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審判番号(事件番号) データベース 権利
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不服200414570 審決 特許
不服20051648 審決 特許
不服200513231 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1182129
審判番号 不服2005-16538  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-08-29 
確定日 2008-07-30 
事件の表示 特願2002- 28611「光ディスク再生方法及び装置」拒絶査定不服審判事件〔平成14年12月 6日出願公開、特開2002-352441〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本件審判の請求に係る特許願(以下「本願」という。)は、平成14年2月5日(パリ条約による優先権主張 2001年5月19日 韓国)に出願されたものであって、本願請求項1?17に係る各発明は、平成17年9月27日付け手続補正によって補正された明細書の特許請求の範囲の記載から、特許請求の範囲の請求項1?17に記載された事項により特定されるものと認められるところ、請求項8に係る発明は以下のとおりである。
「【請求項8】 光ディスクの記録面から反射された光ビームを前記光ディスクのラジアル方向に対応する方向に中心光領域及びその外側光領域に区分して検出する光分割/検出ユニットと、
前記中心光領域に対する第1検出信号及び/または少なくとも一方の外側光領域に対する第2検出信号の大きさを調整し、少なくとも一方の大きさが調整された第1及び第2検出信号を互いに差動して再生信号を検出する信号処理部とを含み、
前記光ディスクは、所望のトラックを追従するために形成されたガイド溝を備え、前記ガイド溝の構造によってトラックの幅が変わることを特徴とする光ディスク再生装置。」(以下「本願発明」という。)


