• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1179654
審判番号 不服2006-15963  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-07-25 
確定日 2008-06-13 
事件の表示 特願2002-226410「光源装置の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月 4日出願公開、特開2004- 71710〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願手続の概要は、次のとおりである。
特許出願 平成14年 8月 2日
拒絶理由通知書送付 平成16年11月30日
意見書・手続補正書提出 平成17年 1月24日
拒絶査定送付 平成18年 6月27日
審判請求 平成18年 7月25日
手続補正書提出 平成18年 7月25日

II.平成18年7月25日付け手続補正についての補正却下の決定
[I]補正却下の決定の結論
平成18年7月25付け手続補正を却下する。

[II]理由
1.本件補正・本願補正発明
平成18年7月25日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本願特許請求の範囲の請求項2を
「【請求項2】InGaAlやInGaAlNやInGaNおよびGaN系の半導体発光素子および波長変換材料を用いた光源装置を製造する光源装置の製造方法において、
以下のステップで製造することを特徴とする光源装置の製造方法。
ステップ1:薄板リードフレームに陽極および陰極の電極パターンのプレスを行う。
ステップ2:前記電極パターンプレスを行った前記薄板を樹脂により開口部や互いに向かい合う前記陽極と前記陰極との間に前記半導体発光素子を載置できる隔離部を設けてインサート成形を行う。
ステップ3:波長変換材と透明接着剤との混合比率を重量比率として1:1から5:1の範囲で混合し調合した波長変換材と透明接着剤との混入ペーストを、前記半導体発光素子を載置する前記隔離部の前記樹脂の表面にスタンパにより転写する。
ステップ4:前記混入ペーストを転写した上部位置に透明性を有した半導体発光素子を載置する。
ステップ5:恒温槽に搬入し前記混入ペーストを硬化させる。
ステップ6:前記半導体発光素子の陽極および陰極の電極と前記陽極および前記陰極の電極パターンとを電気的に接続する金ワイヤ等でワイヤーボンディングを行う。
ステップ7:前記透明樹脂を硬化させるための前記透明樹脂の基材と硬化剤とを攪拌し、前記基材と前記硬化剤とを完全に混合させるとともに混合攪拌気時に発生する気泡を脱泡して液状化することにより混合、脱泡した透明樹脂を、前記インサート成形により形成された前記開口部に充填する。
ステップ8:恒温槽に搬入し前記透明樹脂を硬化させる。
ステップ9:前記リードフレームに形成された電極端子等をカッティングして、個々の前記光源装置に分離する。」と補正することを含むものであって、特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認められるので、以下に補正後の請求項2に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について、独立特許要件の検討を行う。

2.刊行物
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用された特開2001-223388号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図とともに次の記載がある。

「【0028】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。なお、本発明は、セラミック基板、液晶ポリマー樹脂基板、ガラス布エポキシ樹脂基板のいずれかの基板または金属薄板からなるリードフレーム上、または前記基板またはリードフレームのパターン上または/および電気配線パターン上に、波長変換材料を混入した透明樹脂により透明性を有する半導体発光素子を接着固定し、波長変換材料を混入した樹脂が半導体発光素子を基板またはリードフレームに固定するためのダイボンド部材と兼用して構成材料を削減することにより作業性および経済性に優れ、長期間にわたって高輝度な発光が得られる光源装置を提供するものである。
【0029】図1は、本発明に係る光源装置の第1実施の形態を示す全体図である。図1に示すように、第1実施の形態の光源装置1(1A)は、インジェクションないしトランスファーモルドタイプのものであり、パターン2、透明樹脂3、半導体発光素子4、ボンディングワイヤ5、リード端子6およびモールドケース7から概略構成される。なお、本例におけるパターン2は電気配線パターンも含むものである。
【0030】パターン2(2a,2b)は、インサート成形によって樹脂にパターン形状を形成した燐青銅材等からなるリードフレームを挿入してリードフレーム上に形成されている。
【0031】透明樹脂3は、無色透明なエポキシ樹脂等に無機系の蛍光顔料や有機系の蛍光染料等からなる波長変換材料を混入させたものである。例えばエポキシ樹脂に蛍光材(YAG)を混入する場合、エポキシ樹脂と蛍光材との重量比率は、1:3?1:4程度である。この透明樹脂3は、パターン2上に塗布したり、蛍光材混入インク等の印刷により印刷パターンとしてパターン2上に形成することができる。
【0032】図1における透明樹脂3は、モールドケース7の凹状部7a内の底面に露出するパターン3と半導体発光素子4の下面(電極を持たない面)との間に介在して設けられ、半導体発光素子4をパターン3に固着する接着剤としての機能も兼ねている。」

