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審決分類 審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 G09G
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G09G
管理番号 1182257
審判番号 不服2006-6497  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-04-06 
確定日 2008-08-07 
事件の表示 特願2003-327853「液晶表示装置の駆動回路」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 1月15日出願公開、特開2004- 13175〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本件は、平成11年12月3日にされた特許出願(特願平11-345344号、以下「原出願」という。)の一部を新たな特許出願として平成15年9月19日にされた特許出願(特願2003-327853号)につき、平成18年2月28日付け(同年3月7日発送)で拒絶査定がされたところ、これに対して、同年4月6日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年同月28日付けで明細書を補正対象とする手続補正書が提出されたものである。

2.平成18年4月28日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)について
本件補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面に記載した事項の範囲内でなされたものであり、また、本件補正前の特許請求の範囲の請求項1及び2、請求項4及び5を削除するとともに、それに伴い請求項3を新たな請求項1及び2に、請求項6を新たな請求項3及び4に展開して繰り上げたものであるから、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号の請求項の削除を目的とするものに該当する。

3.本願発明について
本件補正は、上記のとおり適法になわれたものと認められるので、本願の請求項1乃至4に係る発明は、平成18年4月28日付け手続補正書より補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1乃至4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
所定ビット数の入力信号が入力され第1のクロック信号のタイミングに応じて所定ビット数の転送データ信号として出力するとともに、前記転送データ信号が反転されているか非かを示す極性反転信号を出力する複数の第1のデータ極性反転・生成部と、
所定ビット数の入力信号が入力され前記第1のクロック信号と位相が半周期ずれている第2のクロック信号のタイミングに応じて前記所定ビット数の転送データ信号として出力するとともに、前記転送データ信号が反転されているか非かを示す極性反転信号を出力する複数の第2のデータ極性反転・生成部とを有する液晶表示装置の駆動回路であって、
前記第1のデータ極性反転・生成部および前記第2のデータ極性反転・生成部はそれぞれ、前記所定ビット数の入力信号のうち前記所定ビット数の転送データとして極性を反転せずに出力すると過半数以上が変化を生じる場合に入力信号の極性をすべて反転することを判定し極性反転指示信号を活性化させるデータ極性反転判定回路と、
前記極性反転指示信号が活性化された時には前記入力信号の極性をすべて反転して前記転送データ信号として出力し前記極性反転指示信号が非活性化の場合は前記入力信号をそのまま前記転送データ信号として出力する極性反転回路と、
前記クロック信号のタイミングに応じて前記転送データ信号をラッチして出力する第1のラッチ回路と、
前記クロック信号のタイミングに応じて前記極性反転指示信号を前記極性反転信号として出力する第2のラッチ回路とを有することを特徴とする液晶表示装置の駆動回路。」(以下「本願発明」という。)