2.刊行物及びその記載
これに対して、原査定の拒絶の理由で引用された特開平11-283252号公報(平成11年10月15日公開 以下「刊行物1」という。)は、光学式記録媒体から記録情報を読み取る際に、隣接する記録トラックに記録された記録情報からの漏れ込み(クロストーク)の影響を低減することを可能とする読取信号生成装置に関する発明についてのもので、以下の記載がある。
(1)「【特許請求の範囲】
【請求項1】記録情報を担うピット列が記録された光学式記録媒体に照射した読取光の当該光学式記録媒体からの反射光の光路中に配されて、前記反射光の光束のほぼ中央部と当該中央部以外の部分とに分離する反射光分離手段と、前記反射光分離手段を介して供給される反射光のうち前記中央部を受光する第1の受光手段と、前記反射光分離手段を介して供給される反射光のうち前記中央部以外の部分を受光する第2の受光手段と、前記第1の受光手段の出力と前記第2の受光手段の出力との差分を演算する演算手段とを備え、前記演算手段の出力を読取信号とする読取信号生成装置。
【請求項2】前記反射光分離手段は、透明基板上の前記反射光の光束の略中央部に相当する位置に全反射ミラーを形成してなり、前記第1の受光手段は前記全反射ミラーで反射された前記中央部を受光すると共に、前記第2の受光手段は、前記透明基板を透過した光束を受光することを特徴とする請求項1に記載の読取信号生成装置。
【請求項3】【請求項4】・・・(省略)・・・。」
(2)「【0002】
【従来の技術】CD-ROM等の光ディスクに代表される光学式記録媒体は、その記録容量が大きいことや経年変化等に対する記録信号品質の信頼性が高いこと等から、画像データや音楽データは勿論のこと、コンピュータにおけるアプリケーションソフトウェアを担うプログラムデータ等、あらゆる種類の情報データを記録可能な、いわゆるマルチメディアとしての利用が盛んである。
【0003】最近では、例えば、取り扱う画像データが、静止画から動画へ移行していること等からも明らかな通り、取り扱う情報量が増大する傾向にある。このため、光学式記録媒体並びにその記録/再生装置には、より一層の記録の高密度化が要求されている。
【0004】高密度記録を実現する一方法として、トラックピッチを狭くすることが考えられる。しかしながら、トラックピッチを狭くすると、記録媒体から記録情報を読み取る際に、所望のトラックに隣接するトラックに記録された記録情報からの漏れ込み、すなわち、クロストークが、無視できなくなるほど増大してしまうという問題がある。
【0005】かかるクロストーク成分(隣接トラックからの反射光成分)は、所望トラックを形成するピット列からの反射光束の全体に均一に分布するのではなく、反射光束の中央部に集中して回折する性質があることが知られている。例えば、反射光束の中央部を反射光量全体の20%の光量を担う部分としたとき、かかる中央部には反射光束中に含まれるクロストーク成分全体の50%が含まれることが判っている。なお、ここで言う光束の中央部とは、トラック接線方向に対して垂直な方向に分布する当該光束の中央部の帯状の領域であって、例えば全反射光量の20%の光量に相当する部分を指す(以下、同じ)。」
(3)「【0011】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、記録情報を担うピット列が複数列記録された光学式記録媒体に照射した読取光の当該光学式記録媒体からの反射光の光路中に配されて、前記反射光の光束のほぼ中央部と当該中央部以外の部分とに分離する反射光分離手段と、前記反射光分離手段を介して供給される反射光のうち前記中央部を受光する第1の受光手段と、前記反射光分離手段を介して供給される反射光のうち前記中央部以外の部分を受光する第2の受光手段と、前記第1の受光手段の出力と前記第2の受光手段の出力との差分を演算する演算手段とを備えてなる。
【0012】請求項1に記載の発明の作用によれば、記録情報を担うピット列が複数列記録された光ディスクからの反射光の光束の略中央部に相当する透明基板上の位置に配された反射光分離手段は、上記光束をその略中央部とそれ以外の部分とに分離する。第1の受光手段は、分離された上記反射光束のうちの略中央部を受光する。また、第2の受光手段は、分離された上記光束の中央部以外の周辺部分を受光する。そして、演算手段は上記第1の受光手段からの出力と第2の受光手段からの出力との差分をとる演算を行い、この演算結果を読取信号として出力する。
【0013】したがって、差分演算によって、光束の中央部に存在するクロストーク成分とそれ以外の周辺部分に存在するクロストーク成分とが相殺されることになり、クロストーク成分を除去することができる。この際、中央部に存在するクロストーク成分と周辺部に存在するクロストーク成分の割合を同一にすれば、演算手段の出力からクロストーク成分を完全に除去することができ、S/Nの良い読取信号が得られる。」
(4)「【0022】
【発明の実施の形態】次に本発明に好適な実施の形態について図1乃至図4を参照して説明する。図1は本発明の第1の実施の形態である読取信号生成装置の構成を示す図である。なお、図9で示した各構成要件と同一の要件には同一の符号を付す。
【0023】図1において、ピックアップ20は、対物レンズ201、ビームスプリッタ202、コリメータレンズ203、レーザダイオード204、反射光分離素子215、集光レンズ206、第2の受光手段としての光検出器207、集光レンズ208、第1の受光手段としての光検出器209とからなり、光検出器207、209で受光した受光信号は、受光信号間の差分演算を行う演算手段としての演算器(ヘッドアンプHA)30に供給される。
【0024】反射光分離素子215は、光ディスク1で反射した反射光束Bの光軸L上に、かかる光軸Lとは角度θの傾きをもって対面する断面Sを有するように配された例えばガラス等の透明材料で形成される立方体形状の光学素子であって、上記断面S上に、光ディスク1のトラック接線方向と光学的に平行な方向に亘る幅W’の帯状領域に全反射ミラーcを形成したものである。図2は反射光分離素子215を図1に示す線分a-bを含む上記断面Sの反射光束Bの入射方向から見た正面図である。反射光分離素子215は、入射する光ディスク1からの反射光束Bの光軸Lを含む略中央部を全反射ミラーcによって反射して集光レンズ208を介して光検出器209に入射せしめると共に、反射光束Bの残りの周辺部分を集光レンズ206を介して光検出器207に入射せしめる。かかる反射光分離素子215は、ビームスプリッタ202によって形成される光ディスク1からの反射光の光軸Lに対して上記断面Sがある傾斜角度θ(例えば45度)を有するように配されている。
【0025】ここで、幅W’は上記傾斜角度をθとすると、W’=W/cos(θ)で与えられる。つまり、全反射ミラーの反射光束に対する有効幅が図10に示した従来の遮蔽板205におけるマスキング部の幅Wと同一となるように設計されており、例えば反射光束の光量の約20%に相当する光量を担う光束を光検出器209に向けて反射する。
【0026】上記した光検出器207,209は、入射した反射光をその受光量に比例した電流信号に変換して、演算器30に出力する。
【0027】演算器30は、各光検出器207,209から供給された信号の減算処理を行うと共に演算結果を所定の増幅率で増幅し、光ディスク1からの読取信号である高周波信号(RF信号)として、図示しない後段の復調回路等に出力する。
【0028】図3に演算器30の構成例を示す。演算器30は、差動アンプDAとバッファアンプBA1、BA2と、I/V(電流/電圧)変換用抵抗器R35、R36とによって構成される。差動アンプDAは、オペアンプOAと、かかるオペアンプOAの反転入力端子に接続される抵抗器R31、R32と、オペアンプOAの非反転入力端子に接続される抵抗器R33、R34とから構成される。抵抗器R32の他端はオペアンプOAの出力端子と接続され、抵抗器R34の他端は接地されている。抵抗器R31並びに抵抗器R33の他端はそれぞれ差動アンプDAの入力端子となり、抵抗器R31がバッファアンプBA1及び抵抗器R36を介して端子Bに接続されると共に、抵抗器R33がバッファアンプBA2及び抵抗器R35を介して端子Aに接続される。また、端子Aには光検出器207から出力された電流信号が供給され、端子Bには、光検出器209から出力された電流信号が供給される。
【0029】以上の構成において、端子Aに光検出器207から電流信号が供給されると、かかる電流信号は抵抗器R35によって電圧信号に変換された後、バッファアンプBA2を介して差動アンプDAを構成する一方の入力端子となる抵抗器R33に供給される。
【0030】一方、端子Bに光検出器209から電流信号が供給されると、この電流信号は、抵抗器R36によって電圧信号に変換された後、バッファアンプBA1を介して差動アンプDAを構成する他方の入力端子となる抵抗器R31に供給される。
【0031】差動アンプDAは、供給された光検出器207から出力された電流信号、すなわち、光ディスク1からの反射光束の周辺部の光量に相当する電圧信号と、光検出器209から出力された電流信号、すなわち、光ディスク1からの反射光束の光軸を含む略中央部の光量に相当する電圧信号との減算処理を行うと共に抵抗器R31乃至R34によって決定する増幅率で増幅した差信号を読取信号として出力するのである。
【0032】次に、上記のごとき構成された読取信号生成装置における隣接トラックからのクロストーク成分の除去作用について説明する。図4に光ディスク1からの反射光束の光量(光強度)分布を模式的に示す。図4に示すとおり、反射光の光強度分布は光軸中心を頂点とするガウス分布となる。この実施形態では、かかる光強度分布のうち、光軸を含む例えば約20%の光量(図4でハッチングが施されている部分)に相当する光束部分が反射光分離素子215に設けられた全反射ミラーc及び光検出器209によって分離/抽出されて演算器30に供給されると共に、反射光分離素子215を透過した残りの約80%の光量に相当する光束部分が光検出器207によって検出されて演算器30に供給される。
【0033】この際、一般的に、反射光分離素子215における全反射ミラーcによって分離される反射光束の光軸中心を含む約20%の光量を担う中央部には反射光束全体のクロストーク成分の約50%が含まれ、反射光分離素子215を透過した約80%の光量を担う周辺部分にも残り約50%のクロストーク成分が含まれることが知られている。したがって、反射光全体の光量100%の内、隣接するトラックからのクロストーク成分が反射光束全体の10%存在すると仮定すると、光検出器209に照射される反射光分離素子215で分離した反射光は15%の情報信号成分と約5%のクロストーク成分となり、光検出器207に照射される反射光分離素子215を透過した反射光は75%の情報信号成分と全反射ミラーcで反射されなかった残りの5%のクロストーク成分となる。光検出器207並びに209から出力される電流信号は、差動アンプDAによって減算されるから、クロストーク成分がほぼ完全に相殺されて、差動アンプDAが出力する読取信号は、反射光全体の光量の約60%に相当する情報信号成分のみとなり、S/Nが向上する。」

