• ポートフォリオ機能


ポートフォリオを新規に作成して保存
既存のポートフォリオに追加保存

  • この表をプリントする
PDF PDFをダウンロード
審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H04N
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H04N
管理番号 1181589
審判番号 不服2006-23662  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-10-19 
確定日 2008-07-17 
事件の表示 平成 9年特許願第228304号「階調補正方法」拒絶査定不服審判事件〔平成11年 3月 9日出願公開、特開平11- 69161〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成9年8月25日の出願であって、平成18年9月13日付で拒絶査定がされ、これに対し、同年10月19日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに、同年11月20日付けで手続補正がなされたものである。

第2 手続補正の却下
1 補正却下の決定の結論
平成18年11月20日付けの手続補正を却下する。

2 理由
(1) 補正後の本願発明
本件補正後の本願の発明は、平成18年11月20日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された発明(以下、「本願補正発明」という。)は、次のとおりのものである。

「【請求項1】
画像データを濃度データに変換し、前記濃度データに基づいてカラー画像を出力するカラー画像出力装置における階調補正方法であって、
グレー色を生成すべく設定された3色の画像データを3色の濃度データに変換し、前記3色の濃度データに基づいて、補正対象である前記カラー画像出力装置により、階調の異なる複数のテストパッチからなるグレーチャートを作成するステップと、
測色計を用いて前記各テストパッチの測色値を測定により求めるステップと、
測色値を3色の濃度値に変換する予め設定された3次元変換テーブルを用いて、測定により求めた前記各テストパッチの前記測色値を3色の濃度値に変換するステップと、
変換された前記3色の濃度値を3色の目標濃度値とすべく、前記3色の濃度データの階調を各色毎に調整する1次元階調調整テーブルを求めるステップと、
からなり、各色毎の前記1次元階調調整テーブルを用いて前記3色の濃度データの階調を補正することを特徴とする階調補正方法。」

本件補正は、平成18年8月25日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である「・・・前記各テストパッチの測色値を測定により求めるステップ」において、「各テストパッチの測色値」を「測色計を用いて」行うことに限定するとともに、「・・・1次元階調調整テーブルを求めるステップ」で用いられる「各テストパッチの測定値」を「測定により求めた」ものに限定するものであり、かつ、補正後の請求項1に記載された発明は、補正前の請求項1に記載された発明と、産業上の利用分野及び解決しようとする課題が同一であるので、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号の特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当する。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲の請求項に記載された発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法17条の2第5項において準用する同法126条5項の規定に適合するか)について以下に検討する。

(2) 引用例
原査定の拒絶の理由として引用された特開平7-115556号公報(以下、「引用例1」という。)には、次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号等で表示)

ア 「【0002】
【従来の技術】従来、出力されるプリントのグレーバランスやカラーバランスが、環境の変動によりずれてしまった場合、特に多くのカラーパッチを測定してグレーバランスやカラーバランスの色補正を正確に決めている場合には、係数を決め直すのに多大な工数がかかってしまう。この為、簡易的にはグレーパッチやカラーパッチを出力し、目で見てトーン再現カーブ(Tone Reproduction Curve (以下TRCと略す))用のルックアップテーブル(以下LUTと省略する。)の値を調整するあるいはグレーパッチないしカラーパッチに相当するイエロー(Y),マゼンタ(M),シアン(C)量を計算し、グレーパッチやカラーパッチのY,M,Cのずれ量を求めTRCの値を変更する等の方法が行われてきた。
【0003】しかし目で見て、Y、M、C3本(またはY、M、C、K(黒)4本)のトーンカーブを調整し、グレーバランスないしカラーバランスの調整を行うのは非常にむづかしく、調整に時間がかかる。
【0004】またずれたグレーに相当するY、M、C、(K)量を計算し、基準としているY、M、C、(K)との差分からトーンカーブ用LUTを変更する方法では、グレーはある程度改善されるが、Y、M、Cのずれ量とグレーの色ずれ量とは直接対応していないため精度が低い場合があった。」

