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審決分類 審判 査定不服 発明同一 特許、登録しない。 A63F
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A63F
管理番号 1183083
審判番号 不服2005-24711  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-12-22 
確定日 2008-08-14 
事件の表示 特願2001-270709「組み合わせ遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 3月11日出願公開、特開2003- 71094〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は平成13年9月6日の出願であって、平成17年11月29日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年12月22日付けで本件審判請求がされるとともに、同日付けで明細書についての手続補正(以下「本件補正」という。)がされたものである。

第2 補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成17年12月22日付けの手続補正を却下する。

[理由]
本件補正は特許請求の範囲(本件補正前後において単一の請求項1からなる。)の補正を含んでおり、特許請求の範囲に限っていうと「前記遊技領域(4a)内に発射されたにも拘わらず停電発生時に入賞していない個数分の遊技球を、電源復帰後に払い出し手段(37)から払い出すように構成」を「前記遊技領域(4a)内に発射されたにも拘わらず停電発生時に入賞していない個数分の遊技球を、電源復帰後に遊技者に対して払い出し手段(37)から払い出すように構成」(下線部が補正により追加された)と補正するものである。
上記補正は、形式的には「前記遊技領域(4a)内に発射されたにも拘わらず停電発生時に入賞していない個数分の遊技球」の払い出し対象者を「遊技者」と特定するものであるが、遊技球の払い出し対象者は遊技機を特定するものではないし、払い出し対象者は常に遊技者である。
したがって、上記補正は特許請求の範囲の減縮を目的とする(平成18年改正前特許法17条の2第4項2号)ものには該当しないし、請求項削除(同項1号)、誤記の訂正(同項3号)又は明りようでない記載の釈明(同項4号)の何れにも該当しない。
すなわち、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第4項の規定に違反している。

[補正の却下の決定のむすび]
以上のとおりであるから、特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により、本件補正は却下されなければならない。
よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。

第3 本件審判請求についての判断
1.本願発明の認定
本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年8月4日付けで補正された明細書の特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定される次のとおりのものと認める。
「遊技領域(4a)に複数個の入賞口(53)(22)?(28)が配置された遊技盤(4)と、前記遊技領域(4a)に向けて遊技球を発射する発射手段(9)とを備え、前記発射手段(9)により単位ゲーム毎に所定数の遊技球を前記遊技領域(4a)へと発射しつつゲームを行うようにした組み合わせ遊技機において、電源供給の異常により遊技を中断する場合に所定の遊技情報よりなるバックアップ情報を記憶保持するバックアップ記憶手段(92)と、遊技再開時の単位ゲームにおいて発射可能な遊技球数、若しくはその発射可能な遊技球数を求めるための所定の値を前記バックアップ情報に基づいて設定するバックアップ復帰手段(93)と、前記入賞口(53)(22)?(28)への遊技球の入賞を検出する入賞検出手段(54)(22a)?