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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B22F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 B22F
管理番号 1182087
審判番号 不服2006-28032  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-13 
確定日 2008-07-31 
事件の表示 平成 8年特許願第164995号「射出成形体の脱脂方法」拒絶査定不服審判事件〔平成10年 1月13日出願公開、特開平10- 8104〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第一 手続の経緯
本件審判に係る出願は、平成8年6月25日に出願されたものであって、その願書に添付した明細書又は図面についての平成18年9月1日付け手続補正がなされた後、平成18年11月9日付けで拒絶査定されたものである。
この拒絶査定を不服として、平成18年12月13日付けで本件審判請求がなされ、平成19年1月10日付けで手続補正がなされた。

第二 平成19年1月10日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成19年1月10日付けの手続補正を却下する
[決定の理由]
1.平成19年1月10日付けの手続補正(以下、「本件補正」と言う。)の内容
本件補正は、以下の補正事項aを有するものと認める。
補正事項a;【特許請求の範囲】の【請求項1】、【請求項5】の記載につき(以下、補正部分に下線を引いた。)、
(補正前)「【請求項1】 金属粉末と結合材とを含む組成物を用い、射出成形して得られた成形体を炉内で加熱して脱脂処理を行う射出成形体の脱脂方法において、
前記炉内に非酸化性ガスよりなるキャリアガスを供給しつつ脱脂を行う第1の工程と、
前記炉内に前記キャリアガスを供給しつつ、前記第1の工程での処理温度よりも高い温度で脱脂を行う第2の工程と、
前記第2の工程の後、前記炉内に少量の前記キャリアガスを供給しつつ成形体を冷却する第3の工程とを有し、
前記第1の工程における処理温度が80?280℃であり、
前記第2の工程における処理温度が300?600℃であり、
前記第2の工程における前記キャリアガスの供給量が、前記第1の工程における前記キャリアガスの供給量の2?30倍であり、
前記第3の工程における前記キャリアガスの供給量が、前記第2の工程における前記キャリアガスの供給量の0.05?0.5倍であることを特徴とする射出成形体の脱脂方法。」

「【請求項5】前記第1の工程と前記第2の工程の少なくとも一方において、炉内を攪拌しつつ脱脂を行う請求項1ないし4のいずれかに記載の射出成形体の脱脂方法」
とあるのを、

(補正後)「【請求項1】 金属粉末と結合材とを含む組成物を用い、射出成形して得られた成形体を炉内で加熱して脱脂処理を行う射出成形体の脱脂方法において、
前記炉内に非酸化性ガスよりなるキャリアガスを供給しつつ脱脂を行う第1の工程と、
前記炉内に前記キャリアガスを供給しつつ、前記第1の工程での処理温度よりも低い温度で脱脂を行う第2の工程と、
前記第2の工程の後、前記炉内に少量の前記キャリアガスを供給し、分解ガスの再付着を防止するとともに成形体を冷却する第3の工程とを有し、
前記第1の工程、前記第2の工程、および、前記第3の工程において、攪拌装置により、前記炉内の前記キャリアガスを攪拌し、
前記第1の工程における処理温度が80?280℃であり、
前記第2の工程における処理温度が300?600℃であり、
前記第2の工程における前記キャリアガスの供給量が、前記第1の工程における前記キャリアガスの供給量の2?30倍であり、
前記第3の工程における前記キャリアガスの供給量が、前記第2の工程における前記キャリアガスの供給量の0.05?0.5倍であることを特徴とする射出成形体の脱脂方法。」と補正するものである。

すなわち、補正事項aは、補正前の請求項1を削除し、補正前に請求項1を引用し従属形式で記載された請求項5を補正後独立形式で記載し直し、請求項1とするとともに、さらに以下の(1)、(2)の補正を含むものである。
(1)補正前の「前記第2の工程の後、前記炉内に少量の前記キャリアガスを供給し、成形体を冷却する第3の工程」を、
補正後の「前記第2の工程の後、前記炉内に少量の前記キャリアガスを供給し、分解ガスの再付着を防止するとともに成形体を冷却する第3の工程」とする補正。

