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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G01F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01F
管理番号 1180506
審判番号 不服2006-10335  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-18 
確定日 2008-07-03 
事件の表示 特願2000-147057「液体容器および液体消費検出装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年5月29日出願公開、特開2001-147146〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1 手続の経緯
本件は、平成12年5月18日(国内優先権主張:平成11年5月20日、平成11年9月10日)にされた特許出願につき、平成18年4月11日付けで拒絶査定(同月18日発送)がされたところ、これに対し、同年5月18日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年6月19日付けで明細書を補正対象とする手続補正書(以下、この手続補正書による手続補正を「平成18年6月19日付けの手続補正」又は「本件補正」という。)が提出されたものである。

2 平成18年6月19日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年6月19日付けの手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正の内容
平成18年6月19日付けの手続補正は、特許請求の範囲の請求項1の記載を、補正前の「【請求項1】液体利用装置に装着される液体容器であって、前記液体容器内の液体に関する消費状態情報を検出する圧電素子を有する液体センサと、液体に関する情報を記憶する記憶手段とを備える液体容器。」から、補正後の「【請求項1】液体利用装置に装着される液体容器であって、圧電素子を有し、検出特性情報を参照しつつ前記液体容器内の液体に関する消費状態情報を検出する液体センサと、前記検出特性情報および前記消費状態情報を含む液体に関する消費関連情報を記憶する記憶手段とを備える液体容器。」に補正する補正事項を含むものである。

本件補正は、補正前の請求項1の「前記液体容器内の液体に関する消費状態情報を検出する圧電素子を有する液体センサ」、「液体に関する情報を記憶する記憶手段」という記載をそれぞれ「圧電素子を有し、検出特性情報を参照しつつ前記液体容器内の液体に関する消費状態情報を検出する液体センサ」、「前記検出特性情報および前記消費状態情報を含む液体に関する消費関連情報を記憶する記憶手段」とすることで「液体センサ」及び「記憶手段」について、さらに限定するものであるから、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後の前記請求項1に記載されている事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて以下に検討する。

(2)引用例及び引用発明
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の優先日前の平成11年4月27日に頒布された刊行物である特開平11-115217号公報(以下「引用例」という。)には、図面とともに次の記載がある。

ア 「【0224】<第5実施例>次に、本発明の第5実施例について説明する。インクジェット記録装置においては、その記録ヘッドを一時的に交換する場合がある。すなわち、始めに、ある記録ヘッドで記録していたが、何らかの理由で他のヘッドと取り替えて記録して、また元のヘッドで記録する場合である。これらのことはヘッドが本体に始めから装着されていてインクタンクやインクボトルを交換するようないわゆるパーマネントヘッドにおいてはあまり行われることはないが、ヘッドとインクタンクが一体となったカートリッジタイプの記録ヘッドでは頻発することがある。特に、一つのヘッドキャリッジに記録ヘッドを乗せて印字を行う記録装置で複数の色のインクを用いて印字する場合などは、必ず一時的に本体装置の外で保管することになる。
【0225】このように本体装置に対して記録ヘッド等が交換される場合、正常な記録の制御や、ヘッドからインクを安定に吐出させることが不可能、あるいは難しくなる場合がある。そこで、この実施例では記録ヘッドに、そのヘッドの特性データを記憶させる記憶部材(メモリ)を持たせ、記録装置本体に所定のタイミングでヘッドの記憶部材のデータを読み込むようにした。この実施例では、ヘッドとインクタンクが一体となったカートリッジタイプの記録ヘッドの場合について説明する。」(【0224】?【0225】)

イ 「【0230】(インクの色)所定のキャリッジ位置に所定の色のカートリッジが入っていないと出力された画像はおかしな色になってしまう。
【0231】そこで、カートリッジに色データを入れておくことで、カートリッジの誤装着を防止できる。」(【0230】?【0231】)

ウ 「【0232】(残検特性)インクタンク内の吸収体内にさされた残検ピンに定電流を流し、一定時間後の電圧値をはかる。この時の値が残検値であり、この値が所定のスレッショルド電圧値に対して大きいときにランプを点灯させるなどしてユーザーにインク量が残り少ないことを知らせる。
【0233】残検値はインクの電気抵抗に依存しているため、低温になると値が大きくなる。よって、インクの温度に応じて残検のスレッショルド電圧値を変えてインク残量の検知を行う。また、インクの種類やインクタンク内の吸収体のロットによってもその特性は変化する(図88参照)。
【0234】そこで、カートリッジ毎に、各温度における検知電圧をデータとして入れておくことで精度良くインクの残量を検知できる。具体的には以下の方法のどれでもよい。
〔1〕各温度毎のテーブルを入れておく。メモリの容量と温度センサの精度を考えて3?5℃の間隔で0?30℃の範囲のデータを入れる。この際、0℃以下は0℃の値を、30℃以上は30℃の値を用いる(図89(A)参照)。
〔2〕しかしながら、これだけのデータをメモリに入れなくとも、温度に対する検知電圧は単純な関数で表現できるため、2?3の数値のみのデータで良い。たとえば25℃以上は一定の値で、それ以下はリニアに値が上がっていくように直線近似できるため、2個の数値データで充分である(図89(B)参照)。」(【0232】?【0234】)

