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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1182287
審判番号 不服2006-28398  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-12-20 
確定日 2008-08-07 
事件の表示 特願2000-245200「基材又は基板表面の汚染防止方法及びストッカ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 4月27日出願公開、特開2001-118761〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成6年10月25日に出願した特願平6-284003号の一部を平成12年8月11日に新たな出願としたものであって、平成18年11月14日付けで拒絶査定がなされ、これに対して同年12月20日に拒絶査定に対する審判請求がなされるとともに手続補正(この補正は、実質的に補正前の請求項4乃至8を削除する補正であり、適法になされたものである。)がなされたものである。

2.本願発明の認定
本願の請求項5に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年12月20日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項5に記載されている事項により特定される以下のとおりのものである。

「【請求項5】 クリーンルームに設置されて基材又は基板を収容する開閉可能なストッカであって、これらの内部の気体を流すファンと、該ファンによって流される気体を通す、少なくともイオン交換繊維を用いたイオン性ガス成分を5ppb以下にする除去手段と、該ファンによって流される気体を通す、シリカゲル、ゼオライト、モレキュラーシーブ、アルミナ、珪藻土、活性炭、ガラス又はフッ素化合物から選ばれた少なくとも1種類の吸着材を用いた非メタン炭化水素を指標として0.2ppm以下にする除去手段、及び除塵性能を有する微粒子除去手段とを備え、前記イオン交換繊維の直径が1?1000μmであることを特徴とするストッカ。」

