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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61H
管理番号 1182961
審判番号 不服2006-11532  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-07 
確定日 2008-08-11 
事件の表示 特願2002-334322号「僧帽筋用指圧枕」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 6月17日出願公開、特開2004-166846号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成14年11月18日の出願であって、平成18年4月25日付けで拒絶査定がなされ、平成18年6月7日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成18年7月7日付けで手続補正がなされたものである。

2.本願発明
本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、平成18年7月7日付け手続補正書で補正された特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。
「使用者の肩側から背中の下側にかけて、その高さを次第に低くして成る略三角形状の僧帽筋当面部と、丸味のある凹部を設け、使用者の頭部を載置する頭部当面部との連設により枕全体が略滴形状に形成され、僧帽筋当面部において、使用者の背骨に当接する部分から両肩側にかけて、また、肩側から背中の下側にかけて、その高さを次第に低くしている複数の指圧用突起部を備えていることを特徴とする僧帽筋用指圧枕。」

3.引用刊行物
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内に頒布された刊行物である特開2002-191484号公報(以下、「引用刊行物1」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ア.「中心に楕円形の凹部を有し、この凹部から外方に向って順次せり上る周辺部を有する枕本体と、この枕本体に設けた外縁に向って傾斜する首当部を有する補助枕本体とで構成する表面を布地で被った枕であって、
前記枕本体の凹部と周辺部との境目近傍に対の空気孔を形成し、この対の空気孔が人の耳近傍に位置する構成とした枕。」(特許請求の範囲の請求項1)
イ.「本発明は、健康維持、頸椎の矯正又は治療用として役立つ枕に関する。」(段落【0001】)
ウ.「本発明は、図6、図7に示す如く、枕本体の任意の一辺に形成される略三角形状の突出部を、頸椎に当てるように使用する。即ち、仰向けになった状態で、その後頭部を枕本体の凹部に当接し、この首から頭全体を一度大きく後方に反らせるような所作をする。この所作により頸椎は、確実に伸ばされるので、この際に、当該頸椎が補助枕本体に位置するように、体の位置及び枕の位置・方向等を調整する。
この調整により、首から背中まで支えるとともに、就寝中に頸椎は最も自然な状態に保たれる。従って、頸椎への余分な負荷又は負担を解消できる。殊に、頸椎の最良の状態を持続させることができる。また、この突出部が頸椎及び肩部から背中の窪みにかけて支える形は、身体の緊張を和らげるとともに、正しい姿勢による心地よさが確保され、しかも爽快な眠りを誘うという副次的な効果を有する。
尚、図示の如く、枕本体と補助枕本体との境を頂点として、凹部を経由して後端に向かって順次低くする構成を採用することで、首及び/又は頸椎に対する刺激、指圧効果、又は引伸ばし感覚の確保が図れること、又はむち打ち、頭痛、肩こり等の疾病にも効果が期待できると考えられること、等の実益がある。」(段落【0014】?【0016】)
エ.「図1?図4において、1は枕本体で、この枕本体1の中央部に楕円形、又は略円形状を呈する凹部2が形成し、この凹部2から周辺部3に向かってせり上がる構造である。4は頸椎当て用として役立つ略三角形状の首当部40を有する補助枕本体で、枕本体1の任意の一辺に形成される。・・・前記枕本体1と補助枕本体4との関係を説明すると、枕本体1と補助枕本体4との境目14と、枕本体1の後端15との高さを、境目14>後端15として、頭部H1の凹部2へのセットの容易化、又は頭の安定設置と、ス゛レ止めが図れること、また首H2及び/又は頸椎H3に対する刺激等が図れること、等の実益がある。また枕本体1の中央より両側端10、11に向かって緩やかに傾斜する構成として、枕からの転がり緩和、載り上がりの容易化等に役立つ実益がある。また枕本体1及び補助枕本体4は、布地5で被覆されている。尚、図5は布地50に、・・・軟質性充填材、・・・植物性充填材、又は・・・硬質性充填材、等の各種の充填材6を詰めることで、前記枕本体1及び補助枕本体4の形状を確保した枕であり、前述の例と、略同様に考えられること、又はこの充填材6を利用して、刺激・指圧等の効果と、・・・前記枕本体1及び/又は補助枕本体4等の形状、高さ、硬軟等を確保する。」(段落【0020】)
オ.図3には、補助枕本体4と枕本体1とで1辺を接して形成する枕全体を略ホームベース状に形成した点が図示されている。図4及び図6には、補助枕本体4が枕本体1との境目14から前端にかけて、すなわち使用者の肩側から背中の下側にかけて、その高さを次第に低くして成る点が図示されている。

以上の記載事項及び図示内容を総合すると、上記引用刊行物1には、以下の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「使用者の肩側から背中の下側にかけて、その高さを次第に低くして成る略三角形状の補助枕本体と、楕円形の凹部を有し、頭部を当接する枕本体とで1辺を接して形成する枕全体が略ホームベース状に形成された指圧効果を奏し首から背中を支える枕。」