以上の記載を、反射光からS/Nのよい情報信号成分を取り出す点に着目し、又、図1?図4の各図面を参照して整理すると、以下の発明が記載されているものと認める。
「記録情報を担うピット列が記録されたCD-ROM等の光ディスクに代表される光学式記録媒体に照射した読取光の光学式記録媒体からの反射光の光路中に配された反射光分離素子であって、
透明基板上光学式記録媒体のトラック接線方向と光学的に平行な方向の帯状領域に形成した全反射ミラー部分とその両側の透明部分を有し、入射する光学式記録媒体からの反射光束の光軸を含む略中央部を全反射ミラーによって反射し、反射光束の残りの周辺部を透過して、反射光の光束を略中央部と中央部以外の周辺部とに分離する反射光分離手段と、
反射光分離手段を介して供給される反射光の略中央部を受光する第1の受光手段と、
反射光分離手段を介して供給される反射光の中央部以外の周辺部を受光する第2の受光手段と、
第1の受光手段の出力信号と第2の受光手段の出力信号との差分を演算する演算手段とを備え、
差分演算によって、反射光の光束の略中央部に存在するクロストーク成分とそれ以外の周辺部に存在するクロストーク成分とが相殺して、クロストーク成分を除去する際、光束の略中央部に存在するクロストーク成分と周辺部に存在するクロストーク成分の割合を同一にして、演算手段の出力からクロストーク成分を完全に除去し、演算手段の出力を読取信号とする読取信号生成装置。」