イ 「【0007】
【実施例】以下、本発明を実施例を参照しながら具体的に説明する。まず、本発明におけるカラー画像形成装置の構成について説明すると、図1に示すように、カラー画像形成装置はカラー画像入力装置2、カラー画像処理装置3、カラー画像出力装置4から構成されており、カラー画像入力装置2にカラー原稿1が入力され、カラー画像出力装置4からプリント5が出力される。
【0008】図2はカラー画像処理装置3の内部構成を示すものであり、6,7,8はRGB信号から等価中性明度信号への変換を行うを行うENL* 処理回路、9,10,11は等価中性明度信号をL* a* b* 表色系の信号L* ,a* ,b* に変換するL* a* b* 変換回路、12,13,14はL* a* b* 信号をイエロー,マゼンタ,シアンの各信号に変換するYMC変換回路、15はYMC信号から墨信号を生成するK信号生成回路、16,17,18は下色除去を行うUCR回路、19?22は階調補正を行うTRC処理回路、23?26は濃度階調を面積階調に変換するディザ処理回路である。
【0009】まず、グレーバランスがずれた場合の調整方法について説明する。
【0010】図2に示すように、カラー画像入力装置2から読み取られたカラー原稿1のRGB信号は、カラー画像処理装置3のENL* 処理回路6?8,L* a* b* 変換回路9?11によりL* a* b* 信号に変換され、さらにYMC変換回路12?14によりYMC信号に変換された後、UCR回路16?18により墨版生成が行われ、ディザ処理回路23?26により中間調補正が行われて画像出力装置4によりプリントされる。画像出力装置4によるプリント5のグレーバランスが基準からずれた場合は、カラー画像処理装置3におけるグレーバランス調整回路のTRC処理回路19?22の係数を書き換えることにより変更される。これによりカラー画像出力装置4の出力信号が変更され、容易にもとの基準のグレーに調整することができる。
【0011】R,G,B信号からL* a* b* 信号への変換係数は、あらかじめ多数のカラーパッチ(数百?数千色)のL* a* b* を測定し、またカラー画像入力装置2によりRGBを読み込んでおき、実測データをもとに最小2乗法により3×3のマトリクス係数として求めておく。L* a* b* 信号から出力のY,M,C信号への変換係数も、画像出力装置4よりYMCを振り分けて、多数のカラーパッチ(数百?数千色)をプリントしておき、L* a* b* を測定し、実測データをもとに最小2乗法により3×3のマトリクス係数として求めておく。
【0012】図3にグレーバランス調整用TRCパラメータの再決定のフローチャートを示す。
【0013】そして画像出力装置によるプリントのグレーバランスが基準からずれた場合、図3の方法によりグレーバランス調整用TRCのパラメータを再決定する。
【0014】図4は本発明の例を示すものである。カラー画像入力装置から読み取られたカラー原稿のRGB信号は、カラー画像処理装置によりL* a* b* 信号に変換され、さらにYMC信号に変換された後、UCR,墨版生成が行われ、画像出力装置によりプリントされる。画像出力装置によるプリントのグレーバランスが基準からずれた場合は、パターンジェネレータ34からグレースケール信号を発生し、グレースケールをプリントする。プリントされたグレースケールはカラー画像入力装置から読み取られ、グレースケールのL* a* b* を算出するため、マルチプレクサ27,28,29により分岐されデータ間引き回路30,31,32によりグレースケール画像の間引きが行われ、RAM33に格納される。RAM33に格納されたグレースケール画像の各ステップのL*'a*'b*'(平均値)がCPU35により算出され、パターンジェネレータ34のL* a* b* と比較され、図3の手順に従ってL*"a*"b*"、YMCが求められ、TRCの係数が書き換えられる。これによりカラー画像出力装置の出力信号が変更され、容易にもとの基準のグレーに調整することができる。」