(28a)と、該入賞検出手段(54)(22a)?(28a)の検出信号に基づいて前記入賞口(53)(22)?(28)への入賞個数を計数する入賞個数計数手段(84)と、前記発射手段(9)による遊技球の発射を検出する発射検出手段(14)と、少なくとも前記発射検出手段(14)の検出信号に基づいて前記遊技領域(4a)に打ち込まれた遊技球数である有効発射個数を計数する有効発射個数計数手段(83)とを備え、前記バックアップ情報は前記入賞個数計数手段(84)によって計数された入賞個数を含み、前記バックアップ復帰手段(93)は、前記バックアップ記憶手段(92)に前記バックアップ情報として記憶された前記入賞個数を、遊技再開時の前記有効発射個数計数手段(83)による有効発射個数の初期値に設定するように構成され、前記遊技領域(4a)内に発射されたにも拘わらず停電発生時に入賞していない個数分の遊技球を、電源復帰後に払い出し手段(37)から払い出すように構成されていることを特徴とする組み合わせ遊技機。」

2.先願明細書の記載事項
本願の出願前に出願され、出願後に公開(特開2003-38727号)された特願2001-230513号(以下「先願」という。)の願書に最初に添付された明細書又は図面(以下、これらを併せて「先願明細書」という。)には、図面とともに以下のア?セの記載がある。
ア.「所定数の遊技媒体の発射を単位遊技とし、該単位遊技における複数の入球領域への遊技媒体の入球に関連した識別情報を表示し、該識別情報の組合せに基づき賞態様を決定する遊技機において、
前記単位遊技において発射された遊技媒体の数を計数する発射数計数手段と、
前記単位遊技において前記入球領域に入球した遊技媒体の数を計数する入球数計数手段と、
前記単位遊技における前記入球数計数手段にて計数された計数値を一時的に記憶することが可能な入球数特別記憶手段と、
前記入球数特別記憶手段に記憶されている計数値を、発射数として前記発射数計数手段の計数値に置き換える計数値置換手段と、
を備えることを特徴とする遊技機。」(【請求項1】)
イ.「【従来の技術】パチンコ機と通称される遊技機には組合せ式弾球遊技機(アレンジボール遊技機)と呼ばれる機種の一群がある。これは、例えば1ゲームで16個の遊技球を発射することができ、発射された遊技球が遊技盤の流下経路上に設けられた入球口や、盤面下部の前面側に1?16までの数字が記されたケース内の入球口に直接入る毎に、該ケースの該当数字部分が点灯し、これが1ゲーム内で予め定められた組合せで点灯すれば、その組合せに応じた得点が付与され、総得点に基づき相当数の遊技球等の払出しが行われる。このような組合せ式弾球遊技機では、1ゲームに発射することが可能な遊技球数に上限を設けているために、発射される遊技球を検知し計数するための発射球計数手段が設けられている。」(段落【0002】)
ウ.「異常発生時やエラー発生時に、発射された遊技媒体が遊技領域を流下している場合や、発射誘導レール(発射誘導部)に乗っている場合等には、異常発生後やエラー発生後に入球領域に入球したときは該入球が無効となる。したがって、発射数は計数されるものの、入球が無効となって実際の入球数が発射数と異なる不具合が生じることとなる。すなわち、単位遊技において定められた遊技媒体数内で組合せ遊技を行う遊技機では、単位遊技における入球数が上限値に満たない不具合を発生させることとなり、次の単位遊技へ移行できなくなる。また該不具合により、遊技者にとっては組合せを増やす機会等が減ることとなって不利益を発生させる。なおこの場合は、異常回復後やエラー回復後において異常発生時やエラー発生時の発射数をバックアップしこれを参照して遊技を復帰させる場合である。したがって、本発明においては、かかる不具合を解消するべく単位遊技における入球領域への入球数も計数するとともに、該計数値を電断等の異常発生時やエラー発生時にバックアップし、異常回復後やエラー回復後には該バックアップした計数値を発射数として発射数計数手段の計数値に置き換え、置き換えた後の発射数計数手段の計数値を参照して発射数制御を行うものとした。よって、電断等の異常発生やエラー発生があった場合でも単位遊技における発射数制御を正確に行うことが可能となる。」(段落【0007】)