3.刊行物に記載された発明
(1)刊行物1
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された特開平6-198215号公報(以下、「刊行物1」という。)には、「気体の清浄方法及び装置」(発明の名称)に関して、図1とともに、以下の事項が記載されている。
「【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、気体の清浄化に係り、特に、接触角の増加防止に効果があり、かつ除塵された気体を得る方法及び装置に関する。本発明が適用できる分野の例を次に示す。
(1)半導体工場におけるウエハの接触角増加防止。
(2)液晶工場におけるガラス基盤の接触角増加防止。
(3)精密機械工場における基盤の接触角増加防止。
具体的には例えば、エアーナイフ用空気、乾燥工程における空気、各種生産ラインへの供給空気、貴重品の保管庫(ストッカ)、ウエハ保管庫、液晶保管庫、貴重品のキャリヤ(搬送)、貴重品の搬送空間、クリーンベンチ、クリーンブース、クリーンボックス、安全キャビネット、無菌室、などのクリーンな空間における空気や窒素ガスその他の気体の処理等に利用できる。」(0001段落)、
「本発明では、有害成分及び微粒子を含有する気体の清浄装置において、該気体中の有害成分を除去するための、シリカゲル、合成ゼオライト、高分子化合物、ガラス材又はフッ素樹脂から選ばれた少なくとも1種類の吸着材を用いた有害ガス除去部と、該気体中の微粒子を除去するための、紫外線源及び/又は放射線源と該線源からの照射により光電子を放出する光電子放出材と電場用電極及び荷電微粒子捕集材を有する微粒子除去部を備えたこととしたものである。」(0008段落)、
「【0009】本発明の夫々の構成を詳細に説明する。接触角を増加させるガス状有害成分(ガス及び/又はミスト状物質)の除去を行う有害成分除去部には、次に述べる吸着材及び/又は吸収材が充填されている。該吸着材又は吸収材は、接触角を増加させるガス状又はミスト状有害成分を吸着及び/又は吸収できる吸着材又は吸収材であれば何れでも良い。通常の使用(用途)では、特に、H.C.を吸着、吸収するものが良い。このうち、吸着材としては、低濃度H.C.を吸着・捕集できるものであれば、何れでも使用できる。一般には活性炭、シリカゲル、合成ゼオライト、モレキュラシーブ、高分子化合物(例、スチレン系重合体、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体)、ガラス材、フッ素樹脂、イオン交換体(例、イオン交換繊維)がある。」(0009段落)、
「【0011】この内、ガラス材やフッ素樹脂は、繊維状フィルタにすると、除塵性も有するので、適用分野によっては好ましい。この例として、フッ素樹脂バインダのガラス繊維フィルタがある。これら吸着材及び/又は吸収材の使用条件として、空間速度(SV)は、100?20,000(h^(-1))、好ましくは100?5,000(h^(-1))である。吸着材の使用は、本例のような使い方の他に、PSA(圧力スウィング吸着)、やTSA(熱スウィング吸着)により再生を同時に行いながら実施することもできる。上記では、接触角を増加させる主たるガス状有害成分がH.C.の場合を説明した。
【0012】有害ガス(ガス及び/又はミスト状)による接触角の増加原因は、(1)SOx,NOx,HCl,NH_(3 )のような無機性ガス、(2)H.C.のような有機性ガスに大別できるが、本発明者の検討の結果、通常の空気(通常のクリーンルームにおける環境大気)中の濃度に対する影響ではH.C.が大きい。一般に、通常の基材や基盤に対してはSOx,NOx,HCl,NH_(3 )は通常の空気中の濃度レベルでは、接触角の増加に対し影響は少ない。従って、通常は後述の例のようにH.C.除去を行えば効果がある。しかし、SOx,NOx,HCl,NH_(3 )の濃度が高い場合や、基材や基盤が敏感な場合や特殊な場合(例えば、基材表面に特殊な薄膜を被覆した場合)、通常では影響しない有害成分や濃度でも影響を受ける場合がある。例えば、クリーンルーム又はその周辺で、前記のSOx,NOx,HCl,NH_(3 )のような有害ガスの発生があり、これら成分の空気中の濃度が高い場合、あるいは基材や基盤が特殊な処理をされ敏感な状態で取扱う場合は、本発明がすでに提案した紫外線及び/又は放射線を有害ガスに照射して、有害ガスを微粒子化し、該微粒子を捕集する方法(装置)(特願平3-22,686号)を適宜に組合せて用いることができる。
【0013】また、このような場合は別の周知の有害ガス除去材例えば活性炭、イオン交換繊維などを適宜組合せて用いることができる。・・・使用する吸着材及び/又は吸収材の種類や使用条件は適宜に決めることができる。すなわち、これらは利用するクリーンルームの汚染物(ガス状及び/又はミスト状有害成分)の濃度、種類、適用装置の種類、構造、規模、要求性能・効率、経済性などで適宜に予備試験を行い決めることができる。」(0011?0013段落)、
「【0022】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
半導体工場のウエハ保管庫における空気清浄を、図1に示した本発明の基本構成図を用いて説明する。ウエハ保管庫1はクラス10,000のクリーンルームに設置されている。密閉空間(気体が流動せず、静止状態とみなせる空間)であるウエハ保管庫1の空気清浄は、ウエハ保管庫1の片側に設置された接触角を増加させる有害ガスを吸着する吸着材のシリカゲル2とフッ素樹脂バインダのガラス繊維フィルタ3との充填部から成る有害成分除去部A及び紫外線ランプ4、紫外線の反射面5、光電子放出材6、電場設置のための電極7、荷電微粒子の捕集材7(本構成では、電極が捕集材を兼用)から成る微粒子除去部Bにより実施される。
【0023】保管庫1は、保管庫の扉(図示せず)の開閉によるウエハケース8の出し入れにより、保管庫の外よりウエハ9の表面の接触角を増加させる有害ガス10(ここでは主にH.C.と考えられる)及びウエハに付着すると汚染をもたらす微粒子11が侵入する。」(0022?0023段落)、
「【0029】次に、保管庫の開閉により侵入した有害ガスの除去を行う有害ガス除去部Aについて述べる。上述の微粒子除去部Bの作動により、微粒子11が除去された有害ガス10を含む空気をファン15によりシリカゲル2及びフッ素樹脂バインダのガラス繊維フィルタ3の吸着材に通すことにより有害ガスは捕集・除去される。
【0030】ここでは、上述微粒子除去部Bの運転開始30分後(被処理空間部Cから、微粒子が除去される時間後)に作動を始め(ファン15がONになる)、3時間運転して作動が停止する(ファン15がOFFになる)。すなわち、空気の流動化は、上述のごとく汚染をもたらす原因となるので必要最低限にするため、保管庫内の有害成分の除去が終了すると、ここでの作動(吸着材への空気の通過)は、停止する。16は、有害ガスが捕集・除去された空気である。なお、フッ素樹脂バインダのガラス繊維フィルタ3は、除塵性も有し、シリカゲルから発塵があった場合でも後方に流出させない役目をはたす。」(0029?0030段落)

