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審決分類 審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 H05K
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H05K
管理番号 1181568
審判番号 不服2006-11791  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-08 
確定日 2008-07-17 
事件の表示 特願2000-331992「電子部品実装装置および電子部品実装方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年 5月17日出願公開、特開2002-141698〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成12年10月31日の出願であって、平成18年3月31日付けで手続補正がされた後、同年5月1日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年6月8日付けで審判請求がされるとともに、同年6月20日付けで手続補正がなされたものである。

2.平成18年6月20日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成18年6月20日付けの手続補正を却下する。

[理由]
(1)本件補正の内容
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1を、
「固定部と、この固定部の下部に配置されて垂直な回動軸の廻りにインデックス駆動機構によりインデックス回転するインデックス回転体と、このインデックス回転体の回動軸を中心とした複数当配位置に配設され前記インデックス回転体に対して昇降可能な昇降レールから成る移載ヘッド保持部と、この昇降レールに昇降自在に嵌合するスライドガイドと、このスライドガイドに固着された昇降ブロックと、この昇降ブロックの下部に装着されて前記昇降レールから成る前記移載ヘッド保持部に対して昇降自在に保持され垂直な自転軸廻りに自転可能な移載ヘッドと、前記昇降ブロック及び前記移載ヘッドに上方へ付勢力を与えるスプリングと、この移載ヘッドに前記自転軸から偏心した位置に複数配置され電子部品を吸着して保持する吸着ノズルと、前記移載ヘッド保持部に固着されたカムフォロア及びこのカムフォロアと当接して前記固定部の外周面に設けられ前記インデックス回転体のインデックス回転によって移載ヘッド保持部をインデックス回転体に対して所定軌跡で昇降させるカム部材とから成る第1の移載ヘッド昇降機構と、前記インデックス回転の所定インデックス停止位置を含む所定移動範囲内において前記移載ヘッドを前記スプリングの付勢力に抗して下降させ、また前記スプリングの付勢力によって上昇させることにより前記移載ヘッド保持部に対して所定パターンで昇降させる第2の移載ヘッド昇降機構とを備え、前記第1の移載ヘッド昇降機構によって規定される昇降軌跡R1に前記第2の移載ヘッド昇降機構による昇降軌跡R2、R2’を重ね合わせた軌跡によって前記移載ヘッドを昇降させることを特徴とする電子部品実装装置。」とする補正事項を有するものと認める(審決注:下線部は補正部分を示す。)。

(2)判断
当該補正事項は、補正前の請求項1に、「この昇降レールに昇降自在に嵌合するスライドガイド」、「このスライドガイドに固着された昇降ブロック」及び「前記昇降ブロック及び前記移載ヘッドに上方へ付勢力を与えるスプリング」を新たに追加するものであって、補正前の請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものではないから、いわゆる、特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものには該当しないし、また、明りょうでない記載の釈明、請求項の削除、又は、誤記の訂正を目的にするものに該当しないことも明らかである。
そうすると、この補正事項は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に掲げる事項を目的とするものであるとはいえない。

(3)まとめ
したがって、本件手続補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであるから、特許法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

3.本願発明について
平成18年6月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されるので、本願発明は、平成18年3月31日付けで手続補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?2に記載された事項により特定されるものであるところ、そのうちの請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。

「固定部と、この固定部の下部に配置されて垂直な回動軸の廻りにインデックス駆動機構によりインデックス回転するインデックス回転体と、このインデックス回転体の回動軸を中心とした複数当配位置に配設され前記インデックス回転体に対して昇降可能な移載ヘッド保持部と、この移載ヘッド保持部に対して昇降自在に保持され垂直な自転軸廻りに自転可能な移載ヘッドと、この移載ヘッドに前記自転軸から偏心した位置に複数配置され電子部品を吸着して保持する吸着ノズルと、前記移載ヘッド保持部に固着されたカムフォロア及びこのカムフォロアと当接して前記固定部の外周面に設けられ前記インデックス回転体のインデックス回転によって移載ヘッド保持部をインデックス回転体に対して所定軌跡で昇降させるカム部材とから成る第1の移載ヘッド昇降機構、前記インデックス回転の所定インデックス停止位置を含む所定移動範囲内において前記移載ヘッドを前記移載ヘッド保持部に対して所定パターンで昇降させる第2の移載ヘッド昇降機構とを備え、前記第1の移載ヘッド昇降機構によって規定される昇降軌跡R1に前記第2の移載ヘッド昇降機構による昇降軌跡R2、R2’を重ね合わせた軌跡によって前記移載ヘッドを昇降させることを特徴とする電子部品実装装置。」(以下、「本願発明1」という。)