4.刊行物に記載された発明
原査定の拒絶の理由で引用され、原出願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平11-282421号公報(以下、「刊行物1」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、液晶表示装置に関するもので、特に液晶表示装置を駆動するために設けられる専用ICとソースドライバICとの信号の受け渡しに関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来の液晶表示装置では、専用ICからの出力は、そのままソースドライバICに出力されるか、又はデータの数の半分が同時変化すると極性を反転させて出力するものが主流であった。図2は、従来の液晶表示装置の専用ICとソースドライバICとの信号の受け渡しを示すブロック図である。図において、1は内部バスで、11?1nビットのデータを伝送する。2は内部バス1上のデータを入力とするセレクタで、内部バス1に対応して21?2n設けられ、それぞれ2入力の排他的論理和回路からなる。3はセレクタ2の出力を入力とする31?3nのnビットのレジスタである。4は、レジスタ3に対応して、41?4n設けられ、レジスタ3のデータを入力とする出力バッファ、5は出力バッファ4に対応して51?5n設けられ、出力バッファ4のデータを外部バスへ送り出す出力ピンである。6は比較多数決回路で、内部バス1のデータを比較し、セレクタ2を反転モードに設定する判定出力信号Jを出力する。7は、2入力の排他的論理和回路、8はトグル型フリップフロップで、極性表示信号Pを出力バッファ9及び出力ピン10を通じて出力する。11はクロック信号CKが伝送されるクロック信号線、12はリセット信号Rが伝送されるリセット信号線である。このような従来の信号受け渡しの回路では、セレクタ2は、内部バス1上の信号をそのままの極性で、もしくはすべてを反転してレジスタ3の入力として伝え、nビットのレジスタ31?3nはリセット信号Rによって“0”出力状態に初期化され、クロック信号線11からの出力切換毎に与えられるクロック信号CKに同期して入力データを取込む。
【0003】ここで、比較多数決回路6は、レジスタ3の内部バス1からの出力切換毎に入力するデータに対応するビット毎に比較し、互いに等しいものの数よりも異なるものの数が多いときに限り、判定出力信号Jを“1”レベルとして、セレクタ2を反転モードに設定する。排他的論理和回路7には、この判定出力信号Jとトグル型フリップフロップ8からの極性表示信号Pが入力し、その出力をトグル型フリップフロップ8に入力する。トグル型フリップフロップ8は、リセット信号Rを受け初期化され、排他的論理和回路7からの出力が“1”のときクロック信号CKを受け取ることによって、状態が反転するようになっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】従来の液晶表示装置の専用ICとソースドライバICとのデータの受け渡しは前述のようになっており、あくまでもnビットの半数以上が同時に極性が反転したときに限り、セレクタによりデータを反転させるものであった。例えば、液晶表示装置で主流を占めている6ビット用を考えると、赤、緑、青各6ビットであるから、データ総本数は6×3=18本となるので、過半数である10本以上のデータが同時変化したときに、データの反転を行うこととなる。特に最近では、同時変化におけるノイズがEMI対策上問題になる。赤、緑、青各6ビットすべてが同時変化した場合に対しては有効であるが、10本の変化に対しては、1本分の効果しか期待できない。従来の液晶表示装置の専用ICとソースドライバICとのデータの受け渡しは、前述のようになっており、あくまでも過半数の同時変化がデータを反転させる条件になっていた。」

イ.図面の図2には、セレクタ(2)から出力されたnビットの伝送用のデータを、クロック信号(CK)のタイミングに応じて取り込むとともに、nビットの伝送用のデータとして出力バッファ(4)に出力するようにしてなるnビットのレジスタ(3)と、比較多数決回路(6)から出力された判定出力信号(J)を前記クロック信号(CK)のタイミングに応じて取り込むとともに、極性表示信号(P)として出力バッファ(9)に出力するようにしてなるトグル型フリップフロップ(8)の構成が見て取れる。

上記摘記事項ア及びイからみて、刊行物1には、以下の発明が記載されているものと認められる。
「nビットのデータが入力されクロック信号のタイミングに応じてnビットの伝送用のデータとして出力するともに、前記nビットの伝送用のデータが反転しているか否かを示す極性表示信号(P)を出力する構成と、
該構成は、前記nビットのデータのうち前記nビットの伝送用のデータとして極性を反転せずに出力すると互いに等しいものの数より異なる数が多いときに前記nビットの出力データの極性をすべて反転することを判定し判定出力信号(J)を“1”レベルとする比較多数決回路(6)と、
前記判定出力信号(J)が“1”レベルである時には前記nビットのデータの極性をすべて反転してnビットのレジスタ(3)に出力し、前記判定出力信号が“1”レベルでない時には前記nビットのデータの極性をそのままの極性としてnビットのレジスタ(3)に出力するセレクタ(2)と、
前記クロック信号(CK)のタイミングに応じて前記nビットの伝送用のデータをラッチして出力するnビットのレジスタ(3)と、
前記クロック信号(CK)のタイミングに応じて前記判定出力信号(J)を前記極性表示信号(P)として出力するトグル型フリップフロップ(8)とを有する液晶表示装置の駆動回路。」(以下、「刊行物1に記載された発明」という。)

5.対比・判断
本願発明と刊行物1に記載された発明とを対比する。
刊行物1に記載された発明の「nビットのデータ」、「クロック信号(CK)」、「nビットの伝送用のデータ」、「極性表示信号(P)」、「互いに等しいものの数より異なる数が多いとき」、「判定出力信号(J)」、「比較多数決回路(6)」、「nビットのレジスタ(3)」、「セレクタ(2)」、「トグル型フリップフロップ(8)」は、それぞれ、本願発明の「所定ビット数の入力信号」、「第1のクロック信号」、「転送データ信号」、「極性反転信号」、「過半数以上が変化を生じる場合」、「極性反転指示信号」、「データ極性反転判定回路」、「第1のラッチ回路」、「極性反転回路」、「第2のラッチ回路」に相当するから、両者は、 以下の点で一致ならびに相違する。