(a)0029段落の「保管庫の開閉により侵入した」「有害ガス10を含む空気」について、侵入した先は「ウエハ保管庫1」であるから、該「有害ガス10を含む空気」は、「ウエハ保管庫1」の内部におけるものであることは明らかである。
(b)0023段落の「保管庫の外よりウエハ9の表面の接触角を増加させる有害ガス10(ここでは主にH.C.と考えられる)」、0029段落の「有害ガス10を含む空気をファン15によりシリカゲル2及びフッ素樹脂バインダのガラス繊維フィルタ3の吸着材に通すことにより有害ガスは捕集・除去される。」との記載から、「ウエハ保管庫1」が備える「シリカゲル2及びフッ素樹脂バインダのガラス繊維フィルタ3の吸着材」を用いた主にH.C.からなる有害ガス10を除去する手段は、「有害ガス10を含む空気」を通すことは明らかである。
(c)0022段落の「ウエハ保管庫1はクラス10,000のクリーンルームに設置されている。」との記載から、「ウエハ保管庫1」は、「クリーンルーム」に設置されていることは明らかである。
(d)0023段落の「保管庫の扉(図示せず)の開閉によるウエハケース8の出し入れ」との記載及び図1から、「ウエハ保管庫1」は開閉可能であり、そして、「ウエハ9」を収容することは明らかである。
したがって、刊行物1には、以下の発明が記載されている。
「クリーンルームに設置されウエハ9を収容する開閉可能なウエハ保管庫1であって、
ウエハ保管庫1の内部の有害ガス10を含む空気を流すファン15と、
ファン15によって流される有害ガス10を含む空気を通す、シリカゲル2及びフッ素樹脂バインダのガラス繊維フィルタ3の吸着材を用いた主にH.C.からなる有害ガスを除去する手段と、
を備えるウエハ保管庫1。」(以下、「刊行物発明」という。)

