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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G11B
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G11B
管理番号 1183624
審判番号 不服2005-61  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-01-04 
確定日 2008-08-28 
事件の表示 特願2001-312806「光ヘッド装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月25日出願公開、特開2003-123305〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯

本願は、平成13年10月10日の出願であって、平成16年8月5日付け拒絶理由通知に対して、同年9月29日付けで手続補正がされたが、同年12月1日付けで拒絶査定され、これに対し、平成17年1月4日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年1月26日付けで明細書について手続補正がされたものである。


第2 平成17年1月26日付けの手続補正についての補正却下の決定

〔補正却下の決定の結論〕
平成17年1月26日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。

〔理 由〕
1.本件補正
本件補正は、特許請求の範囲についてするもので、その補正事項は概略、次のとおりである。
(1)本件補正前の請求項4,5,12,13,14,及び15を削除する。
(2)請求項1及び2に記載された「第1の光合分波手段」及び「第1の光合分波手段」に対し、削除された各請求項に記載された発明特定事項の一部で限定を加える。
(3)請求項番号、及び引用する請求項番号を整理する。
すると、本件補正は、単に形式的な修正にすぎない(3)を除き、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第1号及び第2号に掲げる事項を目的とするものに該当する。

そこで、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

本願補正発明は、次のとおりである。
「【請求項1】
各々異なる規格の光記録媒体に対応して設けられ、第一の波長の光を出射する第一の光源及び第二の波長の光を出射する第二の光源と、前記第一及び第二の光源からの出射光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、前記光記録媒体からの反射光を検出する光検出器と、前記第一の光源から対物レンズへ向かう往路の光と対物レンズから光検出器へ向かう復路の光を合成/分離する第一の光合分波手段と、前記第二の光源から対物レンズへ向かう往路の光と対物レンズから光検出器へ向かう復路の光を合成/分離する第二の光合分波手段とを含み、
前記第一の光合分波手段は第一の波長の光に対しては、P偏光成分については大部分を透過すると共にS偏光成分については大部分を反射し、第二の波長の光に対しては、P偏光成分、S偏光成分のいずれについても大部分を透過または反射する偏光ビームスプリッタであり、往路において第一の光源からの第一の波長の光の大部分を第二の光合分波手段へ導き、復路において第二の光合分波手段からの第一の波長の光の大部分を光検出器へ導くと共に、復路において第二の光合分波手段からの第二の波長の光の大部分を光検出器へ導き、
前記第二の光合分波手段は第二の波長の光に対しては、P偏光成分、S偏光成分のいずれについても一部分を透過するかあるいは反射し、残りを反射するかあるいは透過し、第一の波長の光に対しては、P偏光成分、S偏光成分のいずれについても大部分を透過または反射する無偏光ビームスプリッタであり、往路において第二の光源からの第二の波長の光の一部分を偏光状態に殆んど依存せずに対物レンズへ導き、復路において対物レンズからの第二の波長の光の一部分を偏光状態に殆んど依存せずに第一の光合分波手段へ導くと共に、往路において第一の光合分波手段からの第一の波長の光の大部分を対物レンズへ導き、復路において対物レンズからの第一の波長の光の大部分を第一の光合分波手段へ導き、前記第二の光源から出射する往路の光の偏光方向と前記第二の光源へ戻る復路の光の偏光方向を直交させる偏光変換手段を更に含むことを特徴とする光ヘッド装置。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平10-308031号公報(以下、「引用例1」という)には、図面とともに以下の技術事項が記載されている。

(a)「【請求項1】 第1の半導体レーザと、この第1の半導体レーザとは波長が異なるレーザ光を出射する第2の半導体レーザと、上記第1の半導体レーザおよび第2の半導体レーザからのレーザ光を同一の方向に導くビームスプリッタと、このビームスプリッタを透過したレーザ光を記録媒体上に集光する対物レンズと、記録媒体によって反射された上記第1の半導体レーザからのレーザ光および上記第2の半導体レーザからのレーザ光を受ける単一の受光素子とを備えた光ピックアップ装置であって、
上記第1の半導体レーザからのレーザ光はビームスプリッタの反射面に対し所定の偏光であり、上記第2の半導体レーザからのレーザ光は上記所定の偏光とは異なる偏光であり、
上記ビームスプリッタは、上記第1の半導体レーザからのレーザ光を部分反射するとともに上記第2の半導体レーザからのレーザ光を透過する第1の斜面と、上記第2の半導体レーザからのレーザ光を部分反射するとともに第1の半導体レーザからのレーザ光を透過する第2の斜面とを有していることを特徴とする光ピックアップ装置。」