(2)補正前の請求項5の「前記第1の工程と前記第2の工程の少なくとも一方において、炉内を攪拌しつつ脱脂を行う」を、
補正後の「前記第1の工程、前記第2の工程、および、前記第3の工程において、攪拌装置により、前記炉内の前記キャリアガスを攪拌し、」
とする補正。

2.本件補正の判断
補正事項aについて検討すると、特許法第17条の2第4項第1?4号に掲げるいずれの事項をも目的とするものとはいえない。以下に補足する。

(1)の補正は、「キャリアガスを供給し、成形体を冷却する第3の工程」
との発明の特定事項に対し、「分解ガスの再付着を防止する」との事項を付加するものであるが、補正前の発明特定事項について概念的により下位の発明特定事項とするためのものとはいえないから、特許法第17条の2第4項の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとはいえない。

(2)の補正は、「前記第1の工程と前記第2の工程」において、「炉内を攪拌しつつ脱脂を行う」という発明の特定事項に対し、「第3の工程において、攪拌装置により・・・攪拌し」との事項を付加するものであるが、補正前の発明特定事項について概念的により下位の発明特定事項とするためのものとはいえないから、特許法第17条の2第4項の特許請求の範囲の限定的減縮を目的とするものとはいえない。

なお、補正前の「前記第1の工程での処理温度よりも高い温度で脱脂を行う第2の工程」を、補正後の「前記第1の工程での処理温度よりも低い温度で脱脂を行う第2の工程」とする補正は、「第1の工程における処理温度が80?280℃であり、前記第2の工程における処理温度が300?600℃」の構成があるから、「高い温度」の誤記であることは、明白である。

してみると、上記補正事項aは、特許請求の範囲の減縮を目的とするものに該当しない。また、請求項の削除、誤記の訂正、明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないことは明白である。
そうすると、当該補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものといえる。

3.まとめ
したがって、補正事項aを有する本件補正は、特許法第17条の2第4項の規定に違反するものであり、同法第159条の規定により読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

第三 本願発明について
1.本願発明
平成19年1月10日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願発明は、平成18年9月1日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1?8に記載された事項により特定されるとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、以下のとおりのものである。

「【請求項1】 金属粉末と結合材とを含む組成物を用い、射出成形して得られた成形体を炉内で加熱して脱脂処理を行う射出成形体の脱脂方法において、
前記炉内に非酸化性ガスよりなるキャリアガスを供給しつつ脱脂を行う第1の工程と、
前記炉内に前記キャリアガスを供給しつつ、前記第1の工程での処理温度よりも高い温度で脱脂を行う第2の工程と、
前記第2の工程の後、前記炉内に少量の前記キャリアガスを供給しつつ成形体を冷却する第3の工程とを有し、
前記第1の工程における処理温度が80?280℃であり、
前記第2の工程における処理温度が300?600℃であり、
前記第2の工程における前記キャリアガスの供給量が、前記第1の工程における前記キャリアガスの供給量の2?30倍であり、
前記第3の工程における前記キャリアガスの供給量が、前記第2の工程における前記キャリアガスの供給量の0.05?0.5倍であることを特徴とする射出成形体の脱脂方法。」