4.原審の拒絶査定の理由の概要
原審の拒絶査定の理由の概要は、次のとおりのものである。
「本件出願の請求項1?2に係る発明は、その出願前日本国内または外国において頒布された下記の刊行物1?2に記載された発明に基づいて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

刊行物1:特開平3-8398号公報
刊行物2:特開平8-195588号公報」

5.引用刊行物とその記載事項
刊行物1である特開平3-8398号公報には、次の事項が記載されている。

(1a)「チップ状の電子部品を吸着する吸着ノズルユニットを周縁に複数個具備した回転テーブルを間欠的に回転させ、各作業ステーションで各種作業を行ない、プリント基板上に前記電子部品を順次装着していく電子部品装着機において、間欠回転動作を駆動するインデックスユニットと、回転方向全周にわたって、前記吸着ノズルユニットの上下位置関係を規正する円筒カム部材と、各作業ステーションで吸着ノズルユニットを上下動せしめるため前記円筒カム部材の一部が別部材からなるスライダーと、このスライダーを駆動する駆動手段とからなり、このスライダーの上下動作により電子部品の吸着,装着の作業を行なうよう構成したことを特徴とする電子部品装着機。」(特許請求の範囲第1項)

(1b)「そこで本発明は、インデックスユニットの回転途中から、吸着ノズルの下降を開始し、又、吸着ノズルの上昇途中から次のインデックスユニットの回転を開始し電子部品装着機の高速化を図ろうとするものである。」(第2頁右上欄1?5行)

(1c)「1は間欠回転運動を駆動するインデックスユニットであり、その出力軸2に回転テーブル3が取付けられている。その回転テーブル3の周縁には、吸着ノズルユニット4が複数個等間隔で固定されている。
5は円筒カムで全周にわたってカム溝6が設けられている。7a,7bはスライダーで、前記円筒カム5の一部に切欠きが設けてあり、その中に上下動可能に案内されている。8a,8bはスライダー7a,7bの上下動を伝達するレバーであり、9a,9bはそのレバー8a,8bを駆動する板カムである。10a,10bはバネで、レバー8a,8bを板カム9a,9bのカム面に付勢するものである。
吸着ノズルユニット4の構成を述べると、11は上下動するブロックで、カムフォロワー12が取付けてあり、カム溝6及びスライダー7a,7bに沿って上下動作可能に取付けてある。13は吸着ノズルで、部品供給ユニット14から電子部品を吸着保持し、プリント基板15に装着する。」(第2頁左下欄10行?同右下欄9行)

(1d)「次に、この一実施例の構成における動作について説明する。
インデックスユニット1により出力軸2及び回転テーブル3は間欠回転動作を開始する。その間欠回転動作の完了前から、板カム9a,9bの変位に沿って、レバー8a,8bは揺動運動をスタートし、スライダー7a,7bのカム溝6に入っているカムフォロワー12も下降を開始する。それに伴なって、吸着ノズル13も下降を開始する。そして出力軸2,及び回転テーブル3が間欠回転動作を完了した後に吸着ノズル13は下死点に到達し、部品供給ユニット14から電子部品を吸着保持する。又、同様にしてプリント基板16に電子部品を装着する。
さらに板カム9a,9bが回転していくと、吸着ノズル13は上昇を開始し、その上昇途中で、出力軸2及び回転テーブル3が間欠回転運動を開始する。
この一連の動作をカムフォロワー12の軌跡で示したものが第4図である。」(第2頁右下欄10行?第3頁左上欄9行)

(1e)第1図には、インデックスユニット1の出力軸2が垂直下方を向いており、また、回転テーブル3が円筒カム5の下部に配置されていることが記載されている。

(1f)第4図には、カムフォロワー12が、スライダー7a,7bへ移動する途中で、円筒カム5に設けられたカム溝6に沿って下降し、スライダー7a,7bから出た後に、カム溝に6沿って上昇することが記載されている。