(2)刊行物2
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に日本国内において頒布された特開平6-252242号公報(以下、「刊行物2」という。)には、「気体清浄化手段を有する搬送装置」(発明の名称)に関して、図1、3,7とともに、以下の事項が記載されている。
「【産業上の利用分野】本発明は、気体清浄化手段を有する搬送装置に係り、特に、ウエハ液晶などの原料、半製品、製品を搬送する密閉可能な空間を有する搬送装置に関するものである。本発明の搬送装置は、半導体産業、液晶産業、農林産業、食品工業、精密機械産業など、各種産業における原料、半製品、製品の搬送装置として用いることができる。」(0001段落)、
「【0022】非メタン炭化水素すなわちガス状有害成分の除去は、接触角を増大させるこれら成分を吸着及び/又は吸収する材料で捕集・除去するか、あるいは気体に紫外線及び/又は放射線を照射し、生成した2次生成物の捕集・除去を行う方式か、又は照射によりオゾンを発生させて複合酸化物系触媒と接触させる方式で行うことができる。非メタン炭化水素は、通常の空気(室内空気及び外気)、窒素、アルゴンなどのクリーンルームで用いる各種気体中の濃度で汚染をもたらす。
【0023】また種々の非メタン炭化水素のうち、接触角を増大させる成分は基材の種類(ウエハ、ガラス材など)や基板上の薄膜の種類・性状によって異なると考えられる。本発明者は鋭意検討した結果、非メタン炭化水素を指標として、これを0.2ppm以下、好ましくは0.1ppm以下まで除去すれば効果的であることを発見した。吸着及び/又は吸収手段による非メタン炭化水素の除去は、本発明者が先に出願しているが、次のような方法である。
【0024】吸着材としては、活性炭、シリカゲル、合成ゼオライト、モレキュラシーブ、高分子化合物(例えば、スチレン系重合体、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体)、ガラス、フッ素化合物、金属又は金属の酸化物(例、TiO_(2) )などを用いる。ガラス材としては、酸化物ガラス系、例えばケイ酸塩ガラス、リン酸塩ガラスが一般的である。ケイ酸塩ガラスとしては特にホウケイ酸ガラス(主要成分:N_(2 )O-B_(2) O_(3) -SiO_(2 ))が、成形が容易で吸着効果が高く、かつ安価であることから好ましい。また、ガラス表面にTi、Au、Al、Crなどの金属薄膜を被覆して用いると、吸着効果が高くなる。
【0025】フッ素化合物としては、四フッ化樹脂、四-六フッ化樹脂、PFA樹脂、三フッ化エチレン樹脂、四フッ化エチレン-エチレン共重合体、フッ化ビニリデン樹脂、フッ化ビニル樹脂、フッ化黒鉛、テフロンなどがある。ガラス及びフッ素化合物の使用形状は、フィルタ状、繊維状、網状、球状、ペレット状、格子状、棒状、プリーツ状などがある。一般にフィルタ状が吸着効果が大きいので好ましい。フィルタ状で用いる場合の成形法の例として、フッ素化合物樹脂をバインダとして用い、繊維状のガラス材をフィルタ状に固めて用いる方法がある。このようなフィルタ状で用いるとHCの除去性能に除塵性能が加わるのでフィルタ構成とするのが好ましい。
【0026】また、吸着材は、接触角を増加させるH.C.の種類が複数に及ぶので、特性の異なる吸着材を2種類以上組合せて用いるのが好ましい。例えば、シリカゲルとフッ素化合物樹脂をバインダとした繊維状ガラス材を組合せて用いると、上流の吸着材(シリカゲル)あるいはその周辺より微粒子(粒子状物質)の発生がある場合(微粒子は汚染源になるので)でも、下流にフッ素化合物樹脂をバインダとした繊維状ガラス材がフィルタ状で用いられるので、除塵され好ましい。従ってこのような吸着材を装置に組み込むことは、利用分野、装置規模、装置形状によっては好ましい。」(0022?0026段落)、
「【0044】
【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1
図1はクラス10,000のクリーンルームにおける半導体製造において、A工程からB工程にウエハを搬送する搬送装置1に、A工程とB工程の途中にウエハのストッカ2を備えたものである。」(0044段落)、
「【0052】実施例5
図7は実施例1におけるクラス10,000のクリーンルームでのウエハの搬送を、非メタン炭化水素を除去した空冷の雰囲気で行う場合を示す。以下、本例を詳細に説明する。クリーンルーム100内に入る前の外気101は、まず粗フィルタ102と空気調和器103で処理される。次いで空気はクリーンルーム100内に入る際にHEPAフィルタ104によって除塵されて、極低濃度のHCが共存するクラス10,000の濃度の空気105となる。すなわち、主に自動車から発生する極低濃度のHCは粗フィルタ102、空気調和器103、及びHEPAフィルタ104では除去されないため、クリーンルーム100内に導入されてしまう。空気105中のHCの濃度は非メタンHCで0.5?0.8ppmである。
【0053】水分(RH40?60%)、微粒子(クラス10,000)、及び極低濃度のHCを含むクリーンルーム100内の空気105は、まず除湿器(除湿装置)106によって水分が一定濃度以下になるように除湿される。本例の除湿器は電子除湿方式によるもので、クリーンルーム100内の上記湿度(RH40?60%)が30%以下になるように運転される。除湿後の空気は、次いでHC吸着材すなわちガス吸着除去装置107によって処理され、これにより極低濃度のHCが除去される。HC吸着材108と109は、通常大気中にある極低濃度のHCを除去するものであればどのようなものでもよい。
【0054】本例では吸着材108及び109としてのシリカゲル108、フッ素化合物樹脂をバインダとして繊維状のガラス材をフィルタ状に成形したもの、109を使用している。これにより、空気中の非メタンHCが0.1ppm以下の濃度まで除去される。メタンHCが0.1ppm以下とされた空気は搬送装置1の前方より導入され、搬送装置1のウエハの存在する空間及びストッカ2の空間は該空気の雰囲気となる。ウエハを該空気雰囲気に暴露しておくと、接触角の増加防止効果があるので、次のB工程における成膜がウエハ上にしっかりと強く(付着力大で)できる。」(0052?0054段落)

4.対比・判断
本願発明と刊行物発明とを対比する。
(a)刊行物発明の「クリーンルーム」、「ウエハ9」、「ウエハ保管庫1」、「有害ガス10を含む空気」、「ファン15」は、それぞれ、本願発明の「クリーンルーム」、「基材又は基板」、「ストッカ」、「気体」、「ファン」に相当する。