2.原査定の拒絶理由の概要
原査定の拒絶理由の概要は、以下のとおりである。

この出願の請求項1?8に係る発明は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

1.特開平2- 9772号公報
2.特開平8-81702号公報

3.当審の判断
(1)刊行物1、2の記載事項と引用発明
刊行物1には、「セラミツク成形品の脱脂法」(発明の名称)に関して、以下の事項が記載されている(明瞭化のため適宜下線を引いた。)。
(1a)
「また、炉内の雰囲気を形成する気体の供給量については、供給量が適正であれば、第13図(a)?(d)に示すように、有機結合剤の分解ガス30は雰囲気中に拡散し、雰囲気の更新とともに炉外に排出される。しかしながら、供給量が少ない場合には、第13図(e)?(g)に示すように、炉内の雰囲気が分解ガス30で飽和し、セラミック成形品20の表面付近では分解ガス30への移行が進まず、有機結合剤がタール化31して硬化し、セラミック成形品20の内部で発生している分解ガス30のガス圧力を抜くことができず、ついにはセラミック成形品20が破壊されるという問題が発生する。」(2頁右上欄9行?左下欄1行)

刊行物2には、「粉末射出成形品の脱脂方法および脱脂装置」(発明の名称)に関して、図2とともに以下の事項が記載されている。
(2a)
「【0017】
【実施例】次に、本発明による粉末射出成形品の脱脂方法および脱脂装置の具体的実施例について図面を参照しつつ説明する。
【0018】(実施例1)粉末材料として、炭素含量が0.01重量%、酸素含量が0.2重量%で平均粒径が4.5μmの球状鉄粉が用いられる。この球状鉄粉にバインダ成分として、この球状鉄粉に対して6重量部のポリエチレン、3重量部のパラフィンワックス、および1重量部の可塑剤としてのジブチルフタレートが添加され、加圧ニーダにより170℃で1時間混練される。
【0019】このようにして得られる混練物が冷却後粉砕され、スクリュー式射出成形機により成形温度170℃、成形圧力1200kg/cm^(2)で図1(a)に示されているような直径3mm,長さ30mmの円筒状部分と直径7mm,長さ20mmの円筒状部分とからなる試験体(射出成形グリーン体)1が成形される。
【0020】この試験体1に、図2に示されている脱脂装置2を用いて脱脂処理を施される。この脱脂装置2は、炉3の内部に図面において左右方向に軸線を有する略円筒状のチャンバー4が配されてなる。このチャンバー4内に鉄板5が4隅に黒鉛棒の柱6を立てることにより図2に示されているように4段重ねられる。この鉄板5には複数の穴が設けられており、この穴に前記試験体1が図1(b)で示されているように差し込まれる。そして、この試験体1は、それぞれの間隔が3mmとなるように鉄板5の上に千鳥状に配列される。
【0021】次に、ガス供給管7からチッ素ガスを導入することにより炉3の内部をチッ素パージしつつ炉3の壁面に設けられている赤外線ヒータ8により炉内が室温から150℃までを5℃/時間、150℃から380℃までを7℃/時間で昇温され、380℃で1時間保持後に冷却される。この際、ファン9が200rpmで回転されチャンバー4のそのファン9に近い側に負圧が生じることにより、チッ素ガスと試験体1から出てくるバインダガスとの混合気体がチャンバー4内を風速0.27m/secで流れる。
【0022】このような脱脂処理の後に、脱脂体(脱脂後の試験体1)を別の炉において真空雰囲気中で1250℃まで昇温し、1時間保持後、チッ素ガスで冷却され、焼結体が得られる。」

上記刊行物2には、(2a)の段落0017?20の記載によれば、「球状鉄粉とバインダ成分とを含む粉末材料を用い、スクリュー式射出成形機により成形された射出成形グリーン体を、炉の内部で、処理する粉末射出成形品の脱脂方法」が記載されているといえる。

そして、上記脱脂方法は、(2a)の段落0021の記載の以下の工程を有するものであるといえる。
「チッ素ガスを導入することにより炉の内部をチッ素パージしつつ、
(1)炉内が室温から150℃までを5℃/時間、
(2)150℃から380℃までを7℃/時間で昇温され、380℃で 1時間保持後に
(3)冷却される。」

