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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06F
管理番号 1182352
審判番号 不服2006-3957  
総通号数 105 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-09-26 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-03-02 
確定日 2008-08-04 
事件の表示 平成10年特許願第293837号「文書処理装置及び記録媒体」拒絶査定不服審判事件〔平成12年 4月28日出願公開、特開2000-123008〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成10年10月15日の出願であって、平成17年2月18日付けで拒絶理由通知がなされ、同年4月25日付けで手続補正がなされ、さらに、平成17年11月10日付けで拒絶理由通知がなされ、平成18年1月16日付けで手続補正がなされたが、平成18年1月26日付けで平成17年11月10日付け拒絶理由通知書に記載した理由によって拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年3月2日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。

第2 本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年1月16日付け手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「画像の短辺あるいは長辺を、前記画像が印刷される印刷領域の短辺あるいは長辺と対応づける4通りの組み合わせから1つを設定することで、互いに対応づける辺を設定する設定手段と、
前記設定手段により対応づけた辺の設定と前記画像が印刷される用紙の設定とを含む制御情報を記録する記録手段と、
前記制御情報に含まれる用紙の設定が一枚の台紙中に複数の印刷領域を有する用紙の設定である場合には、前記画像の辺を前記台紙中の印刷領域の辺と対応付けた画像を印刷領域毎に出力する出力手段を有する文書処理装置。」

第3 引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平7-44557号公報(以下、「引用例」という。)には、次の事項が記載されている。

(ア)「【0014】
【作用】本発明の第1の特徴とする画像編集装置においては、文書内容の一部を矩形領域の枠で管理し、文書中の枠内に画像を表示する処理を行う場合、まず、枠設定手段(13)が、文書作成領域内に画像を表示する画像枠を設定し、枠属性設定手段(14)により、画像枠に当該画像枠の画像を表示する際の位置合せ属性を設定する。そして、画像表示手段(15)が、画像枠に画像を表示する場合、画像枠に設定された位置合せ属性に応じて、画像を変倍して、枠に合せて変倍した画像の位置を移動し、枠領域内に画像表示を行う。」

(イ)「【0025】このようなハードウェア装置に処理プログラムが搭載されて実現される画像編集装置は、機能的には、同図の本体装置部1に一部を重ねて示すように、ここでの画像編集の処理を行う文書処理部12に、枠の処理を行うための処理部の装置要素として、枠領域設定部13,枠属性設定部14,および画像編集処理部15が備えられて構成されている。」

(ウ)「【0026】・・・(中略)・・・文書内容の一部として画像編集を行う場合、文書処理部12において、枠領域設定部13により編集する文書の領域内に、画像編集を行うためのイメージ枠(画像枠)を設定し、枠属性設定部14により、イメージ枠に対して枠の位置合せ属性を設定する。これにより、画像編集処理部15が、文書処理部12において文書内の画像枠に設定された枠の位置合せ属性(枠フィット属性)に従って、枠内の画像を編集して表示する場合に、枠の位置合せ属性に従って変倍処理および移動処理を行う。」

(エ)「【0038】図4は、枠属性設定部の動作を説明するグラフィックユーザインタフェース画面の一例を示す図である。文書処理部が起動されると、図4に示すように、文書エディタと名前が付けられた文書処理のための編集ウィンドウ40が開かれ、この編集ウィンドウ40において、各々の文書に対する編集処理が行われる。ここでは、編集を行う文書41が編集ウィンドウ40の作業領域に表示され、文書41の編集作業が行われている様子を示している。」

(オ)「【0040】サブウィンドウ43を開くと、ここには、選択されたイメージ枠に対して枠属性として設定可能なそれぞれの属性情報の設定項目が表示されるので、この例のように、枠フィット属性を設定する。枠フィット属性は、選択可能な属性がメニュー形式で横一列に表示されているので、ここでの枠フィット属性となっている枠フィット「しない」,「縦に合せる」,「横に合せる」,「枠に内接」,「枠に外接」,「枠一杯に表示」のいずれかの項目を択一的に選択する。」

