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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F |
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管理番号 | 1178885 |
審判番号 | 不服2005-11165 |
総通号数 | 103 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-07-25 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-06-15 |
確定日 | 2008-06-06 |
事件の表示 | 特願2003-379103「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 2日出願公開、特開2005-137722〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成15年11月7日に出願された特願2003-378647号(国内優先権主張 平成14年11月20日)の一部を特許法44条1項の規定により新たな特許出願(同条4項の規定により、特願2003-378647号と同じ優先権主張がされているものとみなされる。)としたものであって、平成17年5月10日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年6月15日付けで本件審判請求がされるとともに、同年7月14日付けで特許請求の範囲についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成17年7月14日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.補正事項及び補正目的 本件補正は特許請求の範囲を補正するものであり、具体的には補正前の「窓枠表示領域の表示状態を変化させる」との記載を「窓枠表示領域の形状を変化させる」と補正するものであって、これは特許請求の範囲の減縮(平成18年改正前特許法17条の2第4項2号該当)を目的とするものと認める。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるかどうか検討する。 2.補正発明の認定 補正発明は、本件補正により補正された特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「遊技に関する結果を表示する遊技結果表示手段と、 該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段と を備えた遊技機において、 前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、該第2表示手段は前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域と、前記図柄表示領域と同一平面上に設けられ前記図柄表示領域を囲む窓枠表示領域とを有し、 前記第1表示手段の表示態様が特定の表示態様である場合に、前記図柄表示領域に遊技情報を表示すると共に、前記窓枠表示領域の形状を変化させる表示制御手段を備えたことを特徴とする遊技機。」 3.引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-124290号公報(以下「引用例1」という。)には、以下のア?クの記載が図示とともにある。 ア.「複数の回転リールを横方向に並列し、各回転リールの外周の表面に複数のシンボルマークを所定間隔で表示し、各回転リールの外周の表面の一部をフロントパネルに開設した表示窓に臨ませるとともに、各回転リールを回転させてシンボルマークを移動表示するスロットマシンにおいて、 上記フロントパネルには、前記表示窓の位置に少なくとも液晶表示装置を配置し、ゲームの開始前には液晶を遮光状態とするとともに、その遮光面にインフォメーションを液晶表示し、ゲーム中は液晶を透光状態としたことを特徴するスロットマシン。」(【請求項1】) イ.「センターパネル21のほぼ中央には、図2に示すように、3個の表示窓22?24を横並びに形成している。各表示窓22?24の内部には、各回転リール30?32の表面をそれぞれ臨ませている。そして、各表示窓22?24には、回転リール30?32を回転させることにより、上下方向に3個のシンボルマークを所定間隔で高速で移動表示させることができる。」(段落【0016】) ウ.「前記センターパネル21の裏側には、図1に示すように、液晶表示装置を構成する液晶パネル40が、センターパネル21の裏面のほぼ全体にわたって配置されている。」(段落【0018】) エ.「上記液晶パネル40には、例えばカラー液晶を使用しているが、勿論、モノクロタイプの液晶を使用してもよい。なお、液晶パネル40の制御は、スロットマシン10内に設けたマイクロコンピュータ等からなる電気的制御装置(図示せず)により行われている。前記液晶パネル40の裏側には、図1に示すように、液晶パネル40をその裏側から照明するためのバックライトユニット50が配置されている。」(段落【0019】) オ.「上記バックライトユニット50は、図1に示すように、各表示窓22?24の位置を除き、液晶パネル40の裏面のほぼ全体にわたって配置された面発光板51と、この乱反射板51の端面に配置された蛍光灯52とから構成されている。なお、面発光板51を、各表示窓22?24の位置を除いて配置したことから、液晶パネル40の透光状態では、スロットマシン10の内部に配置された各回転リール30?32のシンボルマークを、センターパネル21を透してスロットマシン10の前面より見ることができる。」(段落【0020】) カ.「液晶の透光面の一部を遮光状態として、図4に示すように、中央ライン60を液晶表示して、1本の有効ラインを表示する。」(段落【0024】) キ.「スロットマシン10の前面の図2に示すスタートスイッチ12が操作されると、3個の回転リール30?32がほぼ同時に回転を開始する。・・・3個のストップスイッチ13?15を全て操作し、全ての回転リール30?32を停止させる。