(b)「【0015】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照しながら本発明にかかる光ピックアップ装置の実施の形態について説明する。図1、図2において、光ピックアップ装置1はベース3を有し、このベース3は、図示されない装置フレームに対して相互に平行となるように取り付けられた2本のガイドシャフト2a,2bに沿って摺動可能に取り付けられている。このベース3上に以下に説明する光学系が構成されている。
【0016】図3にも示すように、光ピックアップ装置1の光学系は、第1のレーザ光L1を出射する第1の半導体レーザ4と、第2のレーザ光L2を出射する第2の半導体レーザ5を備え、各半導体レーザ4、5から出射された第1および第2のレーザ光L1,L2を共通の光路に導きこの共通の光路を利用してCD,CD-R,DVDなどの全ての記録媒体25の記録再生を行うことができるようになっている。
【0017】上記共通の光路は、ベース3上に配列された第1のビームスプリッタ21、第2のビームスプリッタ22、コリメートレンズ7、ミラー8、対物レンズ9、センサレンズ10、受光素子11とによって構成されている。
【0018】第1の半導体レーザ4はCD再生用であって、波長780nmのレーザ光L1を出射する。第2の半導体レーザ5は高密度光ディスクであるDVD記録再生用であって、第1の半導体レーザ4よりも波長の短い波長650?630nmのレーザ光L2を出射する。第1の半導体レーザ4と第2の半導体レーザ5は、互いに平行な方向にレーザ光L1,L2を出射する。
【0019】第1の半導体レーザ4からのレーザ光L1はプリズムからなる第1のビームスプリッタ21の第1の斜面23に入射し、第2の半導体レーザ5からのレーザ光L2はプリズムからなる第2のビームスプリッタ22の第2の斜面24に入射する。上記第1の斜面23と第2の斜面24は互いに平行に、かつ、第1、第2の半導体レーザ4、5からのレーザ光L1、L2の中心軸線に対し45゜傾けて形成されると共に、これらの各斜面23、24には多層膜が形成され、第1の半導体レーザ4および第2の半導体レーザ5からのレーザ光L1,L2を反射して互いに同一方向(図1において左斜め上方)に導くようになっている。上記波長780nmのレーザ光L1は第1、第2の斜面23、24に対しS偏光であり、波長650?630nmのレーザ光L2は第1、第2の斜面23、24に対しP偏光である。第1の半導体レーザ4と第2の半導体レーザ5は、単一の受光素子11に対して、また、コリメータレンズ7に対してそれぞれ共役な位置に配置されている。
【0020】上記第1の斜面23および第2の斜面24には、これらの斜面による光の透過率ないしは反射率を適宜の値に設定するために多層膜が形成されている。第1の斜面23に形成された多層膜は、第1の半導体レーザ4からの波長780nmのS偏光のレーザ光L1に対してはこれを部分反射するハーフミラーとして作用すると共に第2の半導体レーザ5からの波長650?630nmのP偏光のレーザ光L2を透過する。上記第2の斜面24に形成された多層膜は、第2の半導体レーザ5からのP偏光のレーザ光L2を部分反射するハーフミラーとして作用すると共に第1の半導体レーザ4からのS偏光のレーザ光L1を透過する。【0021】図7は、第1の斜面23と第2の斜面24の分光特性の設計例を示す。図7において「T」は透過率を、「R」は反射率を示しており、「-」は任意であることを示している。この設計例によれば、第1の斜面23は、波長650nmのP偏光に対しては透過率が90パーセント以上で波長650nmのP偏光の大部分を透過し、波長780nmのS偏光に対しては透過率、反射率共に50パーセントでハーフミラーとして機能する。一方、第2の斜面24は、波長650nmのP偏光に対しては透過率、反射率共に50パーセントでハーフミラーとして機能し、波長780nmのS偏光に対しては透過率90パーセント以上で波長780nmのS偏光の大部分を透過する。その他の特性は任意である。
【0022】上記設計例にかかる第1の斜面23の分光特性を図5に、第2の斜面24の分光特性を図6に示す。図5、図6において、「Tp」はP偏光に対する透過率を、「Ts」はS偏光に対する透過率を示す。第1、第2の斜面23、24は前述のようにコーティングされた多層膜によって構成されるが、多層膜は層が多くなればなるほど角度依存性があり、入射角度の違いによって透過率が異なる。図4に示すように、斜面に対して45゜で入射し反射されるレーザ光をa、斜面に対し大きな角度で入射し反射されるレーザ光をb、斜面に対し小さな角度で入射し反射されるレーザ光をcとしたとき、第1、第2の斜面23、24の分光特性はこれらのレーザ光a,b,cごとに違いが見られる。そこで、図5、図6は上記各レーザ光a,b,cごとに分光特性を示した。
【0023】図5に示す分光特性の例では、第1の斜面23は波長650nmのP偏光に対して透過率が良好であり、また、波長780nmのS偏光に対しては透過率がほぼ50パーセントすなわち反射率もほぼ50パーセントになっていて、図7に示す設計例の第1の斜面23に要求される特性を満足していることがわかる。一方、図6に示す第2の斜面24の分光特性の例では、波長650nmのP偏光に対して透過率がほぼ50パーセントすなわち反射率もほぼ50パーセント、波長780nmのS偏光に対しては透過率が良好であり、図7に示す設計例の第2の斜面24に要求される特性を満足していることがわかる。」