(カ)「【0041】これにより、文書41のイメージ枠42にはその枠フィット属性として「横に合せる」の属性が設定されたので、編集ウィンドウ40において、文書41のイメージ枠42における画像表示では、常にその枠フィット属性情報に従って、画像の横サイズが枠の横サイズと一致するように変倍されて表示される。」

(キ)「【0044】図5?図8を参照して、文書編集処理において画像編集を行う場合の画像編集処理を説明する。文書編集処理において、電子文書を表示する際に、図5(A)に示すように、文書処理部50に対して、画像表示要求51を行うと、文書処理部50は、画像編集処理部52において画像表示処理53を行う。この画像表示処理53では、図7に示すような処理フローにより、処理対象の枠に設定された枠フィット属性による変倍方法によって、枠内の画像の変倍処理を行い、各々の画像表示処理を行う。」

(ク)「【0046】・・・(中略)・・・すなわち、イメージ枠65の集合によりブロック64が構成され、ブロック64の集合によりフレーム63が構成され、フレーム63の集合によりページ62が構成される。そして、ページ62の集合により文書61が構成されている。」

(ケ)「【0049】イメージ枠属性の枠フィット属性として、枠フィットが「縦に合せる」に設定されている場合、ステップ74において、枠の縦に合せる変倍を行って画像表示を行う。すなわち、画像の縦サイズがイメージ枠の枠の縦サイズと一致する変倍率を求めて画像を変倍し、常に画像の縦サイズとイメージ枠の縦サイズが一致するように縦横比を保って表示する。この場合は、図8(B)に示すように、枠の上辺および下辺に画像82の上辺および下辺が合せられて、枠領域80に表示される。
【0050】イメージ枠属性の枠フィット属性として、枠フィットが「横に合せる」に設定されている場合、ステップ75において、枠の横に合せる変倍を行って表示を行う。すなわち、画像の横サイズがイメージ枠の横サイズと一致する変倍率を求めて、画像の変倍を行い、常に画像の横サイズとイメージ枠の横サイズが一致するように縦横比を保って表示する。したがって、この場合は、図8(C)に示すように、枠の左辺および右辺に画像83の左辺および右辺が合せられて枠領域80に表示される。」

(コ)「【0079】画像を回転する場合、仮想ファンクショキーによる編集項目の「回転」を選択する。回転を選択すると、直ちに回転の編集処理が実行され、処理対象の枠内に表示されている画像の中心を回転の中心点として、時計回りに90度回転された画像が表示される。また、シフトキーを押しながら仮想ファンクショキーによる編集項目の「回転」を選択すると、表示されているイメージの中心を回転の中心点として、反時計回りに90度回転された画像が表示される。」

以上の記載事項によると、引用例には、
「文書中のイメージ枠領域内に画像を表示する画像編集装置において、
前記文書のページは、画像を表示する矩形のイメージ枠の集合により構成され、
前記イメージ枠に、択一的に選択された枠フィット属性を設定する枠属性設定部と、
枠フィット属性が「縦に合せる」に設定された場合は、画像の縦サイズがイメージ枠の縦サイズと一致する変倍率を求めて画像を変倍し、画像の上辺および下辺をイメージ枠の上辺および下辺に合わせ、また、枠フィット属性が「横に合せる」に設定された場合は、画像の横サイズがイメージ枠の横サイズと一致する変倍率を求めて画像の変倍を行い、画像の左辺および右辺をイメージ枠の左辺および右辺に合わせ、グラフィックユーザインタフェース画面において文書のイメージ枠領域内に画像を表示する画像編集処理部と、
イメージ枠内の画像を90度回転させる指示を入力する仮想ファンクションキーと、
を備えたことを特徴とする画像編集装置。」
の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