エ.「前面部に形成される遊技盤10の表面構造について説明する。・・・遊技盤10には、遊技盤10の表面に設けられた外レール10cと内レール10dとにより略円形状の遊技領域11が形成され、遊技領域11内には、・・・第1変動入球装置として役物作動口(特定入球口)21と、・・・第2変動入球装置としての役物作動口(得点増加装置作動口)23と、16個の入球領域が相互隣接して配置された16連入球口24と、16連入球口24の各入球領域に該当する識別情報を点灯表示する入球図柄表示装置(識別情報表示装置)25と、多数の障害釘(図示略)等が配設されている。」(段落【0074】)
オ.「役物作動口(特定入球口)21は、・・・内部に役物作動口入球検知スイッチ21c(図7参照)を備えており、この入球検知スイッチ21cにおいて遊技球が検知されると、誘導増加装置作動領域(特定入球領域)19aへの入球が有効となる。」(段落【0046】)
カ.「役物作動口(得点増加装置作動口)23は、・・・内部に役物作動口入球検知スイッチ23c(図7参照)を備え、該入球検知スイッチ23cに遊技球が検知されると、入球図柄表示装置25の所定の識別情報(概ね入球困難な入球領域に対応した識別情報)が点灯表示されるとともに、得点増加装置(賞態様増加装置)が作動する。」(段落【0079】)
キ.「16連入球口24は、遊技領域11の最下部に配置され、その前方側には、入球図柄表示装置(識別情報表示装置)25が配設されている。16連入球口24の内部には、それぞれ16連入球検知スイッチ25a(図3参照)が設けられ、該検知スイッチ25aに遊技球が検知されると、その入球領域に該当する入球図柄表示装置25の識別情報(数字ランプ)が点灯表示される。なお、遊技機1においては、遊技球16個の発射を単位遊技として、その16個において点灯表示された識別情報の組合せに基づき賞態様が決定される。」(段落【0080】)
ク.「補助電源回路556は、停電等による電源受電基板128からの電力供給の遮断等により、定電圧回路部552からの電力供給が途絶えるか、あるいは出力電圧が所定値以下に降下した場合に、RAM681,481を備えたCPU601,401(図14参照)に必要な作動電圧を確保するためのものである。」(段落【0101】)
ケ.「発射数カウントジョブ(S400)では、球送りカウントスイッチ95,槌先球検知スイッチ94(図8参照)の検知情報、ファール球センサ197(図8参照)の信号に基づくファール球などのそれぞれの確認及び発射回数カウンタの更新が行われる。なお、主制御部140(図3参照)に設けられた発射回数カウンタには、球送りカウントスイッチ95(図8参照)によってカウントされた発射球数とファール球センサ197(図8参照)にて検出されたファール球との差、すなわち有効発射球数が書き込まれる。」(段落【0121】)
コ.「本実施例の遊技機1には、停電等の電力供給異常発生時に各遊技制御部に記憶されている遊技情報をバックアップする機能が具備されている。図18及び図19に示したように、本実施例では、停電等により電源受電基板128からの電力供給が遮断され、定電圧回路部552からの電力供給が途絶えるか、あるいは出力電圧が所定値以下に降下した場合(電断時)にバックアップ電源が供給され、そのバックアップ電圧に基づいて主制御部140のRAM481又は賞球制御部(払出制御部)150のRAM681に記憶されている遊技情報が記憶保持されるものとされている。」(段落【0177】)
サ.「具体的に、停電等による電源電圧低下を異常として検出し、停電復帰後に停電前の遊技状態に基づく遊技続行が可能となるように、停電直前の制御部のワークメモリ(記憶領域)内に記憶された、遊技状態を示す遊技状態情報(以下、単に遊技情報とも言う)をバックアップする態様を例にとり説明する。」(段落【0178】)
シ.「遊技機1は、少なくとも3つの制御部、すなわち主制御部140、賞球制御部(払出制御部)150及び図柄表示装置制御部160を有している。従って、停電直前作動状態の正確な回復を行う観点においては、それら全ての制御部140、150、160のそれぞれに上記バックアップ機能実現部分を付加しておくことが望ましいといえる。しかし、遊技者の利益に直接的に関連する制御部、すなわち価値媒体としての遊技球の流通に関連する情報(価値媒体情報)についての制御を行う主制御部140及び賞球制御部(払出制御部)150の遊技情報をバックアップするのみでも停電直前作動状態をかなりの精度で回復できることも多く、この場合は主制御部140及び/又は賞球制御部(払出制御部)150にバックアップ機能実現部分を付加する態様とすることができる。」(段落【0179】)
