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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1179597
審判番号 不服2006-10803  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-25 
確定日 2008-06-12 
事件の表示 平成11年特許願第223401号「電子部品の実装装置および実装方法」拒絶査定不服審判事件〔平成13年2月23日出願公開、特開2001-53491〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成11年8月6日の出願であって、平成18年4月20日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年5月25日に拒絶査定に対する審判請求がされ、同年6月13日付けで手続補正がされたものである。

2.平成18年6月13日付け手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年6月13日付け手続補正(以下「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
(1)手続補正の内容
本件補正のうち特許請求の範囲についての補正事項は、補正前の請求項1及び請求項2に記載された事項である「第2の移動手段」を「シリンダから成り」と「限定的に減縮」するものといえる。そして、補正後の請求項1に記載された事項により特定される発明は次のとおりのものである。

「電子部品を供給する供給部から移載ヘッドによって電子部品をピックアップして基板に実装する電子部品の実装装置であって、前記供給部に備えられた複数のパーツフィーダと、前記基板を位置決めする位置決め手段と、前記移載ヘッドを前記各パーツフィーダの電子部品供給位置と前記位置決め手段によって位置決めされた基板の実装位置との間で相対移動させる移動手段とを備え、この移動手段は、前記移載ヘッドをX方向およびY方向に水平移動させる第1の移動手段と、前記複数のパーツフィーダが並設されたフィーダベースをX方向へ水平移動させる第2の移動手段により構成され、且つ第2の移動手段はシリンダから成り、前記移載ヘッドのX方向の可動範囲の長さはパーツフィーダの並設長さより小さいことを特徴とする電子部品の実装装置。」(以下、「本願補正発明」という。)

(2)独立特許要件違反についての当審の判断
(2-1)引用刊行物とその記載事項
原査定の理由で引用された刊行物1(特開昭59-41889号公報)には、次の事項が記載されている。

(a)「産業上の利用分野
本発明は、各種電子回路への電子部品の自動組立を効率よく行う電子部品の実装装置に関するものである。」(第1頁左下欄下から第2行?同頁右下欄第2行)

(b)「発明の構成
本発明は水平面内に移動可能なXYテーブルと、前記XYテーブル上に固定されていて電子部品を取出す位置と前記電子部品をプリント基板に実装する位置の2つの定位置の間を往復動する電子部品実装ヘッド部と、前記電子部品を取出す定位置に、任意の部品を持ち来たせる事が可能な水平軸上に移動可能な前記XYテーブル上に設置された電子部品供給部から構成されており、プリント基板を固定させたまま高速で電子部品の実装が可能になるという特有の効果を有するものである。」(第2頁右上欄第13行?同頁左下欄第3行)

(c)「べース17上に水平方向に固定されたXスライド軸18と前記スライド軸18にガイドされて移動可能なXテーブル19及びX軸駆動部20とXテーブル19上に固定されたXスライド軸18と直角方向に固定されたYスライド軸21と前記Yスライド軸21にガイドされて移動可能なYテ-ブル22及びY軸駆動部23とからなるXYテーブル部24があり、水平面内における任意の位置に移動可能である。前記XYテーブル部24には水平軸方向に固定されたZスライド軸25及び前記スライド軸25上を移動可能な部品供給部26と、その駆動部27とが積載されており、部品供給部26は第6図に示す如く、テーピングされた部品28を1個ずつ順次送りする部品送り部29を有し、第6図(a)に示す如く前記部品送り部29で、順次供給された電子部品28をカム軸30により駆動され上下に動作し、前記電子部品28を吸着する吸着部31は、第6図(b)の如く吸着された部品を位置決めする位置決め爪32をもち、第6図(c)の如く吸着位置決めされた部品28’を前記プリント基板15上に実装させる。」(第2頁左下欄第14行?同頁右下欄第14行)

(d)「以上のような構成により、吸着物31、位置決め爪32によりなる実装ヘッド部40は、電子部品を取り出す位置S位置と、プリント基板15に電子部品を実装する位置M位置との間を往復動する事が出来、部品供給部26上の多連の部品送り部29は任意の部品送り部29を部品供給部26の水平移動により、電子部品を取り出す位置S位置に持ち来たせる事が可能となり、前記実装ヘッド部40と、部品供給部26を前記XYテーブル24上に積載する事により、固定位置決めされたプリント基板15上の任意の位置に電子部品を実装する事が可能になる。」(第3頁左上欄第7行?第18行)

(2-2)対比・判断
(2-2-1)刊行物1に記載の発明
刊行物1の(a)の「本発明は、各種電子回路への電子部品の自動組立を効率よく行う電子部品の実装装置に関するものである。」という記載によれば、刊行物1に記載の発明は、電子部品の実装装置についてのものといえる。
そして、この「電子部品の実装装置」は、次のとおりのものといえる。