第4 対比
(1)引用発明の「画像編集装置」は文書中の画像を編集するものであるから、本願発明の「文書処理装置」に対応する。

(2)引用発明の枠属性設定部が枠フィット属性として「縦に合せる」を設定すると、画像の縦サイズとイメージ枠の縦サイズとを一致させるように画像を変倍し、画像の上辺および下辺をイメージ枠の上辺および下辺に合わせるから(以下、この処理を「縦フィット処理」という)、画像の縦辺をイメージ枠の縦辺に対応付ける組み合わせを設定すると言える。
枠属性設定部が枠フィット属性として「横に合せる」を設定すると、画像の横サイズとイメージ枠の横サイズとを一致させるように画像を変倍し、画像の左辺および右辺をイメージ枠の左辺および右辺に合わせるから(以下、この処理を「横フィット処理」という)、画像の横辺をイメージ枠の横辺に対応付ける組み合わせを設定すると言える。
そして、枠属性設定部は、これらの枠フィット属性を択一的に設定するから、画像の辺とイメージ枠領域の辺とを対応付ける組み合わせから1つを設定することで、互いに対応付ける辺を設定するといえる。
また、本願発明の印刷と引用発明の表示は共に画像を出力する動作といえるから、本願発明の「画像が印刷される印刷領域」と引用発明の画像が表示される「イメージ枠領域」は、共に、「画像が出力される出力領域」である点で一致する。
してみると、本願発明の「設定手段」と引用発明の「枠属性設定部」は、「画像の辺を画像が出力される出力領域の辺と対応付ける組み合わせから1つを設定することで、互いに対応付ける辺を設定する設定手段」である点で一致する。

(3)引用発明の画像編集処理部は、画像をグラフィックユーザインタフェース画面に表示するから、画像を出力する出力手段ということができる。そして、画像は、前記のとおり、画像の辺を画像が出力される出力領域の辺と対応付けしたものである。
してみると、本願発明の出力手段と引用発明の画像編集処理部は、「画像の辺を出力領域の辺と対応付けた画像を出力領域に出力する出力手段」である点で一致する。

したがって、本願発明と引用発明は、次の点で一致する。
「画像の辺を、前記画像が出力される出力領域の辺と対応づける組み合わせから1つを設定することで、互いに対応づける辺を設定する設定手段と、
前記画像の辺を出力領域の辺と対応付けた画像を出力領域に出力する出力手段を有する文書処理装置。」

そして、以下の点で相違する。
<相違点1>
出力領域が、本願発明では「画像が印刷される印刷領域」であるのに対し、引用発明では画像が表示される「イメージ枠領域」である点。

<相違点2>
画像の辺と出力領域の辺との組み合わせが、本願発明では画像の短辺あるいは長辺を印刷領域の短辺あるいは長辺と対応付ける4通りの組み合わせであるのに対し、引用発明では画像の縦辺を「イメージ枠領域」の縦辺と対応付ける、あるいは、画像の横辺を「イメージ枠領域」の横辺と対応付ける2通りの組み合わせである点。

<相違点3>
本願発明は「前記設定手段により対応づけた辺の設定と前記画像が印刷される用紙の設定とを含む制御情報を記録する記録手段」を有するのに対し、引用発明は記録手段を有しない点。

<相違点4>
出力手段において、本願発明は「前記制御情報に含まれる用紙の設定が一枚の台紙中に複数の印刷領域を有する用紙の設定である場合」に画像を出力するものであるのに対し、引用発明は、このような場合に画像を出力するものではなく、また、本願発明の画像は「前記画像の辺を前記台紙中の印刷領域の辺と対応付けた」ものであるのに対し、引用発明は画像の辺を「イメージ枠領域」の辺に対応付けたものであり、また、本願発明は「印刷領域毎」に画像を出力するのに対し、引用発明は画像が表示される「イメージ枠領域」に画像を出力する点。

第5 当審の判断
<相違点1>について
文書処理装置の技術分野において、編集した文書を印刷することは普通に行われることであり、その際、印刷領域を設定して、その領域内に画像等の文書内容を配置するように編集することも普通のことである。
してみると、引用発明において、画像が印刷領域に印刷されるように「イメージ枠領域」を印刷領域に対応させ、「イメージ枠領域」を「画像が印刷される印刷領域」とすることは容易に想到し得ることである。