「【0038】半導体発光素子4は、n型層上に活性層を中心にダブルヘテロ構造からなるInGaAlP系、InGaAlN系、InGaN系、GaN系のいずれかの化合物の半導体チップからなる発光素子であり、有機金属気相成長法等で製作される。また、半導体発光素子4自身の基板はAl_(2) O_(3) やInPサファイア等の透明基板からなり、この基板上に活性層を配し、活性層上に透明電極が形成されている。半導体発光素子4に取り付ける電極は、In_(2) O_(3) 、SnO_(2) 、ITO等からなる導電性透明電極等をスパッタリング、真空蒸着、化学蒸着等により生成させて製作する。
【0039】そして、半導体発光素子4は、一方の面(図1の上面)にアノード電極およびカソード電極を有しており、電極を持たない他方の面(図1の下面)側が透明樹脂3上に載置されて固着されている。半導体発光素子4のアノード電極およびカソード電極は、ボンディングワイヤ5でパターン2a,2bにワイヤーボンディングされている。
【0040】ボンディングワイヤ5は金線等の導通線からなり、半導体発光素子4のアノード電極とパターン2aとの間、カソード電極とパターン2bとの間をそれぞれボンダによって電気的に接続している。
【0041】リード端子6(6a,6b)は、導通性および弾性力のある燐青銅等の銅合金材等からなるリードフレームをモールドケース7から直接取り出して形成されている。リード端子6aは、パターン2aと電気的に接続されて半導体発光素子4のアノード電極側と等しく、本発明の光源装置1(1A)としての陽極(+)として使用されるように構成される。
【0042】また、リード端子6bは、パターン2bと電気的に接続されて半導体発光素子4のカソード電極側と等しく、本発明の光源装置1(1A)としての陰極(-)として使用されるように構成される。
【0043】モールドケース7は、変成ポリアミド、ポリブチレンテレフタレートや芳香族系ポリエステル等からなる液晶ポリマなどの絶縁性の有る材料に、チタン酸バリウム等の白色粉体を混入させて凹状にモールド形成されており、凹状部7a内の底面にパターン2が露出している。
【0044】また、モールドケース7は、光の反射性と遮光性の良いチタン酸バリウム等の白色粉体によって半導体発光素子4の側面側から出光する光を効率良く反射し、図示しないテーパ状の凹面により上方に出射するとともに、本発明の光源装置1(1A)の発光した光を外部に漏れない様に遮光する。
【0045】さらに、図示しないが、モールドケース7内には、パターン2、半導体発光素子4、ボンディングワイヤ5等の保護のために無色透明なエポキシ樹脂等が充填されている。」

「【0070】ところで、図1および図2に示す構成では、半導体発光素子4が一方のパターン2a上に透明樹脂3により固着されたものであるが、図3(a)?(c)に示すような構成としてもよい。
【0071】図3(a)に示す構成では、パターン2a,2bが形成されていない部分、具体的には、モールドケース7の凹状部7a内の底面に表出するパターン2aとパターン2bの間の部分(絶縁パターンを含む)、又は基板11上のパターン2a,2b間の部分(絶縁パターンを含む)に透明樹脂3を介して半導体発光素子4が固着されており、半導体発光素子4のアノード電極およびカソード電極がそれぞれパターン2a,2bにボンディングワイヤ5によりワイヤーボンディングされている。」