ス.「本実施態様においては、図46及び図19に示すように、CPU401,601のワークメモリエリアを形成するRAM481,681に、バックアップ電源としての蓄電手段が接続されている。この場合、停電等の異常発生時には、蓄電手段からの補助電力の供給により、RAM481,681内に遊技態様を成立させるための遊技媒体情報(賞球数情報、貸球数情報、入球数情報、発射数情報等)が記憶・保持(バックアップ)されることとなる。」(段落【0182】)
セ.「電断回復時の発射制御について詳細を説明すると、本実施例の遊技機1は、1ゲーム中に発射された遊技球の数を計数する発射数カウンタ(CPU401)と、該発射数を記憶する発射数データ記憶領域(RAM481)とを備えている。また、1ゲーム中に各入球領域(16連入球口24、役物作動口21、得点増加装置作動口23等)に入球した遊技球の数を計数する入球数カウンタ(CPU401)と、該入球数を記憶する入球数データ記憶領域591(RAM481)とを備えている。ここで、電断発生時には、上記入球数データ記憶領域591に記憶されている入球数をバックアップするべく処理がなされる。」(段落【0193】)

3.先願明細書記載の発明の認定
先願明細書記載イの「組合せ式弾球遊技機(アレンジボール遊技機)」は記載アの「所定数の遊技媒体の発射を単位遊技とし、該単位遊技における複数の入球領域への遊技媒体の入球に関連した識別情報を表示し、該識別情報の組合せに基づき賞態様を決定する遊技機」の具体例である。「弾球遊技機」であれば記載アの「遊技媒体」を「遊技球」と表現することには何の問題もない。そして、この組合せ式弾球遊技機には「役物作動口(特定入球口)21」、「役物作動口(得点増加装置作動口)23」及び「16連入球口24」が備わっており(これら全体が記載アの「入球領域」に該当)、それぞれに入球検知スイッチが設けられている(記載オ?キ参照)。そして、記載セの「入球数カウンタ」(記載アの「入球数計数手段」に該当)が、入球検知スイッチの検出信号により入球領域に入球した遊技球の数を計数することは明らかであり、該入球数が記載アの「単位遊技において前記入球領域に入球した遊技媒体の数」であって、RAMの入球数データ記憶領域に記憶される(記載セ参照)。
RAMは、発射数データを記憶する発射数データ記憶領域も有し、同データは球送りカウントスイッチによってカウントされた発射球数とファール球センサにて検出されたファール球との差、すなわち有効発射球数であり(記載ケ,セ参照)、それが記載アの「単位遊技において発射された遊技媒体の数を計数する発射数」である。そして、入球数と発射数データは、停電等の異常発生時に記憶・保持(バックアップ)される仕組みになっている(記載ス参照)。
以上によれば、先願明細書には次のような発明が記載されていると認めることができる。
「所定数の遊技球の発射を単位遊技とし、遊技領域内に設けられた16連入球口を含む複数の入球領域への該単位遊技における遊技球の入球に関連した識別情報を表示し、該識別情報の組合せに基づき賞態様を決定する組合せ式弾球遊技機において、
前記複数の入球領域の各々には、入球検知スイッチが設けられており、
球送りカウントスイッチ及びファール球センサを有し、前記単位遊技において、前記球送りカウントスイッチによってカウントされた発射球数と前記ファール球センサにて検出されたファール球との差、すなわち有効発射球数を計数する発射数計数手段と、
前記単位遊技において、前記入球検知スイッチ前記入球検知スイッチの検出信号により前記各入賞口に入球した遊技球の数を計数する入球数計数手段と、
前記発射数をRAMの発射数データ記憶領域に、前記入球数をRAMの入球数データ記憶領域にそれぞれ記憶し、これらデータを停電等の異常発生時に記憶・保持する構成とし、
電断回復時には、入球数として記憶されている計数値を、発射数として前記発射数計数手段の計数値に置き換える計数値置換手段と、
