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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1180646
審判番号 不服2005-24143  
総通号数 104 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-08-29 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-15 
確定日 2008-07-07 
事件の表示 特願2002-366707「弾球遊技機の球抜き装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 7月15日出願公開、特開2004-194888〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1.手続の経緯等
本願は、平成14年12月18日の出願であって、平成17年6月15日付けで拒絶理由が通知され、これに対し平成17年8月5日付けで手続補正がされ、平成17年11月7日付けで拒絶査定がされ、これに対し平成17年12月15日付けで拒絶査定不服審判が請求されるとともに、平成18年1月12日付けで手続補正がされたものである。

第2.平成18年1月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年1月12日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

[理由]
1.補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項1は、
「遊技盤に遊技球を発射させる打球発射装置と、皿部材に貯留された遊技球を案内通路に整列流下させて前記打球発射装置に供給する球皿と、前記遊技盤における入賞状態に基づいて前記皿部材に遊技球を払い出す球払出装置と、前記球払出装置から遊技球が払い出されて少なくとも前記皿部材に遊技球が充満した満杯状態を検出する満杯検出スイッチとを備える弾球遊技機の球抜き装置であって、
前記案内通路内に遊技球を残したまま前記皿部材に貯留された遊技球を前記案内通路の上流側に繋がった前記皿部材の底面に形成される球抜き口から排出させる第1の球抜き機構と、
前記皿部材に貯留された遊技球および前記案内通路に位置する遊技球を前記案内通路の下流端部から前記案内通路の下流端部に繋がる球抜き路を通過させて排出させる第2の球抜き機構とを備え、
前記第1の球抜き機構の操作部と前記第2の球抜き機構の操作部とが片手で操作可能に近接して配設されており、
前記第1の球抜き機構に、前記満杯検出スイッチが前記満杯状態を検出したとき前記第1の球抜き機構の前記操作部を発光させて前記第1の球抜き機構による球抜き処理を促す満杯報知ランプが設けられていることを特徴とする弾球遊技機の球抜き装置。」(以下、「本願補正発明」という。)と補正された。

上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である補正前の「前記皿部材に貯留された遊技球を排出させる」を「前記案内通路内に遊技球を残したまま前記皿部材に貯留された遊技球を前記案内通路の上流側に繋がった前記皿部材の底面に形成される球抜き口から排出させる」と限定し、同「前記案内通路に位置する遊技球を排出させる」を「前記皿部材に貯留された遊技球および前記案内通路に位置する遊技球を前記案内通路の下流端部から前記案内通路の下流端部に繋がる球抜き路を通過させて排出させる」と限定し、同「満杯報知ランプ」について「前記第1の球抜き機構による球抜き処理を促す」との限定を付加するものであり、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本願補正発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

2.引用文献について
(1)引用文献1について
原査定の拒絶の理由に引用された特許第2577286号公報(発行日:平成9年1月29日)(以下、「引用文献1」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項1-1
「この発明は、パチンコ遊技機の球抜き装置に関し、更に詳細には、パチンコ球を利用してゲームを行ない得る遊技機において、遊技者側の球受け部材内に貯留されたパチンコ球を抜出すための球抜き装置に関するものである。」(段落【0001】)

・記載事項1-2
「本体26の上部から下方に亘り、賞球用の貯留タンク31、整流樋32、送出樋33および賞球排出装置34等が設置されており、この排出装置34の下方に上球皿D1側の出口9に連通する主排出路35と、これより分岐連設されて下球皿D2側の口8に連通する副排出路36が画成されている。」(段落【0015】)

・記載事項1-3
「前記副排出路36の所定部位に、図2に示す如く、賞球充満検出機構38が組付けられている。この機構38は、副排出路36内の貯留球の圧力(重量)を受けて変動される感知部材39と、この感知部材39の変動時に作動される第1および第2の検出スイッチ40A,40Bが配設された形式例とされている。このもとで、第1のスイッチ40Aの検出作動が、前記打球発射装置17の駆動部17bに対する打止め制御(通電遮断)として利用される。また第2のスイッチ40Bの検出作動時の信号が、後述する球抜き作動用の電磁ソレノイド98に対する球抜き制御信号として利用される。」(段落【0016】)