(c)「【0026】なお、半導体レーザ4、5から出射されたレーザ光L1,L2を受光素子11に効率よく入射させることだけに着目すれば、従来から用いられているλ/4と偏光ビームスプリッタとを用いた偏光タイプが有効である。すなわち、半導体レーザから出射された直線偏光のレーザ光を偏光ビームスプリッタで反射し、λ/4板で円偏光に変換し、円偏光のままディスクで反射され戻ってきたレーザ光を再びλ/4板に透過させることによって、もとの直線偏光に対し直交する方向の直線偏光に変換し、これを上記偏光ビームスプリッタに透過させ、この透過光を受光素子で受光するようにする。しかし、このような偏光タイプは、レーザ光の利用効率は良好であるが、記録媒体の複屈折に弱く、記録媒体に複屈折があると読み取りができないという難点がある。その点前記本発明の実施の形態によれば、λ/4板の使用を排除して無偏光タイプとしたため、記録媒体に複屈折があってもその影響を受け難く、記録媒体25に記録された信号の読み取りエラーを少なくすることができる。」

上記引用例記載事項及び図面を総合勘案すると、引用例1には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されていると認められる。
「CD再生用であって、波長780nmの第1のレーザ光を出射する第1の半導体レーザと、
高密度光ディスクであるDVD記録再生用であって、第1の半導体レーザよりも波長の短い波長650?630nmの第2のレーザ光を出射する第2の半導体レーザと、を備え、
前記第1及び第2の各半導体レーザから出射された第1及び第2のレーザ光を共通の光路に導きこの共通の光路を利用してCD,CD-R,DVDなどの全ての記録媒体の記録再生を行うことができる光ピックアップ装置であって、
第1のビームスプリッタと、
第2のビームスプリッタと、
ビームスプリッタを透過したレーザ光を記録媒体上に集光する対物レンズと、
記録媒体によって反射された上記第1の半導体レーザからのレーザ光および上記第2の半導体レーザからのレーザ光を受ける単一の受光素子とからなり、
第1の半導体レーザからのレーザ光はプリズムからなる第1のビームスプリッタの第1の斜面に入射し、
第2の半導体レーザからのレーザ光はプリズムからなる第2のビームスプリッタの第2の斜面に入射し、
前記第1の半導体レーザからのレーザ光は前記第1の斜面で反射され、前記第2の半導体レーザからのレーザ光は前記第2の斜面で反射され、それぞれ共通の光路に導かれ、対物レンズにより集光されて記録媒体上で反射し、第1のビームスプリッター及び第2のビームスプリッターを透過して前記共通の受光素子で受光され、
上記波長780nmのレーザ光は第1、第2の斜面に対しS偏光であり、波長650?630nmのレーザ光は第1、第2の斜面に対しP偏光であり、
第1の斜面に形成された多層膜は、第1の半導体レーザからの波長780nmのS偏光のレーザ光に対してはこれを部分反射するハーフミラーとして作用すると共に第2の半導体レーザからの波長650?630nmのP偏光のレーザ光を透過し、上記第2の斜面に形成された多層膜は、第2の半導体レーザからのP偏光のレーザ光を部分反射するハーフミラーとして作用すると共に第1の半導体レーザからのS偏光のレーザ光を透過する、
光ピックアップ装置。」