A.この「電子部品の実装装置」は、(b)の「前記XYテーブル上に固定されていて電子部品を取出す位置と前記電子部品をプリント基板に実装する位置の2つの定位置の間を往復動する電子部品実装ヘッド部と、前記電子部品を取出す定位置に、任意の部品を持ち来たせる事が可能な水平軸上に移動可能な前記XYテーブル上に設置された電子部品供給部から構成されており、」という記載によれば、上記「実装ヘッド部」は、電子部品を取出す(すなわち、ピックアップ)位置と電子部品をプリント基板に実装する位置の2つの位置の間を往復動するものであるから、「移載ヘッド」といえるし、上記「プリント基板」は、明らかに「基板」といえるから、電子部品を供給する供給部から移載ヘッドによって電子部品をピックアップして基板に実装するものといえる。

B.この「電子部品の実装装置」は、(c)の「部品供給部26は第6図に示す如く、テーピングされた部品28を1個ずつ順次送りする部品送り部29を有し、」という記載及び(d)の「部品供給部26上の多連の部品送り部29」という記載によれば、部品送り部は、テーピングされた部品を1個ずつ順次送るもの、言い換えると、テーピングされた部品(すなわち、パーツ)を1個ずつ順次送るもの(すなわち、フィーダ)であるから、供給部に備えられた多連(すなわち、複数)のパーツフィーダを備えているといえる。

C.この「電子部品の実装装置」は、(d)の「固定位置決めされたプリント基板15上の任意の位置に電子部品を実装する」という記載によれば、プリント基板は固定位置決めされているから、基板を位置決めする位置決め手段を備えているといえる。

D.この「電子部品の実装装置」は、(d)の「実装ヘッド部40は、電子部品を取り出す位置S位置と、プリント基板15に電子部品を実装する位置M位置との間を往復動する事が出来、」という記載によれば、上記「C.」で認定したように、プリント基板は位置決め手段によって位置決めされているから、移載ヘッドを各パーツフィーダの電子部品供給位置と位置決め手段によって位置決めされた基板の実装位置との間で相対移動させる移動手段を備えているといえる。

E.上記「D.」の「移動手段」は、(b)の「水平面内に移動可能なXYテーブルと、前記XYテーブル上に固定されていて電子部品を取出す位置と前記電子部品をプリント基板に実装する位置の2つの定位置の間を往復動する電子部品実装ヘッド部」という記載によれば、移載ヘッドをX方向およびY方向に水平移動させる移動手段により構成されているといえる。

F.上記「D.」の「移動手段」は、(b)の「電子部品を取出す定位置に、任意の部品を持ち来たせる事が可能な水平軸上に移動可能な前記XYテーブル上に設置された電子部品供給部から構成されており、」という記載、及び(d)の「部品供給部26上の多連の部品送り部29」という記載によれば、電子部品供給部は、上記「B.」で認定したように、複数のパーツフィーダが並設されているといえるし、水平軸上に移動可能な前記XYテーブル上に設置されているから、複数のパーツフィーダが並設された電子部品供給部のベース(すなわち、フィーダベース)をX方向へ水平移動させる移動手段により構成されているといえる。

刊行物1の記載及びこの記載から認定された以上の事項を本願補正発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。

「電子部品を供給する供給部から移載ヘッドによって電子部品をピックアップして基板に実装する電子部品の実装装置であって、前記供給部に備えられた複数のパーツフィーダと、前記基板を位置決めする位置決め手段と、前記移載ヘッドを前記各パーツフィーダの電子部品供給位置と前記位置決め手段によって位置決めされた基板の実装位置との間で相対移動させる移動手段とを備え、この移動手段は、前記移載ヘッドをX方向およびY方向に水平移動させる移動手段と、前記複数のパーツフィーダが並設されたフィーダベースをX方向へ水平移動させる移動手段により構成された、電子部品の実装装置。」

(2-2-2)本願補正発明と引用発明との対比
そこで、本願補正発明と引用発明とを対比すると、上記「(2-2-1)」の「E.」及び「F.」で認定した移動手段を、それぞれ「第1の移動手段」及び「第2の移動手段」ということもできるから、両者は、

「電子部品を供給する供給部から移載ヘッドによって電子部品をピックアップして基板に実装する電子部品の実装装置であって、前記供給部に備えられた複数のパーツフィーダと、前記基板を位置決めする位置決め手段と、前記移載ヘッドを前記各パーツフィーダの電子部品供給位置と前記位置決め手段によって位置決めされた基板の実装位置との間で相対移動させる移動手段とを備え、この移動手段は、前記移載ヘッドをX方向およびY方向に水平移動させる第1の移動手段と、前記複数のパーツフィーダが並設されたフィーダベースをX方向へ水平移動させる第2の移動手段により構成された、電子部品の実装装置。」という点で一致し、次の点で相違しているといえる。