<一致点>
「所定ビット数の入力信号が入力され第1のクロック信号のタイミングに応じて所定ビット数の転送データ信号として出力するとともに、前記転送データ信号が反転されているか非かを示す極性反転信号を出力する複数の第1のデータ極性反転・生成部を有する液晶表示装置の駆動回路であって、
前記第1のデータ極性反転・生成部は、前記所定ビット数の入力信号のうち前記所定ビット数の転送データとして極性を反転せずに出力すると過半数以上が変化を生じる場合に入力信号の極性をすべて反転することを判定し極性反転指示信号を活性化させるデータ極性反転判定回路と、
前記極性反転指示信号が活性化された時には前記入力信号の極性をすべて反転して前記転送データ信号として出力し前記極性反転指示信号が非活性化の場合は前記入力信号をそのまま前記転送データ信号として出力する極性反転回路と、
前記クロック信号のタイミングに応じて前記転送データ信号をラッチして出力する第1のラッチ回路と、
前記クロック信号のタイミングに応じて前記極性反転指示信号を前記極性反転信号として出力する第2のラッチ回路とを有する液晶表示装置の駆動回路。」

<相違点1>
本願発明では、「所定ビット数の入力信号が入力され第1のクロック信号と位相が半周期ずれている第2のクロック信号のタイミングに応じて前記所定ビット数の転送データ信号として出力するとともに、前記転送データ信号が反転されているか非かを示す極性反転信号を出力する第2のデータ極性反転・生成部とを有する」構成であるのに対して、刊行物1に記載された発明においては、位相がずれて動作するようにしてなるデータ極性反転・生成部の構成を欠く点。

<相違点2>
本願発明では、「複数の第1のデータ極性反転・生成部」や「複数の第2のデータ極性反転・生成部」の構成であるのに対して、刊行物1に記載された発明においては、データ極性反転・生成部が複数に分割されていない点。

上記相違点1について検討する。
例えば、原査定の拒絶の理由で引用され、原出願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平11-259050号公報(以下、「刊行物2」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【請求項1】 TFT液晶パネルを表示駆動するTFT駆動回路に、表示タイミング制御回路から、それぞれ複数ビットで構成される赤、緑、青のカラー表示データを転送するに際し、上記各カラー表示データから任意に選択された複数ビットで構成されるビット単位毎にタイミングを、少しずつずらして転送することを特徴とする液晶表示装置の駆動方法。」

イ.「【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、アクティブマトリクス駆動方式等の液晶表示装置の駆動方法および駆動装置、特にTFT液晶表示装置(以下TFT-LCDパネルという)の低EMI化に関するものである。」

ウ.「【0007】このような容量負荷の充放電においては、特に大きな充放電電流は、その電流経路の周囲に大きな電磁界の変化、すなわち電磁界ノイズを発生させる。例えば前述のように、最悪18ビットのデータの全ビットが40MHzのクロック周期で同時に変化した場合に発生する電磁界ノイズはかなりなレベルに達すると予想され、事実、TFT-LCDパネルにおいてはEMIの規格を満足させるため、非常に時間と労力そして費用を費やすことが多い等の問題が生じている。この発明は、TFT-LCDパネルにおいて、LCDタイミングコントローラからソースドライバICへ表示データを転送する場合の、このような電磁界ノイズを低減できるデータ転送方法を提案するものである。」