(b)刊行物発明の「シリカゲル2」、「フッ素樹脂」、「ガラス繊維フィルタ3」は、それぞれ、本願発明の「シリカゲル」、「フッ素化合物」、「ガラス」に相当する。そして、「シリカゲル」、「フッ素化合物」、「ガラス」が、「シリカゲル、ゼオライト、モレキュラーシーブ、アルミナ、珪藻土、活性炭、ガラス又はフッ素化合物から選ばれた少なくとも1種類」に包含されることは明らかであるから、刊行物発明の「ファン15による有害ガス10を含む空気を通す、シリカゲル2及びフッ素樹脂バインダのガラス繊維フィルタ3の吸着材を用いた主にH.C.からなる有害ガスを除去する手段」は、本願発明の「シリカゲル、ゼオライト、モレキュラーシーブ、アルミナ、珪藻土、活性炭、ガラス又はフッ素化合物から選ばれた少なくとも1種類の吸着材を用いた除去手段」に相当する。

したがって、本願発明と刊行物発明とは、
「クリーンルームに設置されて基材又は基板を収容する開閉可能なストッカであって、これらの内部の気体を流すファンと、該ファンによって流される気体を通す、シリカゲル、ゼオライト、モレキュラーシーブ、アルミナ、珪藻土、活性炭、ガラス又はフッ素化合物から選ばれた少なくとも1種類の吸着材を用いた除去手段とを備えるストッカ。」である点で一致し、以下の点で相違する。
相違点1
本願発明は、「該ファンによって流される気体を通す、少なくともイオン交換繊維を用いたイオン性ガス成分を5ppb以下にする除去手段」を備え、「前記イオン交換繊維の直径」が「1?1000μm」と特定されているのに対し、刊行物発明では、このような除去手段を備えていない点。

相違点2
本願発明は、「吸着材を用いた非メタン炭化水素を指標として0.2ppm以下にする除去手段、及び除塵性能を有する微粒子除去手段」を備えているのに対し、刊行物発明は、「吸着材を用いた」「除去する手段」を備えるものの、「非メタン炭化水素を指標として0.2ppm以下にする除去手段、及び除塵性能を有する微粒子除去手段」であるか否かが明らかでない点。

相違点について以下で検討する。
相違点1について
(a)まず、刊行物1の0012段落の「一般に、通常の基材や基盤に対してはSOx,NOx,HCl,NH_(3 )は通常の空気中の濃度レベルでは、接触角の増加に対し影響は少ない。・・・しかし、SOx,NOx,HCl,NH_(3 )の濃度が高い場合や、基材や基盤が敏感な場合や特殊な場合(例えば、基材表面に特殊な薄膜を被覆した場合)、通常では影響しない有害成分や濃度でも影響を受ける場合がある。例えば、・・・これら成分の空気中の濃度が高い場合、あるいは基材や基盤が特殊な処理をされ敏感な状態で取扱う場合」及び0013段落の「また、このような場合は別の周知の有害ガス除去材例えば活性炭、イオン交換繊維などを適宜組合せて用いることができる。使用する吸着材及び/又は吸収材の種類や使用条件は適宜に決めることができる。」との記載から、刊行物発明において、上記刊行物1に記載のように、「周知の有害ガス除去材」として、「イオン交換繊維」を組み合わせて用いることは、当業者にとって格別困難なこととはいえない。

