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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K |
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管理番号 | 1180668 |
審判番号 | 不服2005-17083 |
総通号数 | 104 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-08-29 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-09-06 |
確定日 | 2008-07-09 |
事件の表示 | 特願2003-147028「養毛育毛剤」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月9日出願公開、特開2004-346044〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯・本願発明 本願は、平成15年5月23日の出願であって、その請求項1に係る発明は、平成17年7月14日付け手続補正書によって補正された特許請求の範囲に記載された事項により特定される以下のとおりのものである。 「【請求項1】モルトウイスキー、天然または人工の岩石や鉱物を粉砕してなる微粉末を水中に放置することにより調整された上澄み液からなるミネラルウォーター、アロエおよび蜂蜜からなることを特徴とする養毛育毛剤。」 2.引用刊行物及びその記載事項 これに対して、原査定の理由に引用された、本出願日前に頒布されたことが明らかな刊行物A?Dには、以下のことが記載されている。 A:特開昭53-91146号公報(原審で引用された文献A4) B:特開昭61-176517号公報(原審で引用された文献A2) C:特開平11-246361号公報(原審で引用された文献A10) D:特開平9-301833号公報(原審で引用された文献A6) ・刊行物A(特開昭53-91146号公報)の記載事項 (A-1) 「この発明は植物性養毛液の製造にして、生植物、シイタケ、センブリ、パセリ、ヒジキ、朝鮮ニンジン、食塩等を粉砕機にて粉砕し、その中に蒸留水を投入し、…攪拌し、その液を絞り、その上アロエを投入し、これをミキサー機にて粘液質の原液と雑物を分離し、これに焼酎を入れて攪拌し、再び…液を絞り、再度攪拌した液に…ヘアトニックを投入し再び攪拌し、その液を濾過機にて濾過することにより、白色無害特効ある植物性養毛液の製造。」(特許請求の範囲) (A-2) 「(3)この発明の資材と主成分の効果 成分はアロエの成分を排出さすためと消毒…のため。」(公報第1頁右下欄第7行?同第2頁左上欄第18行) ・刊行物B(特開昭61-176517号公報)の記載事項 (B-1) 「酸化硅素約60%前後、酸化アルミニウム約19%前後、酸化鉄約5%前後、酸化ナトリウム約3.3%前後、酸化カリ約2%前後、酸化カルシウム約3.5%前後、酸化マグネシウム約2%前後の含有物質を主成分とする天然鉱石の粉砕物をミネラルウォーターもしくは適宜処理された自然地下水中に溶融、攪拌し、濾過して得られる液体と、蒸溜水に溶融、攪拌した微生物活性酵素との混合液に、ゼラチンを添加、加熱してゲル状化してなる発毛促進剤。」(特許請求の範囲) (B-2) 「…発毛促進剤の天然鉱石のイオン化したものその他が皮脂腺あるいは残存する毛根に対して活性化作用、浄化作用を及ぼし、発毛に適した環境作りに有効に作用するものと考えられる。」(公報第3頁左上欄第14?18行) ・刊行物C(特開平11-246361号公報)の記載事項 (C-1) 「【請求項5】 アスパラサスリネアリスのエキスとカメリアシネンスのエキスを主成分として成ることを特徴とする養毛剤。 【請求項6】 請求項…5に記載のエキスとアルコールを主成分として成ることを特徴とする養毛剤。」(特許請求の範囲の【請求項5】及び【請求項6】) (C-2) 「…アルコールを用いることによって、養毛剤に殺菌作用を付与することができ、頭皮を清潔にすることができるものである。」(【0015】) (C-3) 「本発明の請求項5の養毛剤は、アスパラサスネアリスのエキスとカメリアシネンスのエキスを主成分とするものである。この養毛剤は、アスパラサスネアリスとカメリアシネンスを粉砕するなどした後、…あるいはアルコールと水の混合物(例えば、ワイン、焼酎、バーボン、スコッチ、ウオッカなど…の食用酒(蒸留酒や醸造酒)など)などの媒体に浸漬してアスパラサスネアリスのエキスとカメリアシネンスのエキスを媒体中に抽出し、アスパラサスネアリスとカメリアシネンスのエキス抽出後の残留物を濾過するなどして媒体から除去することによって調製することができる。…」(【0025】) ・刊行物D(特開平9-301833号公報)の記載事項 (D-1) 「【請求項1】白髪を黒髪に蘇生するため頭皮に適量を塗布する黒髪蘇生液剤であって、該黒髪蘇生液剤は植物アロエを粉砕後濾過したアロエ原液と、…褐藻植物原液と、…ブロッコリー原液と、蜂蜜を…配合したことを特徴とする黒髪蘇生液剤。」