上記段落【0071】に記載される図3(a)の構成を参照すれば、刊行物1には、モールドケース7の凹状部7a内の底面に表出するパターン2aとパターン2bの間の部分に、透明樹脂3を介して半導体発光素子4が固着されており、半導体発光素子4のアノード電極およびカソード電極がそれぞれパターン2a,2bに金線等からなるボンディングワイヤ5によりワイヤーボンディングされている光源装置が記載されているものと認められる。
ここで、「モールドケース7」は樹脂であり、パターン2a,2bは、モールドケース7の樹脂にインサート成形されたものであることが理解される。(【0030】)
また、その「パターン2a,2b」は、それぞれ、陽極(+)及び陰極(-)として使用されるものである。(【0041】、【0042】)
また、その「半導体発光素子4」は、InGaAlP系、InGaAlN系、InGaN系、GaN系の半導体素子であり(【0038】)、透明性を有する半導体発光素子(【0028】)であるとされている。
また、その「透明樹脂3」は、例えば、無色透明なエポキシ樹脂に蛍光染料等からなる波長変換材料を重量比率1:3?1:4程度で混入させたものであり(【0031】)、半導体発光素子4を固着する接着剤としての機能も兼ねている(【0032】)とされている。
また、その「モールドケース7」内には、パターン2、半導体発光素子4、ボンディングワイヤ5等の保護のために無色透明なエポキシ樹脂が充填されると記載されている。(【0045】)

以上のことから、刊行物1には、
「InGaAlPやInGaAlNやInGaNおよびGaN系の透明性を有した半導体素子4と波長変換材料を用いた光源装置であって、
樹脂のモールドケース7の凹状部7a内の底面に表出するインサート成形された陽極パターン2aと陰極パターン2bの間に、エポキシ樹脂に波長変換材料を重量比率1:3?1:4で混入させた透明樹脂3により、前記半導体素子4を接着固定し、前記半導体素子4のアノード電極およびカソード電極と前記陽極パターン2aおよび前記陰極パターン2bとを金線等からなるボンディングワイヤ5によりワイヤーボンディングし、前記モールドケース7内に保護用の無色透明なエポキシ樹脂を充填してなる光源装置。」の発明(以下、「刊行物1発明」という。)が記載されているものと認められる。

(2)刊行物2
原査定の拒絶理由に引用された特開2001-7405号公報(以下、「刊行物2」という。)には、発光ダイオードについて次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、波長変換型の発光ダイオードに係り、特に青色発光を白色に変換するタイプの発光ダイオードに関するものである。」
「【0022】
【発明の実施の形態】以下、添付図面に基づいて本発明に係る発光ダイオードの実施の形態を詳細に説明する。図1乃至図3は、表面実装型の発光ダイオードに適用した場合の実施例を示したものである。この実施例に係る表面実装型発光ダイオード11は、基材となる矩形状のガラスエポキシ基板(以下、ガラエポ基板という)12に一対の電極(カソード電極13とアノード電極14)をパターン形成し、この電極13,14の下面側をマザーボード15上のプリント配線16,17に半田18で固定することによって表面実装を実現するものである。
【0023】前記ガラエポ基板12の上面中央部には発光ダイオード素子20が搭載され、その裏面側に塗布された蛍光材含有層21によってガラエポ基板12に固定されている。」
「【0024】一方、発光ダイオード素子20の裏面側に設けられた蛍光材含有層21は、図3に示したように、接着剤29をベースとした中に適当量の蛍光材30を均一に分散させたものである。これをガラエポ基板12の上面に所定の厚さになるように塗布し、その上に発光ダイオード素子20を載せ置く。接着剤29が加熱固化することで、発光ダイオード素子20の裏面がガラエポ基板12の上面に固定される。接着剤29とガラエポ基板12との間では強い接着力が得られるので、蛍光材含有層21が剥離するようなことはない。」

したがって、刊行物2には、「接着剤に適当量の蛍光材を均一に分散させたものを基板上面に塗布し、その上に発光ダイオード素子を載置して、発光ダイオード素子を基板の上面に固定するものにおいて、加熱固化することによりこれらを接着すること」が記載されているものと認められる。

(3)刊行物3
原査定の拒絶理由に引用された特開2001-36150号公報(以下、「刊行物3」という。)には、発光ダイオードについて次の記載がある。
「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、波長変換型の発光ダイオードに係り、特に青色発光を白色に変換するタイプの発光ダイオードに関するものである。」
「【0018】また、前記発光ダイオード素子21は、その裏面側に設けられた蛍光材含有接着層30を介してガラエポ基板12の上面中央に接着されている。この蛍光材含有接着層30は、図3に示したように、透明性のある接着剤31をベースとしてその中に適当量の蛍光材32を均一に分散させたものである。これをガラエポ基板12の上面に所定の厚さになるように塗布し、その上に発光ダイオード素子21を載せ置き、接着剤31を加熱固化することで、発光ダイオード素子21の裏面がガラエポ基板12の上面に固着される。接着剤31とガラエポ基板12との間では強い接着力が得られるので、蛍光材含有接着層30が剥離するようなことはない。」