刊行物2である特開平8-195588号公報には、次の事項が記載されている。

(2a)「部品供給部と基板の所定の部品装着位置との間で移動可能な移動体に部品の種類に対応した複数の吸着ノズルを有する装着ヘッドを設置した部品装着装置において、装着ヘッドに鉛直軸芯回りに回転可能な回転体を設けるとともにその下部周囲にカム面を下端に有する端面カムを固定配置し、回転体の周囲に各吸着ノズルを下端に有するノズル軸を昇降自在に挿通させた外筒を回転自在に配設し、外筒の上端部に回転手段に対する係合部を設け、ノズル軸の外筒下端から突出した下部に端面カムに対する係合手段を設けるとともにノズル軸を上昇付勢する手段を設けたことを特徴とする部品装着装置。」(特許請求の範囲請求項1)

(2b)「【0007】本発明は、上記従来の問題点に鑑み、部品の種類に応じて吸着ノズルを選択できるとともに吸着した部品の回転位置補正を高速化できる部品装着装置を提供することを目的としている。」

(2c)「【0020】次に、図1?図3を参照して装着ヘッド7の構成を説明する。14はヘッド本体で、その内部に回転体15が軸受16a、16bを介して鉛直な軸芯回りに回転可能に配設されている。ヘッド本体14の下端には、回転体15の下方部の周囲を取り囲むように、下端にカム面17aを形成された端面カム17が取付けられている。回転体15の外周部には、同一円周上に等間隔に位置させて複数の外筒18が鉛直方向に貫通して配設され、それぞれ軸受19a、19bを介して回転自在に支持されている。また、回転体15の上端部外周には歯車20が固定されている。
【0021】各外筒18の上端には回転手段(図示せず)に対するV字溝状の係合部21が形成されている。各外筒18内にはノズル軸22が昇降自在に挿通され、各ノズル軸22の下端部にそれぞれ種類の異なる吸着ノズル23が所定範囲内で上下移動自在に装着されている。24は吸着ノズル23を退入可能に突出付勢するばねである。」

6.当審の判断
(1)引用発明
まず、刊行物1の(1a)には、「チップ状の電子部品を吸着する吸着ノズルユニットを周縁に複数個具備した回転テーブルを間欠的に回転させ、各作業ステーションで各種作業を行ない、プリント基板上に前記電子部品を順次装着していく電子部品装着機において、間欠回転動作を駆動するインデックスユニットと、回転方向全周にわたって、前記吸着ノズルユニットの上下位置関係を規正する円筒カム部材と、各作業ステーションで吸着ノズルユニットを上下動せしめるため前記円筒カム部材の一部が別部材からなるスライダーと、このスライダーを駆動する駆動手段とからなり、このスライダーの上下動作により電子部品の吸着,装着の作業を行なうよう構成したことを特徴とする電子部品装着機。」が記載されている。

ここで、上記電子部品装着機の「回転テーブル」、「インデックスユニット」、及び「円筒カム部材」に関して、(1c)の「1は間欠回転運動を駆動するインデックスユニットであり、その出力軸2に回転テーブル3が取付けられている。」という記載、及び(1e)の「インデックスユニット1の出力軸2が垂直下方を向いており、また、回転テーブル3が円筒カム5の下部に配置されている」という図示によると、上記回転テーブルは、インデックスユニットの出力軸に取り付けられてインデックスユニットにより間欠回転運動をし、また、円筒カムの下部に配置されているものであり、一方、上記出力軸は垂直下方を向いているから、上記電子部品装着機は、『円筒カムと、この円筒カムの下部に配置されて垂直な出力軸の廻りにインデックスユニットにより間欠回転運動する回転テーブルを備えている』といえる。