その結果、有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせが形成されると、特別の賞態様、例えば、図7に示す右下がりの斜めライン63上に「7」の文字から成る図柄が3個揃うと、いわゆる「ビッグボーナス」の役が成立し、15枚のメダルが遊技者に払い出される。」(段落【0027】?【0028】) ク.「「ビッグボーナス」が成立すると、図8に示すように、上下に長く透光状態となっていた各表示窓22?24が、右下がりの斜めライン63上に揃った「7」の図柄を残して遮光状態となり、「ビッグボーナス」の当たり図柄を遊技者から見易いように強調する。さらに、各表示窓22?24の図7において向かって右側に表示されていた5個のメダル投入表示部70?74が、消灯し、その箇所に、図8に示すように、「ビッグボーナス」の文字が表示され、「ビッグボーナス」が成立したことを遊技者にわかり易く表示する。」(段落【0029】) 4.引用例1記載の発明の認定 引用例1の記載イ?オ及び【図1】?【図3】によれば、各表示窓22?24の位置に対応する液晶パネル部分にはバックライトユニットが設けられておらず、バックライトユニットと液晶パネルは略同サイズと認めることができ、表現を変えれば、液晶パネルと略同サイズのバックライトユニットに各表示窓22?24該当の開口部があるということができる。 遊技者側からみると、液晶パネル、バックライトユニット(表示窓22?24該当の開口部あり)及び3個の回転リールが並んでいる。 したがって、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。 「遊技者側からみて、モノクロタイプの液晶パネル、バックライトユニット及び3個の回転リールが並んで配置されたスロットマシンであって、 各回転リールは、外周の表面に複数の図柄を所定間隔で表示したものであり、 バックライトユニットには3個の開口部が設けられ、液晶パネルが透光状態であれば、各開口部を通して背後の回転リールを各リールごとに3図柄を視認できるように構成され、 液晶パネルの透光面の一部を遮光状態として、有効ラインを表示し、 スタートスイッチ操作により3個の回転リール回転を開始し、3個のストップスイッチの操作により全ての回転リールが停止し、有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせとしてビッグボーナスが成立すると、特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態とし、常時はメダル投入表示部とされる液晶パネル部分にビッグボーナスの文字を表示するスロットマシン。」(以下「引用発明1」という。) 5.補正発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定 引用発明1において、「全ての回転リールが停止し、有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせとしてビッグボーナスが成立」したこと(それ以外にも、全ての回転リールが停止後に表示されるリール図柄も同じである。)及び「ビッグボーナスの文字」は「遊技に関する結果」であるから、引用発明1の「3個の回転リール」及び「液晶パネル」は補正発明の「第1表示手段」及び「第2表示手段」にそれぞれ相当し、これらを併せたものが補正発明の「遊技結果表示手段」に相当する。 引用発明1において「有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせ」となることは、補正発明の「遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合」と異ならず、引用発明1においても「遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態」となることは明らかであるから、引用発明1は補正発明の「利益状態発生手段」を備える。 引用発明1における液晶パネルの開口部該当部分は、同部分に有効ラインの表示がされていても、3個の回転リールを視認できることは明らかであるから、上記開口部該当部分は補正発明の「前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域」に相当する。「前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され」ることも、当然一致点である。 引用発明1において「有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせが成立すると、特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態とし、常時はメダル投入表示部とされる液晶パネル部分にビッグボーナスの文字を表示」するのであり、かかる液晶パネルの制御は「有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせが成立する」ことを条件として行われるということができ、「特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態」とすることは、補正発明の「前記図柄表示領域に遊技情報を表示」に相当する。当然、引用発明1は「表示制御手段」を備えている。 引用発明1の「スロットマシン」が補正発明の「遊技機」に含まれることはいうまでもない。 したがって、補正発明と引用発明1は、 「遊技に関する結果を表示する遊技結果表示手段と、 該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段と を備えた遊技機において、 前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、該第2表示手段は前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域を有し、 前記第1表示手段の表示態様が特定の表示態様である場合に、前記図柄表示領域に遊技情報を表示する表示制御手段を備えた遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。 