同じく、原査定の拒絶の理由で引用された特開平3-252925号公報(平成3年11月12日付け公開 以下「刊行物2」という。)は、光磁気ディスクやコンパクトディスク等の光記録媒体から情報を再生する光再生装置に係り、特に隣接トラックからのクロストークを低減させる受光素子及び信号処理回路に関する発明についてのもので、以下の記載がある。
(5)「2.特許請求の範囲
1.所定のトラックピッチで情報が記録されている光記録媒体の所望のトラックにレーザー光等の光を照射し反射光もしくは透過光等の光を受光素子で検出することにより情報を再生する光再生装置において、
上記受光素子の受光部は少なくとも中央領域と他の領域に分割されており、かつ、中央領域で検出された隣接トラックからの信号振幅と他の領域で検出された隣接トラックからの信号振幅がほぼ等しくなるように増幅してから減算する信号処理回路が備えられていることを特徴とする光再生装置。」(1頁左下欄)
(6)「 〔実施例1〕
本発明の一実施例を第1図乃至第3図に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
光再生装置の一例として、光磁気ディスク装置を挙げ、その概要をまず説明する。光磁気ディスク装置は、第3図に示すように、レーザーダイオードl、コリメーターレンズ2、整形プリズム3、ビームスプリッター4、対物レンズ5からなる光照射系と、ビームスプリッター6、スポットレンズ7・7’、受光素子8・8’からなる光検出系と、ビームスプリッター9、スポットレンズ10、円筒レンズ11、4分割光検出器12からなるサーボ系とから主に構成されている。なお、偏光ビームスプリッター4と対物レンズ5は、光照射系だけでなく、サーボ系及び光検出系と共用である。
上記の構成において、レーザーダイオード1から出射された直線偏光したレーザー光は、コリメーターレンズ2によって平行ビームに変換された後、整形プリズム3によってビーム形状が楕円から円に整形される。そして、ビームスプリッター4を透過した後、対物レンズ5によって集光され、微小スポットとして、透明基板14上に磁性膜、誘電体膜、反射膜等からなる光磁気記録膜15を形成した光磁気ディスク13の所定のトラックを照射する。
そして、情報に応じて偏光面が回転した反射光が、再びビームスプリッター4に入射し、ここで反射されて、ビームスプリッター9に入射し、透過光は光検出系へ導かれ、ビームスプリッター6によって直交する偏光成分に分離されて、それぞれスポットレンズ7・7’で受光素子8・8’上に集光されて検出され、差動することによりSN比の高い再生信号が得られる。」(2頁右上欄12行?右下欄5行)
(7)「本発明の光磁気ディスク装置では、隣接トラックからのクロストークを低減させるために、受光素子8の受光部は、第1図に示すように、3つの領域20a?20cに分割されている。そして、光磁気ディスク13上の連続するトラックが光学系により各領域20a?20cにちょうど1トラックづつ結像するように、各領域20a?20cの幅Wが設定されている。」(2頁右下欄12?19行)
(8)「上記の受光素子8の構成において、中央の領域20bで検出される検出信号には、第10図に示される光磁気ディスク13上のトラックT_(1)・T_(2)・・・の所望の再生トラックT_(3)に記録されている情報以外に、クロストークにより、隣接トラックT_(2)・T_(4)に記録されている情報が一部含まれている。一方、両端の領域20a・20c(他の領域)で検出される検出信号には、それぞれ、隣接トラックT_(2) ・T_(4)に記録されている情報が多く含まれている。
したがって、中央の領域20bで検出される検出信号に含まれる隣接トラックT_(2)の信号成分と、領域20aで検出される検出信号に含まれる隣接トラックT_(2)の信号成分が等しくなるように増幅して、差を取ればクロストークを相殺できる。隣接トラックT_(4)の信号成分についても同様である。
第2図は、上記の動作を実現するための、信号処理回路の構成を示すものである。
回路は、受光素子8、可変抵抗器Ra・Rb、演算増幅器21a?21c、演算増幅器22からなるブロックと、このブロックと対をなす、受光素子8’、可変抵抗器Ra’・Rb’、演算増幅器21a’?21c’、演算増幅器22’からなるブロックと、演算増幅器23から構成されている。
受光素子8の領域21a?21cで検出された検出信号は、それぞれ、演算増幅器21a?21cで増幅され、各出力信号24a?24cが演算増幅器22に人力されて、出力信号24bから2つの出力信号24a・24cが減算される。このとき、隣接トラックT_(2) ・T_(4)の信号がそれぞれ相殺されるように可変抵抗器Ra・Rbにより増幅度が調整される。」(3頁左上欄11行?左下欄第4行)
(9)「なお、以上において、光磁気ディスク装置について説明したが、本発明は、コンパクトディスク等、光により情報を再生する光再生装置に幅広く応用できる。
〔発明の効果〕
本発明の光再生装置は、以上のように、受光素子の受光部を少なくとも中央領域と他の領域に分割し、かつ、中央領域で検出された隣接トラックからの信号振幅と他の領域で検出された隣接トランクからの信号振幅がほぼ等しくなるように増幅してから減算する信号処理回路を備えたので、隣接トラックからの信号が相殺され、クロストークが低減する。これにより、光記録媒体の記録密度を上げるために、トラックピッチを小さくしても、隣接トラックからのクロストークが発生しにくくなり、高品質の再生信号が得られる。」(6頁右上欄7行?左下欄2行)