(b)一方で、イオン性ガスの成分を2ppb以下に浄化する「イオン交換繊維」は、例えば、以下の周知文献1(「ふっ化水素濃度」を「2ppb以下」とする。)、周知文献2(「アンモニア」を「0.001ppm以下」、すなわち、1ppb以下とする。)に記載されているように、従来周知である。
(b-1)周知文献1.特開平6-142439号の図1及び「本発明はクリーンルーム内の微粒子のみならず微量のガス・イオンなどにより汚染された空気を浄化する方法に関するものである。」(0006段落)、「【実施例1】繊維径30μm のポリプロピレン製繊維不織布よりなる粒子除去用のフィルターに・・・200KGy を照射した後、・・・浸漬し、2時間反応させた結果、イオン交換容量2.5meg/g の親水基の導入された弱塩基性アニオン交換繊維不織布を得た。この不織布0.5gを第1図に示す実験装置の内径15mmφのガラスカラムに充填し、テドラバッグ内に調整したふっ化水素20ppbを3l/minの流量で通ガスしたところ、カラム出口のふっ化水素濃度は2ppb以下であった。」(0034段落)
(b-2)周知文献2.特開平6-134248号の図3及び「【産業上の利用分野】本発明は、比較的低濃度の揮発性有機物を含むガスを処理する方法に係わり、特に半導体工場或は医薬工業等におけるクリーンルーム内の空気浄化に関する。」(0001段落)、「【0014】 【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。 実施例1 図3は本発明の実施態様の一例を示す概略断面図である。図3にいて、UVランプ13は合成石英を用いた低圧水銀ランプであり、波長200nm以下の紫外線を照射する。ランプ出力は15Wのものを3本設置した。UVランプ14はオゾンレス石英を用いた低圧水銀ランプである。このランプは200nm以下の紫外線は照射しない。ランプ出力は15Wであり、3本を設置した。 【0015】イオン交換基担持フィルタは弱塩基性アニオンフィルタ17と強酸性カチオンフィルタ18を設置し、ファン4にてHEPAフィルタ5に6m^(3 )/minで送気するものである。入口側空気にエチルアルコール及びアンモニアをそれぞれ1ppm及び0.5ppmとなるように添加し、HEPAフィルタ5の出口側のそれぞれの濃度を測定したところ、エチルアルコールは0.001ppm以下、アンモニアは0.001ppm以下であった。 【0016】比較例1 実施例1と同一の装置において、UVランプ13及びUVランプ14を点灯せずに、エチルアルコール及びアンモニアを含む空気を処理した。入口側エチルアルコール及びアンモニア濃度は実施例1と同一とした。HEPAフィルタ5の出口濃度はエチルアルコール0.95ppm、アンモニア0.001ppm以下となり、エチルアルコールはほとんど除去されていない。」(0014?0016段落)

(c)また、イオン交換繊維の直径を「1?1000μm」とすることは、例えば、以下の周知文献3、4に記載されているように、当業者が、フィルタの形状、用途、効果、経済性等で適宜選択して決めることが出来る設計的事項である。
(c-1)周知文献3.特開昭63-12315号の「本発明のフィルタを適用した気体浄化装置の具体例としては、家庭、事業所、病院等における空気清浄器(装置)や、各種産業、工業における気体の清浄器(装置)等が挙げられる。」(第2頁右上欄第13行?第17行)、「イオン交換繊維の直径は1?1000μm、好ましくは5?200μmでありフィルタの形状、構造、用途、効果等で適宜決めることが出来る。 一方、前記通常の繊維は、イオン交換繊維と混在させることで汚染物質の内、特に微細粒子(例、0.1μm程度の微細な粒子)を捕集・除去でき、かつフィルタの形状を長時間維持しうるものであれば良い、この通常の繊維の材質としては、上記イオン交換繊維用の素材や、ガラス繊維等を用いることが出来る。 通常の繊維の繊維径は、0.1?100μm好ましくは0.5?50μmであるが、材質や繊維径はフィルタの形状、用途、効果、経済性等で適宜選択して決めることが出来る。」(第3頁右上欄第13行?同頁左下欄第6行)
(c-2)周知文献4.特開昭63-97246号の「家庭、事業所、病院等における空気清浄方法及び装置、或いは各種産業、工業における気体の清浄方法及び装置に関する。」(第1頁右下欄第8行?第10行)、「イオン交換フィルターは、気体流から荷電粒子状物質及び酸性ガス、アルカリ性ガス並びに臭気性ガスを捕集しうるものであればどのようなものでも用いうる。 イオン交換フィルタとしてはネット状、織物状或いは繊維状の空隙性高分子支持体上にイオン交換体をグラフト重合により支持させたものが用いられ、これらは周知の方法により適宜製造することができる。」(第3頁左上欄第20行?同頁右上欄第8行)、「イオン交換フィルターを構成する繊維径は1?1000μ好ましくは5?200μであり、その径は装置の形状、構造、用途、希望する効果等により適宜選択することができる。」(第5頁左上欄第1行?第4行)

