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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1179716
審判番号 不服2004-24406  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2004-11-29 
確定日 2008-06-11 
事件の表示 特願2000-350191「スチレン/アクリルコポリマーを含む化粧組成物およびその使用」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月31日出願公開、特開2001-206814〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年11月16日(優先権主張1999年11月24日、仏国)の出願であって、平成16年8月26日付で拒絶査定がなされ、これに対し、平成16年11月29日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年12月21日付で手続補正がなされたものである。

2.平成16年12月21日付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成16年12月21日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、平成16年8月2日付手続補正書により補正された特許請求の範囲、すなわち
「【請求項1】皮膚につや消し感を与え、かつ/または、皮膚の起伏の欠陥をカムフラージュすることを意図した、皮膚の化粧処理方法であって、生理学的に許容できる媒体中に、水性分散物中の粒子の形態である少なくとも一つの非皮膜形成性スチレン/アクリルコポリマーと少なくとも一つのフィラーとを含有する組成物を皮膚に適用することを特徴とする方法。
【請求項2】水性分散物中の粒子の形態である非皮膜形成性スチレン/アクリルコポリマーからなることを特徴とする、化粧品組成物におけるつや消し剤。
【請求項3】水性分散物中の粒子の形態である少なくとも一つの非皮膜形成性スチレン/アクリルコポリマーおよび少なくとも一つのフィラーを含むことを特徴とする、水性相と油性相とを含むエマルション。
【請求項4】コポリマーが水性分散物中の粒子の形態であり、当該粒子が 0.1μmないし5μmの範囲の平均径値を有することを特徴とする、請求項3記載のエマルション。
【請求項5】皮膚につや消し感を与えることを目的とする美容のための、請求項3または4記載のエマルション。
【請求項6】皮膚の起伏の欠陥を消し、かつ/または、皮膚の微小起伏、しわ、小皺および毛穴をカムフラージュすることを目的とする美容のための、請求項3または4記載のエマルション。
【請求項7】フィラーが、シリカ粉末;タルク;ポリアミド粒子;ポリエチレン粉末;アクリルコポリマーからなるミクロスフィア;膨張粉末;天然有機物質の粉末;シリコーン樹脂マイクロビーズ;およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項3ないし6のいずれか一項に記載のエマルション。」
を、
「【請求項1】皮膚につや消し感を与え、かつ/または、皮膚の起伏の欠陥をカムフラージュすることを意図した、皮膚の化粧処理方法であって、生理学的に許容できる媒体中に、0.1 μmから5μmの範囲の平均径値を有する水性分散物中の粒子の形態である少なくとも一つの非皮膜形成性スチレン/アクリルコポリマーと少なくとも一つのフィラーとを含有する組成物を皮膚に適用することを特徴とする方法。
【請求項2】0.1 μmから5μmの範囲の平均径値を有する水性分散物中の粒子の形態である非皮膜形成性スチレン/アクリルコポリマーからなることを特徴とする、化粧品組成物におけるつや消し剤。
【請求項3】0.1 μmから5μmの範囲の平均径値を有する水性分散物中の粒子の形態である少なくとも一つの非皮膜形成性スチレン/アクリルコポリマーおよび少なくとも一つのフィラーを含むことを特徴とする、水性相と油性相とを含むエマルション。
【請求項4】皮膚につや消し感を与えることを目的とする美容のための、請求項3記載のエマルション。
【請求項5】皮膚の起伏の欠陥を消し、かつ/または、皮膚の微小起伏、しわ、小皺および毛穴をカムフラージュすることを目的とする美容のための、請求項3記載のエマルション。
【請求項6】フィラーが、シリカ粉末;タルク;ポリアミド粒子;ポリエチレン粉末;アクリルコポリマーからなるミクロスフィア;膨張粉末;天然有機物質の粉末;シリコーン樹脂マイクロビーズ;およびこれらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項3ないし5のいずれか一項に記載のエマルション。」
と補正するものである。
上記補正は、非被膜形成性スチレン・アクリルコポリマー粒子を0.1μmから5μmの範囲の平均径値を有するものに限定するものであるから、特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2)引用例
原査定の拒絶の理由に引用された特開昭60-184004号公報(以下、引用例という。)には、次の事項が記載されている。
(1) 平均粒子径が1?50μでかつ見掛け比重が 1.0以下であり、更にその内部に1個または2個以上の球状の空胞を有する球状重合体を含有することを特徴とする化粧料。(特許請求の範囲第1項)
(2) 本発明の球状重合体に適用される素材は、それ自体は非晶性で透明性(光透過性)があるものが好ましく、例えば、塩化ビニル……等のビニル系モノマー、……アクリル酸エステル(メチル、エチル)等のアクリル酸系モノマー、……スチレン、α-メチルスチレン等のスチレン系モノマー、……から選択される1種以上の疎水性モノマーから成るホモポリマー乃至はコポリマーが上記の条件を充足する。(2頁左下欄下から1行?同頁右下欄14行)
(3) 本発明における球状の空胞を有する球状重合体を製造する方法自体は、即ち、前記したアクリル酸やスチレンの如き重合性不飽和結合を有する疎水性モノマーと、非イオン性界面活性剤……と、更に前記疎水性モノマーに可溶な過酸化ベンゾイル等の重合開始剤とを混合し、これをモノマー相として、イオン性界面活性剤……を含有する水相中に分散させ、一気に水相/モノマー相/水相……型のエマルジョンを形成させ、更に重合させることにより得られる。そして、斯る重合過程において非イオン界面活性剤とイオン性界面活性剤との種類を適宜組合せたり、または乳化剤濃度を調整することにより、平均粒子径の調節のみならず球状重合体の内部に含まれる球状の空胞の大きさや数をもコントロールし得るものである。(2頁右下欄16行?3頁左上欄17行)
(4)本発明に適用される球状重合体の特徴について、次に詳述するならば、まず第1に本発明に用いられる球状重合体が、従来用いられてきた球状多孔性樹脂粉体を含む他のあらゆる粉体に比較して、粒子表面及び粒子内部の光散乱が小さく、透過性が大きいために、肌上に塗布した場合、粒子が細かくなっても他の粉体よりもはるかに透明性があり、白浮きがしないものである。(第3頁左下欄下から6行?同頁右下欄2行)
(5) 従来各種粉体が化粧料に使用されて来たが、これらは殆ど吸油量、吸水量が高くなく、又油に対するなじみのよいものがなく、油に対する吸油速度が遅いものが大半である。そのために、皮脂の分泌と共に短時間で化粧くずれをするものが多かった。又、合成無機粉体では吸油量、吸水量の高いものも中にはあるが、これらは吸油、吸水速度が非常に速く、肌がつっぱったり、肌が乾燥したりし、更にはメークアップがムラつきしやすいものでメークアップ効果を損なうものであった。本発明の球状重合体は、球状多孔性樹脂粉体と同じように吸油量、吸水量も大きく、油に対してなじみやすく吸油速度がかなり速く吸水速度は比較的遅い性質を持ち、水を蒸発させる性質を有し、メークアップ効果を長時間に亘り持続させると共に肌に均一に塗布でき、肌に違和感を感じさせないものである。(3頁右下欄13行?4頁左上欄9行)
(6) MMA/EDMA系球状重合体(平均粒子径22μ、見掛け比重 0.69、球状空胞数 数十個 精製水55.95(全体で100))、着色顔料ペーストを含有する乳化型ファンデーション、アクリル酸/スチレン系球状重合体(平均粒子径8μ、見掛け比重 0.78、球状空胞数 数10個)、セリサイト、着色顔料ペーストを含有する油性スティックファンデーションの実施例。(実施例3及び4、7頁左上欄?左下欄)

