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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G06T
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 G06T
管理番号 1183424
審判番号 不服2006-12642  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-06-19 
確定日 2008-08-20 
事件の表示 特願2003- 18704「イメージデータの動き感知装置及び方法」拒絶査定不服審判事件〔平成15年10月10日出願公開、特開2003-288599〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続きの経緯
本願は、平成15年1月28日の出願(パリ条約に基づく優先権主張2002年2月5日、韓国)であって、平成18年3月15日付けで拒絶査定がされ、これに対して同年6月19日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに手続補正がなされたものである。

第2 平成18年6月19日付けの手続補正の却下について
1 補正却下の決定の結論
平成18年6月19日付けの手続補正を却下する。

2 理由
(1) 補正後の本願発明
本件補正により、特許請求の範囲の請求項8は次のとおり補正された。(請求項の数は全部で8項である。)
「【請求項8】 イメージデータの動きを感知するためにコンピュータシステムを、
圧縮符号化されたイメージのビットストリームのうち動き予測イメージに関わるビットストリームを分離する分離手段と;
前記分離部から分離した前記動き予測イメージに関わるビットストリームのビット長の平均値の変化率を演算する演算手段と;
前記演算部で演算した前記平均値の変化率と所定のしきい値とを比較して前記平均値の変化率が大きい場合に動き感知信号を出力する比較手段と;
して機能させるためのイメージデータの動き感知プログラム。」

(2) 補正前の本願発明
本件補正前である拒絶査定時の特許請求の範囲(平成17年11月29日付け手続補正書)に記載された発明は、次のとおりである。
「【請求項1】 圧縮符号化されたイメージのビットストリームのうち動き予測イメージに関わるビットストリームを分離する分離部と;
前記分離部から分離した前記動き予測イメージに関わるビットストリームのビット長の平均値を演算する演算部と;
前記演算部で演算した前記平均値と所定のしきい値とを比較して前記平均値が大きい場合に動き感知信号を出力する比較部と;
を含むことを特徴とするイメージデータの動き感知装置。
【請求項2】 前記動き予測イメージは、インタモードイメージであることを特徴とする請求項1に記載のイメージデータの動き感知装置。
【請求項3】 前記比較部から前記動き感知信号を受信すると警告信号を出力する出力部を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のイメージデータの動き感知装置。
【請求項4】 前記動き感知信号を受信すると動きが感知されたイメージを転送することを特徴とする転送部を更に含むことを特徴とする請求項1に記載のイメージデータの動き感知装置。
【請求項5】 圧縮符号化されたイメージのビットストリームのうち動き予測イメージに関わるビットストリームを分離する分離部と;
前記分離部から分離した前記動き予測イメージに関わるビットストリームのビット長の平均値の変化率を演算する演算部と;
前記平均値の変化率と所定のしきい値とを比較して前記変化率が大きい場合に動き感知信号を出力する比較部と;
を含むことを特徴とするイメージデータの動き感知装置。
【請求項6】 前記動き予測イメージがインタモードイメージであることを特徴とする請求項5に記載のイメージデータの動き感知装置。
【請求項7】 前記比較部から前記動き感知信号を受信すると警告信号を出力する出力部を更に含むことを特徴とする請求項5に記載のイメージデータの動き感知装置。
【請求項8】 前記動き感知信号を受信すると動きが感知されたイメージを転送することを特徴とする転送部を更に含むことを特徴とする請求項5に記載のイメージデータの動き感知装置。
【請求項9】 イメージ信号を圧縮符号化したビットストリームから動き予測イメージのビットストリームを分離するステップと;
前記動き予測イメージのビットストリームのビット長の平均値を演算するステップと;
前記平均値と所定のしきい値とを比較して平均値が大きい場合にイメージデータで動きを感知するステップと;
を含むことを特徴とする動き感知方法。
【請求項10】 前記感知ステップで動きが感知されると、動き感知信号を出力するステップを更に含むことを特徴とする請求項9に記載のイメージデータの動き感知方法。
【請求項11】 前記動き感知信号が出力されると動きが感知されたイメージを転送するステップを更に含むことを特徴とする請求項10に記載のイメージデータの動き感知方法。
【請求項12】 イメージ信号を圧縮符号化したビットストリームから動き予測イメージのビットストリームを分離するステップと;
前記動き予測イメージのビットストリームのビット長の平均値の変化率を演算するステップと;
前記変化率と所定のしきい値とを比較して前記変化率が大きい場合にイメージデータで動きを感知するステップと;
を含むことを特徴とするイメージデータの動き感知方法。
【請求項13】 前記感知ステップで動きが感知されると、動き感知信号を出力するステップを更に含むことを特徴とする請求項12に記載のイメージデータの動き感知方法。
【請求項14】 前記動き感知信号が出力されると、動きが感知されたイメージを転送するステップを更に含むことを特徴とする請求項13に記載のイメージデータの動き感知方法。
【請求項15】 圧縮符号化されたイメージのビットストリームのうち動き予測イメージに関わるビットストリーム長さに応じて入力されるイメージフレームで動きを感知するようにプログラム化されたコンピュータプロセッサで構成されたコンピュータシステム。
【請求項16】 イメージ信号を転送するイメージ入力部と;
圧縮されたビットストリームを生成し、圧縮されたビットストリームから動きが予測されたイメージを分離し、動きが予測されたイメージのビットストリームのビット長の平均値を演算し、演算した平均値によってイメージフレームの動きを感知するネットワークイメージモニタシステム。」