また、上記電子部品装着機の「吸着ノズルユニット」は、(1c)の「5は円筒カムで全周にわたってカム溝6が設けられている。7a,7bはスライダーで、前記円筒カム5の一部に切欠きが設けてあり、その中に上下動可能に案内されている。」及び「吸着ノズルユニット4の構成を述べると、11は上下動するブロックで、カムフォロワー12が取付けてあり、カム溝6及びスライダー7a,7bに沿って上下動作可能に取付けてある。13は吸着ノズルで、部品供給ユニット14から電子部品を吸着保持し、プリント基板15に装着する。」という記載によると、円筒カムに設けられたカム溝及びスライダーに沿って上下動し、カムフォロワーを取付けられたブロックと、『電子部品を吸着して保持する吸着ノズル』とを備えているということができる。さらに、上記吸着ノズルを上記ブロックに取り付けるための『上記吸着ノズルを配設する移載ヘッド』を備えていることも第1図より明らかである。そして、上記ブロックは、上述のように、円筒カム上のカム溝に沿って上下動し、この円筒カムの下部には回転テーブルが配置されているのであるから、上記電子部品装着機は、『回転テーブルに対して昇降可能なブロックを備えている』ということができる。

そして、(1a)の「吸着ノズルユニットを周縁に複数個具備した回転テーブル」という記載、及び(1c)の「回転テーブル3の周縁には、吸着ノズルユニット4が複数個等間隔で固定されている」という記載を併せ見ると、上記電子部品装着機には、回転テーブル周縁に等間隔で複数の位置に吸着ノズルユニットが配設されているということができ、上記回転テーブルは、その中心に出力軸があることは明らかであり、また、上述のように、上記吸着ノズルユニットの構成部材にブロック11があることから、上記ブロックは、『回転テーブルの出力軸を中心とした複数当配位置に配設されている』ということができる。

さらに、上記電子部品装着機の「回転方向全周にわたって、前記吸着ノズルユニットの上下位置関係を規正する円筒カム部材」とは、この円筒カム部材の全周にわたりカム溝を設け、吸着ノズルユニットの構成部材であるブロックがカムフォロワーを有し、上記カム溝に沿って上下動作する(摘示1c)のであるから、上記電子部品装着機は、吸着ノズルユニットのカムフォロワー、及び、円筒カムの外周面に設けられたカム溝によって吸着ノズルユニットのブロックを所定軌跡で昇降させる機構を有するものであるといえる。ここで、上記カムフォロワーは上記ブロックに取り付けられているから、『ブロックに固着された』ということができ、また、回転テーブルの間欠回転運動に伴い、上記カムフォロワーが上記カム溝に沿って昇降する(摘示1f)のであるから、上記カム溝は、『カムフォロワーと当接して円筒カムの外周面に設けられ回転テーブルの間欠回転運動によってブロックを回転テーブルに対して所定軌跡で昇降させるもの』ということができる。すると、上記電子部品装着機は、『ブロックに固着されたカムフォロワー及びこのカムフォロワーと当接して円筒カムの外周面に設けられ回転テーブルの間欠回転運動によってブロックを回転テーブルに対して所定軌跡で昇降させるカム溝から成るブロック昇降機構を備えている』といえる。

また、上記電子部品装着機の「スライダー」及び「スライダーを駆動する駆動手段」に関して、(1d)の「間欠回転動作の完了前から、板カム9a,9bの変位に沿って、・・・スライダー7a,7bのカム溝6に入っているカムフォロワー12も下降を開始する。それに伴なって、吸着ノズル13も下降を開始する。・・・間欠回転動作を完了した後に吸着ノズル13は下死点に到達し、・・・さらに板カム9a,9bが回転していくと、吸着ノズル13は上昇を開始し、その上昇途中で、・・・間欠回転運動を開始する。」という記載によると、間欠回転動作の完了位置及びその前後の所定移動範囲内において、上記吸着ノズルが、スライダーの駆動手段である板カム及びレバーの変位によって決まる所定パターンで昇降するといえるから、上記電子部品装着機は、『間欠回転動作の所定完了位置を含む所定移動範囲内において吸着ノズルを所定パターンで昇降させる吸着ノズル昇降機構を備えている』といえる。