エ.「【0011】
【発明の実施の形態】実施の形態1.以下にこの発明の実施の形態1について説明する。図1は実施の形態1における転送表示データの変化タイミング図である。図1においてRGBデータがLからHに変る場合、Rデータバス(R0,R1,R2,R3,R4,R5)に対し、Gデータバス(G0,G1,G2,G3,G4,G5)の変化タイミングをD1だけ遅らせており、Bデータバス(B0,B1,B2,B3,B4,B5)の変化タイミングをさらにD2だけ遅らせている。また、RGBデータがHからLへ変化する場合、Rデータバスに対し、Gデータバスの変化タイミングをD3だけ遅らせ、BデータバスはさらにD4だけ遅らせている。なお、D1からD4の遅延について、D1=D3 およびD2=D4 、あるいはD1=D2=D3=D4としてもよい。図2は、図1に示すデータ転送タイミングを実現する回路例を示す。図2では、図16に示す従来の回路例において、Gデータ出力回路にd1の遅延時間を持った遅延回路7を挿入し、Bデータ出力回路にd2の遅延回路8を挿入したものである。なお、図16に示す従来の回路と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。ここでd1=D1 とし、d2=D1+D2となるように設定すれば、図1に示すタイミングを実現できる。ただし、図2の例では、図1においてD1=D3 、D2=D4 となる。
【0012】次に図3に、図2におけるRGBデータを転送した場合のRGB各データバス12、13、14の電圧波形と電流波形を示す。RGBの各データが、L,H,Lと変形した場合、従来例で説明した図17と同様にLからHにデータが変化した時には、図2の負荷容量4、5、6を充電する電流Ic1 、Ic2 、Ic3 が各データバスに流れ、HからLにデータが変化した場合は、負荷容量を放電する電流Id1 、Id2 、Id3 が流れる。これらの電流は、やはり従来例と同様にLCDタイミングコントローラIC11の出力の回路を通って、電源及びGNDに流れるので、結局LCDタイミングコントローラIC11内外の電源配線、GND配線にはこれらの電流の和が流れる。
【0013】しかしながら、図2に示すようにRGBの各データバスの変化タイミングにそれぞれD1、D2のタイミング差を設けているので、合計18ビットが同時に変化した場合でも、Ic1 、Ic2 、Ic3 及び、Id1 、Id2 、Id3 はD1、D2、の時間差をもって流れるため、従来例ではRGBデータがLからHに変化した時に1出力回路に流れる電流の18倍の大きな電流が同時に流れたが、本発明の実施例である図2の例では、各データバスを構成する6ビット分、すなわち6倍の電流が同時に流れるに留まる。すなわち同時に流れる電流の最大値は、従来の例に比べ1/3となるので、この電流による電磁界ノイズも従来にくらべ1/3となる。なおここではRデータバスに対し、G及びBのデータバスの変化を遅らせていたが、Gデータバスに対して、あるいはBデータバスに対して他のデータバスを遅らせても、同様の効果を得られる。」

原出願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平11-249622号公報(以下、「刊行物3」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
オ.「【請求項1】 データ入力信号に対して複数ポートのデータ出力信号を生成し、時間軸に対する上記データ出力信号の変化位置を、基準の内部クロック信号の1周期の間において、互いにずれた位置に存在させてデータ出力信号の同時変化数を減少させる回路構成としたことを特徴とする集積回路。」

カ.「【請求項3】 時間軸に対するデータ出力信号の変化位置は、クロック出力信号のアクティブエッジから、それぞれデータ入力信号の半周期の任意の整数倍分互いにずれた位置に設定されていることを特徴とする請求項1記載の集積回路。」
キ.「【0011】この発明は、上記のような問題を解決し、入出力信号部での電磁波ノイズや他の装置や回路への悪影響を与える不要電磁波を低減した高品質な液晶表示装置および複数ポートのデータ出力部を有する集積回路を提供することを目的とする。」