3.対比
引用発明における「第1の半導体レーザ」と「第2の半導体レーザ」は、前者が「CD再生用」、後者が「高密度光ディスクであるDVD記録再生用」で、本願補正発明の「各々異なる規格の光記録媒体に対応して設けられ」た光源である。以下に検討する光学系での配置も考慮すると、「高密度光ディスクであるDVD記録再生用であって、第1の半導体レーザよりも波長の短い波長650?630nmの第2のレーザ光を出射する第2の半導体レーザ」が、本願補正発明の「第一の波長の光を出射する第一の光源」に相当し、「CD再生用であって、波長780nmの第1のレーザ光を出射する第1の半導体レーザ」が「第二の波長の光を出射する第二の光源」に相当する。
引用発明における「ビームスプリッタを透過したレーザ光を記録媒体上に集光する対物レンズ」は、本願補正発明の「前記第一及び第二の光源からの出射光を光記録媒体上に集光する対物レンズ」に相当する。
引用発明における「記録媒体によって反射された上記第1の半導体レーザからのレーザ光および上記第2の半導体レーザからのレーザ光を受ける単一の受光素子」は、本願補正発明の「前記光記録媒体からの反射光を検出する光検出器」に相当する。
引用発明における「第2のビームスプリッタ」は、第2の半導体レーザからのレーザ光が入射し、当該レーザ光を共通の光路に導くとともに、記録媒体からの反射光を受光素子に導くものであるから、本願補正発明の「前記第一の光源から対物レンズへ向かう往路の光と対物レンズから光検出器へ向かう復路の光を合成/分離する第一の光合分波手段」に相当し、引用発明の「第1のビームスプリッタ」は、第1の半導体レーザからのレーザ光が入射し、当該レーザ光を共通の光路に導くとともに、記録媒体からの反射光を受光素子に導くものであるから、本願補正発明の「前記第二の光源から対物レンズへ向かう往路の光と対物レンズから光検出器へ向かう復路の光を合成/分離する第二の光合分波手段」に相当する。
引用発明において、第1及び第2の各ビームスプリッターの各斜面とレーザ光の偏光方向は、「上記波長780nmのレーザ光は第1、第2の斜面に対しS偏光であり、波長650?630nmのレーザ光は第1、第2の斜面に対しP偏光であり」と特定されている。そして、第2のビームスプリッターは、その斜面の特性が、「第2の半導体レーザからのP偏光のレーザ光を部分反射するハーフミラーとして作用すると共に第1の半導体レーザからのS偏光のレーザ光を透過する」と特定されているので、第2ビームスプリッターは、第2の半導体レーザからの波長650?630nmのレーザ光に対して、P偏光成分については一部分を透過すると共にS偏光成分については一部分を反射し、870nmの光に対しては、P偏光成分、S偏光成分のいずれについても大部分を透過または反射する偏光ビームスプリッタであり、往路において第2の半導体レーザからの波長650?630nmのレーザ光の一部分を第1のビームスプリッターへ導き、復路において第1のビームスプリッターからの波長650?630nmのレーザ光の一部分を光検出器へ導くと共に、復路において第1のビームスプリッターからの波長780nmの光の大部分を受光素子へ導くものである。すると、引用発明の第2のビームスプリッターと、本願補正発明の「第一の光合分波手段」とは、光の「大部分」であるか否かの相違点を除き、「第一の波長の光に対しては、P偏光成分については大(一)部分を透過すると共にS偏光成分については大(一)部分を反射し、第二の波長の光に対しては、P偏光成分、S偏光成分のいずれについても大部分を透過または反射する偏光ビームスプリッタであり、往路において第一の光源からの第一の波長の光の大(一)部分を第二の光合分波手段へ導き、復路において第二の光合分波手段からの第一の波長の光の大(一)部分を光検出器へ導くと共に、復路において第二の光合分波手段からの第二の波長の光の大部分を光検出器へ導き、」の点で一致する。
引用発明の第1のビームスプリッターは、その斜面の特性が、「第1の半導体レーザからの波長780nmのS偏光のレーザ光に対してはこれを部分反射するハーフミラーとして作用すると共に第2の半導体レーザからの波長650?630nmのP偏光のレーザ光を透過し」と特定されているので、本願補正発明の第二の波長に相当する第1の半導体レーザからの波長780nmのレーザ光に対しては、一部分を透過するかあるいは反射し、残りを反射するかあるいは透過し、第一の波長に相当する波長650?630nmの光に対しては、大部分を透過または反射するビームスプリッタであり、往路において第1の半導体レーザからの波長780nmのレーザ光の一部分を対物レンズへ導き、復路において対物レンズからの波長780nmのレーザ光の一部分を第2のビームスプリッターへ導くと共に、往路において第2のビームスプリッターからの波長650?630nmの光の大部分を対物レンズへ導き、復路において対物レンズからの波長650?630nmの光の大部分を第2のビームスプリッターへ導くものであるとすることができるから、本願補正発明の第二の光合分波手段と比較すると、「第二の波長の光に対しては、一部分を透過するかあるいは反射し、残りを反射するかあるいは透過し、第一の波長の光に対しては、大部分を透過または反射するビームスプリッタであり、往路において第二の光源からの第二の波長の光の一部分を対物レンズへ導き、復路において対物レンズからの第二の波長の光の一部分を第一の光合分波手段へ導くと共に、往路において第一の光合分波手段からの第一の波長の光の大部分を対物レンズへ導き、復路において対物レンズからの第一の波長の光の大部分を第一の光合分波手段へ導き」の点で一致する。