ウ 【図2】、【図4】には、Y、M、C、Kの各色毎に、UCR回路、TRC処理回路が設けられ、当該TRC処理回路を介して画像出力装置に出力されることが示されている。

エ 【図3】には、グレーバランス調整用TRCの再決定のフローチャートが示されており、このフローチャートにおいて、まず、L*均等(a*=b*=0)ステップのグレースケールを発生させ、画像出力装置よりプリントアウトする。次に、プリントされたグレースケールを画像入力装置で読み取り、読み取られたグレースケールの各ステップのL*’、a*’、b*’(平均値)を求め、L*’’=L*-(L*’-L*)、a*’’=a*-(a*’-a*)、b*’’=b*-(b*’-b*)を算出する。L*’’a*’’b*’’からYMCを算出し、その結果の0?255に対応する数値をTRCのRAMに格納することが示されている。

前掲アないしエの記載及び図面によると引用例1には、

「予め多数のカラーパッチをプリントしておき、L*a*b*信号を測定し、実測データをもとに3×3のマトリクス係数を求めておき、画像入力装置から読み取られたRGB信号からL*a*b*信号に変換し、該L*a*b*信号を、前記3×3のマトリクス係数を用いて、YMC信号に変換し、該YMC信号は、TRC処理回路により階調補正が行われ、カラー画像出力装置によりプリントされるカラー画像形成装置において、グレーバランスが基準からずれた場合に、前記階調補正を行う前記TRC処理回路の係数を書き換えることで調整する方法であって、
パターンジェネレータからL*均等(a*=b*=0)ステップのグレースケール信号を発生させ、グレースケールを前記カラー画像形成装置を構成するカラー画像出力装置によりプリントアウトし、
カラー画像入力装置から、プリントアウトされた前記グレースケールを読み取り、該グレースケールの各ステップのL*’a*’b*’信号がCPUにより算出され、
算出された各ステップのL*’a*’b*’信号と前記パターンジェネレータのL*a*b*信号と比較され、Y、M、Cの各色毎に設けられた前記TRC処理回路のRAMの係数が書き換えられることにより、もとの基準のグレーに調整する方法。」

の発明(以下、「引用発明1」という。)が記載されていると認められる。

原査定の拒絶の理由として引用された特開平6-178095号公報(以下、「引用例2」という。)には、次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号等で表示)

