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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01S
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01S
管理番号 1180066
審判番号 不服2006-744  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-01-12 
確定日 2008-06-26 
事件の表示 特願2002-241292「ミリ波レーダ」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 3月11日出願公開、特開2004- 77399〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年8月22日の出願であって、平成17年12月5日付け(発送日:同年12月13日)で拒絶査定がされ、これに対し、平成18年1月12日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年2月13日付けで明細書又は図面についての補正(以下、「本件補正」という。)がなされたものである。

2.本件補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
本件補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1について、補正前の請求項1を引用した請求項6である、
「【請求項1】
送受信アンテナを有するアンテナベースと、前記アンテナベースを固定するハウジングと、前記アンテナベースを覆うレドームと、を備えたミリ波レーダであって、前記レドームの内側面に導電体層が設けられており、前記導電体層の内側面に電波吸収層が設けられていることを特徴とするミリ波レーダ。
【請求項6】前記電波吸収層は、レドームの少なくとも一部に埋め込まれたことを特徴とする請求項1記載のミリ波レーダ。」
から、補正後の請求項1である
「送受信アンテナを有するアンテナベースと、前記アンテナベースを固定するハウジングと、前記アンテナベースを覆うレドームと、を備えたミリ波レーダであって、前記レドームの内側面に導電体層が設けられており、 前記導電体層の内側面に電波吸収層が設けられており、前記電波吸収層は、射出成形によりレドームの少なくとも一部に埋め込まれたことを特徴とするミリ波レーダ。」に補正する補正事項を含むものである。
この補正は、補正前の請求項6に記載した発明を特定するために必要な事項である「電波吸収層は、レドームの少なくとも一部に埋め込まれた」について「射出成形により」との限定を付加するものであって、特許法第17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の前記請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用例記載の発明・事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2001-127523号公報(以下「引用例」という。)には、次の事項が図面とともに記載されている。
(a)「発明の属する技術分野】この発明は、小型、薄型、軽量かつ簡単な構成で、屋外等で使用するためにアンテナ表面を保護するためのレドームを取り付けた固定ビームを発生するレドーム付きマイクロストリップアレーアンテナに関するものである。」(段落【0001】)
(b)「・・・なお、レドーム10の厚さは薄いほうが低損失化に有利であるが、特にミリ波帯では、レドームの厚さは波長に比べて無視できない厚さとなるため・・・。」(段落【0025】)
(c)「実施の形態4.図4はこの発明の実施の形態4を示す概略構成図であり、13は金属きょう体を示し、マイクロストリップアレーアンテナ9の周囲を取り囲んでいることを特徴とする。マイクロストリップアレーアンテナ9の周囲に金属壁を設けたことで、アンテナの広角方向の不要放射を抑圧し、電波干渉を低減する効果がある。特に、低サイドローブ又は高度成形ビームを得るために、アレー周辺部の電力密度が極めて低く(例えば、アレー中心部の-20dB以下)設計されている場合、アレー周辺部の放射素子からの素子パターンの放射電力は小さいため、アレー周辺部を金属壁で取り囲んでもアレー放射パターンへの影響は小さく、簡易な構成で、不要放射を抑圧する効果が得られる。また、レドーム10は開口部のみ製造すればよいため、ほぼ平面状の構成となり、量産性の向上、低コスト化が得られる。なお、図では金属壁の一例として金属きょう体13を用いて簡単に構成する例を示したが、きょう体とは別途に板材などにより壁を構成しても良い。」(段落【0028】)
(d)「実施の形態5.図5はこの発明の実施の形態5を示す概略構成図であり、金属きょう体13の内部に電波吸収体14を取り付けたことを特徴とする。この電波吸収体14により、広角方向の不要放射を吸収することで、マイクロストリップアレーアンテナ9とレドーム10との間の反射、散乱等による多重反射波を吸収することもでき、電波干渉を更に低減する効果がある。特に、高利得を得るために、アレーの振幅テーパが小さく(例えば、アレー中心部の-5dB以下)設計されている場合、アレー周辺部の放射素子からの素子パターンの放射電力は無視できないため、アレー周辺部を電波吸収体で取り囲むことで多重反射波を吸収し、アレー放射パターンへの影響を小さくしつつ、不要放射を抑圧する効果が得られる。なお、図では電波吸収体14の一例として、発泡材にカーボン等を混ぜた錐体を示しているが、フェライト等を用いた平面状の電波吸収体を用いても良い。」(段落【0029】)
(e)「実施の形態6.図6はこの発明の実施の形態6を示す概略構成図であり、開口部と側壁部とを一体成形したレドーム10を用い、レドーム10の内壁にマイクロストリップアレーアンテナ9を取り囲むように金属テープ15を貼り付けたものである。このように構成することで、広角方向への不要放射を低減しつつ、アンテナ装置として軽量化を図ることができ、また、美観を向上することができる。なお、図では、金属壁を設けるために、金属テープ15を貼る例を示しているが、レドーム内壁に金属体を蒸着するなどにより金属壁を生成しても構わない。」(段落【0030】)
引用例に記載の実施の形態5(記載事項(d)を参照のこと)において、金属きょう体13がマイクロストリップアレーナンテナ9を固定するものであることは、その装置構成上明らかである。
また、金属きょう体13は、上記きょう体としての役割と不要電波の放射を低減させる金属壁としての役割を兼ね備えたものであることが、上記記載(c)から認められる。
してみると、引用例に記載の実施の形態5及び引用例の記載事項(a)ないし(c)を総合勘案すると、引用例には、次の発明が記載されていると認められる。
「マイクロストリップアレーアンテナ9と、前記マイクロストリップアレーアンテナ9を固定する金属きょう体13と、レドーム10と、を備えたミリ波帯用レドーム付きマイクロストリップアレーアンテナであって、マイクロストリップアレーアンテナ9の周囲に金属壁が設けられており、前記金属壁の内側に電波吸収体14が設けられているミリ波帯用レドーム付きマイクロストリップアレーアンテナ。」(以下、「引用発明」という。)