したがって、刊行物3には、「接着剤に適当量の蛍光材を均一に分散させたものを基板上面に塗布し、その上に発光ダイオード素子を載置して、発光ダイオード素子を基板の上面に固定するものにおいて、加熱固化することによりこれらを接着すること」が記載されているものと認められる。

(4)刊行物4
原査定の拒絶理由に引用された特開平8-45972号公報(以下、「刊行物4」という。)には、発光表示デバイスの樹脂封止について次の記載がある。
「【0004】多数のキャビティが設けられた多連キャビティ回路基板は、まず、全てのキャビティ内に発光素子(LED)がダイボンディングおよびワイヤーボンディングされた後に、全てのキャビティ内に液状または溶融状態の封止用樹脂が充填される。その後、各キャビティ内に充填された液状または溶融状態の樹脂が硬化される。各キャビティ内に封止用樹脂を充填する方法としては、一般的に、キャスティングモールド法、インジェクションモールド法、トランスファーモールド法が採用されている。
【0005】従来のキャスティングモールド法による封止用樹脂の充填方法について、図25に基づいて説明する。この封止用樹脂の充填方法は、図25(a)に示すように、まず、主剤91aと硬化剤91bとを混合して液体状態の封止用樹脂91を製造する。封止用樹脂91としては、通常、熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂が使用される。得られた封止用樹脂91は、図25(b)に示すように、よく撹拌して、図25(c)に示すように、脱泡槽92によって脱泡された後に、図25(d)に示すように、注型機93に投入される。
【0006】このような状態で、図25(e)に示すように、多数のキャビティ94aがマトリクス状に形成された多連キャビティ回路基板94が注型機93にセットされて、注型機93の空気圧送式、チュービング式、マイクロギアポンプ式等のディスペンサー93aによって各キャビティ94a内に液体状態の封止用樹脂91が充填される。多連キャビティ回路基板94の各キャビティ94a内には、予め発光素子がダイボンディングおよびワイヤーボンディングされており、全てのキャビティ94a内に封止用樹脂91が充填されると、多連キャビティ回路基板94は、加熱炉95によって加熱されて、各キャビティ94a内の溶融状態の熱硬化性樹脂であるエポキシ樹脂が硬化される。
【0007】その後、多連キャビティ回路基板94は、各キャビティ94a毎に分割されることにより、回路基板のキャビティ内に設けられた発光素子が封止用樹脂91によって封止されている超小型反射板付の発光デバイスが製造される。」

上記記載によれば、刊行物4には、「発光素子がダイボンディングおよびワイヤーボンディングされたキャビティ内への封止用樹脂の充填において、主剤と硬化剤とを混合した液体状態の封止用樹脂をよく撹拌し脱泡したものをキャビティ内へ充填し、加熱炉によって加熱して硬化させること」が記載されているものと認められる。

(5)刊行物5
原査定の拒絶理由に引用された特開平5-206524号公報(以下、「刊行物5」という。)には、光半導体用モールド樹脂について次の記載がある。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、発光ダイオードなどの発光素子に樹脂材を用いてケース部を兼ねる発光レンズ部を設けるとき、該発光レンズ部が前記発光素子からの発光を拡散して外部に放射したいときに、前記樹脂材に混合される光拡散材に係るものである。」
「【0008】図2以降に示すものは本発明の光拡散材1を用いて拡散型の発光ダイオードなどを形成する工程を順次に示すもので、図2は前工程として光半導体用モールド樹脂3を予めに調合しておく工程を示し、透明なエポキシ樹脂2と前記光拡散材1とを高い混合率となるように混合し充分に攪拌した後に真空脱泡などの処理を行い光半導体用モールド樹脂3として次工程まで保存するものであるが、本発明により前記光拡散材1が鱗片状の形状とされたため、その重量に対する表面積が格段に増加したことと、形状的に整然と整列しにくいことにより、従来例で生じた比重差による沈澱が極度に減少するものとなる。」

上記記載によれば、刊行物5には、「発光ダイオードのケース部を形成する樹脂について、エポキシ樹脂を攪拌した後に脱泡処理を行うこと」が記載されているものと認められる。