ク.「【0022】例えば、入力部では、クロック入力信号1を信号名CLKI、表示データ入力信号2を信号名RI[1:m]、GI[1:m]、BI[1:m]とし、出力部では、クロック出力信号4を信号名CLKO、mを任意の整数、第1の表示データ出力信号9を信号名RO1[1:m]、RO2[1:m]、第2の表示データ出力信号10を信号名GO1[1:m]、GO2[1:m]、第3の表示データ出力信号11を信号名BO1[1:m]、BO2[1:m]とし、RO1[1:m]とRO2[1:m]はRI[1:m]を2種類のデータに、GO1[1:m]とGO2[1:m]はGI[1:m]を2種類のデータに、BO1[1:m]とBO2[1:m]はBI[1:m]を2種類のデータに分割した信号であるとすると、RO1[1:m]、RO2[1:m]とGO1[1:m]、GO2[1:m]とBO1[1:m]、BO2[1:m]は時間軸上のそれぞれ3種類の異なった位置で変化するように生成されることになる。
【0023】つまり、データ出力信号をクロック出力信号のアクティブエッジ(この場合は立ち上がりエッジ)に対してそれぞれクロック入力信号の0.5周期、1周期、1.5周期分の時間だけ遅れて変化するような同時変化位置を3個所に分割することにより、データ出力信号の同時変化数を減少させている。
【0024】図2は図1の出力信号を生成する回路構成例で、図において、12はラッチ回路、13はNOT回路、14は2本の点線内の一方を接続するポイントを意味し、入力部のクロック信号CLKO inは図8におけるクロック出力信号4であり、入力部の表示データ信号RO1 in[1:m]、RO2 in[1:m]、GO1 in[1:m]、GO2 in[1:m]、BO1 in[1:m]、BO2 in[1:m]は図8における表示データ出力信号5であり、出力部のクロック信号CLKOと表示データ信号RO1[1:m]、RO2[1:m]とGO1[1:m]、GO2[1:m]とBO1[1:m]、BO2[1:m]はそれぞれ図1の4、9、10、11に対応する。
【0025】図3は図1の出力信号を生成する回路を機能ブロック毎に示した例で、図において、15は内部クロック信号生成部、16はクロック出力信号生成部、17はデータラッチ部であり、図2と対応させると、12a、12b、12cは15に、12dは16に、12e、12f、12gは17に対応し、入出力部の表示データ信号RO1 in[1:m]、RO2 in[1:m]、GO1 in[1:m]、GO2 in[1:m]、BO1 in[1:m]、BO2 in[1:m] 、RO1[1:m]、RO2[1:m]、GO1[1:m]、GO2[1:m]、BO1[1:m]、BO2[1:m]での実線の本数は時間軸上での異なる変化位置の総数を示し、この図の場合、入力部では時間軸上での1種類の変化位置を、出力部では時間軸上での3種類の変化位置をそれぞれが示している。
【0026】この実施の形態1によれば、従来のものに比べて表示デー夕出力信号の同時変化数を最大で従来の1/3に減少させることが可能となり、この時の表示データ出力信号の変化時に生ずる出力バッファの瞬時電流に対するその時間での割合が従来の1/3程度に小さくなるために、それに起因した入出力信号部での電磁波ノイズや、他の装置や回路へ悪影響を与える不要電磁波(EMI)を低減した高品質な液晶表示装置が得られる。
【0027】また、図3で行った設定において、表示データ出力信号RO1[1:m]、GO1[1:m]、BO1[1:m]、RO2[1:m]、GO2[1:m]、BO2[1:m]の時間軸に対する異なる変化位置の分割方法や、3種類の変化位置から任意の2種類のみに変更した場合も、表示データ出力信号の同時変化数が減少するために、表示データ出力信号の変化時に生ずる出力バッファの全体の瞬時電流に対するその時間での割合が減少し、入出力信号部での電磁波ノイズや、他の装置や回路へ悪影響を与える不要電磁波を低減する効果が得られる。」

上記刊行物2及び刊行物3の記載事項によれば、液晶表示装置においてデータ転送の際の不要電磁波ノイズを低減するために、転送するデータの位相をずらし分割して出力を行うような技術は周知の技術(以下、「周知技術1」という。)にすぎない。また、位相をどの程度ずらすかは、転送するデータを何分割するかなどに応じて決定される単なる設計的事項である。してみると、刊行物1に記載された発明も上記周知技術1もともに、液晶表示装置においてデータ転送の際の不要電磁波ノイズの低減を技術的課題とするものであることから、上記刊行物1に記載された発明において、データ転送の際の不要電磁波ノイズの低減を図るために上記周知技術1を採用することに特段の困難性もない。よって、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、刊行物1に記載された発明に上記周知技術1を適用することにより当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎない。

次に、上記相違点2について検討する。
例えば、原出願の出願の日前に頒布された刊行物である特開平4-303234号公報(以下、「刊行物4」という。)には、図面とともに次の事項が記載されている。
ア.「【請求項1】 複数ビットの転送データを並列に出力するデータ転送方式において、現在出力しているデータと次に出力するデータをビット単位に比較してビット変化量が設定値以上か否かを検出するビット変化検出手段と、この検出出力に基づき、ビット変化量が設定値以上の時は次に出力するデータをビット反転によりビット変化量の少ないビットパターンに変換して出力し、ビット変化量が設定値より少ない時はそのまま出力するビットパターン変換手段とを備え、このビットパターン変換手段の出力データに上記ビット変化検出手段の検出出力を付加して転送するようにしたことを特徴とするデータ転送方式。」