(3) 補正の目的の適否
補正前の特許請求の範囲のいずれの請求項にも「イメージデータの動き関知プログラム」の発明は記載されていない。
したがって、「イメージデータの動き関知プログラム」の発明である請求項8に関する本件補正は、特許法36条5項の規定により請求項に記載した発明を特定するために必要な事項を限定するものでないから、平成18年改正前特許法17条の2第4項2号に規定する特許請求の範囲の減縮に該当する補正とはいえず、かつ、本件補正が、請求項の削除、誤記の訂正、又は明りょうでない記載の釈明のいずれを目的としたものではないことは明らかである。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法17条の2第4項の規定に違反するものであり、同法159条1項で準用する同法53条1項の規定により却下すべきものである。

第3 本願発明について
1 平成18年6月19日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項15に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、前記「第2 2(2)」に記載した平成17年11月29日付けで補正された特許請求の範囲の請求項15に記載されたとおりのものである。

2 引用例
原査定の拒絶の理由で引用された特開平10-23393号公報(以下、「引用例」という。)には次の事項が図面と共に開示されている。(記載箇所は段落番号等で表示)
ア 「【請求項1】 撮影手段により得られた画像信号を、順方向予測フレームを含む圧縮処理により圧縮した状態で蓄積された蓄積画像信号により、動体の有無を検出する動体検出方法であって、任意のフレームに、過去のフレームから順方向のフレーム間予測を行った差分を表わす符号化部分が存在するか否かを検出し、これら符号化部分を有する複数のフレームが、所定数以上連続している場合に、動体が存在するとして通知する動体検出方法。」
イ 「【0020】【発明の実施の形態】図1は、本発明の実施の形態の1例の基本構成を示している。図示しないビデオカメラ等の撮影手段により得られた画像信号は、MPEG1の規定に従って圧縮処理される。(省略)
【0021】MPEG1の規定に基づいて圧縮されたデータは、順次蓄積されており、検出部9に引き渡される。そして、この検出部9が上記データ内に動体が存在するか否かを検出する。この場合、当該検出に使用するフレームは、前記Pピクチャのみである。これは、Pピクチャが、動体の存在に基づく変化を経時的に符号化される(順方向フレーム間符号化される)ためである。これに対して、前記Iピクチャは、当該ピクチャを構成する全てのマクロブロックがフレーム内符号化を施されているため、動きに関する情報は得られない。また、Bピクチャは、双方向予測であるため、動きベクトルが2つ存在し、動きベクトルの判定が複雑になってしまう。しかも、このBピクチャの場合、表示順序の先後関係と、データの並びや処理順序の先後関係とが一致しない。動体の検出を行う場合、データの先頭方向から順に行うため、上記Bピクチャを使用すると、既に調べたフレームよりも後に、当該フレーム以前(過去)の画面を調べることになり、意味がない。このため、動体の検出には、上記Pピクチャのみを使用する。尚、Pピクチャの出現割合は、それほど多くはないが、MPEG1に基づく圧縮の場合、1秒間に30ピクチャ(フレーム)が含まれる。従って、実用上、問題はない。」