(6)刊行物6
本願出願前に頒布された実願昭62-51564号(実開昭63-159859号)のマイクロフィルムには、LEDランプの製造方法について次の記載がある。
「次いで製造工程の一例を第7図の(a)?(g)を用いて説明することにより、その構成をさらに詳述する。なお、以下の説明において(a)?(g)の各項目記号は第7図の(a)?(g)にそれぞれ対応する。
(a)リードフレーム21がプレス加工により準備される。リードフレーム21には、第1?第3のリード1、2、3、各ワイヤボンディング部12a?12eおよび各チップマウント部13a?13d、14等の電極パターンが3個連接されて量産性が高められている。
(b)リードフレーム21にプラスチック製の反射皿4が射出成形により一体的に形成されてパッケージ5が構成される。この射出成形時にパッケージ5内に各テーパ状反射面8、11および山形凸条9a?9cが形成される。
(c)チップマウント部13a?13d、14にLEDチップ6a?6d、7がそれぞれダイマウントされ、次いで各LEDチップ6a?6d、7とワイヤボンディング部12a?12eとの間にワイヤ15がボンディングされる。
(d)桁照明部5aおよびヘッド照明部5bにそれぞれ拡散剤16aの混入されたエポキシ樹脂16が充填されてパッケージ5内の光拡散手段が構成される。
(e)リードフレーム21のパターン連結部であるタイバーがカットされてエポキシ樹脂16の充填されたパッケージ5が分割される。」(第8頁第1行?第9頁8行)

したがって、刊行物6には、LEDランプの製造工程について、「リードフレームのプレス加工-パッケージの成型-LEDチップのマウント-ワイヤボンディング-樹脂の充填-カットして個々のLEDランプに分割」の順で行うことが記載されているものと認められる。