(特許請求の範囲の【請求項1】) (D-2) 「…蜂蜜には各種ビタミンの他ミネラルをも含み、混合液を適度の粘性に保つのに有効である。また、加齢に伴い生理的現象として生ずる髪の毛のパサツキ等の損傷を防止し、髪の毛につやを出す効果もある。」(【0010】) (D-3) 「…黒髪蘇生液剤は、育毛剤として使用する。」(【0014】) 3.対比 上記刊行物Aの(A-1)の記載から見て、刊行物Aには、以下の発明が記載されているものと解される。 「生植物、シイタケ、センブリ、パセリ、ヒジキ、朝鮮ニンジン、食塩等に由来する成分を含む蒸留水、アロエに由来する成分を含む焼酎、及び、ヘアトニックを含む養毛液」(以下、「引用発明」という。) 引用発明の養毛液及び本願発明の養毛育毛剤は、何れも全体として均質な溶液となっていると解されることから、構成成分の観点から対比を行うこととし、また本願発明の蜂蜜、及び、引用発明の「生植物、シイタケ、センブリ、パセリ、ヒジキ、朝鮮ニンジン、食塩」は何れも天然素材であることから、両発明を比較すると、両者はともに、「水及び酒類を溶媒相として、これにアロエ及び他の天然素材に由来する成分を溶解させた液を含む養毛剤」である点で一致し、以下の点で相違している。 ・[相違点1] 使用する水が、本願発明では「天然または人工の岩石や鉱物を粉砕してなる微粉末を水中に放置することにより調整された上澄み液からなるミネラルウォーター」であるのに対して、引用発明では蒸留水である点。 ・[相違点2] 使用する酒類が、本願発明はモルトウイスキーを使用しているのに対して、引用発明では焼酎を使用している点。 ・[相違点3] アロエ以外の天然素材として、本願発明では蜂蜜を使用しているのに対して、引用発明ではシイタケ等の蜂蜜を含まない素材を使用している点。 ・[相違点4] 本願発明はヘアトニックとともに使用していないのに対して、引用発明はヘアトニックとともに使用している点。 4.当審の判断 上記相違点について検討する。 ・[相違点1]について 上記刊行物Bの(B-1)の記載及び本願明細書における本願発明で使用しているミネラルウォーターに関する記載を参酌すると、刊行物B記載の「天然鉱石の粉砕物の成分を溶解しているミネラルウォーターもしくは自然地下水」(以下、「天然鉱石自然水」という。)は、本願発明で使用しているミネラルウォーターに相当するものと解される。 そこで、引用発明における蒸留水に代えて、刊行物B記載の天然鉱石自然水を使用することが、当業者にとって容易であるか否かについて、以下検討する。 ところで、この分野においては、主として天然物に由来する成分に関して、毛髪・頭皮に効果効能が示される成分を、複数組み合わせて養毛・育毛剤とすることは、本出願日前より行われている周知の手段である。(例えば、上記刊行物Aの他、特開2002-97115号公報、特開平6-271429号公報、特開2000-319135号公報、特開2003-79686号公報など参照) そのような技術背景を考慮すると、引用発明では、単に溶媒として使用されているだけであって、格別の効果・効能がある成分とはされていない蒸留水について、元来の溶媒としての機能を果たすことは明らかであって、さらに毛髪・頭皮に対して効果・効能があることも示されている(上記(B-2)参照)刊行物B記載の天然鉱石自然水を使用してみようとすることは、この分野の当業者であれば、容易に発想することであって、格別の創意工夫を要するような事項とすることはできない。 したがって、引用発明における蒸留水に代え、刊行物B記載の天然鉱石自然水を使用することは当業者が容易になし得ることである。 ・[相違点2]について 刊行物Aの(A-2)の記載からすると、引用発明において、焼酎はアロエの成分の抽出及び消毒のために使用されているものであるが、刊行物Cにおいて、同様な目的、すなわち植物エキスの抽出目的に加えて、頭皮に対する殺菌作用をも目的として、焼酎と並んで、スコッチやバーボンといったウイスキーも使用され得ることが示されている(上記(C-1)?(C-3)参照)ことからも、引用発明における焼酎に代えて、ウイスキーの一種であるモルトウイスキーが使用され得ることは当業者が容易に理解するところである。 ・[相違点3]について 蜂蜜は、刊行物Dに記載されているように、育毛剤としても使用される毛髪外用剤の一成分として配合されるものであって、毛髪へのある種の効果・効能を有するものである。(上記(D-1)及び(D-2)参照) 上記「[相違点1]について」で述べたように、この分野においては、毛髪・頭皮に対してある種の効果・効能を示す成分を多数組み合わせみることは周知の手段である。したがって、刊行物Dにおいて、アロエとともに育毛剤に配合されていて、かつ毛髪に対する効果・効能が示されている蜂蜜を、引用発明に係るアロエ含有養毛液に対して、さらに添加してみることは、当業者が容易になし得ることである。 