<相違点2>について
引用発明は、イメージ枠内の画像を90度回転させる指示を入力する仮想ファンクションキーを備えている。この指示に基づいてイメージ枠領域内の画像に対して90度の回転処理を行えば、画像の縦辺は横辺となり、横辺は縦辺となるから、この90度の回転処理の有無とイメージ枠領域内の画像に対する前記縦フィット処理と前記横フィット処理との組み合わせによって、画像(回転させる場合は、回転前の画像)の縦辺あるいは横辺とイメージ枠領域の縦辺あるいは横辺とを対応付ける、4通りの対応付けが行われることは普通に想到し得ることである。
また、1つの画像に対して複数の画像処理を一度に設定し、その設定に基づいて複数の画像処理を一度に実行することは普通に行われることである。
また、イメージ枠や画像において、縦辺と横辺のいずれか一方が短辺で他方が長辺である形状は普通のことである。
してみると、引用発明において、「イメージ枠領域」を「画像が印刷される印刷領域」とすると共に、画像及びイメージ枠を短辺と長辺とからなる形状とし、また、設定手段を90度回転処理の設定と縦フィット処理または横フィット処理の設定とを一度に設定できるものとすることにより、「画像の短辺あるいは長辺を、前記画像が印刷される印刷領域の短辺あるいは長辺と対応づける4通りの組み合わせから1つを設定することで、互いに対応づける辺を設定する設定手段」とすることは容易に想到し得ることである。

<相違点3>について
文書処理装置の技術分野において、文書の印刷用紙を設定することは普通に行われることである。
また、対応づけた辺の設定や用紙の設定によって文書の編集や印刷制御が行われるから、これらの設定が制御情報であるのは当然のことである。
また、設定された情報を記録する記録手段は周知な技術的手段である。
してみると、引用発明において、「前記設定手段により対応づけた辺の設定と前記画像が印刷される用紙の設定とを含む制御情報を記録する記録手段」は容易に想到し得ることである。

<相違点4>について
「一枚の台紙中に複数の印刷領域を有する用紙」を用いて「印刷領域毎」に画像を印刷し、シールやラベル等を作成する文書処理装置は周知である。その際、印刷用紙として「一枚の台紙中に複数の印刷領域を有する用紙」を設定することも普通のことである。
また、引用発明は、ページがイメージ枠の集合により構成されるから、1つのページに設定されるイメージ枠の数が複数である場合を想定したものである。
また、文書を編集する際に、印刷領域を設定して、その領域内に画像等の文書内容を配置するように編集することも普通のことである。
してみると、引用発明において、シールやラベル等を作成するために、「一枚の台紙中に複数の印刷領域を有する用紙」を設定し、その設定である場合、すなわち「前記制御情報に含まれる用紙の設定が一枚の台紙中に複数の印刷領域を有する用紙の設定である場合」に、複数のイメージ枠領域を複数の印刷領域に対応するよう設定し、その領域の画像を枠フィット属性に基づき「前記画像の辺を前記台紙中の印刷領域の辺と対応付けた」画像とし、イメージ枠領域の画像を「印刷領域毎」に画像を出力することは容易に想到し得ることである。

さらに、本願発明の構成によってもたらされる効果も、引用発明から当業者ならば容易に予測することができる程度のものであって、格別のものとはいえない。

第6 むすび
したがって、本願発明は、上記引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないから、他の請求項について検討するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論の通り審決する。
 
審理終結日 2008-06-04 
結審通知日 2008-06-09 
審決日 2008-06-20 
出願番号 特願平10-293837
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 成瀬 博之和田 財太  
特許庁審判長 立川 功
特許庁審判官 菅原 浩二
手島 聖治
発明の名称 文書処理装置及び記録媒体  
代理人 木村 秀二  
代理人 高柳 司郎  
代理人 大塚 康徳  
代理人 大塚 康弘  

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