〈相違点〉補正発明の「第2表示手段」は「図柄表示領域と同一平面上に設けられ前記図柄表示領域を囲む窓枠表示領域とを有」し、「表示制御手段」は「第1表示手段の表示態様が特定の表示態様である場合に」は、図柄表示領域に遊技情報を表示するだけでなく、「窓枠表示領域の形状を変化させる」のに対し、引用発明1にはかかる構成が備わっていない点。 6.相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断 原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-137774号公報(以下「引用例2」という。)には、以下のケ?シの記載が図示とともにある。 ケ.「複数のシンボルを可変表示した後、決められた停止位置に、いずれかのシンボルを停止させるシンボル可変表示遊技機において、 複数のシンボルを可変表示するためのシンボル可変表示装置と、このシンボル可変表示装置の前側に配備された透光性を有する導光板と、この導光板の内部へ端面より光を導入する光源とを備え、前記導光板の表面には、前記シンボル可変表示装置のシンボルの停止位置に対応させて、導光板の内部に導入された光を拡散反射させる発光部が形成されて成るシンボル可変表示遊技機。」(【請求項1】) コ.「この発明は、・・・入賞やリーチ状態の発生などがあったとき、対象となっているシンボルがどれなのかを遊技者へ強く明示できるシンボル可変表示遊技機を提供することを目的とする。」(段落【0008】) サ.「図14に示すように、各シンボル表示窓20a,20b,20cに対応させる導光板30a,30b,30cを1枚の透明板材で構成し、各透明板材に3個のシンボルを一括して囲む矩形枠状の発光部45を形成してもよい。図14の実施例では、例えばリールが回転中のシンボル表示窓については、その導光板の発光部を緑色に面発光させ、リールが停止したとき、発光部の面発光を停止させ、入賞が成立したとき、全ての導光板の発光部を赤色に面発光させるとよい。」(段落【0040】) シ.「図19は、導光板30a,30b,30cの他の実施例であり、、上中下斜めの停止ラインL1?L5を上記した発光部をもって構成している。例えば、左側の導光板30a(中央、右側の各導光板30b,30cも同様)は、図20に示すように、5枚の透明板材61?65をもって構成してあり、各透明板材61?65には前記停止ラインL1?L5の各線分を表わす発光部71?75が形成してある。なお図中、38,39は第1,第2の各光源である。この実施例によれば、メダル投入時、有効化された停止ラインについて第1の光源38を点灯させて発光部を緑色に発光させ、入賞時、入賞シンボルが並んだ停止ラインについては第2の光源39を点灯させて発光部を赤色に発光させる。」(段落【0044】) 引用例2における「入賞が成立したとき」(記載サ)又は「入賞時」(記載シ)の代表例は、【図13】,【図17】等の状態であり、これは引用発明1でいう「ビッグボーナスが成立」に該当する。すなわち、引用例2にはビッグボーナス成立時に、シンボルを一括して囲む矩形枠状の発光部の発光色を変化させる技術(記載サ)及び入賞シンボルが並んだ停止ラインの発光部の発光色を変化させる技術(記載シ)が記載されており、それぞれの技術は補正発明の「窓枠表示領域の変化」(形状の変化であることは相当しない。)及び「図柄表示領域に遊技情報を表示」に相当する。 引用発明1では、ビッグボーナス成立を強調する技術として、図柄表示領域においては「特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態」とする技術が採用されているのであるが、これを引用例2記載の上記2つの技術のいずれか又は双方に変更する(その場合に、引用発明1が液晶パネルを有することに伴っての軽微な設計的変更は許容される。)ことが当業者にとって容易であるか否かを検討する。 まず、記載サの技術について検討する。引用発明1は液晶パネルを有しており、その開口部該当部分(図柄表示領域)の外側(当然「図柄表示領域と同一平面上」である。)に矩形枠を形成することに何の技術上の障害もないことは明らかであるから、そのような枠を形成すること(その枠が補正発明の「図柄表示領域を囲む窓枠表示領域」に相当する。)は当業者にとって想到容易である。そして、引用例2記載の技術における「発光部」は、導光板内部の拡散反射部(記載ケに「導光板の内部に導入された光を拡散反射させる発光部」とある。)であるから、その位置や形状を変化することはできないが、液晶パネルを用いるのであれば、そのような障害はない。逆に、引用発明1の液晶パネルはモノクロタイプ(液晶パネルをカラータイプにすることも考慮できるが、開口部の光透過性を確保するため、モノクロタイプを維持することには十分現実性がある。)であるから、引用例2記載の技術のように発光色を変化させることはできない。引用例2記載コには「対象となっているシンボルがどれなのかを遊技者へ強く明示できる」とあるけれども、記載サのように「各シンボル表示窓20a,20b,20cに対応させる導光板30a,30b,30cを1枚の透明板材で構成し、各透明板材に3個のシンボルを一括して囲む矩形枠状の発光部45を形成」した場合に「対象となっているシンボルがどれなのかを遊技者へ強く明示できる」とは認め難く(各シンボル表示窓に対して3枚の導光板を用いる例であれば、そのような明示作用があることは認める。)、記載サの技術は入賞成立前と入賞成立時の表示状態を変更することにより、入賞成立を遊技者に報知する技術にとどまると解すべきであり、入賞成立前後の表示状態を変更することに技術的意義があると解さねばならない。ところで、窓枠表示領域の表示状態の変更としては、色の変化だけでなく、大きさの変化、形状の変化等さまざまの態様が自明に想定できる。引用発明1の液晶パネルでは発光色を変化できず、他方引用例2記載の技術では窓枠表示領域(発光部)の位置・形状等を変化できないことは前示のとおりであるから、引用発明1に引用例2記載サの技術を採用するに当たっては、上記特性を考慮した上で、発光色の変化を位置・形状等の変化に変更することは、当業者であれば当然考慮する事項であり、その中でも形状の変化を採用することは設計事項というべきである。 