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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) C21D |
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管理番号 | 1183449 |
審判番号 | 不服2006-26939 |
総通号数 | 106 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2006-11-30 |
確定日 | 2008-08-18 |
事件の表示 | 特願2000-388049「表面性状の優れた高強度熱延鋼板の製造方法」拒絶査定不服審判事件〔平成14年7月10日出願公開、特開2002-194442〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成12年12月21日の出願であって、平成18年10月6日付けで拒絶査定がされ、これに対し、同年11月30日に拒絶査定不服審判の請求がされ、平成20年3月26日付けで当審より拒絶の理由が通知され、同年5月27日付けで意見書及び手続補正書が提出されたものである。 2.本願発明 本願に係る発明は、平成20年5月27日付け手続補正書により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1及び2に記載されたとおりのものである。その内の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。 「mass%で、 C:0.03?0.25% Si:0.1?2.5% Mn:0.05?2.0% を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼組成のスラブを表面温度が1200?1280℃の範囲内で75分以上加熱保持し、仕上圧延直前の最終デスケーリング前のスラブ表面温度を1180℃以下、1085℃以上として最終デスケーリングを行い、仕上圧延後、巻き取る表面性状の優れた高強度熱延鋼板の製造方法。」 3.当審拒絶理由の概要 当審より通知された拒絶の理由の概要は、次のとおりのものである。 本願請求項1及び2に係る発明は、その出願前頒布された下記刊行物1?5に記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 記 刊行物1:特開平5-279734号公報 刊行物2:特開平9-155436号公報 刊行物3:特開平6-346145号公報 刊行物4:特開平1-284420号公報 刊行物5:特開昭63-68214号公報 4.引用刊行物とその記載事項 当審より通知された拒絶の理由で引用された刊行物1:特開平5-279734号公報及び刊行物2:特開平9-155436号公報には、それぞれ次の事項が記載されている。 (1)刊行物1:特開平5-279734号公報 (1a)「【請求項1】重量%で、C:0.25%以下、Si:0.40?2.0%、Mn:0.90?2.0%、残部:Feおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有するスラブを加熱炉にてスラブ表面温度1170?1250℃に100?150分間加熱保持し、その後の熱間圧延工程で1回以上デスケーリングを行い、Ar_(3)点以上で熱間圧延を終了し、650℃以下で巻取ることを特徴とする表面性状に優れる高強度熱延鋼板の製造方法。」 (1b)「【0030】その後の熱間圧延工程で1回以上デスケーリングを行って、スラブ表面を完全に覆いつくしているスケールを完全に除去する。デスケーリングの方法は公知の方法によればよく、例えば高圧水や縦ロールによる圧縮応力付加といった通常の方法でよい。熱間圧延は、通常の条件で行えばよく、材質の確保上Ar_(3)点以上で仕上圧延を終了する。」 (1c)「【0033】 【実施例】表1に示す化学組成を有するスラブを転炉にて溶製後加熱炉に装入し、同じく表1に示すスラブ表面温度になるまで加熱し、表1に示す加熱時間分だけ温度保持を行った。そして、表1に示す加熱炉抽出温度から高圧水によるデスケーリングを行いながら表1に示す仕上圧延温度で熱間圧延を終了し、さらに表1に示す巻取温度で巻取り、熱延鋼板とした。」 (2)刊行物2:特開平9-155436号公報 (2a)「【0018】 【発明の実施の形態】図1に示す仕上圧延機2の入側には、スラブの移動方向と直交する方向に配置した1列又は複数列のノズルヘッダー(ノズル高さ250?300mm)よりなるスケールブレーカー(以下、FSBという)3が配置され、FSB3より、粗圧延機1での各パスの圧下率が25%以上、仕上圧延前までの累積圧下率が85%以上であり、かつ鋼材温度が850?1000℃の鋼材4に対し、デスケーリングを吐出圧力250?600kgf/cm^(2)で0.002秒以上、0.005秒未満実施する。 【実施例】表1に示す鋼材A、B及びCについて、図1の仕上圧延機2入側に設けたFSB3より表2に示した操業条件で粗圧延機1より送り出された鋼材4に対しデスケーリングしたのち、仕上圧延を行い、得られたコイルから画像解析により鋼材表面の単位面積当たりのスケール残存率%を測定した。その結果を表2に併記した。 【0019】表2に示されるように、本発明の範囲内にあるNo.2?4、6、8?12の鋼材は、それぞれスケール残存率が1%以下となり、更に吐出圧力、圧下率、デスケーリング時間及びデスケーリング温度を調整したNo.2、4、6、9の鋼材では、スケール残存は皆無であった。」 (2b)【表1】には、「鋼材A」の「化学成分(mass%)」が「C:0.12,Si:0.85,Mn:1.46,P:0.018,S:0.002」と表示されている。 (2c)【表2】には、No.「11」の「供試鋼」「A」の「デスケール温度(℃)」が「1100」、「スケール残存率(%)」が「0.9」と表示されている。 5.