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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) G09G |
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管理番号 | 1180570 |
審判番号 | 不服2005-14717 |
総通号数 | 104 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-08-02 |
確定日 | 2008-07-10 |
事件の表示 | 特願2000- 89050「色調調整回路およびその回路を備えたバックライトモジュールおよび発光ダイオード表示装置」拒絶査定不服審判事件〔平成13年10月 5日出願公開、特開2001-272938〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成12年3月28日の出願であって、平成17年6月30日付け(発送日:同年7月5日)で拒絶査定がなされ、これに対して、同年8月2日に拒絶査定不服審判請求がなされたものであるところ、当審において、平成19年12月28日付け(発送日:平成20年1月8日)で拒絶の理由(以下「当審拒絶理由」という。)を通知し、これに対して平成20年3月5日付けで意見書が提出されるとともに、同日付けで手続補正がなされたものである。 第2 本願発明 本願の請求項1ないし4に係る発明は、平成20年3月5日付けの手続補正書により全文が補正された明細書及び願書に最初に添付された図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし4に記載された事項により特定されるのとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のとおりである。 「【請求項1】一つの発光ダイオードの色調または複数の発光ダイオードのそれぞれの色調を調整する色調調整回路であって、 上記発光ダイオードは、InGaNを使った発光ダイオードであり、 上記発光ダイオードに流すパルス波形の順方向電流のパルス振幅を制御して、上記発光ダイオードの発光色調を制御し、次に、上記パルス波形の順方向電流のパルス幅を制御して、上記発光ダイオードの光度を制御することを特徴とする発光ダイオードの色調調整回路。」 第3 引用例記載の発明 1 引用例1 当審拒絶理由で引用した本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-133891号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (1)「【0002】【従来技術】今日、1000mcd以上にも及ぶ超高輝度にRGB(赤、緑、青)が発光可能な発光ダイオード(以下、LEDとも呼ぶ。)がそれぞれ開発された。これにより、低消費電力、長寿命のLEDを利用したフルカラーLEDディスプレイが可能となった。このようなLED表示装置は、高輝度に発光することができる。」 (2)「【0015】本発明のLED表示装置の一例を図1に示す。図1には、RGB(赤色102、緑色112、青色122)がそれぞれ発光可能なLEDを青色1個、緑色2個、赤色2個使用し基板上に1画素として16×16のドットマトリックス状に配置させてある。」 (3)「【0025】(発光ダイオード102、112、122、202、302)発光ダイオード102、112、122、202、302は、種々の半導体発光素子を樹脂などでモールドしたものが好適に用いられる。発光ダイオード中に配置されるLEDチップは一種類で単色発光させても良いし複数用いて単色或いは多色発光させても良い。具体的には、液相成長法、HDVPE法やMOCVD法により基体上に・・・、InGaN、・・・等の半導体を発光層として形成させたものが好適に用いられる。半導体の構造としては、MIS接合、PIN接合やPN接合を有したホモ構造、ヘテロ構造あるいはダブルへテロ構成のものが挙げられる。半導体層の材料やその混晶度によって発光波長を紫外光から赤外光まで種々選択することができる。」 (4)「【0034】(駆動手段206)駆動手段206とは、点灯回路などを有し発光ダイオード202を複数個配置したLED表示器と電気的に接続されるものである。ダイナミック駆動の場合、具体的には駆動手段からの出力パルスによってマトリックス状などに配置したLED表示器を駆動する。駆動回路としては、入力される表示データを一時的に記憶させる記憶手段と、記憶手段に記憶されるデータから発光ダイオードを所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算する階調制御回路と、階調制御回路の出力信号でスイッチングされて、発光ダイオードを点灯させるドライバとにより構成することができる。 【0035】駆動手段206は中央演算処理装置などを用いて比較的簡単に形成させることができる。