前記ア及びイの記載によると、引用例には、
「撮影手段により得られた画像信号を、順方向予測フレームを含む圧縮処理により圧縮した状態で蓄積された蓄積画像信号により、動体の有無を検出する動体検出方法であって、
撮影手段により得られた画像信号は、MPEG1の規定に従って圧縮処理し、
MPEG1の規定に基づいて圧縮されたデータは、順次蓄積されており、検出部9に引き渡され、
この検出部9が上記データ内に動体が存在するか否かを検出し、当該検出に使用するフレームは、Pピクチャのみである方法。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

3 対比・判断
本願発明と引用発明とを対比する。
引用発明において画像信号がフレームとして扱われることは明らかであり、撮影手段により得られた画像信号は「入力されるイメージフレーム」といえるから、撮影手段により得られた画像信号で「動体の有無を検出する動体検出方法」である引用発明は、本願発明と同じ「入力されるイメージフレームで動きを感知する」処理を行うものといえる。
MPEG1の規定に従って圧縮処理された画像信号が、ディジタル値であり、ビットストリームとして表現されることは明らかであるから、引用発明の、撮影手段により得られた画像信号を、順方向予測フレームを含む圧縮処理、MPEG1により圧縮した状態で蓄積された「蓄積画像信号」は、「圧縮符号化されたイメージのビットストリーム」といえる。
そして、MPEG1の規定に従って得られるPピクチャは動き予測に基づいて得られる符号部分であるから、引用発明の検出に用いる「Pピクチャ」は、「圧縮符号化されたイメージのビットストリームのうち動き予測イメージに関わるビットストリーム」といえ、本願発明と、Pピクチャのみを使用して動体の有無を検出する引用発明とは、圧縮符号化されたイメージのビットストリームのうち動き予測イメージに関わるビットストリームに応じて入力されるイメージフレームで動きを感知する処理を行う点で一致する一方、以下の点で相違する。
【相違点】
相違点1:本願発明が、圧縮符号化されたイメージのビットストリームのうち動き予測イメージに関わるビットストリームの「長さ」に応じて入力されるイメージフレームで動きを感知するのに対し、引用発明が、当該「長さ」に応じて動きを感知していない点。
相違点2:本願発明が「プログラム化されたコンピュータプロセッサで構成されたコンピュータシステム」であるのに対して、引用発明が方法である点。
4 当審の判断
a 相違点1について
MPEG1の規定に従って得られるPピクチャの符号量が、画像信号に動体がある場合に多く、すなわち、そのビットストリームが長く、また、画像信号に動体がない場合に少なく、すなわち、そのビットストリームが短くなることは、動画に関する技術分野において技術常識であるから、引用発明のPピクチャのみを用いてデータ内に動体が存在するか否かを検出する際に前記技術常識を適用し、圧縮符号化されたイメージのビットストリームのうち動き予測イメージに関わるビットストリームの「長さ」に応じて入力されるイメージフレームで動きを感知することは当業者が容易に想到し得たことといえる。
b 相違点2について
所定の画像処理方法を実行する「プログラム化されたコンピュータプロセッサで構成されたコンピュータシステム」は周知であるから、引用発明を、その方法を実行する「プログラム化されたコンピュータプロセッサで構成されたコンピュータシステム」とすることは当業者が容易に想到し得ることといえる。

そして、これらの相違点を総合的に考慮しても当業者が容易になし得ることといえ、一方、本願発明の奏する効果は、引用例に記載された発明から想定できる程度のものにすぎず、格別なものとはいえない。

したがって、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

5 むすび
以上のとおり、本願発明は、引用例に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。
したがって、本願は、他の請求項について検討するまでもなく拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-03-19 
結審通知日 2008-03-25 
審決日 2008-04-07 
出願番号 特願2003-18704(P2003-18704)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G06T)
P 1 8・ 572- Z (G06T)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 小池 正彦飯田 清司  
特許庁審判長 西山 昇
特許庁審判官 脇岡 剛
松永 稔
発明の名称 イメージデータの動き感知装置及び方法  
代理人 伊東 忠彦  

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