・記載事項1-4
「上球皿D1については、図4?図7に示すように、合成樹脂成形されて実質的な球皿部材とされた皿本体41と、球皿の補強用外装部材とされた外郭保護体48とが互いに内外組合されて、前面開閉板15の前面において内側から締付けられるビスにより取着セットされている。この皿本体41において、正面中央から左半側の上流部に平面ほぼ半円状の貯留部42が成形され、右半側の下流部に先細状の整流部43が成形されて、双方42,43の底面がともに同様な送出勾配で連設されている。そして貯留部42の中央部から整流部43の下流端に亘る底面上に1本の帯状のレール44が敷設されて、球を1列状態で送出する送出路45が形成されている。」(段落【0018】)

・記載事項1-5
「そしてこの上球皿D1において、整流部43の下流端に球1個分に適した開口面域の送出口46が形成されて、前記球送り装置16の入口に整合連通される。一方皿本体41の貯留部42が、前記賞球用の出口9に対して連通口49で連絡される。」(段落【0019】)

・記載事項1-6
「上球皿D1の整流部43と貯留部42に対応する所定部位に、外郭保護体47の外側から指先操作で開放し得る第1および第2の球抜き機構51,61が夫々装備されている。第1の球抜き機構51は、皿本体41の内側に画成されて上流端を送出口46の下方に連絡し、下流端を後述の下球皿D2側に臨ませた球抜き通路52と、皿本体41表側の案内枠部53A内に左右方向へ移動自在に嵌挿されて常にはばね56で閉鎖方向(図示右方)に付勢された移動体54と、この移動体54の上部内側に成形されて皿本体41のスライド口57から送出口46および球抜き通路52の連通部位に延出された開閉弁55と、外郭保護体47下部の案内口枠60Aの表側に位置されて移動体54に組付け連結された操作具58とから構成されている。そして通常時には移動体54の開閉弁55が送出口46の底面および球抜き通路52の上端を閉鎖した状態に保持されており、操作具58の操作により開閉弁55を、送出口46の底面および球抜き通路52の上端から退避することにより球抜き開放状態にし得る。」(段落【0020】)

・記載事項1-7
「第2の球抜き機構61は、図5および図6に示す如く、皿本体41の貯留部42の中央部底面に形成された球抜き口62と、皿本体41の内側に画成されて上流端を球抜き口62の下方に連絡し、下流端を前記戻し口11に臨ませた球抜き通路63と、皿本体41の表側の案内枠部53B内に左右方向へ移動可能に嵌挿されて常にはばね66で閉鎖方向(図示右方)に付勢された移動体64と、この移動体64の上部内側に成形されて皿本体41のスライド口67から球抜き口62の下面に延出された開閉弁65と、外郭保護体47下部の案内口枠60Bの表側に位置されて移動体64に組付け連結された操作具68とから構成されている。そして通常時には移動体64の開閉弁65が球抜き口62を閉鎖した状態に保持されており、操作具68の操作により開閉弁65を、球抜き口62から退避させることにより球抜き開放状態にし得る。」(段落【0022】)

・記載事項1-8
「前記パチンコ機Pでは、遊技に供された状態のもとで所要の遊技操作を行なうことにより、ゲーム開始手段である打球発射装置17の作動および球送り装置16の作動の関連に基いて、上球皿D1内のパチンコ球(遊技球)が球送り装置16を介して1球ずつ発射レール24に送込まれ、同レール24から遊技盤18の遊技面内に打込まれてゲームが展開される。そしてこのゲーム中において、アウト口20、各入賞具21,22に入った遊技球は、アウト球、セーフ球として最終的に機構セット盤25の各排出路28,29から機外へ排出される。一方セーフ球に対する褒賞として、夫々のセーフ球がセーフ球処理装置30で1球ずつ検出確認処理されることの前提において、セット盤25における賞球排出装置34が設定作動されることに基いて、所定数の賞球が排出される。」(段落【0030】)