次に、記載シの技術について検討する。引用発明1は「液晶パネルの透光面の一部を遮光状態として、有効ラインを表示」するものであるから、引用例2記載シの技術同様、ビッグボーナス成立時に有効ラインの表示状態を変更することは当業者にとって想到容易である。もっとも、記載サの技術について前述したように、引用発明1ではモノクロ液晶を用いる関係上、有効ラインの色を変更することはできないが、「入賞シンボルが並んだ停止ライン」を他の有効ラインと区別する手法は、色の変化以外にも種々存在する。例えば、引用例2に従来技術として「有効化された停止ライン上に所定のシンボルの組み合わせが成立して入賞になったとき、該当する停止ラインの有効ライン表示部が点滅する。」(段落【0005】)と記載されているように、「入賞シンボルが並んだ停止ライン」を点滅表示してもよいし、「入賞シンボルが並んだ停止ライン」と他の有効ラインのいずれか一方のラインを太くしたり、破線表示にしてもよく、これらの表示変更態様であれば、モノクロ液晶であっても十分表示できる。そして、入賞シンボルが並んだ停止ラインと他の有効ラインの表示態様を異ならせることは、引用例2記載シの技術同様、補正発明の「図柄表示領域に遊技情報を表示」に相当する。 最後に、引用例2の記載サ及び記載シの技術を、同時に引用発明1に適用することについて検討する。引用例2には、記載サ及び記載シの技術を併用する旨の記載はなく、併用しない理由も直接的には記載されていない。そこで検討するに、前示のとおり、引用例2記載の「発光部」の位置や形状を変化することはできず、2つの技術を併用しようとすれば、矩形枠状の発光部を備えた導光板と停止ラインの発光部を備えた導光板の双方が必要になるところ、ビッグボーナス成立という同一状態の表示技術として、あえて導光板を増やしてまで両技術を併用する必要性が乏しい所以と解される。しかし、引用発明1のように液晶パネルを用いる場合には、2つの技術を併用することの障害は皆無である。加えて、記載サの技術採用に関して述べたように、記載サの技術では、「対象となっているシンボルがどれなのかを遊技者へ強く明示できる」と認めることができない反面、記載シの技術ではそれが可能である。そうであれば、引用発明1を出発点として、引用例2記載の2つの技術を併せ採用することには十分な動機があり、その際にモノクロ液晶パネルの特性を考慮した上で、開口部外側(補正発明の「図柄表示領域を囲む」に相当)に矩形枠(窓枠表示領域)を形成し、ビッグボーナス成立時(補正発明の「第1表示手段の表示態様が特定の表示態様である場合」に相当)に、入賞シンボルが並んだ停止ラインと他の有効ラインの表示態様を異ならせる(補正発明の「図柄表示領域に遊技情報を表示する」に相当)と共に、窓枠表示領域の形状を変化させること、すなわち相違点に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、補正発明は引用発明1及び引用例2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 [補正の却下の決定のむすび] 補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができないから、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反しており、同法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により却下されなければならない。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての判断 1.本願発明の認定 本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年1月19日付けで補正された特許請求の範囲の【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。 「遊技に関する結果を表示する遊技結果表示手段と、 該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段と を備えた遊技機において、 前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、該第2表示手段は前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域と、前記図柄表示領域と同一平面上に設けられ前記図柄表示領域を囲む窓枠表示領域とを有し、 前記第1表示手段の表示態様が特定の表示態様である場合に、前記図柄表示領域に遊技情報を表示すると共に、前記窓枠表示領域の表示状態を変化させる表示制御手段を備えたことを特徴とする遊技機。」 2.本願発明の進歩性の判断 補正発明が引用発明1及び引用例2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであることは「第2[理由]」で述べたとおりである。 補正発明は本願発明を限定的に減縮した発明であるから、補正発明について述べた理由は、そのまま本願発明の進歩性にも当てはまるから、本願発明も引用発明1及び引用例2記載の技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたといわなければならず、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができない以上、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-04-02 |
結審通知日 | 2008-04-08 |
審決日 | 2008-04-21 |
出願番号 | 特願2003-379103(P2003-379103) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 池谷 香次郎、鉄 豊郎 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
太田 恒明 中槙 利明 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 藤田 和子 |