3.対比・判断
〔対比〕
本願発明と刊行物1記載の発明とを対比する。
両発明は、いずれも、光ディスクの再生(読取り)時に、再生すべき情報信号以外の信号成分を除去して、良好な特性の再生(読取)信号を得ようとする点で共通する。
(i)光ディスクについて
本願発明は、いわゆるトラッキングのためのガイド溝を備えた光ディスクを再生することを前提としている。刊行物1記載の発明で例示されたCD-ROMには、通常、トラッキングのための「ガイド溝」は形成されていないものであるが、例示されたCD-ROM以外の光ディスクで、しかも、トラッキングのためのガイド溝を備えたディスクを含むことは明らかである。
(ii)光分割/検出ユニットについて
刊行物1記載の発明において、光学式記録媒体(光ディスク)からの反射光の光路中に配された反射光分離素子は、全反射ミラー部分とその両側の透明部分を有し、入射する光ディスクから反射された光束(光ビーム)の光軸を含む略中央部を全反射ミラーによって反射し、光ディスクから反射された光束(光ビーム)の残りの周辺部を透過して、反射光の光束(光ビーム)を略中央部と中央部以外の部分(周辺部)とに分離するものである。
全反射ミラーが、光ディスクのトラック接線方向と光学的に平行な方向の帯状領域に形成され、しかも、刊行物1記載の発明の、隣接する記録トラックに記録された記録情報からの漏れ込み(クロストーク)の影響を低減・除去するという目的・効果からみて、その両側の透明部分は、全反射ミラーに対しては、トラック接線方向とは直角の光ディスクの半径方向(ラジアル方)に位置していることになり、光ディスクから反射された光束(光ビーム)は、光ディスクの半径方向、即ち、ラジアル方向に分離されていることは明らかである。
したがって、刊行物1記載の発明における反射光分離素子と分離後の両光束(光ビーム)をそれぞれ受光する第1及び第2の各受光手段とが、本願発明における、光ディスクの記録面から反射された光ビームを前記光ディスクのラジアル方向に対応する方向に中心光領域及びその外側光領域に区分して検出する光分割/検出ユニットに相当することは明らかである。
(iii)信号処理部について
刊行物1記載の発明では、第1の受光手段が反射光分離手段を介して供給される反射された光束(光ビーム)のうち中央部を受光し、第2の受光手段が反射光分離手段を介して供給される反射された光束(光ビーム)のうち中央部以外の周辺部を受光するとしており、第1の受光手段の出力信号と第2の受光手段の出力信号が、それぞれ、本願発明における中心光領域に対する第1検出信号と少なくとも一方の外側光領域に対する第2検出信号に相当することは明らかである。
したがって、両信号について、大きさの調整をするか否かはともかく、刊行物1記載の発明における第1の受光手段の出力信号と第2の受光手段の出力信号との差分を演算して読取信号を出力する演算手段が、本願発明における第1及び第2検出信号を互いに差動して再生信号を検出する信号処理部に相当することは明らかである。