・記載事項1-9
「そしてこの賞球は、常に上球皿D1側へ優先的に排出され、オーバフローした余剰分が下球皿D2側へ排出される。すなわち前記賞球排出装置34の毎回の作動により主排出路35に向けて排出された賞球は、図5に示す如く、同路35内を流下して前枠2側の賞球用出口9から前面開閉板15側の連通口49を通って上球皿D1の貯留部42に放出される。次いで賞球は、球皿D1の勾配に沿って下流側へ移動して整流部43で順次整列化されながら送出路45内を1列状態で通出し、前述したゲームの継続状態において、遊技球として送出口46から先行順に通出して、第1の球抜き機構51における開閉弁55上を経由して球送り装置16内へ通入する。」(段落【0031】)

・記載事項1-10
「上球皿D1側においては、状況に応じて双方の球抜き機構51,61を開放操作する。例えばゲームの終了にあたり貯留球の全てを抜出す場合には、第1の球抜き機構51を開放操作することに同期関連して第2の球抜き機構61も開放される。すなわち第1側の操作具58を、指先操作で図6において左方へ押動することにより、移動体54の開閉弁55の変移に伴ない送出口46の底面が開放されて球抜き通路52と連通される。また第1側の移動体54に対して第2側の移動体64が連杆77を介して押動されることにより、開閉弁65の変移に伴ない球抜き口62の下面が開放されて球抜き通路63と連通される。これにより上球皿D1の下流部および上流部が、ともに球抜き開放状態に保持される。」(段落【0034】)

・記載事項1-11
「従って、上球皿D1の貯留部42および球整流部43の貯留球については、送出口46から球抜き通路52を流通し、そして下球皿D2側の排出樋84から通路85を通って貯留部83に排出される。また上球皿D1の貯留部42および連通口49から出口9に至る貯留球については、球抜き口62から球抜き通路63を流通し、そして前記戻し口11から球収容器37に排出されて最終的には下球皿D2の貯留部83に放出される。この結果、上球皿D1側の全ての貯留球が短時間で速やかに排出される。」(段落【0035】)
・記載事項1-12
「またゲーム中に貯留球の一部を必要に応じて抜出す場合には、前述の第2の球抜き機構61のみを単独で適時開放操作する。すなわち操作具68を指先操作で図中左方へ押動することにより、前述のように移動体64の開閉弁65の変移に伴ない球抜き口62が開放されて球抜き通路63と連通される。従って、上球皿D1の貯留部62および連通口49側に至る貯留球は、球抜き口62から球抜き通路63、戻し口11、球収容器37の順に流通して下球皿D2へ排出される。なお、この球抜き時においては、少なくとも貯留部42および整流部43に至る貯留球を利用して相応の時間に亘りゲームを正常に継続することができる。」(段落【0036】)

以上の記載事項1-1?1-12及び図1?12によれば、引用文献1には次の発明が記載されていると認められる。

「遊技面内に遊技球を発射する打球発射装置17と、皿本体41の貯留部42の貯留球を整流部43で順次整列化させて打球発射装置17に送込む上球皿D1と、セーフ球が1球ずつ検出確認処理されると賞球を皿本体41に排出する賞球排出装置34と、下球皿D2側の口8に連通する副排出路36内の貯留球の圧力(重量)を受けて変動される感知部材39を有する賞球充満検出機構38とを備えるパチンコ遊技機の球抜き装置であって、
上球皿D1の貯留部48および連通口49側に至る貯留球を球抜き口62から排出させるとともに、この球抜き時において少なくとも貯留部42および整流部43に至る貯留球を利用して相応の時間に亘りゲームを正常に継続することを可能とする、第2の球抜き機構61と、
上球皿D1の貯留部42および球整流部43の貯留球を整流部43の下流端の送出口46から球抜き通路52を通過させて排出させる第1の球抜き機構51と、
前記第2の球抜き機構61の操作具68と第1の球抜き機構51の操作具58を配設した、
パチンコ遊技機の球抜き装置。」(以下、「引用発明1」という。)
なお、上記記載事項1-12において「上球皿D1の貯留部62および連通口49側に至る貯留球」と記載されているが、「貯留部」は「48」であること、引用文献1の記載全体からみて球抜き口62からは貯留部48における貯留球を排出することは明らかであるから、上記記載事項1-12の「貯留部62」は「貯留部48」の誤記と認められる。このため、上記引用発明1の認定において、「上球皿D1の貯留部48および連通口49側に至る貯留球」と認定した。