オ 「【0016】なお、本実施例では代表的な濃度値を5個選択しているので、625(5の4乗)個の格子点が存在し、各格子点のCMYKの濃度値に対応した色が印刷されているが、この代表的な濃度値の個数は適宜選択可能である。このような色票1をSTARTで用意して、ステップ1にて、測色計を用いて前記色票1を測定して測色値を得る。本実施例では、表色系として、L* a* b* 色空間を用いるものとする。このL* a* b* 色空間は、色空間内の距離が人間の感覚的な色差によく対応するような均等色空間である。この均等色空間としては他にL* u* v* 色空間があり、このL* u* v* 色空間を用いて色を測定してもよい。
【0017】従って、ステップ1においては、CMYK色の濃度値を4軸とする4次元色立体における各格子点の濃度値で印刷された色がL* a* b* 色空間を用いて表現されることになり、この濃度値と測色値との対応関係が測色値対応テーブル11に記憶される。よって、測色値対応テーブル11には、濃度値(C,M,Y,K)に対応する測色値(L* ,a* ,b* )が、すべての格子点につき記憶されており、この測色値は、図2および図3の処理において、色差eを演算するときに使用されるものである。
【0018】ここで、以下の説明において、無彩色Kの濃度値をKc(一定値)と有彩色CMYの濃度値を0から255までそれぞれ変化させたときに表現される色の空間を「Kc色空間」と表現することにする。
【0019】次にステップ2?ステップ8における処理が行われるが、この処理の概略は、変数Kの値をK0より64ずつ増加させた場合に、ある濃度値(C0,M0,Y0,K0)に対応する測色値と最も色差が小さい濃度値(Ck,Mk,Yk)をK色空間から順次求める処理であり、変数Kの値を順次増加させたときに求められた濃度値(Ck,Mk,Yk)の最小値が0である場合に、その時の変数Kの値が、再現できる濃度値の最大値(後述する図8におけるKx)より大きな値であると考えて、処理を終了するものである。この結果、K成分の濃度値の最大値の範囲が特定されることになる。以下この処理を詳細に説明する。
【0020】まず、ステップ2において、変数Kを濃度値K0で初期化する。例えば、図4に示した濃度値A0の場合は、K=0である。次に、ステップ3において、K=255であれば終了し、K=255でなければ、次のステップに進む。次に、ステップ4において、濃度値(C0,M0,Y0,K0)によって表現される色と同じ色を再現する濃度値を、(K+64)色空間の中から求めるために、変数Kを64増加させる。
【0021】次に、ステップ5において、ステップ1に求めておいた濃度値(C0,M0,Y0,K0)に対応する測色値を、(L* 0,a* 0,b* 0)としたときに、K色空間の中において、以下に示す数式(1)にて演算される色差eを最小とする測色値(L* d,a* d,b* d)を選択して、この測色値を与える格子点を求める。この処理は測色値対応テーブル11を参照して行う。
【数式1】
e=√( (L* 0-L* d)2+ (a* 0-a* d)2+ (b* 0-b* d)2)
・・・(1)式
この時求められた格子点におけるCMYの濃度値を(Cd,Md,Yd)とする。」

(3) 対比
本願補正発明と引用発明1とを対比する。
引用発明1の「RGB信号」、「YMC信号」、「カラー画像形成装置」は、本願補正発明の「画像データ」、「濃度データ」、「カラー画像出力装置」に相当する。また、引用発明1は、「階調補正を行うTRC処理回路の係数を書き換えることで調整する」ものであるから、引用発明1の「調整」は、本願補正発明の「階調補正」に相当するものと認められる。したがって、引用発明1の「RGB信号からL*a*b*信号に変換し、該L*a*b*信号をYMC信号に変換し、該YMC信号は、TRC処理回路により階調補正が行われ、カラー画像出力装置によりプリントされるカラー画像形成装置において、グレーバランスが基準からずれた場合に、前記階調補正を行う前記TRC処理回路の係数を書き換えることで調整する方法」は、本願補正発明の「画像データを濃度データに変換し、前記濃度データに基づいてカラー画像を出力するカラー画像出力装置における階調補正方法」に相当する。
引用発明1には、「グレースケール信号」をプリントアウトする際にYMC信号に変換することに関する明確な記載はないが、引用例1の段落【0014】に記載されているように、プリントは、L*a*b*信号をYMC信号に変換して後、行われるものであるから、「L*均等(a*=b*=0)ステップのグレースケール信号」をプリントアウトする際にも、当然、YMC信号に変換するものと認められる。また、引用発明1における「グレースケール信号」は「L*均等(a*=b*=0)ステップ」であることが記載されているから、「グレースケール信号」は、グレーであるとともに、本願補正発明と同様、「階調の異なる複数のテストパッチ」から構成されているものと認められる。さらに、引用発明1の、プリントアウトされた「グレースケール」は、本願補正発明の「グレーチャート」に相当する。したがって、引用発明1の「パターンジェネレータからL*均等(a*=b*=0)ステップのグレースケール信号を発生させ、グレースケールを前記カラー画像形成装置を構成するカラー画像出力装置によりプリントアウトし」との記載は、本願補正発明の「3色の濃度データに基づいて、補正対象であるカラー画像出力装置により、階調の異なる複数のテストパッチからなるグレーチャートを作成するステップ」に相当する。
引用発明1の「プリントアウトされたグレースケールを読み取り、該グレースケールの各ステップのL*’a*’b*’がCPUにより算出され」る点は、本願補正発明の「各テストパッチの測色値を・・・求めるステップ」に相当する。
引用発明1のY、M、Cの各色毎に設けられた「前記TRC処理回路のRAM」は、本願補正発明の「1次元階調調整テーブル」に相当する。したがって、引用発明1の「Y、M、Cの各色毎に設けられた前記TRC処理回路のRAMの係数が書き換えられること」は、本願補正発明「3色の濃度データの階調を各色毎に調整する1次元階調調整テーブルを求めるステップ」に相当する。
引用発明1は「YMC信号は、TRC処理回路により階調補正が行われ、カラー画像出力装置によりプリントされるカラー画像形成装置において、グレーバランスが基準からずれた場合に、前記階調補正を行う前記TRC処理回路の係数を書き換えることで調整する」ものであるから、当該調整後は、調整されたTRC処理回路の係数を用いてプリント処理を行うのは当然であり、引用発明1には、本願補正発明の「各色毎の1次元階調調整テーブルを用いて3色の濃度データの階調を補正する」ことに相当する構成の存在が認められる。