また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内に頒布された刊行物である実願昭47-130291号(実開昭49-85892号)のマイクロフィルム(以下、「引用刊行物2」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
カ.「即ち本考案は第1図に示したように人体の下肢を除く上半身の背部全般に対応する形状と大きさから成る柔軟なゴム製ベース(1)の表面全般に,長さに長短ある先丸円錐形のゴム製の指頭状突子(2)を高さを加減することにより上半身背部の曲線に合わせて無数に配設した指圧代用上半身背部全面マットに係るものである。」(明細書第1頁第19行?第2頁第5行)
キ.「上記の指頭状突子(2)のゴム製ベース(1)に対する延設は型により一体的に成形するものであり,また同突子の上半身背部曲線に合わせた配設の仕方は,無数の指頭状突子(2)を碁盤の目のように縦横に規則正しく配設すると共に,第2図に示したように・・・仰臥した場合の自然的な人体の起伏に合致した状態に配設するものである。」(明細書第2頁第6行?第2頁第17行)
ク.「特に本考案は無数の指頭状突子(2)のベースに対する配設を,仰臥した場合の上半身背部の極めて自然的な曲線乃至起伏線に合わせたので,・・・指圧を施したと同様の効果を挙げ得る。」(明細書第3頁第12行?第3頁第18行)

また、原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に日本国内に頒布された刊行物である登録実用新案第3057917号公報(以下、「引用刊行物3」という。)には、図面とともに、以下の事項が記載されている。
ケ.「また、前記クッション体の表面に凹凸部を施すことにより、優れた通気性やツボ刺激効果を兼ね備えることができる。」(段落【0011】)
コ.「前記胸椎保護部22は、就寝中に、脊椎の一部である胸椎部24の隙間を支え、胸椎部24や腰椎部のバランスを整えるように、嵩高状で、やや緩やかな傾斜を呈して形成されている。また、前記胸椎保護部22の大きさや厚さ、また傾斜角度は、使用者の体型に応じて適宜調節することが好ましい。」(段落【0020】)
サ.「また、本考案の組合せ枕の他の好適例として、クッション体20の表面に凹凸部27を施すことが好ましい。前記凹凸部27は、クッション体20の肩保護部21および胸椎保護部22の表面に施されており、就寝中に、優れた通気性やツボ刺激効果を実現することができる。
前記凹凸部27は、クッション体20の表面を波形に形成したり、または表面に凹凸が形成されるように、凹凸状に形成した他素材の部材を設置してもよい。さらに、半球状の磁石等を複数埋設してもよい。」(段落【0022】?【0023】)

(3)対比・判断
本願発明と引用発明を対比すると、その機能及び構成からみて、引用発明の「略三角形状の補助枕本体」は、首から背中を支えるものだから、本願発明の「略三角形状の僧帽筋当面部」に相当し、以下同様に、「楕円形の凹部」は「丸味のある凹部」に、「頭部を当接する」は「使用者の頭部を載置する」に、「枕本体」は「頭部当面部」に、それぞれ相当する。
また、後者の「指圧効果を奏し肩から背中を支える枕」は、指圧効果を奏し、僧帽筋を含む背中を支えるから、前者の「僧帽筋用指圧枕」に相当する。
また、後者の「補助枕本体と」「枕本体とで1辺を接して形成する枕全体が略ホームベース状に形成された」と前者の「僧帽筋当面部と」「頭部当面部との連設により枕全体が略滴形状に形成され」とは、「僧帽筋当面部と頭部当面部との連設により枕全体が形成された」の概念で共通する。
そうすると、両者は、「使用者の肩側から背中の下側にかけて、その高さを次第に低くして成る略三角形状の僧帽筋当面部と、丸味のある凹部を設け、使用者の頭部を載置する頭部当面部との連設により枕全体が形成された僧帽筋用指圧枕。」の点で一致しており、以下の点で相違している。
(相違点1)
前者は、枕全体が略滴形状に形成されているのに対し、後者は、枕全体が略ホームベース形状に形成されている点。
(相違点2)
前者は、僧帽筋当面部において、使用者の背骨に当接する部分から両肩側にかけて、また、肩側から背中の下側にかけて、その高さを次第に低くしている複数の指圧用突起部を備えているのに対し、後者は、そのような突起を備えていない点。

上記相違点について検討する。
(相違点1について)
枕の形状を角ばった形状とするか、角のない丸みを持った形状とするかは、当業者が適宜決定し得る事項にすぎず、上記相違点1に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。
(相違点2について)
指圧のための複数の指圧用突起部を備えることは、引用刊行物2や引用刊行物3に記載されているように、従来、枕や敷物マットの分野で、周知の技術にすぎず、かつ突起部の大きさや高さを使用者の体型、特に背中の曲面に応じて適宜調節する点が引用刊行物2や引用刊行物3に記載されているから(引用刊行物2のカ.,キ.及びク.の記載、引用刊行物3のコ.の記載)、上記周知技術を引用発明に適用して上記相違点2に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、本願発明による効果も、引用発明、引用刊行物2,3に記載された発明及び周知技術から当業者が予測し得た程度のものであって、格別のものとはいえない。

6.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明、引用刊行物2,3に記載された発明及び周知技術に基いて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-05 
結審通知日 2008-06-18 
審決日 2008-06-26 
出願番号 特願2002-334322(P2002-334322)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A61H)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田中 玲子  
特許庁審判長 山崎 豊
特許庁審判官 蓮井 雅之
鏡 宣宏
発明の名称 僧帽筋用指圧枕  
代理人 神崎 正浩  

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