以上の記載及び認定事項を、本願発明の記載ぶりに沿って整理すると、刊行物2には、以下の発明が記載されているといえる。
「球状鉄粉とバインダ成分とを含む粉末材料を用い、スクリュー式射出成形機により成形された射出成形グリーン体を、炉の内部で加熱して、処理する粉末射出成形品の脱脂方法において、
チッ素ガスを導入することにより炉の内部をチッ素パージしつつ、
(1)炉内が室温から150℃までを5℃/時間、
(2)150℃から380℃までを7℃/時間で昇温され、380℃で 1時間保持後に
(3)冷却される粉末射出成形品の脱脂方法。」(以下、「引用発明」という。)

(2)本願発明と引用発明との対比
本願発明と引用発明とを対比すると、
引用発明の「球状鉄粉」、「バインダ成分」、「粉末材料」は、それぞれ、本願発明の「金属粉末」、「結合材」、「組成物」に相当するから、
引用発明の「球状鉄粉とバインダ成分とを含む粉末材料」は、
本願発明の「金属粉末と結合材とを含む組成物」に相当するといえる。

また、引用発明における「窒素ガス」は、本願発明における「非酸化性ガスよりなるキャリアガス」に相当するものである。

そして、引用発明における「チッ素ガスを導入することにより炉の内部をチッ素パージしつつ、(1)炉内が室温から150℃までを5℃/時間」で昇温し、脱脂を行う工程は、処理温度の範囲を室温から150℃とするものであり、本願発明の第1の工程における処理温度80?280℃と重複し、80?150℃において一致するものであるから、この(1)の工程は、本願発明の「前記炉内に非酸化性ガスよりなるキャリアガスを供給しつつ脱脂を行う第1の工程」及び「前記第1の工程における処理温度が80?150℃」とすることに相当するといえる。

そして、引用発明の「(2)150℃から380℃までを7℃/時間で昇温され、380℃で1時間保持」することにおいて、上記(1)と同様にチッ素ガスを導入していることは、上記段落0021の後段の記載から明白であり、この(2)の工程における処理温度の範囲を150℃から380℃とすることは、本願発明の第2の工程における処理温度300?600℃と重複し、300?380℃で一致するものであるから、この(2)の工程は、
本願発明の「前記炉内に前記キャリアガスを供給しつつ、前記第1の工程での処理温度よりも高い温度で脱脂を行う第2の工程」及び「前記第2の工程における処理温度が300?380℃」とすることに相当するといえる。

そして、引用発明の「射出成形グリーン体」は、本願発明の「成形体」に相当し、「(3)冷却される」工程は、(2)の工程の後に行う工程であり、射出成形グリーン体を冷却する工程であるから、本願発明の「前記第2の工程の後、成形体を冷却する第3の工程」に相当するといえる。

ゆえに、引用発明と本願発明は、以下の点で一致し、相違する。
(一致点)
「金属粉末と結合材とを含む組成物を用い、射出成形して得られた成形体を炉内で加熱して脱脂処理を行う射出成形体の脱脂方法において、
前記炉内に非酸化性ガスよりなるキャリアガスを供給しつつ脱脂を行う第1の工程と、
前記炉内に前記キャリアガスを供給しつつ、前記第1の工程での処理温度よりも高い温度で脱脂を行う第2の工程と、
前記第2の工程の後、成形体を冷却する第3の工程とを有し、
前記第1の工程における処理温度が80?150℃であり、
前記第2の工程における処理温度が300?380℃である射出成形体の脱脂方法。」

(相違点1)
本願発明は、「前記炉内に少量の前記キャリアガスを供給しつつ成形体を冷却する第3の工程」を備えているのに対して、
引用発明は、「(3)冷却される」工程に、このような構成を備えていない点。

(相違点2)
本願発明は、「前記第2の工程における前記キャリアガスの供給量が、前記第1の工程における前記キャリアガスの供給量の2?30倍であり、
前記第3の工程における前記キャリアガスの供給量が、前記第2の工程における前記キャリアガスの供給量の0.05?0.5倍である」という構成を備えているのに対して、
引用発明では、このような構成を備えていない点。