以上を踏まえると、両者の一致点、相違点は以下のとおりである。

【一致点】
画像データを濃度データに変換し、前記濃度データに基づいてカラー画像を出力するカラー画像出力装置における階調補正方法であって、
3色の濃度データに基づいて、補正対象である前記カラー画像出力装置により、階調の異なる複数のテストパッチからなるグレーチャートを作成するステップと、
前記各テストパッチの測色値を求めるステップと、
3色の濃度データの階調を各色毎に調整する1次元階調調整テーブルを求めるステップと、
からなり、各色毎の前記1次元階調調整テーブルを用いて前記3色の濃度データの階調を補正することを特徴とする階調補正方法階調補正方法。

【相違点】
a 本願補正発明が「グレー色を生成すべく設定された3色の画像データを3色の濃度データに変換」するものであるのに対し、引用発明1では、パターンジェネレータからL*均等(a*=b*=0)ステップのグレースケール信号を発生させるものである点。

b 「各テストパッチの測色値を求める」際に、本願補正発明では「測色計を用いて」「測定により」求めるものであるのに対し、引用発明1では、カラー画像入力装置から読み取り、測色値であるL*a*b*信号を算出するものである点。

c 「濃度データの階調を各色毎に調整する」際に、本願補正発明は「測色値を3色の濃度値に変換する予め設定された3次元変換テーブルを用いて、測定により求めた各テストパッチの前記測色値を3色の濃度値に変換するステップ」を有し、「変換された前記3色の濃度値を3色の目標濃度値とすべく」調整するものであるのに対し、引用発明1では、予め多数のカラーパッチをプリントしておき、L*a*b*信号を測定し、実測データをもとに3×3のマトリクス係数をもとめておき、前記L*a*b*信号を、前記3×3のマトリクス係数を用いて、YMC信号に変換するものであって、グレースケールの各ステップのL*’a*’b*’信号とパターンジェネレータのL*a*b*信号とを比較されることで、もとの基準のグレーに調整するものである点。

(4) 当審の判断
まず、上記相違点aについて検討する。引用発明1は、パターンジェネレータにL*a*b*信号として用意されたグレースケール信号を用いているが、RGB信号、L*a*b*信号、YMC信号などの、どの段階の信号で用意しておくかは、当業者が適宜採用し得る設計的な事項であって、引用発明1において、L*a*b*信号で用意しておく、特段の事由は認められない。したがって、引用発明1において、L*a*b*信号に代えて、画像データであるRGB信号として、グレースケール信号を用意しておくことは、当業者が容易になし得たことである。