(2)引用文献2について
原査定の拒絶の理由に引用された特開平11-9794号公報(公開日:平成11年1月19日)(以下、「引用文献2」という。)には、以下の事項が図面とともに記載されている。

・記載事項2-1
「パチンコ機前面下部に設ける球皿を大容量化して1皿とし、前記球皿の底面に、前記球皿内に貯溜されたパチンコ球をパチンコ機外に排出する第1球抜き口と、これを開閉する第1球抜き部材とを設け、前記球皿内のパチンコ球を球発射装置に案内する案内流路の下流部に、前記パチンコ球をパチンコ機外に排出する第2球抜き口と、これを開閉する第2球抜き部材とを設けたことを特徴とするパチンコ機。」(【特許請求の範囲】【請求項1】)

・記載事項2-2
「尚、例えば2つの操作レバー37,43を接近させて配置すれば、遊技者は、片手で2つの操作レバー37,43を同時に操作することが可能となり、便利である。勿論、両手で各操作レバー37,43を操作しても良く、或は、片手で第1球抜き口31を開放して球皿21内のパチンコ球を排出した後、片手で第2球抜き口32を開放して案内流路27内のパチンコ球を排出するようにしても良いことはいうまでもない。」(段落【0024】)

3.対比
本願補正発明と引用発明1を対比する。
引用発明1の「遊技面」は本願補正発明の「遊技盤」に相当し、以下同様に、「皿本体41」は「皿部材」に、「上球皿D1」は「球皿」に、「賞球」は「遊技球」に、「賞球排出装置34」は「球払出装置」に、「賞球充満検出機構38」は「満杯検出スイッチ」に、「操作具」は「操作部」に相当する。
また、引用発明1及び本願補正発明において、「球抜き機構」について「第1の」及び「第2の」との限定が行われているが、この「第1」及び「第2」は、それ自体には技術的意味はなく、単に相対的に区別するために記載されたものと認められる。
そして、引用発明1について、以下の(1)?(5)のことがいえる。
(1)「皿本体41の貯留部42の貯留球を整流部43で順次整列化させて打球発射装置17に送込む上球皿D1」について
上記「整流部43」は「球を1列状態で送出する送出路45」を有するもの(上記記載事項1-4)であって、この「送出路45」は「打球発射装置17」に遊技球を供給するものであり本願補正発明の「案内通路」に相当することは明らかである。そして、「送出路45」に入る前に遊技球は整列流下されるものである。
そうすると、引用発明1は、「皿部材に貯留された遊技球を案内通路に整列流下させて打球発射装置に供給する球皿」なる構成を実質的に具備している。
(2)「セーフ球が1球ずつ検出確認処理されると賞球を皿本体41に排出する賞球排出装置34」について
「セーフ球が1球ずつ検出確認」されるということは遊技球が遊技面の入賞具に入ったことすなわち入賞が確認されることであり、入賞が確認されると賞球が排出されるということは入賞状態に基づいて遊技球を払い出すといいかえることができる。
そうすると、引用発明1は、「遊技盤における入賞状態に基づいて皿部材に遊技球を払い出す球払出装置」なる構成を実質的に具備している。
(3)「下球皿D2側の口8に連通する副排出路36内の貯留球の圧力(重量)を受けて変動される感知部材39を有する賞球充満検出機構38」について
「副排出路36内の貯留球の圧力(重量)を受けて変動される」のは、「下球皿D2」が「賞球排出装置34」から排出された貯留球で満杯になると共に更に「副排出路36」内が貯留球で満杯になった時であるから、「賞球充満検出機構38」は「下球皿D2」に遊技球が充満した満杯状態を検出するものということができるとともに、「下球皿D2」も「皿部材」を有することは自明である。
そうすると、引用発明1は、「球払出装置から遊技球が払い出されて皿部材に遊技球が充満した満杯状態を検出する満杯検出スイッチ」なる構成を実質的に具備している。
(4)「上球皿D1の貯留部48および連通口49側に至る貯留球を球抜き口62から排出させるとともに、この球抜き時において少なくとも貯留部42および整流部43に至る貯留球を利用して相応の時間に亘りゲームを正常に継続することを可能とする、第2の球抜き機構61」について
「球抜き口62」が「送出路45」の上流側に繋がった皿本体41の底面に形成されることは引用文献1の図4、6、7から明らかであり、球抜き時に「貯留部42および整流部43に至る貯留球を利用して相応の時間に亘りゲームを正常に継続する」ことが可能であるということは「貯留部42および整流部43」に「貯留球」が残されることを意味しており、当然整流部43の一部である「送出路45」にも「貯留球」が残されるものである。
そうすると、引用発明1は、「案内通路内に遊技球を残したまま皿部材に貯留された遊技球を案内通路の上流側に繋がった皿部材の底面に形成される球抜き口から排出させる第1の球抜き機構」なる構成を実質的に具備している。
(5)「上球皿D1の貯留部42および球整流部43の貯留球を整流部43の下流端の送出口46から球抜き通路52を通過させて排出させる第1の球抜き機構51」について
「球抜き通路52」は、「送出路45」の下流端部の「送出口46」に繋がっていることは引用文献1の図7から明らかであり、本願補正発明の「球抜き路」に相当する。
そうすると、引用発明1は、「皿部材に貯留された遊技球および案内通路に位置する遊技球を案内通路の下流端部から案内通路の下流端部に繋がる球抜き路を通過させて排出させる第2の球抜き機構」なる構成を実質的に具備している。