当審の判断 (1)引用発明 当審より通知された拒絶の理由において引用された刊行物1の上記(1a)には、「重量%で、C:0.25%以下、Si:0.40?2.0%、Mn:0.90?2.0%、残部:Feおよび不可避的不純物からなる鋼組成を有するスラブを加熱炉にてスラブ表面温度1170?1250℃に100?150分間加熱保持し、その後の熱間圧延工程で1回以上デスケーリングを行い、Ar_(3)点以上で熱間圧延を終了し、650℃以下で巻取ることを特徴とする表面性状に優れる高強度熱延鋼板の製造方法。」と記載されており、この記載における「熱間圧延を終了」は、(1b)の「熱間圧延は、通常の条件で行えばよく、材質の確保上Ar_(3)点以上で仕上圧延を終了する。」という記載によれば、仕上圧延を終了といえるし、この記載における「重量%」は、「mass%」と言い換えることができるから、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、刊行物1には、次のとおりの発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているといえる。 「mass%で、C:0.25%以下、Si:0.40?2.0%、Mn:0.90?2.0%、残部:Fe及び不可避的不純物からなる鋼組成のスラブを表面温度が1170?1250℃の範囲内で100?150分間加熱保持し、その後の熱間圧延工程で1回以上デスケーリングを行い、Ar_(3)点以上で仕上圧延を終了し、650℃以下で巻き取る表面性状の優れた高強度熱延鋼板の製造方法。」 (2)本願発明と引用発明との対比 そこで、本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「その後の熱間圧延工程で1回以上デスケーリングを行い、Ar_(3)点以上で熱間圧延を終了」する工程は、(1b)の「その後の熱間圧延工程で1回以上デスケーリングを行って、スラブ表面を完全に覆いつくしているスケールを完全に除去する。・・・熱間圧延は、通常の条件で行えばよく、材質の確保上Ar_(3)点以上で仕上圧延を終了する。」という記載、及び(1c)の「加熱炉抽出温度から高圧水によるデスケーリングを行いながら表1に示す仕上圧延温度で熱間圧延を終了し、さらに表1に示す巻取温度で巻取り、熱延鋼板とした。」という記載によれば、仕上圧延直前にもデスケーリング、すなわち最終デスケーリングを行うものといえるから、本願発明の「最終デスケーリングを行い、仕上圧延後」に相当するといえる。 してみると、両者は、 「mass%で、 C:0.03?0.25% Si:0.40?2.0% Mn:0.90?2.0% を含み、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼組成のスラブを表面温度が1200?1250℃の範囲内で100?150分間加熱保持し、最終デスケーリングを行い、仕上圧延後、巻き取る表面性状の優れた高強度熱延鋼板の製造方法。」という点で一致し、次の点で相違しているといえる。 相違点: 本願発明は、仕上圧延直前の最終デスケーリング前のスラブ表面温度を「1180℃以下」として最終デスケーリングを行うのに対して、引用発明は、仕上圧延直前の最終デスケーリング前のスラブ表面温度が不明である点 (3)相違点の検討 そこで、上記相違点について、検討する。 引用発明は、熱延鋼板の製造方法において、デスケーリングを行うものであり、その際のデスケーリング手段は、(1c)の「高圧水によるデスケーリングを行いながら表1に示す仕上圧延温度で熱間圧延を終了」という記載によれば、高圧水によるデスケーリングを行うものであり、同じく前記高圧水によるデスケーリングを行う技術に関する、刊行物2の(2a)?(2c)の記載によれば、(2c)のNo.11の供試鋼A(同刊行物の(2b)に「化学成分(mass%)」が「C:0.12,Si:0.85,Mn:1.46,P:0.018,S:0.002」と示されており、本願発明の鋼組成の範囲である。)のデスケール温度(同刊行物の(2a)の「表1に示す鋼材A、B及びCについて、図1の仕上圧延機2入側に設けたFSB3より表2に示した操業条件で粗圧延機1より送り出された鋼材4に対しデスケーリングしたのち、仕上圧延を行い、得られたコイルから画像解析により鋼材表面の単位面積当たりのスケール残存率%を測定した。その結果を表2に併記した。」という記載によれば、最終デスケーリング前のスラブ表面温度を意味するといえる。)が「1100℃」であって、スケール残存率が0.9%と良好であったことが示されていることから、仕上圧延直前の最終デスケーリング前のスラブ表面温度を「1180℃以下、1085℃以上」の範囲で最終デスケーリングを行うことは、本願出願前当業者に周知の事項といえる。 してみると、引用発明において、仕上圧延直前の最終デスケーリング前のスラブ表面温度を1180℃以下、1085℃以上として最終デスケーリングを行うことは、前記周知事項に基づいて、当業者が容易に想到し得ることといえる。 (4)小括 したがって、本願発明は、引用発明及び本願出願前当業者に周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものといえる。 6.結び 以上のとおり、本願発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができないものであるから、その他の発明について検討するまでもなく、本願は、拒絶すべきものである。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-06-11 |
結審通知日 | 2008-06-17 |
審決日 | 2008-06-30 |
出願番号 | 特願2000-388049(P2000-388049) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
WZ
(C21D)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鈴木 毅 |
特許庁審判長 |
山田 靖 |
特許庁審判官 |
平塚 義三 近野 光知 |
発明の名称 | 表面性状の優れた高強度熱延鋼板の製造方法 |
代理人 | 本田 ▲龍▼雄 |