(3)対比・判断
引用例には、平均粒子径が1?50μで、その内部に1個または2個以上の球状の空胞を有する球状重合体を含有する化粧料(上記 (1))は、水を約56重量%含有する乳化型ファンデーションや、セリサイトを配合した油性スティックファンデーションの形態をとること(上記 (6))、球状重合体を含有することにより吸油量、吸水量も大きく、油に対してなじみやすく吸油速度がかなり速く吸水速度は比較的遅い性質を持ち、水を蒸発させる性質を有し、メークアップ効果を長時間に亘り持続させると共に肌に均一に塗布でき、肌に違和感を感じさせないメークアップファンデーションが得られること(上記 (5))、球状重合体はスチレン/アクリルコポリマーからなるものを含むこと(上記(2)(6) )が記載されている。
そして、引用例の化粧料は球状重合体を含有することにより吸油量、吸水量が大きくなることからして、引用例の球状重合体が非被膜形成性のポリマーであることは明らかである。また、引用例記載の化粧料が生理学的に許容できる媒体を有することは明らかである。
さらに、引用例記載の化粧料は、皮膚に適用して使用されることは明らかであるから、引用例には、引用例記載の化粧料を皮膚に適用する化粧処理方法が記載されていると認められる。
そうすると、引用例には、「生理学的に許容できる媒体中に、平均粒子径1?50μであり、その内部に1個または2個以上の球状の空胞を有する非被膜形成性スチレン/アクリルコポリマー粒子を含有する化粧品組成物を皮膚に適用する、皮膚の化粧処理方法」(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

本願補正発明と引用発明とを対比する。
両者は、生理学的に許容できる媒体中に、1μmから5μmの範囲の平均径値を有する粒子の形態である少なくとも一つの非被膜形成性スチレン/アクリルコポリマーを含有する組成物を皮膚に適用する、皮膚の化粧処理方法である点で一致し、以下の点で相違する。