(6)刊行物7
本願出願前に頒布された特開平11-345912号公報(以下、「刊行物7」という。)には、LEDチップを用いた光源装置を面実装型半導体装置として構成すること(段落【0004】)に関し、次の記載がある。
「【0020】
【発明の実施の形態】以下、本願発明の好ましい実施の形態について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
【0021】図1は、本願発明が適用された面実装型半導体装置の一例を示す斜視図である。図2は、図1のII-II断面図である。図3ないし図5は、図1に示す面実装型半導体装置の製造工程の一例を示す説明図である。
【0022】図1および図2において、この面実装型半導体装置Aは、面実装型光源装置として構成されている。この面実装型半導体装置Aは、光半導体チップとしてのLEDチップ1、このLEDチップ1を埋設した樹脂パッケージ2、上記LEDチップ1と導通した第1のリード3a、第2のリード3b、および補助部4を具備して構成されている。上記2本のリード3a,3bは、本願発明でいう導体に相当する。
【0023】上記樹脂パッケージ2は、全体の形状が略直方体状であり、たとえばフィラを含有しない透明なエポキシ樹脂製である。この樹脂パッケージ2の上面2aには、その一定領域を上方に膨出させた凸レンズとしてのレンズ部29が一体的に形成されている。
【0024】上記第1のリード3aと第2のリード3bとのそれぞれは、たとえば銅板などの薄肉金属板を加工して構成されたものであり、上記樹脂パッケージ2内に埋没した内部リード31a,31bと、上記樹脂パッケージ2の外部に延出した外部リード32a,32bとを有している。上記外部リード32a,32bのそれぞれの先端部は、面実装用の端子部5a,5bとされており、これらの端子部5a,5bは樹脂パッケージ2の底面2bと略同一高さに位置し、かつその底面2bと略平行である。
【0025】上記補助部4は、上記第1のリード3aの内部リード31aに一体的に設けられており、上記樹脂パッケージ2内に埋設されている。この補助部4は、上向き開口状の凹部40を形成するようにその全体形状が略カップ状または略受け皿状に形成されており、平面視略円形状の底部41の全周囲に起立状の周壁部42が連設された構造を有している。
【0026】上記LEDチップ1は、上記補助部4の凹部40内に配置され、上記底部41の上面の略中央部に導電接着剤などを用いてボンディングされている。これにより、上記凹部40の内壁面43は、上記LEDチップ1の底面部分と周側面の全周とのそれぞれに対向しており、上記LEDチップ1から発せられた光を上方に向けて反射可能な凹面状の光反射面とされている。なお、上記内壁面43の光の反射率を高めることを目的として、この内壁面43に白色塗装を施したり、あるいは補助部4の外表面よりも光沢のある金属膜を形成するといった手段を採用してもかまわない。
【0027】上記LEDチップ1は、その上面の電極がワイヤWを介して第2のリード3bの内部リード31bと導通接続されている。上記補助部4の凹部40には、透明な被覆材6が充填されており、この被覆材6によってLEDチップ1の全体およびこのLEDチップ1とワイヤWとのファーストボンディング部分とが被覆されている。上記被覆材6は、たとえばシリコーン樹脂であり、流動性を有する状態で上記凹部40内に充填された後に加熱などによってゴム状にされたものであり、その弾性率は上記樹脂パッケージ2よりも小さい。
【0028】上記面実装型半導体装置Aは、図3に示すような製造用フレーム7を用いることにより、以下のような工程を経て製造される。
【0029】上記製造用フレーム7は、銅板などの薄肉金属板を打ち抜きプレスして形成されたものであり、一定方向に延びる一対のサイドフレーム71,71、これら一対のサイドフレーム71,71からそれらの内方に延出して対をなすリード部72a,72b、および上記サイドフレーム71,71どうしを繋ぐクロスフレーム72を具備している。上記製造用フレーム7は、図3の符号Lで示す区間の構成をその長手方向に連続して繰り返し有するものである。上記リード部72aは、その先端部に上記補助部4を一体形成したものである。この補助部4は、上記製造用フレーム7を成形するときのプレス加工によって形成することが可能である。
【0030】図4に示すように、上記製造用フレーム7の補助部4にはLEDチップ1をボンディングした後に、このLEDチップ1とリード部72bとをワイヤWを用いて結線するワイヤボンディング作業を行う。その後は、図5に示すように、上記LEDチップ1の上方から流動性をもたせた被覆材6を滴下し、この被覆材6によってLEDチップ1の被覆作業を行う。その際、上記被覆材6は、補助部4の凹部40内に充填することができる。したがって、この被覆材6がリード部72aの下方に不用意に垂れ落ちないようにすることができる。また、被覆材6を上記凹部40内に充填させれば、LEDチップ1の全体または略全体をその被覆材6中に浸漬させた状態にすることができ、さほど多量の被覆材6を用いなくてもLEDチップ1の被覆処理が効率良く行える。
【0031】次いで、上記被覆材6を硬化させた後には、図5の符号Nで示す仮想線の部分を透明樹脂でモールドする。このモールド工程は、いわゆるトランスファモールド法によって好適に行うことができるが、この工程によってレンズ部29を有する樹脂パッケージ2が成形される。その後は、一般の半導体装置製造工程と同様に、製造用フレーム7にいわゆるリードカット作業を施すとともに、そのリードを略L字状に屈曲させるリードフォーミング加工を施す。これにより、上記図1および図2に示した面実装型光源装置としての面実装型半導体装置Aを得ることができる。」

上記記載、特に段落【0028】?【0031】の記載によれば、刊行物7には、LEDチップを用いた光源装置の製造工程について、「プレス加工によるフレームの形成-LEDチップをフレーム部にボンディング-ワイヤボンデング-樹脂の充填及びモールド-リードカットにより個々の光源装置に分離」の順で行うことが記載されているものと認められる。

3.対比
本願補正発明と刊行物1発明を比較するに、刊行物1発明の「半導体素子4」、「波長変換材料」、「陽極パターン2a及び陰極パターン2b」、「樹脂のモールドケース7の凹状部7a」、「陽極パターン2aと陰極パターン2bの間」、「透明樹脂3」、「半導体素子4のアノード電極及びカソード電極」、「金線等からなるボンディングワイヤ5」、「ワイヤーボンディング」及び「保護用の無色透明なエポキシ樹脂」がそれぞれ、本願補正発明の「半導体発光素子」、「波長変換材」、「陽極および陰極の電極パターン」、「開口部」、「隔離部」、「混入ペースト」、「半導体発光素子の陽極および陰極」、「金ワイヤ等」、「ワイヤーボンディング」及び「透明樹脂」にそれぞれ相当する。
また、刊行物1発明におけるエポキシ樹脂と波長変換材料との重量比率1:3?1:4は、本願補正発明の波長変換材と透明接着剤の重量比率である1:1から5:1の範囲内である。