次に、上記相違点bについて検討する。テストパッチを測色する際に、測色計を用いることは、引用例2や特開平9-9086号公報(特に、段落【0014】参照)等に記載されているように、当該技術分野において周知技術にすぎない。したがって、引用発明1において、測色値であるL*a*b*信号を、カラー画像入力装置に代えて、「測色計を用いて」「測定により」求めるような構成することは、当業者が容易になし得たことである。

さらに、上記相違点cについて検討する。測色値と濃度値との変換を、変換テーブルを用いて行うことは、引用例2や特開平9-9086号公報(特に、段落【0015】?【0047】参照)等に記載されているように、当該技術分野において周知技術にすぎない。また、調整を、測色値であるL*a*b*信号の段階で行うか、測色値を変換した濃度値の段階で行うかは、当業者が適宜採用し得る設計的な事項であって、引用発明1において、L*a*b*信号の段階で行う、特段の事由は認められない。したがって、引用発明1において、L*a*b*信号をYMC信号に変換する際に、3×3のマトリクス係数を用いて変換することに代えて、3次元の変換テーブルを用いて変換し、濃度値に変換された前記3色の濃度値で、もとの基準のグレーに調整、つまり3色の目標濃度値とすべく調整することは、当業者が容易になし得たことである。

そして、これら相違点を総合的に考慮してみても当業者が推考し難い格別のものであるとすることはできず、本願補正発明の奏する効果を検討してみても、引用例1、2に記載された発明及び周知技術それ自体の効果であって各相違点の組合せによって新たな効果を奏するものではない。

したがって、本願補正発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(5) むすび
以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するので、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

第3 本願発明について
1 本願発明
平成18年11月20日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年8月25日付けで補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された以下のとおりのものである。

「【請求項1】
画像データを濃度データに変換し、前記濃度データに基づいてカラー画像を出力するカラー画像出力装置における階調補正方法であって、
グレー色を生成すべく設定された3色の画像データを3色の濃度データに変換し、前記3色の濃度データに基づいて、補正対象である前記カラー画像出力装置により、階調の異なる複数のテストパッチからなるグレーチャートを作成するステップと、
前記各テストパッチの測色値を測定により求めるステップと、
測色値を3色の濃度値に変換する予め設定された3次元変換テーブルを用いて、前記各テストパッチの前記測色値を3色の濃度値に変換するステップと、
変換された前記3色の濃度値を3色の目標濃度値とすべく、前記3色の濃度データの階調を各色毎に調整する1次元階調調整テーブルを求めるステップと、
からなり、各色毎の前記1次元階調調整テーブルを用いて前記3色の濃度データの階調を補正することを特徴とする階調補正方法。」

2 引用例
引用例1、2及びその記載事項は、前記「第2 2 (2)」の項で認定したとおりである。

3 対比・判断
本願発明は、上記「第2 補正却下の決定」で検討した本願補正発明から「前記各テストパッチの測色値を測定により求めるステップ」の限定事項である「測色計を用いて」との構成を省き、「・・・1次元階調調整テーブルを求めるステップ」の限定事項である「各テストパッチの測定値」が「測定により求めた」ものであるとの構成を省いたものである。
そうすると、本願発明の構成要件をすべて含み、さらに他の構成要件を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「第2 2 (4)」に記載したとおり、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例1、2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-15 
結審通知日 2008-05-20 
審決日 2008-06-03 
出願番号 特願平9-228304
審決分類 P 1 8・ 575- Z (H04N)
P 1 8・ 121- Z (H04N)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 西山 昇伊藤 隆夫  
特許庁審判長 原 光明
特許庁審判官 板橋 通孝
廣川 浩
発明の名称 階調補正方法  
代理人 千葉 剛宏  
代理人 宮寺 利幸  
代理人 田久保 泰夫  
代理人 鹿島 直樹  

プライバシーポリシー   セキュリティーポリシー   運営会社概要   サービスに関しての問い合わせ