階調制御回路は、記憶手段に記憶されるデータから発光ダイオード202の点灯時間を演算してパルス信号を出力する。階調制御回路から出力されるパルス信号である階調信号は、発光ダイオード202を駆動させるドライバに入力されてドライバをスイッチングさせる。ドライバがオンになると発光ダイオード202が点灯され、オフになると消灯することができる。各発光ダイオード202の点灯時間を制御することにより所望の映像データなどを表示することができる。」 (5)「【0036】(実施例1)緑色、青色及び赤色が発光可能なLEDチップに用いられる発光層の半導体としてそれぞれInGaN(発光波長525nm)、InGaN(発光波長470nm)、AlGaInP(発光波長660nm)を使用した。」 上記摘記事項(1)乃至(5)からみて、引用例には、次の発明(以下「引用発明」という。)が記載されているものと認められる。 「発光ダイオード202を複数個配置したLED表示器と電気的に接続される駆動手段206の駆動回路であって、 上記発光ダイオード202は、InGaNを使った発光ダイオードであり、 記憶手段と、記憶手段に記憶されるデータから発光ダイオード202を所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算してパルス信号を出力する階調制御回路と、階調制御回路から出力されるパルス信号である階調信号でスイッチングされて、発光ダイオードを点灯させるドライバとにより構成され、ドライバがオンになると発光ダイオード202が点灯され、オフになると消灯し、各発光ダイオード202の点灯時間を制御することにより所望の映像データなどを表示する駆動手段206の駆動回路。」 2 引用例2 当審拒絶理由で引用した本願の出願前に頒布された刊行物である特開平11-177768号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに、次の事項が記載されている。 (1)「【0082】図11に示すように、発光ダイオードは、それに流れる電流の大きさに応じて、発光波長が多少変化する。従って、光源モジュール10の発光ダイオードのそれぞれに流す電流の大きさを調整することで、照明光の波長を微調整することができる。 【0083】この電流調整により、個別の発光ダイオードの発光波長のばらつき補正が可能である。」 第4 対比 本願発明と引用発明とを対比する。 引用発明において、複数個配置された発光ダイオード202は、本願発明の「複数の発光ダイオード」に相当し、引用発明の「駆動回路」は、「各発光ダイオード202の点灯時間を制御することにより所望の映像データなどを表示する」ものであることにより、複数の発光ダイオードのそれぞれの発光を調整しているといえるから、本願発明の「一つの発光ダイオードの色調または複数の発光ダイオードのそれぞれの色調を調整する色調調整回路」と、引用発明の「駆動回路」とは、「複数の発光ダイオードのそれぞれの発光を調整する調整回路」である点で共通する。 引用発明の「駆動回路」が、記憶手段と、記憶手段に記憶されるデータから発光ダイオード202を所定の明るさに点灯させるための階調信号を演算してパルス信号を出力する階調制御回路と、階調制御回路から出力されるパルス信号である階調信号でスイッチングされて、発光ダイオードを点灯させるドライバとにより構成され、ドライバがオンになると発光ダイオード202が点灯され、オフになると消灯し、各発光ダイオード202の点灯時間を制御することにより所望の映像データなどを表示することは、本願発明の「上記パルス波形の順方向電流のパルス幅を制御して、上記発光ダイオードの光度を制御すること」に相当する。 そうすると、本願発明と引用発明とは、以下の一致点で一致し、以下の相違点で相違する。 (一致点) 「複数の発光ダイオードのそれぞれの発光を調整する調整回路であって、 上記発光ダイオードは、InGaNを使った発光ダイオードであり、 上記発光ダイオードに流すパルス波形の順方向電流のパルス幅を制御して、上記発光ダイオードの光度を制御する発光ダイオードの調整回路。」 (相違点) 本願発明が、上記発光ダイオードに流すパルス波形の「順方向電流のパルス振幅を制御して、上記発光ダイオードの発光色調を制御し、次に、」パルス幅を制御して上記発光ダイオードの光度を制御することにより、複数の発光ダイオードの「それぞれの色調を調整する色調調整回路」であるのに対して、引用発明の駆動回路は、発光ダイオードに流すパルス波形の順方向電流のパルス振幅を制御して、発光ダイオードの発光色調を制御することにより、複数の発光ダイオードのそれぞれの色調を調整するものではない点。 第5 当審の判断 そこで、上記相違点について検討する。 引用例2の上記摘記事項(1)によると、引用例2には、発光ダイオードのそれぞれに流す電流の大きさを調整することで、照明光の波長を微調整し、個別の発光ダイオードの発光波長のばらつき補正をする発明が記載されている。 そして、LED表示装置の技術分野において、InGaNを使った発光ダイオードの発光波長がばらつくという技術課題は、例えば、特開平10-229217号公報に「InGaN混晶系・・・材料から成る発光層を使う場合、・・・ウエハ面内で均一な発光波長を持つ半導体発光素子を得ることが困難な状況にある。」