したがって、上記ア?ウによれば、引用例には「インクジェット記録装置に装着されるヘッドとインクタンクが一体となったカートリッジタイプの記録ヘッドであって、残検ピンを有し、各温度における検知電圧のデータにより前記記録ヘッド内のインクの残量を検出する手段と、前記各温度における検知電圧のデータを記憶する記憶部材とを備えるヘッドとインクタンクが一体となったカートリッジタイプの記録ヘッド。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。

(3)対比
本願補正発明と引用発明とを対比する。

ア 引用発明の「インクジェット記録装置」は、本願補正発明の「液体利用装置」に相当する。

イ 引用発明の「ヘッドとインクタンクが一体となったカートリッジタイプの記録ヘッド」はインクが収容されているものであるから、本願補正発明の「液体容器」に相当する。

ウ 引用発明の「各温度における検知電圧のデータ」、「インクの残量」、「手段」は、本願補正発明の「検出特性情報」、「液体に関する消費状態情報」、「液体センサ」にそれぞれ相当し、引用発明の「残検ピンを有し、各温度における検知電圧のデータにより前記記録ヘッド内のインクの残量を検出する手段」と、本願補正発明の「圧電素子を有し、検出特性情報を参照しつつ前記液体容器内の液体に関する消費状態情報を検出する液体センサ」とは、「検出特性情報を参照しつつ前記液体容器内の液体に関する消費状態情報を検出する液体センサ」である点で共通している。

エ 引用発明の「記憶部材」が、本願補正発明の「記憶手段」に相当し、本願明細書【0011】に記載されているように検出特性情報が液体に関する消費関連情報であること及び上記相当関係を考慮すると、引用発明の「前記各温度における検知電圧のデータを記憶する記憶部材」と、本願補正発明の「前記検出特性情報および前記消費状態情報を含む液体に関する消費関連情報を記憶する記憶手段」とは「前記検出特性情報を含む液体に関する消費関連情報を記憶する記憶手段」である点で共通している。

したがって、上記ア?エの考察から、両者は、

[一致点]
「液体利用装置に装着される液体容器であって、検出特性情報を参照しつつ前記液体容器内の液体に関する消費状態情報を検出する液体センサと、
前記検出特性情報を含む液体に関する消費関連情報を記憶する記憶手段とを備える液体容器。」
である点で一致し、以下の点で相違している。

[相違点1]
検出特性情報を参照しつつ前記液体容器内の液体に関する消費状態情報を検出する液体センサが、本願補正発明では「圧電素子を有し」ているのに対して、引用発明では「残検ピンを有し」ている点。

[相違点2]
記憶手段が記憶する液体に関する消費関連情報が、本願補正発明では、「消費状態情報を含む」のに対して、引用発明では、そのような特定がなされていない点。

(4)判断
以下、上記相違点について検討する。

[相違点1]について
液体容器内の液体に関する消費状態情報を検出するセンサとして、圧電素子を有するセンサは周知の技術であり(例えば、特開平7-137276号公報(圧電振動子1に関する記載等)を参照)、かかる周知の技術を引用発明に適用して、本願補正発明のごとく構成することは、当業者が容易になし得たものである。

[相違点2]について
記憶手段に液体に関する消費状態情報を記憶することは周知の技術であり(例えば、特開平8-310007号公報(【0030】、【0036】?【0039】等)、特開平2-279344号公報(特許請求の範囲請求項3等)、特開昭62-184856号公報(インクの残量を書き換え可能に記憶する不揮発性メモリ3に関する記載等)を参照)、かかる周知の技術を引用発明に適用して、本願補正発明のごとく構成することは、当業者が容易になし得たものである。

そして、本願補正発明の奏する効果も引用例の記載及び周知の技術から当業者が容易に予測し得る範囲のものにすぎない。

したがって、本願補正発明は、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。

(5)補正却下の決定のむすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3 本願発明
平成18年6月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1?26に係る発明は、平成17年12月5日付けの手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?26に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。
「【請求項1】液体利用装置に装着される液体容器であって、前記液体容器内の液体に関する消費状態情報を検出する圧電素子を有する液体センサと、液体に関する情報を記憶する記憶手段とを備える液体容器。」

4 引用例
引用例には、図面とともに上記「2」の「(2)」において摘記した事項が記載されており、引用例には、同「(2)」において認定したとおりの引用発明が記載されているものと認められる。

5 対比・判断
本願発明は、上記「2」において検討した本願補正発明の発明特定事項のうち、「液体センサ」及び「記憶手段」についての限定を省いたものであり、本願補正発明が、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用発明及び周知の技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6 むすび
以上のとおりであるから、本願発明は、特許法29条2項の規定により特許を受けることができないものであり、他の請求項2?26に係る発明について判断を示すまでもなく、本願は、拒絶をすべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-02 
結審通知日 2008-05-07 
審決日 2008-05-21 
出願番号 特願2000-147057(P2000-147057)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (G01F)
P 1 8・ 121- Z (G01F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鈴野 幹夫  
特許庁審判長 杉野 裕幸
特許庁審判官 岡田 卓弥
上原 徹
発明の名称 液体容器および液体消費検出装置  
代理人 龍華 明裕  

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