したがって、本願補正発明と刊行物1発明はともに、
「InGaAlPやInGaAlNやInGaNおよびGaN系の透明性を有した半導体素子と波長変換材料を用いた光源装置であって、
陽極および陰極の電極パターンがインサート成形された樹脂の底面部の互いに向かい合う前記陽極と前記陰極との間の隔離部に、波長変換材と透明接着剤との混入比率を重量比率として1:1から5:1の範囲で混合し調合した波長変換材と透明接着剤との混入ペーストにより、前記半導体素子を接着固定し、前記半導体素子の陽極及び陰極の電極と前記陽極および前記陰極の電極パターンとを金ワイヤ等でワイヤーボンディングし、前記樹脂の開口部に透明樹脂を充填してなる光源装置。」の発明に関するものである点で一致する。

一方、本願補正発明と刊行物1発明は、本願補正発明が製造方法の発明であるのに対し、刊行物1発明は物の発明であって、次の点で相違する。

a.本願補正発明は、上記光源装置の製造に当たり、
・薄型リードフレームに陽極及び陰極の電極パターンをプレス
・前記薄板を樹脂にインサート成形
・混入ペーストにより半導体素子を樹脂の底部に接着固定
・ワイヤーボンディング
・開口部に透明樹脂を充填
・リードフレームに形成された電極端子等をカッティングして、個々の光源装置に分離
という順により製造されるものされているのに対し、刊行物1には、最初に陽極及び陰極の電極パターンをプレスする点、最後にリードフレームに形成された電極端子等をカッティングして個々の光源装置に分離する点及び上記製造の順についての明記がない点。

b.混入ペーストにより半導体素子を樹脂の底部に接着する工程について、本願補正発明は、混入ペーストをスタンパにより転写し、前記混入ペーストを転写した上部位置に透明性を有した半導体発光素子を載置し、恒温槽に搬入し前記混入ペーストを硬化させる工程によるとされているのに対し、刊行物1にはこのような記載がない点。

c.開口部に透明樹脂を充填する工程について、本願補正発明は、透明樹脂として「透明樹脂の基材と硬化剤とを攪拌し、前記基材と前記硬化剤とを完全に混合させるとともに混合攪拌気時に発生する気泡を脱泡して液状化することにより混合、脱泡した透明樹脂」を用いるとともに「恒温槽に搬入し前記透明樹脂を硬化させる」とされているのに対し、刊行物1にはこのような記載がない点。
なお、この開口部に透明樹脂を充填する工程について、本件補正後の請求項2は、「前記透明樹脂を硬化させるための前記透明樹脂の基材と硬化剤とを攪拌し、…」と記載しているが、これより前に「透明樹脂」の記載はないことから、この部分は、「透明樹脂の基材と硬化剤とを攪拌し、…」との意味であると認められるので、相違点cについて上記のとおり認定した。

4.相違点についての検討
相違点aについて検討する。
刊行物1には、電極パターン2a及び2bは、金属薄板からなるリードフレーム(【0028】)にそのパターン形状が形成されたものである旨記載されており(【0030】)、また、刊行物6及び7に記載されているように、最初に電極パターンをリードフレームにプレス加工し、最後にカットにより個々の光源装置に分離すること、また、上記の順により光源装置を製造することは周知の技術事項であるから、刊行物1発明を上記相違点aに係る製造工程により製造することは、当業者が容易に成し得たものと認められる。

相違点bについて検討するに、刊行物1には、「【0031】…この透明樹脂3は、パターン2上に塗布したり、蛍光材混入インク等の印刷により印刷パターンとしてパターン2上に形成することができる。【0032】図1における透明樹脂3は、モールドケース7の凹状部7a内の底面に露出するパターン3と半導体発光素子4の下面(電極を持たない面)との間に介在して設けられ、半導体発光素子4をパターン3に固着する接着剤としての機能も兼ねている。」と記載され、透明樹脂3を印刷により形成することが記載されているところであり、スタンパによる転写は、凸版印刷に類するものとして従来周知の技術といえるから、刊行物1発明において、半導体発光素子を載置する面への透明樹脂の形成方法としてスタンパによる転写を採用することに困難性は認められない。
また、刊行物1の透明樹脂3は、上記のとおり接着剤としての機能を兼ねるものであるところ、例えば刊行物2や3にみられるように、接着剤を加熱により硬化させることは通常行われていることであり、その際に加熱を恒温層で行うことも適宜採用できる事項に過ぎないから、刊行物1発明において、透明樹脂3による半導体発光素子4のモールドケース7底部への接着固定について、上記相違点bに係るものとすることは、当業者が容易に成し得たものと認められる。