以上より、両者は、
「遊技盤に遊技球を発射させる打球発射装置と、皿部材に貯留された遊技球を案内通路に整列流下させて前記打球発射装置に供給する球皿と、前記遊技盤における入賞状態に基づいて前記皿部材に遊技球を払い出す球払出装置と、前記球払出装置から遊技球が払い出されて皿部材に遊技球が充満した満杯状態を検出する満杯検出スイッチとを備える弾球遊技機の球抜き装置であって、
前記案内通路内に遊技球を残したまま前記皿部材に貯留された遊技球を前記案内通路の上流側に繋がった前記皿部材の底面に形成される球抜き口から排出させる第1の球抜き機構と、
前記皿部材に貯留された遊技球および前記案内通路に位置する遊技球を前記案内通路の下流端部から前記案内通路の下流端部に繋がる球抜き路を通過させて排出させる第2の球抜き機構と、
前記第1の球抜き機構の操作部と前記第2の球抜き機構の操作部とを配設した弾球遊技機の球抜き装置。」である点で一致し、以下の点で相違する。

<相違点1>
遊技球が充満した満杯状態を検出する満杯検出スイッチの検出対象である皿部材が、本願補正発明では、第1の球抜き機構及び第2の球抜き機構が遊技球の排出を行う「前記皿部材」であるのに対して、引用発明1では第1の球抜き機構及び第2の球抜き機構が遊技球の排出を行う「前記皿部材」とは別の皿部材(下球皿D2)である点。
<相違点2>
第1の球抜き機構の操作部と第2の球抜き機構の操作部とが、本願補正発明では片手で操作可能に近接して配設されるのに対して、引用発明1ではそのような構成を有していない点。
<相違点3>
本願補正発明では、第1の球抜き機構に前記満杯検出スイッチが前記満杯状態を検出したとき前記第1の球抜き機構の前記操作部を発光させて前記第1の球抜き機構による球抜き処理を促す満杯報知ランプが設けられているのに対して、引用発明1ではそのような構成を有していない点。