結局、両発明の一致点及び相違点は以下のとおりである。
[一致点]
「光ディスクの記録面から反射された光ビームを前記光ディスクのラジアル方向に対応する方向に中心光領域及びその外側光領域に区分して検出する光分割/検出ユニットと、
前記中心光領域に対する第1検出信号及び/または少なくとも一方の外側光領域に対する第2検出信号を互いに差動して再生信号を検出する信号処理部とを含み、
とする光ディスク再生装置。」

[相違点]
a.再生信号を検出するために互いに差動する中心光領域に対する第1検出信号と少なくとも一方の外側光領域に対する第2検出信号について、本願発明では、差動する際に、「(第1検出信号及び/または少なくとも一方の検出信号の)大きさを調整して、少なくとも一方の大きさが調整された第1及び第2検出信号を」用いているのに対して、刊行物1記載の発明では、検出信号の調整については不明である点。

b.本願発明の光ディスクは「所望のトラックを追従するために形成されたガイド溝を備える」というものであるが、刊行物1記載の発明においてはガイド溝について明確な記載がない点。

c.ガイド溝を備える光ディスクのトラック幅について、本願発明では、ガイド溝の構造によってトラック幅が変わるものであるのに対して、刊行物1記載の発明では、トラック幅について規定していない点。

[判断]
-相違点a.について-
刊行物2の記載は上記のとおり、光ディスクの再生時に、隣接トラックからのクロストークを低減して、再生信号の品質を高めようとするものである点で刊行物1記載の発明と同じである。
受光素子の各分割領域とトラックとの配置関係からみて、受光素子の中央領域と他の領域とは、光ディスクの半径方向に分割されていることは明らかである。
そして、中央領域からの検出信号と他の領域からの検出信号とを減算して、隣接トラックからのクロストーク成分を相殺する際、中央領域で検出された隣接トラックからの信号振幅と他の領域で検出された隣接トラックからの信号振幅がほぼ等しくなるように、可変抵抗器Ra、Rbにより増幅度が調整されてから減算することが記載されている(2.(8)参照)。
減算処理の際(差動する際)に、各領域での検出信号の大きさを調整し、大きさが調整された各検出信号を用いて、減算処理(差動)していることは明らかである。
刊行物1記載の発明においても、光束の中央部に存在するクロストーク成分と周辺部に存在するクロストーク成分の割合を同一になるように、各成分に対応する各受光検出手段の出力信号の大きさを調整し、調整された出力信号を用いて差分演算(差動)することは、当業者が、格別の発明力を要すことなく、必要に応じて、適宜になし得る範囲内のことと認める。

-相違点b.について-
トラッキングのためのガイド溝を備えた光ディスクは、例えば、CD-Rなどのように記録可能な光ディスクにもみられるように周知のものである。
刊行物1記載の発明における光学式記録媒体が、例示されたCD-ROM以外の光ディスクで、しかも、トラッキングのためのガイド溝を備えた周知の光ディスクも含むことは明らかであり、光ディスクのトラック幅が、変化するか否かについてはともかく、光ディスクが、所望のトラックを追従するために形成されたガイド溝を備えることは適宜なし得る。