(d)以上、上記(a)乃至(c)の検討から、刊行物発明の「ウエハ保管庫1」において、「周知の有害ガス除去材」として、従来周知である「イオン性ガス成分を5ppb以下にするイオン交換繊維」を組み合わせて用いることは、当業者が容易になし得るものである。また、その際に、該繊維の直径を1?1000μmとすることは、当業者が必要に応じて適宜設定し得る程度の事項にすぎない。
また、刊行物発明の「ファン15」は、「ウエハ保管庫1」の内部の「有害ガス10」を除去するという目的を考慮すれば、前記イオン交換繊維は、刊行物発明の「ファン15によって流される有害ガス10を含む空気を通す」ことは自明の事項である。

相違点2について
(a)刊行物2の0052段落の「図7は実施例1におけるクラス10,000のクリーンルームでのウエハの搬送を、非メタン炭化水素を除去した空冷の雰囲気で行う場合を示す。以下、本例を詳細に説明する。・・・空気105中のHCの濃度は非メタンHCで0.5?0.8ppmである。」と0054段落の「本例では吸着材108及び109としてのシリカゲル108、フッ素化合物樹脂をバインダとして繊維状のガラス材をフィルタ状に成形したもの、109を使用している。これにより、空気中の非メタンHCが0.1ppm以下の濃度まで除去される。」との記載及び図7から、刊行物2には、「非メタン炭化水素」を指標として「0.1ppm以下」にする「シリカゲル108、フッ素化合物樹脂をバインダとして繊維状のガラス材をフィルタ状に成形したもの、109」からなる「吸着材」が、記載されていることは明らかである。

(b)そして、刊行物2の0026段落の「吸着材は、接触角を増加させるH.C.の種類が複数に及ぶので、特性の異なる吸着材を2種類以上組合せて用いるのが好ましい。例えば、シリカゲルとフッ素化合物樹脂をバインダとした繊維状ガラス材を組合せて用いると、上流の吸着材(シリカゲル)あるいはその周辺より微粒子(粒子状物質)の発生がある場合(微粒子は汚染源になるので)でも、下流にフッ素化合物樹脂をバインダとした繊維状ガラス材がフィルタ状で用いられるので、除塵され好ましい。」との記載から、上記(a)における「シリカゲル108、フッ素化合物樹脂をバインダとして繊維状のガラス材をフィルタ状に成形したもの、109」からなる「吸着材」は、非メタン炭化水素を除去する手段であるとともに、「除塵され」る性能を有する微粒子を除去する手段であることも明らかである。

(c)さらに、刊行物2に記載の「シリカゲル108、フッ素化合物樹脂をバインダとして繊維状のガラス材をフィルタ状に成形したもの、109」からなる「吸着材」と、刊行物発明の「シリカゲル2及びフッ素樹脂バインダのガラス繊維フィルタ3」の「吸着材」とは、両者、「シリカゲル」及び「フッ素樹脂バインダ」の「ガラス」「繊維」「フィルタ」からなる「吸着材」の構成において共通するとともに、「H.C.」からなる有害ガスを除去するという課題においても共通する。

(d)上記(a)乃至(c)の検討の結果により、刊行物発明において、「シリカゲル2及びフッ素樹脂バインダのガラス繊維フィルタ3の吸着材」に代えて、刊行物2に記載の「シリカゲル108、フッ素化合物樹脂をバインダとして繊維状のガラス材をフィルタ状に成形したもの、109」を採用することにより、刊行物発明が、本願発明の如く、「シリカゲル、ゼオライト、モレキュラーシーブ、アルミナ、珪藻土、活性炭、ガラス又はフッ素化合物から選ばれた少なくとも1種類の吸着材を用いた非メタン炭化水素を指標として0.2ppm以下にする除去手段、及び除塵性能を有する微粒子除去手段」を備えたものとすることは、当業者が容易になし得ることである。

よって、本願発明は、刊行物1,2に記載された発明及び従来周知の技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。

5.むすび
以上のとおりであるから、本願は、請求項1ないし4及び6について検討するまでもなく、特許法第29条第2項の規定により拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-05-26 
結審通知日 2008-06-09 
審決日 2008-06-23 
出願番号 特願2000-245200(P2000-245200)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 安田 雅彦  
特許庁審判長 河合 章
特許庁審判官 橋本 武
松田 成正
発明の名称 基材又は基板表面の汚染防止方法及びストッカ  
代理人 松田 大  
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