を備える組合せ式弾球遊技機。」(以下「先願発明」という。)

4.本願発明と先願発明の対比
先願発明の「単位遊技」、「遊技領域」及び「16連入球口を含む複数の入球領域」は、本願発明の「単位ゲーム」、「遊技領域(4a)」及び「複数個の入賞口(53)(22)?(28)」にそれぞれ相当し、先願発明がそれら入賞口が配置された遊技盤及び遊技領域に向けて遊技球を発射する発射手段を備えることは明らかである。
先願発明は「組合せ式弾球遊技機」であるから、本願発明の「組み合わせ遊技機」に含まれる。
先願発明の「入球検知スイッチ」及び「入球数計数手段」は、本願発明の「前記入賞口(53)(22)?(28)への遊技球の入賞を検出する入賞検出手段(54)(22a)?(28a)」及び「該入賞検出手段(54)(22a)?(28a)の検出信号に基づいて前記入賞口(53)(22)?(28)への入賞個数を計数する入賞個数計数手段(84)」にそれぞれ相当する。
先願発明の「球送りカウントスイッチ」及び「有効発射球数を計数する発射数計数手段」は、本願発明の「前記発射手段(9)による遊技球の発射を検出する発射検出手段(14)」及び「少なくとも前記発射検出手段(14)の検出信号に基づいて前記遊技領域(4a)に打ち込まれた遊技球数である有効発射個数を計数する有効発射個数計数手段(83)」にそれぞれ相当する。
先願発明の「停電等の異常発生時」は本願発明の「電源供給の異常により遊技を中断する場合」に相当し、先願発明の「入球数」は停電等の異常発生時に記憶・保持され、電断回復時には、発射数として発射数計数手段の計数値に置き換えられるのだから、上記「入球数」は本願発明における「遊技再開時の単位ゲームにおいて発射可能な遊技球数、若しくはその発射可能な遊技球数を求めるための所定の値」を設定する基礎となる「所定の遊技情報よりなるバックアップ情報」に相当する。当然、本願発明の「バックアップ記憶手段(92)」及び「バックアップ復帰手段(93)」は先願発明にも備わっており、「前記バックアップ情報は前記入賞個数計数手段(84)によって計数された入賞個数を含」むことも本願発明と先願発明の一致点である。さらに、先願発明において「電断回復時には、入球数として記憶されている計数値を、発射数として前記発射数計数手段の計数値に置き換える」ことと、本願発明において「前記バックアップ記憶手段(92)に前記バックアップ情報として記憶された前記入賞個数を、遊技再開時の前記有効発射個数計数手段(83)による有効発射個数の初期値に設定するように構成」したことにも相違がない。
したがって、本願発明と先願発明は、
「遊技領域(4a)に複数個の入賞口(53)(22)?(28)が配置された遊技盤(4)と、前記遊技領域(4a)に向けて遊技球を発射する発射手段(9)とを備え、前記発射手段(9)により単位ゲーム毎に所定数の遊技球を前記遊技領域(4a)へと発射しつつゲームを行うようにした組み合わせ遊技機において、電源供給の異常により遊技を中断する場合に所定の遊技情報よりなるバックアップ情報を記憶保持するバックアップ記憶手段(92)と、遊技再開時の単位ゲームにおいて発射可能な遊技球数、若しくはその発射可能な遊技球数を求めるための所定の値を前記バックアップ情報に基づいて設定するバックアップ復帰手段(93)と、前記入賞口(53)(22)?(28)への遊技球の入賞を検出する入賞検出手段(54)(22a)?(28a)と、該入賞検出手段(54)(22a)?(28a)の検出信号に基づいて前記入賞口(53)(22)?(28)への入賞個数を計数する入賞個数計数手段(84)と、前記発射手段(9)による遊技球の発射を検出する発射検出手段(14)と、少なくとも前記発射検出手段(14)の検出信号に基づいて前記遊技領域(4a)に打ち込まれた遊技球数である有効発射個数を計数する有効発射個数計数手段(83)とを備え、前記バックアップ情報は前記入賞個数計数手段(84)によって計数された入賞個数を含み、前記バックアップ復帰手段(93)は、前記バックアップ記憶手段(92)に前記バックアップ情報として記憶された前記入賞個数を、遊技再開時の前記有効発射個数計数手段(83)による有効発射個数の初期値に設定するように構成された組み合わせ遊技機。」である点で一致し、次の点で一応相違する。
