヘルメットに装着される弧状に成形されたフェース・シールドにおいて、
機械的な衝撃に対して、スポーツ参加者の顔面の実質的な部分を保護する単一の部材からなり、一定厚さのレンズに比べてその周辺の視野領域で生ずる視界の不均一なひずみを低減させたレンズ部分を備えており、第1の向きにおいて、第1の湾曲した状態が水平方向に延び、第2の湾曲した状態が垂直方向へ延びており、垂直に湾曲した状態が頂部および底部で終端しており、前記底部がスポーツ用ヘルメットに装着したときに頂部と底部の間に配置される前記レンズの中間部分に関して参加者の顔面に向かって相対的に内方へ延びているフェース・シールド。」(以下、「本願発明」という。)

3.引用例

これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の優先権主張の日前の1982年5月29日に頒布された実願昭55-165351号(実開昭57-87780号)のマイクロフィルム及び同じく1989年1月27日に頒布された特開昭64-25855号公報(以下、順に「引用例1」及び「引用例2」という。)には、本願発明に関連する事項として、以下の事項が図示と共に記載されている。

(1)引用例1

ア.「この考案は、空手道、日本拳法、逮捕術、ボクシング、剣道、銃剣術等加撃を伴う格闘技全般に利用し得る安全防具、特に顔面及び頭部を保護するためのものに関する。」(第1ページ第16?19行目)

イ.「第1図は本考案の防具の1例を示す全体斜視図で、1は正面を覆うフエイスカバー2と左右を覆うサイドカバー3,3とを発泡樹膜若しくはスポンジ状の合成ゴム又は合成樹脂材等によって一体形成してなるカバー本体である。」(第4ページ第4?8行目)

ウ.「フエイスカバー2の正面には透視窓4全体を覆うように一定の厚みを有し耐衝撃性に優れた透明プラスチツク材(実施例では・・・確認されている。)よりなる防護マスク13が紐14により縫合固着されており、フエイスカバー2の下部との間には、通気用間隙が形成されている。該防護マスク13はフエイスカバー2の正面形状に適合するフランジ状の周縁部15とカバー本体1内より透視窓4を介して外部、特に対戦相手の動静が屈折なく見透せるように、略装着者の目の位置付近を中心としたアールをなす一段若しくは複数段の球面部(透視部16とからなり、フエイスカバー2への縫合固着は周縁部15において行われる。」(第7ページ第4行目?第8ページ第1行目)

エ.「(2)透視窓及びくもりのない透明マスクを通じて装着者の視界が十分に確保されるので対戦相手の動作全体が正確に見られるほか、相手方からも装着者の目の動きや顔の表情の変化の確認が容易なので正確な攻撃防御ができ、第三者からもこれらの確認が容易である。」(第11ページ第7?12行目)

オ.第1図、第2図からは、防護マスク13の球面部16が単一の部材からなり、装着者の目、鼻、口、頬を覆う球面状の形状をしている点、防護マスク13が頭頂を上にした装着者により装着された向きにおいて、第1の湾曲した状態が水平方向に延び、第2の湾曲した状態が垂直方向に延びており、第2の湾曲した状態が頂部および底部で終端しており、前記底部がカバー本体1に縫合固着されたときに頂部と底部の間に配置される前記球面部16の中間部分に関して装着者の顔面に向かって相対的に内方に延びている点が看取できる。

この記載事項を含む引用例1全体の記載によると、引用例1には、「格闘技全般に利用し得る安全防具であって、特に顔面及び頭部を保護するカバー本体1に設けられる防護マスク13であって、一定の厚みを有し耐衝撃性に優れた透明プラスチック材からなり、装着者の目、鼻、口、頬を覆うことにより、格闘技における加撃から特に顔面及び頭部を保護し、単一の部材からなる一段若しくは複数段の球面部16を備えており、防護マスク13が頭頂を上にした装着者により装着された向きにおいて、第1の湾曲した状態が水平方向に延び、第2の湾曲した状態が垂直方向に延びており、第2の湾曲した状態が頂部および底部で終端しており、前記底部がカバー本体1に縫合固着されたときに頂部と底部の間に配置される前記球面部16の中間部分に関して装着者の顔面に向かって相対的に内方に延びている防護マスク13。」(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)引用例2

カ.「この発明は、自転車やスキーのような活動的なスポーツに参加するための眼鏡のレンズを開示し、そのレンズは、上縁および下縁を有する1枚の一体レンズを含み、」(第3ページ左下欄第17?20行目)

キ.「たとえば、円筒状の曲率を提供するために、平らなシートストックまたは平らな成形されたブランクから切取られたレンズを曲げることは、レンズの円弧長さに沿う半径に些細な変化を引き起こす。レンズの光回折特性の変化が結果として生じ、それは歪みを導入する。・・・したがって、レンズは所望の形状に予め成形されていることが好ましい。」(第5ページ左上欄第4?15行目)