そして、上記ブロック昇降機構は、上記ブロックを所定軌跡で昇降させるものであり、上記ブロックは、上述のように、移載ヘッドを保持するのであるから、上記ブロック昇降機構は移載ヘッドを昇降させるものであるということができ、一方、吸着ノズル昇降機構は上記吸着ノズルを所定パターンで昇降させるものであり、上記吸着ノズルは、上述のように、移載ヘッドに配設されるのであるから、上記吸着ノズル昇降機構も移載ヘッドを昇降させるものであるといえる。すると、上記電子部品装着機は、『第1の移載ヘッド昇降機構によって規定される昇降軌跡に第2の移載ヘッド昇降機構による昇降軌跡を重ね合わせた軌跡によって移載ヘッドを昇降させるもの』であるということができる。

上記記載及び認定事項を本願発明1の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次のとおりの発明が記載されているといえる。
「円筒カムと、この円筒カムの下部に配置されて垂直な出力軸の廻りにインデックスユニットにより間欠回転運動する回転テーブルと、上記出力軸を中心とした複数当配位置に配設され回転テーブルに対して昇降可能であるブロックと、ブロックに保持された移載ヘッドと、移載ヘッドに配置され電子部品を吸着して保持する吸着ノズルと、ブロックに固着されたカムフォロワー及びこのカムフォロワーと当接して円筒カムの外周面に設けられ回転テーブルの間欠回転運動によってブロックを回転テーブルに対して所定軌跡で昇降させるカム溝とから成る第1の移載ヘッド昇降機構と、間欠回転動作の所定完了位置を含む所定移動範囲内において移載ヘッドを所定パターンで昇降させる第2の移載ヘッド昇降機構とを備え、第1の移載ヘッド昇降機構によって規定される昇降軌跡に第2の移載ヘッド昇降機構による昇降軌跡を重ね合わせた軌跡によって移載ヘッドを昇降させる電子部品装着機」(以下、「引用発明」という。)

(2)本願発明と引用発明の対比
まず、引用発明の「円筒カム」、「出力軸」、「インデックスユニット」、「間欠回転運動」、「回転テーブル」、「カムフォロワー」及び「電子部品装着機」はそれぞれ、本願発明1の「固定部」、「回動軸」、「インデックス駆動機構」、「インデックス回転」、「インデックス回転体」、「カムフォロア」及び「電子部品実装装置」に相当する。
次に、引用発明の「ブロック」は、上記出力軸を中心とした複数当配位置に配設され、上記回転テーブルに対して昇降可能であり、また、移載ヘッドを保持するものであるから、本願発明1の「移載ヘッド保持部」に相当するといえる。

そうすると、本願発明1と引用発明とは、「固定部と、この固定部の下部に配置されて垂直な回動軸の廻りにインデックス駆動機構によりインデックス回転するインデックス回転体と、このインデックス回転体の回動軸を中心とした複数当配位置に配設され前記インデックス回転体に対して昇降可能な移載ヘッド保持部と、この移載ヘッド保持部に保持され移載ヘッドと、この移載ヘッドに配置され電子部品を吸着して保持する吸着ノズルと、前記移載ヘッド保持部に固着されたカムフォロア及びこのカムフォロアと当接して前記固定部の外周面に設けられ前記インデックス回転体のインデックス回転によって移載ヘッド保持部をインデックス回転体に対して所定軌跡で昇降させるカム部材とから成る第1の移載ヘッド昇降機構、前記インデックス回転の所定インデックス停止位置を含む所定移動範囲内において前記移載ヘッドを所定パターンで昇降させる第2の移載ヘッド昇降機構とを備え、前記第1の移載ヘッド昇降機構によって規定される昇降軌跡R1に前記第2の移載ヘッド昇降機構による昇降軌跡R2、R2’を重ね合わせた軌跡によって前記移載ヘッドを昇降させる電子部品実装装置。」である点で一致し、次の点で相違する。

相違点イ:本願発明1は、移載ヘッドが移載ヘッド保持部に対して昇降自在に保持され、第2の移載ヘッド昇降機構により移載ヘッドを所定パターンで昇降させるものであるのに対して、引用発明は、移載ヘッドがブロックに対して昇降自在に保持されるものではなく、第2の移載ヘッド昇降機構により移載ヘッドをブロックに対して所定パターンで昇降させるものではない点

相違点ロ:移載ヘッドが、本願発明1では、垂直な自転軸廻りに自転可能であり、吸着ノズルが該自転軸から偏心した位置に複数配置されるのに対して、引用発明では、垂直な自転軸廻りに自転可能であり、吸着ノズルが該自転軸から偏心した位置に複数配置されるか否かが不明である点