〈相違点〉本願発明が「前記遊技領域(4a)内に発射されたにも拘わらず停電発生時に入賞していない個数分の遊技球を、電源復帰後に払い出し手段(37)から払い出すように構成されている」のに対し、先願発明がそのように構成されているかどうか不明な点。

5.相違点の判断及び先願発明との同一性の判断
先願明細書の記載ウにあるように、組合せ式弾球遊技機(アレンジボール遊技機)においては、停電を含む異常発生時に「発射数は計数されるものの、入球が無効となって実際の入球数が発射数と異なる」という事態が生じる。先願発明は「電断回復時には、入球数として記憶されている計数値を、発射数として前記発射数計数手段の計数値に置き換える計数値置換手段」を備えることにより、「単位遊技における発射数制御を正確に行うこと」(記載ウ)は可能となるものの、それだけでは無効となった発射球が遊技者の損失となることを回復できないことは自明である。そして、停電等が原因となって発射した遊技球が無効となることの責任が遊技者にないことは明らかであるから、無効となった発射球の補填を行わないとすれば、遊技を行うために遊技球を貸し出すとの契約に反する結果になりかねない(停電時に補填しないとの契約事項があれば別であるが)ばかりか、遊技者とのトラブルの原因になるおそれが十分にある。
先願明細書の記載シにあるように、先願発明は「遊技者の利益に直接的に関連する制御部、すなわち価値媒体としての遊技球の流通に関連する情報(価値媒体情報)」の回復を目的としたものであり、上記無効となった発射球に関する情報は「価値媒体情報」の1つである。また、先願発明が発射数を停電等の異常発生時に記憶・保持することは上記認定のとおりであるところ、上記無効となった発射球数は発射数と入球数の差であり、これら2つの数を記憶・保持している以上、電断回復時に上記差分の遊技球を払い出す(本願発明の「前記遊技領域(4a)内に発射されたにも拘わらず停電発生時に入賞していない個数分の遊技球を、電源復帰後に払い出し手段(37)から払い出す」に等しい。)ことには、技術的に何の創造性も必要ない。
かえって、「電断回復時には、入球数として記憶されている計数値を、発射数として前記発射数計数手段の計数値に置き換える」ことを考慮すれば、無効となった発射球の補填を行わないのであれば、発射数を停電等の異常発生時に記憶・保持する必要性がないことになり、発射数を記憶・保持することの技術的意義を理解できない。
以上を総合すれば、発射数を停電等の異常発生時に記憶・保持する以上、電断回復時に発射数に基づく何らかの制御がされるとみるべきである。そして、先願発明の課題を考慮すれば、発射球が無効となることにつき、責めを負わせることが不適当な遊技者の不利益を回復するために、入球数との差を演算し、差分の遊技球の払い出しを行うような制御がされると解するのが自然である。
百歩譲って、先願明細書から上記の制御を導くことができないとしても、遊技者に貸し出した遊技球を本来の用途に沿って使用可能とするだけのことであるから、そこには何の技術思想もなく、設計事項の域を出るものではない。
以上のとおりであるから、上記相違点を実質的な相違点と認めることはできず、本願発明は先願発明と実質上同一発明である。
しかも、本願発明の発明者は先願発明をした者と同一ではなく、また本願の出願の時において、本願出願人が先願の出願人と同一でもないことは明らかであるから、本願発明は特許法29条の2の規定により特許を受けることができない。

第4 むすび
本件補正は却下されなければならず、本願発明が特許を受けることができないから、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-11 
結審通知日 2008-06-17 
審決日 2008-06-30 
出願番号 特願2001-270709(P2001-270709)
審決分類 P 1 8・ 161- Z (A63F)
P 1 8・ 572- Z (A63F)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 伊藤 陽飯野 茂  
特許庁審判長 津田 俊明
特許庁審判官 太田 恒明
三原 裕三
発明の名称 組み合わせ遊技機  
代理人 谷藤 孝司  

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