4.判断
上記相違点について検討する。
<相違点1>について
球皿を1つにすることは上記引用文献2、下記周知例A、下記周知例Bに例示されるように本願出願前周知であり、また、球皿に遊技球が満杯になったことを満杯検出手段で検出することはパチンコ機において通常採用される慣用手段にすぎない。なお、下記周知例A,Bにおいても満杯になったことを検出している。
そうすると、上記周知技術及び慣用技術を参酌すると、引用発明1において、遊技球が充満した満杯状態を検出する満杯検出スイッチの検出対象である皿部材を第1の球抜き機構及び第2の球抜き機構が遊技球の排出を行う「皿部材」(上球皿D1の皿本体41)とすることに困難性はなく、上記相違点1に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に成し得たことである。
<相違点2>について
2つの球抜き機構の操作レバーを近接させて配置すれば、遊技者が片手で2つのレバーを同時に操作することが可能であることが上記引用文献2に記載(上記記載事項2-2)されており、当該操作レバーは本願補正発明の操作部に相当するものである。
そうすると、引用発明1において、上記引用文献2に記載された技術事項を採用し、上記相違点2に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に成し得たことである。
<相違点3>について
球皿に遊技球が満杯になったことを満杯検出手段で検出したとき報知を行うことは、下記周知例A、Cに例示されるように本願出願前周知であり、スイッチ又はボタンを発光させて遊技者にその操作を促すことは下記周知例D、Eに例示されるように本願出願前に周知である。
そして、球皿が満杯になった場合に満杯検出手段の検出に基づき球払出装置の作動が停止されることはパチンコ機において普通に採用されることであり、球抜きを行わない限り球の払い出しが行われないことは遊技者に広く知られていることである。なお、この点は下記の周知例B、Cにも記載されている。
また、球皿が満杯状態になるのは普通は大当りが発生している時であり、大当りの発生中に遊技者が遊技を続行すなわち遊技面内に遊技球を発射できなくなれば、時間によって開放する時間が決まっている大入賞口に遊技球が入賞できない等により遊技者にとって得られたであろう利益(遊技球の払い出し)が失われることになる。したがって、満杯状態を解消するため球抜きを行う際に遊技球の発射の必要性が高いことは自明であるから、引用発明1において、第1の球抜き機構51の操作に比べ、球抜き時に相応の時間に亘りゲームを正常に継続することが可能な第2の球抜き機構61の操作の必要性が、満杯時の球抜き時に高いことは明らかである。
以上を勘案すると、引用発明1において、第2の球抜き機構(本願補正発明の第1の球抜き機構に相当)に賞球充満検出機構38が満杯状態を検出した時に第2の球抜き機構の操作具を発光させて第2の球抜き機構による球抜き処理を促す満杯報知ランプを設けるようにすることにより、相違点3に係る本願補正発明の構成とすることは当業者が容易に成し得たことである。
<周知例>
A.特開平9-24134号公報
特に、段落【0008】の「これにより、1つの球受皿で貸し球と賞球及びファール球を全て処理することができるようになるため、従来の“下皿”が不要となり、遊技盤の下方に設ける球受皿が1皿のみで良くなる。」、段落【0035】の「その他、本発明は、球受皿25内に賞球を導く賞球通路の途中に、球受皿25内の賞球貯留量が満杯になったか否かを検出する手段を設け、満杯になったときにその旨を表示又は音で報知する報知手段を設けるようにしても良い等、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できることは言うまでもない。」を参照。
B.特開2001-334049号公報
特に、段落【0014】の「一方、図2及び図3に示すように、本体枠11の前面下部には、前面パネル19が設けられ、この前面パネル19に、1皿化された大容量の球皿20が設けられている。球皿20は、前面パネル19から前方に突出した前皿部21と、前面パネル19よりパチンコ機後部側に広がる後皿部22とから構成されている。」、段落【0030】の「また、本実施形態では、後皿部22の上段側の貯溜スペース側に、満杯検出レバー37及び満杯検出スイッチ38を設け、後皿部22内のパチンコ球貯溜量が後皿部22の容量を越える手前で、パチンコ球貯溜量がほぼ満杯になったことを検出して、球払出装置16の球払出動作を停止させるようにしているので、後皿部22内に過剰にパチンコ球を貯溜してしまうことを防止でき、パチンコ機の前面パネル19を開放しても、後皿部22からパチンコ球がこぼれ落ちてしまうことを防止することができる。」を参照。
C.特開平11-253634号公報
特に、【要約】【解決手段】の「第1満杯検出手段76が下皿13の満杯状態を検出したときに遊技者に報知する満杯表示ランプ78a 等の報知手段と、第2満杯検出手段62が補助受け皿46の満杯状態を検出したときに球払い出し手段を停止させる制御手段とを備えている。」を参照。
D.特開2002-95792号公報
特に、段落【0197】の「本実施の形態は、三個のストップスイッチ50の推奨操作順番に基づいて、ストップスイッチ50の操作を最も推奨するストップスイッチ50と、推奨操作順番に基づいて、操作を推奨しないが操作可能なストップスイッチ50との発光態様を異ならしめて、各ストップスイッチ50の発光部190を発光させるようにしたことに特徴を有するものである。」、段落【0198】の「具体的には、推奨停止操作順番に基づいて、停止操作で最も推奨するストップスイッチ50の発光部190を青色に発光させ、推奨停止操作順番に基づいて推奨はしないが、操作可能なストップスイッチ50の発光部190を黄色に発光させ、現時点で操作不可能なストップスイッチ50の発光部190を赤色に発光若しくは消灯させるものである。図19に示すように、ストップスイッチ発光部224は、上述した青色発光ダイオード231及び赤色発光ダイオード232に加えて、黄色の発光が可能な黄色発光ダイオード240を設けているものである。」を参照。
E.特開平5-115598号公報
特に、段落【0244】の「また、ゲームの流れや各種スイッチの操作時等を遊技者にわかり易くする表示として、例えば、次のような変形例が考えられる。ストップボタン22a,22b,22cの押圧操作の有効時間を明瞭にする表示としては、ストップスイッチ有効表示ランプを各ストップボタン22a,22b,22cの周囲に配置してその有効時に点灯させるようにしても良いし、ストップボタン22a,22b,22cのボタンをその有効時に内部のランプを点灯させることによって発光させるようにしてもよい。」、段落【0245】の「オーバーフローや半端球が生じた時に賞球抜きスイッチ33をその内部のランプを点灯させることによって発光させるようにしても良い。」を参照。