ク.「末端部58および59の各々におけるレンズ52の厚みが、2つの末端部58および59の中間のあらゆる点53におけるレンズの平均的な厚みより小さいか等しいことである。さらに2つの端部58および59の中間の少なくとも1点において測定されたレンズ52の厚みは、それら端部の各々における厚みより大きい。この発明は、レンズの厚みとレンズの円弧長さに沿う角度位置との間の関係を図示する第6図を参照して最もよく理解され得る。」(第6ページ右上欄第12行目?同ページ左下欄第2行目)

ケ.「レンズの厚みは、均一の場合で、中心線60に集中する最も広い領域から末端部58および59の各々の近くのより狭い領域までテーパ状になっていることが好ましい。この態様で、前述したように光学的な歪みが最小にされる。」(第6ページ右下欄第7?11行目)

3.対比・判断

本願認定発明と上記引用発明とを対比する。

ア.引用発明における「格闘技全般」は、本願認定発明の「スポーツ・イベント」に含まれ、引用発明の「カバー本体1」も格闘技全般に使用され、顔面及び頭部を保護するものであるから、「スポーツ用ヘルメット」といえる。
イ.引用発明の「装着者」、「防護マスク13」は本願認定発明の「スポーツ参加者」、「フェース・シールド」に相当する。
ウ.引用発明の「球面部16」と本願発明の「レンズ部分12」とは、顔面の実質的な部分を保護するとともに、その部分を通して相手を見る部分であるとともに、いずれも光の屈折作用を有する透明体である点で共通するから、引用発明の「球面部16」は「レンズ部分12」と称することができる。
エ.引用発明の「防護マスク13」は球面状の形状をしているから、水平方向の断面及び垂直方向の断面のいずれから見ても、「弧状」といえる。

オ.引用発明の「防護マスク13が頭頂を上にした装着者により装着された向きにおいて、第1の湾曲した状態が水平方向に延び、第2の湾曲した状態が垂直方向に延びており、第2の湾曲した状態が頂部および底部で終端しており、」は、「第1の向きにおいて、第1の湾曲した状態が水平方向に延び、第2の湾曲した状態が垂直方向へ延びており、垂直に湾曲した状態が頂部および底部で終端しており、」ということができる。
カ.引用発明の「底部がカバー本体1に縫合固着されたときに頂部と底部の間に配置される前記球面部16の中間部分に関して装着者の顔面に向かって相対的に内方に延びている」は、「底部がスポーツ用ヘルメットに装着したときに頂部と底部の間に配置される前記レンズの中間部分に関して参加者の顔面に向かって相対的に内方へ延びている」ということができる。

以上のことから、両者の一致点と相違点は以下のとおりである。

[一致点]
スポーツ・イベントで使用するのに適したスポーツ用ヘルメットに装着される弧状に成形されたフェース・シールドにおいて、
機械的な衝撃に対して、スポーツ参加者の顔面の実質的な部分を保護する単一の部材からなるレンズ部分を備えており、第1の向きにおいて、第1の湾曲した状態が水平方向に延び、第2の湾曲した状態が垂直方向へ延びており、垂直に湾曲した状態が頂部および底部で終端しており、前記底部がスポーツ用ヘルメットに装着したときに頂部と底部の間に配置される前記レンズの中間部分に関して参加者の顔面に向かって相対的に内方へ延びているフェース・シールド。

[相違点]
本願発明において、レンズ部分は、「一定厚さのレンズに比べてその周辺の視野領域で生ずる視界の不均一なひずみを低減させた」ものであるのに対し、引用発明においては、「外部が屈折なく見透かせる」とは記載されているものの、そのような特定がされていない点。

[相違点の判断]

以下、相違点について検討する。

引用例2には、曲げられた1枚の一体レンズに生ずる歪みを、レンズの厚みを中心線60に集中する最も広い領域から末端部58および59の各々の近くのより狭い領域までテーパ状にすることにより低減させることが記載されている。その結果、一定厚さのレンズに比べてその周辺の視野領域で生ずる視界の不均一なひずみを低減させたものと認められる。
引用発明と引用例2は、ヘルメットと眼鏡レンズとで適用される分野が異なるものの、いずれもスポーツを行う際に使用する点では共通している。スポーツを行うにあたって、使用者がレンズを通して見る際にレンズの形状によって歪みが生じる場合、その歪みを解消し、光学的に補正された状態とすることは、対戦相手や球の位置を的確に把握することでより適切な対応ができるから、引用発明において、一定厚さのレンズに比べてその周辺の視野領域で生ずる視界の不均一なひずみを低減させる手段として、引用例2に記載された上記技術を採用することは、当業者が容易になし得ることである。

そして、引用発明に上記相違点に係る構成を具備させたことによる作用効果も格別なものといえない。

したがって、本願発明は、上記引用発明及び周知技術から当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
4.むすび
本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2007-11-30 
結審通知日 2007-12-04 
審決日 2007-12-17 
出願番号 特願平9-506706
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A63B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 番場 得造
特許庁審判官 七字 ひろみ
名取 乾治
発明の名称 耐衝撃顔面シールド  
代理人 永田 豊  
代理人 松倉 秀実  
代理人 遠山 勉  
代理人 川口 嘉之  
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