そして、引用発明では、アロエ以外にシイタケ等の各種天然素材に由来する成分が含まれているのに対して、本願発明では、このような成分は含まれていないものであるが、本願発明においても、明細書【0016】に記載されているように、「有効成分として知られている、ゆず、…、などを必要に応じて添加することができる。」と記載されており、引用発明におけるアロエ以外の天然素材に由来する成分が含まれていることについては、これを以て相違点とすべきものではないと解される。 ・[相違点4]について 通常、養毛剤等を頭髪・頭皮に適用するに際しては、養毛剤等を単独で、或いは、ヘアトニック等の毛髪化粧料とともに使用されることは、本出願日前より行われていたことである。(例えば、特開平6-87723号公報【0025】及び特開2002-275036号公報の実施例10?12参照。また、ヘアトニックとともに使用する例としては、特開2003-81777号公報、特開2003-73236号公報及び特開2002-80327号公報など、単独で使用される例としては、上記刊行物B?Dや「[相違点1]について」において提示した周知技術を示す文献参照。) したがって、引用発明において、養毛剤をヘアトニックとともに使用しているからといって、当業者ならば、当該使用態様に拘泥されることなく、それは単なる一使用態様であると理解し、実際に頭髪・頭皮に適用するに際しては、適宜な方法を選択するものである。 したがって、引用発明におけるヘアトニックとともに使用する態様に代え、養毛剤を単独で頭髪・頭皮に適用する態様とすることは、当業者が適宜なし得る程度のことにすぎない。 ・本願発明の効果に関して 本願明細書の記載を見ても、本願発明により格別顕著な効果が奏されるものとすることができない。 すなわち、比較例1?3は、実施例における被験者5人のうちのA氏に対してのみに試験した結果が示されているものであるが、その結果を実施例におけるA氏の結果と対比すると以下のようになるが、この対比から、殊に比較例1と実施例のA氏の結果との対比からすると、両者の間には殆ど有意な差異はないものとせざるを得ず、かかる明細書の記載をもって、本願発明が格別顕著な効果が奏されるものとすることは、到底できないものである。 [実施例のA氏の結果と比較例1?3の結果の対比](明細書【0022】?【0023】より抜粋) (一月後) (二月後) 「育毛」 「養毛」 「衛生」 「育毛」 「養毛」 「衛生」 実施例(A氏) 1?2 1 1 5 2 1 ---------------------------------- 比較例1 1 1 1 4 2 1 比較例2 1 1 1 2 2 1 比較例3 1 1 1 2 2 1 [試験方法及び評価方法](明細書【0018】?【0020】より転記) 「(育毛効果試験) 額の禿げ上がった部分に、二ヶ月間朝夕通常の整髪料と同じ要領で頭皮に塗布して、一月後、二ヵ月後の、頭皮の1cm²(「1cm^(2)」の誤記と認められる;審決注)の面積に生える、黒色又は黒色に近い髪の生える数を、虫眼鏡を使い、入念に数えた。そして、頭皮に生えた、黒色又は黒色に近い色の、生えた髪の数を目視判定により数え、その生えた髪の本数をそれぞれ示す。以下、この育毛効果の判定を「育毛」という用語で表示する。 (養毛効果試験) 額の禿げ上がった部分に、二ヶ月間朝夕通常の整髪料と同じ要領で頭皮に塗布して、一月後、二月後の、頭皮の1cm²(「1cm^(2)」の誤記と認められる;審決注)の面積に生えている白髪になりつつある、僅かな繊毛の白から黒へと色の進行状態を、本発明の養毛育毛剤の手入れしない状態のままの白髪に近い頭髪の色を「1」とし、ねずみ色「3」、通常の黒髪の色を最高の「5」とし、5段階評価により、その色の進行状態を目視判定により評価する。以下、この養毛効果の判定を「養毛」という用語で表示する。 (抜け毛、ふけ、かゆみ試験) 養毛、育毛試験と平行して、頭髪の抜け毛、ふけの発生状態、およびかゆみを、本発明の養毛育毛剤を使用しない前の状態に比較して、聞き取り調査を実施した。以下、この試験 評価を「衛生」という用語で、下記の1?3段階で表示する。 1;養毛育毛剤を塗布しない状態とあまり変わらない。 2;やや抜け毛や、ふけ、かゆみが少なくなった。 3;殆ど抜け毛や、ふけ、かゆみがなくなった。」 5.むすび したがって、本願発明は、刊行物A?Dの記載に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであって、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-04-23 |
結審通知日 | 2008-05-07 |
審決日 | 2008-05-20 |
出願番号 | 特願2003-147028(P2003-147028) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(A61K)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 岩下 直人 |
特許庁審判長 |
星野 紹英 |
特許庁審判官 |
弘實 謙二 川上 美秀 |
発明の名称 | 養毛育毛剤 |
代理人 | 柿澤 紀世雄 |