(3)相違点の判断
相違点1について
刊行物2には、「【0022】このような脱脂処理の後に、脱脂体(脱脂後の試験体1)を別の炉において真空雰囲気中で1250℃まで昇温し、1時間保持後、チッ素ガスで冷却され、焼結体が得られる。」と、少なくとも、焼結体が得られる炉において、チッ素ガスで冷却することが記載されている。
この冷却方法は、上記焼結体が得られる炉に限らず、他の炉の冷却にも
適用できることは、明白であるから、引用発明の(3)の工程においても、チッ素ガスで冷却すべく、炉内に、適当に少量の、チッ素ガスを供給しつつ、成形体が「(3)冷却される」ようにすることは、当業者であれば適宜なし得たことである。

相違点2について
刊行物1の(1a)の「また、炉内の雰囲気を形成する気体の供給量については、供給量が適正であれば、第13図(a)?(d)に示すように、有機結合剤の分解ガス30は雰囲気中に拡散し、雰囲気の更新とともに炉外に排出される。しかしながら、供給量が少ない場合には、第13図(e)?(g)に示すように、炉内の雰囲気が分解ガス30で飽和し、セラミック成形品20の表面付近では分解ガス30への移行が進まず・・・」との記載によれば、炉内の雰囲気を形成する気体の供給量は、有機結合剤の分解ガスが多くなれば、これを雰囲気中に拡散させるため、多くする必要があることは明白であり、金属粉末を含む射出成形の脱脂方法についても同様といえる。

引用発明では、要するに、
チッ素ガスを導入することにより炉3の内部をチッ素パージしつつ、
(1)炉内が室温から150℃までを5℃/時間の工程でゆっくり昇温し、
(2)150℃から380℃までを7℃/時間で急速昇温し、380℃の 高温で1時間保持し、脱脂している。
その際、バインダガスは(1)の昇温工程よりも、(2)の高温、脱脂工程において多く発生することは、明白であるから、これを窒素パージするためにも、上記刊行物1の記載のように、分解ガスを雰囲気中に拡散させるためにも、(2)の工程における窒素ガスの供給量を、(1)の工程における供給量に比べ多く(適宜の倍率に)することは、当業者であれば適宜なし得たことである。
そして、キャリアガスの供給量の倍率につき、本願明細書の段落0054?56、63?64、段落0088の表2を見ても、倍率値に臨界的意義は認められない。

さらに、本願明細書段落0056に「具体的には、キャリアガスの供給量は、炉1の容量が2?8m^(3)の場合、好ましくは100?400リットル/分程度、より好ましくは150?350リットル/分程度とすることができる。この好適な供給量は、炉1の容量に応じて増減する。」とあるように、炉の容量や、結合材の分解ガスの発生程度等様々な条件により供給量の絶対量が定められなければならないのであり、単に「第2の工程における前記キャリアガスの供給量が、前記第1の工程における前記キャリアガスの供給量の2?30倍」と倍率だけを定めても、格別の効果が生じるとは一概にいえない。

また、「前記第3の工程における前記キャリアガスの供給量が、前記第2の工程における前記キャリアガスの供給量の0.05?0.5倍である」点についても、倍率の値の臨界的意義は認められず、また上記と同様である。

したがって、相違点2のキャリアガスの供給量の倍率の値に関する点は、引用発明において、当業者が適宜定め得たことである。

4.むすび
以上のとおり、本願発明は、刊行物1、2に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。したがって、本願の他の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-30 
結審通知日 2008-06-03 
審決日 2008-06-16 
出願番号 特願平8-164995
審決分類 P 1 8・ 572- Z (B22F)
P 1 8・ 121- Z (B22F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 米田 健志浅井 雅弘  
特許庁審判長 山田 靖
特許庁審判官 山本 一正
近野 光知
発明の名称 射出成形体の脱脂方法  
代理人 増田 達哉  

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