相違点ハ:第1の移載ヘッド昇降機構が、本願発明1では、カムフォロアとカム部材とから成るのに対して、引用発明では、カムフォロワーとカム溝とから成る点。

(3)相違点についての判断
そこで、上記相違点イ?ハについて検討する。

(3-1)相違点イについて
引用発明は、カムフォロワーとカム溝とより成る第1の移載ヘッド昇降機構に加えて、第2の移載ヘッド昇降機構により、移載ヘッドを昇降させるものである。一方、移載ヘッドの昇降機構として、カムフォロワーとカム溝とより成る昇降機構に加えて、移載ヘッドを、その保持部材に対して昇降自在に保持するものは、特開平8-97597号公報の【0026】、【0027】及び【0039】や、特開昭63-232496号公報の第3頁右上欄下6行?同左下欄15行に記載されるように、本願出願前に周知の事項である。
すると、引用発明において、移載ヘッドを、移載ヘッド保持部に対して昇降自在に保持することは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。

(3-2)相違点ロについて
刊行物2には、鉛直軸芯回りに回転可能な回転体の同一円周上に、複数の吸着ノズルを装着した移載ヘッド(摘示2a及び2c)、及び、これにより、電子部品の装着動作における回転位置補正を高速化できること(摘示2b)が記載されているということができ、この移載ヘッドは、『垂直な自転軸廻りに自転可能であり、吸着ノズルが該自転軸から偏心した位置に複数配置された移載ヘッド』と言い換えることができる。
そして、引用発明は、電子部品の装着動作の高速化を目的とするもの(刊行物1の摘示1b)であるから、引用発明において、刊行物2に記載された移載ヘッドを採用し、移載ヘッドを垂直な自転軸廻りに自転可能とし、吸着ノズルを該自転軸から偏心した位置に複数配置することは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。

(3-3)相違点ハについて
引用発明は、カムフォロワーとカム溝とから成る第1の移載ヘッド昇降機構を備えたものである。一方、カムフォロワーとカム部材とから成る移載ヘッドの昇降機構は、特開2000-183595号公報の【0019】【0020】に記載されるように、本願出願前に周知の事項である。
すると、引用発明において、第1の移載ヘッド昇降機構として、上記周知の事項を採用し、カム溝に代えてカム部材から成るものとすることは、当業者が容易に想到し得たことであるといえる。

(4)小括
したがって、上記相違点イ?ハは、当業者が容易に想到し得たものであるといえる。

(5)補足
上述のように、平成18年6月20日付けの手続補正は却下するべきものであるが、仮に、当該手続補正が適法であるとしても、当該手続補正によって補正された請求項1に係る発明は、当業者が容易に発明をすることができたものである。すなわち、移載ヘッドを移載ヘッド保持部に対して昇降自在にすることは、上記(3-1)に記載したように、本願出願前に周知の事項であるし、昇降レールとスライドガイドとの組み合わせにより移載ヘッドを昇降する機構は、刊行物2の【0016】に記載されているように、また、移載ヘッドを上方へ付勢するスプリングを設け、該スプリングの付勢力を利用して移載ヘッドを昇降させることは、特開昭63-173400号公報の第2頁右下欄下3行?第3頁左上欄第4行に記載されるように、それぞれ、本願出願前に周知の事項である。さらに、移載ヘッド保持部と移載ヘッドとの間に昇降ブロックを設けることは、当業者が適宜行う設計事項にすぎない。

7.むすび
以上のとおり、本願発明1は、引用発明、刊行物2に記載の発明及び上記周知の事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、その余の発明について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-19 
結審通知日 2008-05-20 
審決日 2008-06-02 
出願番号 特願2000-331992(P2000-331992)
審決分類 P 1 8・ 572- Z (H05K)
P 1 8・ 121- Z (H05K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 内田 博之  
特許庁審判長 吉水 純子
特許庁審判官 近野 光知
平塚 義三
発明の名称 電子部品実装装置および電子部品実装方法  
代理人 永野 大介  
代理人 内藤 浩樹  
代理人 岩橋 文雄  

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