相違点(イ)
第2の移動手段が、本願補正発明は、「シリンダから成」るのに対して、引用発明は、シリンダから成るか否か不明である点

相違点(ロ)
本願補正発明は、「移載ヘッドのX方向の可動範囲の長さはパーツフィーダの並設長さより小さい」のに対して、引用発明は、移載ヘッドのX方向の可動範囲の長さがパーツフィーダの並設長さより小さいか否か不明である点

(2-2-3)相違点についての判断
(2-2-3-1)相違点(イ)について
電子部品の実装装置において、水平移動させる手段としてシリンダを用いることは、本出願前当業者に周知の手段といえるから、この周知の手段を引用発明に用いることは当業者が容易に想到することといえる。
そして、第2の移動手段にシリンダを用いたことによる作用効果も当業者が予測できる程度のものであって格別顕著なものともいえない。

(2-2-3-2)相違点(ロ)について
引用発明も、実装時間の短縮を図るために、移載ヘッドの移動距離をできる限り短くするものといえる。
移載ヘッドと並設するパーツフィーダがともにX方向に移動する引用発明において、いずれのパーツフィーダからも移載ヘッドがパーツをピックアップすることができるためには、移載ヘッドとパーツフィーダが相対的に、パーツフィーダの並設長さに亘って移動可能とする必要があることは、明らかである。
そして、実装時間短縮のために、往復移動が必要な移載ヘッドの可動範囲に上限を設けることは当業者が容易に想到することといえる。かかる際に、移載ヘッドの可動範囲としてパーツフィーダの並設長さを上限とすることは、当業者が適宜なし得る設計的事項といえる。
してみると、移載ヘッドのX方向の可動範囲の長さをパーツフィーダの並設長さより小さくすることは、当業者が容易に想到することといえる。

(2-2-4)小括
以上のように、本願補正発明は、引用発明、及び本出願前当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(2-3)むすび
したがって、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明についての審決
(1)本願発明
平成18年6月13日付け手続補正は、上記のとおり却下すべきものであるから、本願請求項1に係る発明は、平成17年10月25日付け手続補正書によって補正された原査定時の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定されるとおりのものであって、その発明は次のとおりのものである。

「電子部品を供給する供給部から移載ヘッドによって電子部品をピックアップして基板に実装する電子部品の実装装置であって、前記供給部に備えられた複数のパーツフィーダと、前記基板を位置決めする位置決め手段と、前記移載ヘッドを前記各パーツフィーダの電子部品供給位置と前記位置決め手段によって位置決めされた基板の実装位置との間で相対移動させる移動手段とを備え、この移動手段は、前記移載ヘッドをX方向およびY方向に水平移動させる第1の移動手段と、前記複数のパーツフィーダが並設されたフィーダベースをX方向へ水平移動させる第2の移動手段により構成され、前記移載ヘッドのX方向の可動範囲の長さはパーツフィーダの並設長さより小さいことを特徴とする電子部品の実装装置。」(以下、「本願発明」という。)

(2)原査定の理由の概要
原査定の理由の概要は、次のとおりのものである。

本願請求項1及び2に係る発明は、本出願前頒布された下記刊行物1に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開昭59-41889号公報

(3)引用刊行物の記載事項
原査定の理由に引用された刊行物1の記載事項は、上記「2.(2)(2-1)」に記載されたとおりのものである。

(4)対比・判断
(4-1)引用発明について
引用発明は、上記「2.(2)(2-2)(2-2-1)」記載された次のとおりのものである。

「電子部品を供給する供給部から移載ヘッドによって電子部品をピックアップして基板に実装する電子部品の実装装置であって、前記供給部に備えられた複数のパーツフィーダと、前記基板を位置決めする位置決め手段と、前記移載ヘッドを前記各パーツフィーダの電子部品供給位置と前記位置決め手段によって位置決めされた基板の実装位置との間で相対移動させる移動手段とを備え、この移動手段は、前記移載ヘッドをX方向およびY方向に水平移動させる第1の移動手段と、前記複数のパーツフィーダが並設されたフィーダベースをX方向へ水平移動させる第2の移動手段により構成された、電子部品の実装装置。」

(4-2)本願発明と引用発明との対比・判断
本願発明は、本願補正発明の、第2の移動手段は「シリンダから成り、」という限定のないものといえる。そして、上記限定を有する本願補正発明は、上記「2.(2)(2-2)」で述べたように、引用発明、及び本出願前当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえるから、上記限定のない本願発明も、本願補正発明と同様に、引用発明、及び本出願前当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。

(4-3)小括
したがって、本願発明は、引用発明、及び本出願前当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

4.むすび
したがって、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、本願は、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-14 
結審通知日 2008-04-15 
審決日 2008-04-30 
出願番号 特願平11-223401
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 千葉 成就内田 博之  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 近野 光知
平塚 義三
発明の名称 電子部品の実装装置および実装方法  
代理人 永野 大介  
代理人 岩橋 文雄  
代理人 内藤 浩樹  

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