(3)対比
本願補正発明と引用発明を対比する。
引用発明における「マイクロストリップアレーアンテナ9」、「金属きょう体13」、「レドーム10」、「金属壁」、「電波吸収体14」は、
本願補正発明の
「アンテナベース」、「ハウジング」、「レドーム」、「導電体層」、「電波吸収層」にそれぞれ相当する。
また、引用発明における「ミリ波帯用レドーム付きマイクロストリップアレーアンテナ」も、本願補正発明における「ミリ波レーダ」も、共に「ミリ波帯用アンテナ」である点で共通している。
また、引用発明における「マイクロストリップアレーアンテナ9の周囲に設けられた金属壁」も、本願補正発明における「レドームの内側面に設けられた導電体層」も、共にサイドローブの低減を図るためにアンテナの周囲に設けられたものである点で共通している。
してみると、両者は
「アンテナベースと、前記アンテナベースを固定するハウジングと、レドームと、を備えたミリ波帯用アンテナであって、アンテナベースの周囲に導電体層が設けられており、前記導電体層の内側面に電波吸収層が設けられているミリ波帯用アンテナ。」
で一致し、以下の点で相違する。
相違点1:「ミリ波帯用アンテナ」の用途について、
本願補正発明は、送受信アテンナを有するレーダとして用いられるのに対し、引用発明ではそのような用途について記載されていない点。
相違点2:レドームの形状について、
本願補正発明のレドームはアンテナベースの「前方全面」を覆うものであることから、アンテナベースの周囲に設けられるべき導電体層はレドームの内側面に設けられているのに対し、引用発明のレドームは上部の開口部のみを覆うものであるため、マイクロストリップアレーアンテナ9(アンテナベースに相当する。)の周囲に設けられるべき金属壁(導電体層に相当する。)がレドームを支えるように設けられている点。
相違点3:電波吸収層の形成方法について、
本願補正発明では、電波吸収層は、射出成形によりレドームの少なくとも一部に埋め込まれているとしているのに対し、引用発明ではレドームの内側に貼り付けている点。

(4)判断
上記相違点1ないし3について検討する。
相違点1について、
マイクロストリップアレーアンテナは、その代表的な用途として本願補正発明のような車載用ミリ波レーダが挙げられることは、例えば、特開平10-126146号公報(特に、段落【0001】、【0002】及び【0005】を参照のこと)や特開平11-234036号公報(特に、段落【0001】、【0002】及び【0004】を参照のこと。)から周知な技術事項である。
したがって、引用発明のアンテナを本願補正の発明のようにミリ波レーダとして用いた点に格別の創意を要したとはいえない。
相違点2について、
引用例には、開口部と側壁部とを一体成形したレドーム、すなわち、マイクロストリップアレーアンテナ「前方全面」を覆うレドームを用い、その内側面に導電体層に相当する金属テープ15を貼り付けることでサイドローブを低減させるようにしたものも、その実施の形態6として開示されている(前記記載事項(e)を参照のこと。)。
してみると、レドームの形状は適宜選択、採用し得るものであることから、本願補正発明のようにレドームの形状をアンテナベースの「前方全面」を覆うものとし、その結果、サイドローブを低減させるための導電体層をレドームの内側面に設けるようにすることは、当業者ならば容易に想到し得るところといえる。
相違点3について、
電波吸収層を筺体などの内面に設けるに当たり、これを射出成形により形成することは、例えば、原審で引用された特開2001-358493号公報(特に、段落【0092】を参照のこと。)にも示されているように周知な事項である。そして、射出成形によるときは、筐体などの内面に埋め込まれることとなる。
そうしてみると、本願補正発明のように、電波吸収層をレドームの内側面に射出成形によりレドームの一部に埋め込むようにすることは、当業者が容易に想到し得るところといえる。

そして、本願補正発明の作用効果も、引用発明及び周知技術から当業者が予測可能なものであって格別のものではない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5)むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであるから、同法159条第1項において読み替えて準用する同法53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成18年2月13日付けの手続補正は前記のとおり却下されたので、本願の請求項1ないし9に係る発明は、平成17年8月1日付けの手続補正書によって補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし9に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は次のとおりである。
「送受信アンテナを有するアンテナベースと、前記アンテナベースを固定するハウジングと、前記アンテナベースを覆うレドームと、を備えたミリ波レーダであって、前記レドームの内側面に導電体層が設けられており、前記導電体層の内側面に電波吸収層が設けられていることを特徴とするミリ波レーダ。」(以下、「本願発明」という。)
(1)引用例記載の発明・事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例記載の発明・事項は、前記2.(2)に記載したとおりである。
(2)対比・判断
本願発明は、前記2.で検討した本願補正発明から「電波吸収層」についての限定事項である「射出成形によりレドームの少なくとも一部に埋め込まれた」との発明特定事項を省いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、さらに他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、前記2.(4)に記載したとおり、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。
(3)むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、他の請求項に係る発明について審理するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-04-18 
結審通知日 2008-04-22 
審決日 2008-05-13 
出願番号 特願2002-241292(P2002-241292)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G01S)
P 1 8・ 575- Z (G01S)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 中村 説志  
特許庁審判長 飯野 茂
特許庁審判官 上原 徹
岡田 卓弥
発明の名称 ミリ波レーダ  
代理人 井上 学  

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