-相違点c.について-
トラッキングのための「ガイド溝」を備えた光ディスクにおいて、ガイド溝の両側壁部に、いわゆる、ウォブリングを形成すること、又、その結果として、トラック幅が変動するものは、刊行物を示すまでもなく、極めて周知のものである。
ガイド溝の構造によってトラック幅が変動する光ディスクにおいても、隣接トラックからのクロストークは、当然に除去すべきものであり、しかも、刊行物1記載の発明のクロストーク除去技術が、ガイド溝の構造によってトラック幅が変動する光ディスクに対しても有効なことは、当業者であれば当然に想定し得るものであり、刊行物1記載の発明における光ディスクを、ガイド溝の構造によってトラック幅が変動する光ディスクとすることは、当業者が、格別の発明力を要すことなく、必要に応じて、適宜になし得る範囲内のことと認める。

なお、審判請求人は、審判請求の理由の「3.進歩性に関する検討」で、
「一方、本願発明は、ウォーブル信号を検出する時に、ランド部のトラックピッチ(ランドトラック幅)の変動が再生信号(RF信号)に与える影響を低減することにより、再生信号の劣化を防止するためのものであり、隣接トラックからのクロストーク成分ではなく、ランドトラック幅の変動によるAC成分を除去するように構成されている。」と主張しているが、本願発明(請求項8に係る発明)と刊行物1記載の発明とは、発明の要件において、2点の相違点を除いて、差がないことは上記(3.対比・判断)したとおりであり、両相違点を考慮したとしても、本願発明(請求項8に係る発明)には、特に、
「クロストーク成分ではなく、ランドトラック幅の変動によるAC成分を除去するように構成されている。」ことに対応した要件、即ち、クロストーク成分とランドトラック幅の変動によるAC成分とを特別に区別して、除去し得るようにした要件は見いだせず、本願発明(請求項8に係る発明)の要件に基づかない主張で採用できない。

また、「ところが、本願発明のように、例えば「(s1+s3)-0.3*s2」なる演算処理を施すことにより、ウォーブル構造(ランドトラック幅の変動)による影響が除去され、本願明細書の図12のように改善された再生信号を得ることができる。」と主張しているが、「図12」については、本願明細書(【0048】)で、請求人主張のように「(s1+s3)-0.3*s2」なる演算処理を施すことによるものとされている。
本願発明(請求項8に係る発明)は、上記のような式を用いての演算処理に関する要件を有していない。
結局、本願発明(請求項8に係る発明)の要件に基づかない主張で採用できない。

また、「上記引用文献1?3の技術は、ランドトラック幅の変動について認識がなく、ましてや、本願発明のようにウォーブル構造による影響を除去し、ランドトラック幅の変動による再生信号の劣化を防止するように構成されたものではない。」と主張しているが、本願発明(請求項8に係る発明)に、「ウォーブル構造による影響を除去し、ランドトラック幅の変動による再生信号の劣化を防止するように構成された」とするにたる要件は、見いだせず、本願発明(請求項8に係る発明)の要件に基づかない主張で採用できない。
結局、上記主張は、いずれも採用できない。

そして、上記各相違点についての判断を総合しても本願発明の奏する効果は刊行物1及び刊行物2から当業者が十分に予測可能なものであって、格別のものとはいえない。

以上のとおりであり、本願発明は、刊行物1及び刊行物2に記載された各発明に基づいて、当業者が容易に発明し得たものと認める。


4.むすび
以上のとおりであるから、本願請求項8に係る発明は、特許法29条第2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、その余の請求項について論及するまでもなく、拒絶すべきものであるとした原査定は妥当なものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-02-22 
結審通知日 2008-02-26 
審決日 2008-03-17 
出願番号 特願2002-28611(P2002-28611)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 五貫 昭一  
特許庁審判長 江畠 博
特許庁審判官 山田 洋一
小松 正
発明の名称 光ディスク再生方法及び装置  
代理人 志賀 正武  
代理人 村山 靖彦  
代理人 渡邊 隆  
代理人 実広 信哉  

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