相違点cについて検討するに、エポキシ樹脂を攪拌後に脱泡することは刊行物4及び5に記載されているように周知であり、刊行物4には主剤と硬化剤とを混合した液体状態の封止用樹脂をよく撹拌し脱泡したものをキャビティ内へ充填し、加熱炉によって加熱して硬化させることが記載されているところであり、この加熱工程を恒温槽で行うことも適宜採用しうる事項に過ぎないから、刊行物1発明における透明樹脂充填工程を上記相違点cに係るものとすることも当業者が容易に成し得ることであると認められる。

以上のとおりであって、結局のところ、本願補正発明は、刊行物1発明を当該技術分野における通常の技術でもって製造したというにすぎず、それが奏するとする効果についても、上記刊行物1ないし7に記載された事項から当業者が予測可能なものであって、格別のものとはいえない。

5.むすび
したがって、本願補正発明は、上記刊行物1発明に上記刊行物2?7に記載される周知技術を適用することにより、当業者が容易に発明できたものであって、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができない。
よって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たしていないので、同法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
平成18年7月25日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成17年1月24日付け手続補正書の請求項1ないし4に記載された事項によって特定されるものであるところ、その請求項2に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりである。
「【請求項2】 InGaAlやInGaAlNやInGaNおよびGaN系の半導体発光素子および波長変換材料を用いた光源装置を製造する光源装置の製造方法において、
以下のステップで製造することを特徴とする光源装置の製造方法。
ステップ1:薄板リードフレームにパターンプレスを行う。
ステップ2:前記パターンプレスを行った前記薄板を樹脂によりインサート成形を行う。
ステップ3:波長変換材と透明接着剤との混合比率を重量比率として1:1から5:1の範囲で混合し調合した波長変換材と透明接着剤との混入ペーストを、前記半導体発光素子を載置する位置にスタンパにより転写する。
ステップ4:前記混入ペーストを転写した上部位置に透明性を有した半導体発光素子を載置する。
ステップ5:恒温槽に搬入し前記ペーストおよび前記透明接着剤を硬化させる。
ステップ6:前記半導体発光素子の電極と前記薄板との間を電気的に接続する金ワイヤ等でワイヤーボンディングを行う。
ステップ7:前記透明樹脂を硬化させるための前記透明樹脂の基材と硬化剤とを攪拌し、前記基材と前記硬化剤とを完全に混合させるとともに混合攪拌気時に発生する気泡を脱泡して液状化することにより混合、脱泡した透明樹脂を、前記半導体発光素子や前記金ワイヤ等を設けた前記インサート成形により形成された凹部の全体に充填する。
ステップ8:恒温槽に搬入し前記透明樹脂を硬化させる。
ステップ9:前記リードフレームに形成された複数の前記光源装置をカッティングして、個々の前記光源装置に分離する。」

2.判断
本願発明は、上記本願補正発明から、その「パターン」が「陽極および陰極の電極パターン」である点、その「インサート成形」が「開口部や互いに向かい合う前記陽極と前記陰極との間に前記半導体発光素子を載置できる隔離部」を形成するものである点及びその「半導体発光素子」が「前記隔離部の前記樹脂の表面」に載置される点を欠くものであるから、上記II.[II]2.ないし4.での本願補正発明の独立特許要件についての検討内容からして、本願発明が上記刊行物1発明に上記刊行物2ないし7に記載される周知の技術を適用することにより、当業者が容易に発明できたものであることは明らかである。

3.むすび
したがって、本願発明は、上記刊行物1ないし7に記載された発明に基いて当業者が容易に発明できたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-08 
結審通知日 2008-04-15 
審決日 2008-04-28 
出願番号 特願2002-226410(P2002-226410)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
P 1 8・ 575- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 近藤 幸浩  
特許庁審判長 稲積 義登
特許庁審判官 吉野 公夫
三橋 健二
発明の名称 光源装置の製造方法  
代理人 西村 教光  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