そして、本願補正発明の効果は、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項、上記周知技術から当業者が予測できる範囲のものである。

したがって、本願補正発明は、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

5.むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条第5項の規定に違反するものであり、同法159条第1項で準用する同法53条第1項の規定により却下されるべきものである。
第3.本願発明について
1.本願発明の認定
平成18年1月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成17年8月5日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「遊技盤に遊技球を発射させる打球発射装置と、皿部材に貯留された遊技球を案内通路に整列させて前記打球発射装置に供給する球皿と、前記遊技盤における入賞状態に基づいて前記皿部材に遊技球を払い出す球払出装置と、前記球払出装置から遊技球が払い出されて少なくとも前記皿部材に遊技球が充満した満杯状態を検出する満杯検出スイッチとを備える弾球遊技機の球抜き装置であって、
前記皿部材に貯留された遊技球を排出させる第1の球抜き機構と、
前記案内通路に位置する遊技球を排出させる第2の球抜き機構とを備え、
前記第1の球抜き機構の操作部と前記第2の球抜き機構の操作部とが片手で操作可能に近接して配設されており、
前記第1の球抜き機構に、前記満杯検出スイッチが前記満杯状態を検出したとき前記第1の球抜き機構の前記操作部を発光させる満杯報知ランプが設けられていることを特徴とする弾球遊技機の球抜き装置。」

2.本願発明の進歩性の判断
(1)引用文献
拒絶の理由に引用された引用文献及びその記載事項は、前記第2の2.に記載したとおりである。

(2)対比・判断
本願発明は、前記第2で検討した本願補正発明から、前記第2の1.(2)に記載した限定を補正前に戻したものである。
そうすると、本願発明の構成をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記第2の4.に記載したとおり、引用発明、上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も同様の理由により、引用文献に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

第4.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明1、引用文献2に記載された技術事項、上記周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-12 
結審通知日 2008-05-16 
審決日 2008-05-27 
出願番号 特願2002-366707(P2002-366707)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (A63F)
P 1 8・ 121- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 鉄 豊郎  
特許庁審判長 伊藤 陽
特許庁審判官 太田 恒明
森 雅之
発明の名称 弾球遊技機の球抜き装置  
代理人 大西 正悟  

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