(段落【0013】)と記載され、特開平11-145519号公報に「本明細書において「窒化ガリウム系半導体」とは、・・・の半導体を含むものとする。例えば、InGaN(x>0、y=0)も「窒化ガリウム系半導体」に含まれるものとする。」(段落【0004】)及び「まず第1に、発光素子の構造のばらつきにより、発光波長が素子ごとにばらつくという問題があった。すなわち、半導体発光素子は、同一の条件で製造しても、不純物の混入量や各層厚などがばらつくことによって、その発光波長がばらつく傾向を有する。」(段落【0009】)と記載されるごとく従来周知の事項である。 また、InGaNを使った発光ダイオードの発光波長が駆動電流により変化することも、上記特開平10-229217号公報に「例えば、InGaNの量子井戸構造の緑色発光ダイオード(Inの組成比0.45、発光波長520nm)では、駆動電流を10mA変化させるとその発光ピーク波長は約10nm短波長側へシフトし、色が変化するという問題や、・・・といった問題があった。」(段落【0031】)と記載され、上記特開平11-145519号公報に「第2に、駆動電流によって、発光波長が変化するという問題があった。すなわち、半導体発光素子に供給する電流量に応じて、その発光波長が変動することがあり、・・・」(段落【0010】)と記載されるごとく従来周知の事項である。 そうすると、引用発明のInGaNを使った発光ダイオードが、引用例2に記載された発明の発光ダイオードと同様に、発光波長がばらつくという技術課題を有していること、及び、引用発明のInGaNを使った発光ダイオードが、引用例2に記載された発明の発光ダイオードと同様に、駆動電流により発光波長が変化するという特性を有していることが上記したとおり周知の事項であるから、引用発明の複数の発光ダイオード202に、発光ダイオードのそれぞれに流す電流の大きさを調整することで、個別の発光ダイオードの発光波長のばらつき補正を行うという引用例2に記載された発明を適用することに格別の困難性はない。 さらに、引用発明に引用例2に記載された発明を適用するときには、引用発明の発光ダイオード202を所定の明るさに調整するための点灯時間(「パルス幅」に相当。)の制御と、引用例2に記載された発明の発光ダイオードの発光波長を調整するための電流の大きさ(「パルス振幅」に相当。)の調整が、それぞれ個別に調整されるものとなるところ、発光ダイオードに流す電流の大きさを変更したときには発光波長のみならず発光ダイオードの明るさも変化してしまうことが、発光ダイオードの特性から明らかであるから、点灯時間を決定した後に、発光波長を調整するために電流の大きさを調整すると、明るさが同時に変化してしまうこと、及び、発光波長を変化させないためには、同一の発光ダイオードに対しては同一の電流の大きさを供給しなけらばならないことが上記周知事項から明らかであることから、先ず、電流の大きさを調整することにより、個別の発光ダイオードの発光波長のばらつきを調整して、次に、発光時間の調整による階調制御を行うことにより、上記相違点に係る本願発明の構成とすることは、当業者が容易になし得ることというべきである。 したがって、本願発明は、当業者が引用発明、引用例2に記載された発明及び周知事項に基いて容易に発明をすることができたものである。 そして、本願発明の奏する効果も、引用例1,2の記載事項及び周知事項に基づいて当業者が予測可能な範囲内のものである。 したがって、本願発明は、引用発明、引用例2に記載された発明及び周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 第6 むすび 以上のとおりであるから、本願の請求項1に係る発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そして、請求項1に係る発明が特許を受けることができないものであるから、その余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本件出願は、当審で通知した上記拒絶の理由によって拒絶をすべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-05-01 |
結審通知日 | 2008-05-07 |
審決日 | 2008-05-26 |
出願番号 | 特願2000-89050(P2000-89050) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(G09G)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 福村 拓 |
特許庁審判長 |
杉野 裕幸 |
特許庁審判官 |
上原 徹 堀部 修平 |
発明の名称 | 色調調整回路およびその回路を備えたバックライトモジュールおよび発光ダイオード表示装置 |
代理人 | 青山 葆 |
代理人 | 山崎 宏 |