相違点1
スチレン/アクリルコポリマーが、前者では粒子であるのに対し、後者ではその内部に1個または2個以上の球状の空胞を有する粒子である点。
相違点2
前者はスチレン/アクリルコポリマーが水性分散物の粒子の形態であるのに対し、後者はそのような限定がない点。
相違点3
前者は媒体中に少なくとも一つのフィラーを含有するのに対し、後者はこのことが記載されていない点。
相違点4
前者は処理方法の目的を「皮膚につや消し感を与え、かつ/又は、皮膚の起伏の欠陥をカムフラージュすることを意図した」としているのに対し、後者はこの目的が記載されていない点。

そこで、この相違点について検討する。
ア.相違点1について
本願補正発明の「粒子」は、引用発明の「その内部に1個または2個以上の球状の空胞を有する粒子」を含む概念である。なお、本願明細書には、「本発明の組成物において用いられるスチレン/アクリルコポリマーは、・・・空気を含むコポリマー粒子がキャリアー(特に皮膚)の表面に残り、・・・」(段落【0014】)とあるように、実質的に本願補正発明の「粒子」は空胞を有さないものに限定されるものではない。
したがって、相違点1は実質的な相違点ではない。

イ.相違点2について
非被膜形成性スチレン/アクリルコポリマー粒子が水分散液として化粧品分野で用いられることが周知である(例えば、特開平8-12528号公報参照)。また、引用例には種々の化粧品の形態での実施例が記載されているが、実施例3には、球状重合体を5%、精製水を約56重量%含む乳化型ファンデーションが記載されており(上記 (6))、水が約56%と主成分であり、水中油型ファンデーションは化粧料として周知の形態であることを考慮すれば、この実施例3の乳化型ファンデーションは、球状重合体が「水性分散物の粒子の形態」のものである。
したがって、引用発明において、スチレン/アクリルコポリマー粒子を水分散物の粒子の形態とすることは、当業者が容易に想到し得ることである。

ウ.相違点3について
化粧品組成物にフィラーを配合することは周知慣用の手段であるし、引用例には種々の化粧品の形態での実施例が記載されているが、実施例4として、油性スティックファンデーションとしてではあるが、スチレン/アクリルコポリマー粒子とフィラーであるセリサイトを含有するファンデーションの実施例が記載されている(上記 (6))。
したがって、引用発明において、媒体中にフィラーを含有することは、当業者が容易に想到し得ることである。

エ、相違点4について
本願補正発明はメイクアップに関する発明であるが(本願明細書の段落【0001】)メイクアップは、そもそも「皮膚につや消し感を与え、かつ/又は、皮膚の起伏の欠陥をカムフラージュすることを意図した」ものであり、引用発明もこの点で差異はないものと解される。
さらに、本願明細書(【0010】)によれば、「皮膚の「つや消し感」という表現は、一様な肌色を備えた、光らない外観を意味する」とのことであるが、引用発明で使用しているような空胞を有する粒子は、化粧料中では、その光散乱効果により光らないが外観を与え、ひいては隠蔽効果を有することは技術常識である(例えば、特開平9-227332号公報【0010】、【0027】、特開平8-12528号公報【0010】参照)し、また、引用発明は、白浮きしないという効果を奏するものであり(上記 (4))、引用発明は、一様な肌色を備えた、光らない外観を与えることを、すなわち皮膚につや消し感を与えること及び、隠蔽効果を、すなわち、皮膚の起伏の欠陥をカムフラージュすることを意図したものである。
また、本願明細書(【0002】)によれば、本願補正発明は、「過剰な皮脂によって引き起こされる光の問題を解消する」ために使われるつや消し効果製品に関するものであるが、引用例に記載の化粧料も、油に対してなじみやすく吸油速度がかなり速く吸水速度は比較的遅い性質を持ち、水を蒸発させる性質を有し、メークアップ効果を長時間に亘り持続させるものである(上記 (4))。すなわち、両者とも、過剰な皮脂の吸収により、さらに好適なメークアップファンデーションを得ることを目的とするものである。
以上のとおり、本願補正発明が「皮膚につや消し感を与え、かつ/又は、皮膚の起伏の欠陥をカムフラージュすることを意図した」ものであるという点では、本願補正発明と引用発明とに差異はなく、相違点4は、実質的な相違点ではない。

したがって、本願補正発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおり、本件補正は、特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する特許法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成16年12月21日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、本願発明という。)は、上記の平成16年8月2日付手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものである。

(1)引用例
原査定の拒絶理由に引用された引用例及びその記載事項は、前記「2.(2)」に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「非被膜形成性スチレン・アクリルコポリマー」の限定事項である「0.1μmから5μm平均径値を有する」との構成を省いたものであり、本願補正発明を含むものであるから、本願発明も、前記「2. (3)」に記載した理由と同様の理由により、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-01-09 
結審通知日 2008-01-15 
審決日 2008-01-28 
出願番号 特願2000-350191(P2000-350191)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 福井 悟  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 星野 紹英
弘實 謙二
発明の名称 スチレン/アクリルコポリマーを含む化粧組成物およびその使用  
代理人 志賀 正武  
代理人 実広 信哉  
代理人 渡邊 隆  
代理人 村山 靖彦  

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