イ.「【0003】
【発明が解決しようとする課題】従来のこの種のデータ転送方式では、以上のように、多ビット並列データの転送時、同時スイッチング・ノイズが生じて転送データにエラーが発生しやすく、信頼性に問題があった。従って、信頼性を向上するため、転送レートをエラーの生じない程度に低く抑えたり、エラー訂正符号を付加したりすることにより対処していた。なお、エラー訂正符号は、その訂正能力を高くするためには付加する検査ビット数を多くしなければならないために、実効的な転送レートをかなり低下させる。
【0004】従って、この発明は、多ビット並列データの実効的な転送レートを低下させることなく、信頼性の高いデータ転送を実現できるデータ転送方式を得ることを目的とする。」

ウ.「【0006】
【作用】この発明においては、ビット変化量が多く全ビット数の過半数を占めるような時には、出力に先立って、例えば全ビットを反転させてビット変化量の少ないビットパターンに変換し、その旨を示す変化検出出力1ビットを付加して出力する。転送先では、その変化検出出力1ビットを含む転送データを取込み、変化検出出力1ビットがビット反転を示していれば、内部で全ビットを反転させて本来のデータに戻すことにより、以降の処理を正常に行うことができる。これにより、多ビット並列データの実効的な転送レートを低下させることなく、信頼性の高いデータ転送を実現できる。
【0007】
【実施例】以下、この発明の一実施例を図について説明する。図1は、この発明が適用されたマイクロプロセッサ等の出力段の構成例を示すブロック図である。図において、1は現在出力しているデータと次に出力するデータをビット単位に比較してビット変化量が設定値以上か否かを検出するビット変化検出回路であり、ビット変化量が設定値以上の場合は検出出力である1ビットのビットパターン変換信号を有意とする。2は上記ビットパターン変換信号が有意の時は次に出力すべきデータを全ビット反転することによりビット変化量の少ないビットパターンに変換して出力し、ビットパターン変換信号が有意でない時はそのまま出力するビットパターン変換回路である。上記ビット変化検出回路1から出力されるビットパターン変換信号はビットパターン変換回路2に入力されると共に、ビットパターン変換回路2の出力データに付加されて外部へ転送される。なお、ビット変化量が多いか少ないかを判定するための設定値は、全ビット数の半数以上であれば有効であり、本発明を適用する対象に応じて、どのくらいのビット変化量により同時スイッチング・エラーが生じるかを考慮して決められるべきものである。」

エ.「【0014】また、上記実施例では、本発明を全出力ビットに対して一括して適用する例を示したが、出力ビットを例えば物理的に近接した複数のブロックに分割し、それぞれのブロックについて独立に実施してもよい。複数のブロックに分割することにより、1個のビット変化検出回路の対象となるビット数が少なくなり、処理速度の向上を図ることができる。さらに、物理的に近接した出力バッファを1つのブロックとすることにより、電気特性的に最も問題となる「物理的に近接した出力バッファの同時スイッチング」に対してきめ細かく対処することが可能であり、本発明の効果をより確実にすることができる。」

このように、出力ビットを例えば物理的に近接した複数のブロックに分割し、それぞれのブロックについて独立に反転するかしないかを実施することにより、きめ細かな対処を行うような技術は、例えば、上記刊行物4に示されているように周知の技術(以下、「周知技術2」という。)にすぎない。そして、刊行物1に記載された発明も上記周知技術2もともに、液晶表示装置においてデータ転送の際の不要電磁波ノイズの低減を図るための技術に関するものであるから、上記刊行物1に記載された発明において、単に上記周知技術2を採用することに特段の困難性もない。してみると、上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項は、刊行物1に記載された発明に上記周知技術2を適用することにより当業者が容易に想到し得た程度のものにすぎない。

そして、本願発明の奏する作用効果も、刊行物1に記載された発明及び周知技術1、2に基づいて当業者が予測可能な範囲内のものである。
したがって、本願発明は、刊行物1に記載された発明及び周知技術1、2に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.まとめ
以上のとおりであるから、本件出願の請求項1に係る発明である本願発明は特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであり、その余の請求項に係る発明についての判断を示すまでもなく、本件出願は、拒絶をすべきものである。
よって、結論のとおり結審する。
 
審理終結日 2008-06-11 
結審通知日 2008-06-17 
審決日 2008-06-26 
出願番号 特願2003-327853(P2003-327853)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G09G)
P 1 8・ 571- Z (G09G)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 濱本 禎広  
特許庁審判長 二宮 千久
特許庁審判官 西島 篤宏
山川 雅也
発明の名称 液晶表示装置の駆動回路  
代理人 谷澤 靖久  
代理人 木村 明隆  
代理人 机 昌彦  

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