すると、本願補正発明と、引用発明とは、次の点で一致する。
(一致点)
各々異なる規格の光記録媒体に対応して設けられ、第一の波長の光を出射する第一の光源及び第二の波長の光を出射する第二の光源と、前記第一及び第二の光源からの出射光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、前記光記録媒体からの反射光を検出する光検出器と、前記第一の光源から対物レンズへ向かう往路の光と対物レンズから光検出器へ向かう復路の光を合成/分離する第一の光合分波手段と、前記第二の光源から対物レンズへ向かう往路の光と対物レンズから光検出器へ向かう復路の光を合成/分離する第二の光合分波手段とを含み、
前記第一の光合分波手段は第一の波長の光に対しては、P偏光成分については(一)部分を透過すると共にS偏光成分については(一)部分を反射し、第二の波長の光に対しては、P偏光成分、S偏光成分のいずれについても大部分を透過または反射する偏光ビームスプリッタであり、往路において第一の光源からの第一の波長の光の(一)部分を第二の光合分波手段へ導き、復路において第二の光合分波手段からの第一の波長の光の(一)部分を光検出器へ導くと共に、復路において第二の光合分波手段からの第二の波長の光の大部分を光検出器へ導き、
前記第二の光合分波手段は第二の波長の光に対しては、一部分を透過するかあるいは反射し、残りを反射するかあるいは透過し、第一の波長の光に対しては、大部分を透過または反射するビームスプリッタであり、往路において第二の光源からの第二の波長の光の一部分を対物レンズへ導き、復路において対物レンズからの第二の波長の光の一部分を第一の光合分波手段へ導くと共に、往路において第一の光合分波手段からの第一の波長の光の大部分を対物レンズへ導き、復路において対物レンズからの第一の波長の光の大部分を第一の光合分波手段へ導く、
光ヘッド装置。

一方で、以下の点で相違する。
(相違点1)
本願補正発明の「第一の光合分波手段」においては、「第一の波長の光に対しては、P偏光成分については大部分を透過すると共にS偏光成分については大部分を反射し」「往路において第一の光源からの第一の波長の光の大部分を第二の光合分波手段へ導き、復路において第二の光合分波手段からの第一の波長の光の大部分を光検出器へ導く」のに対し、引用発明の「第2のビームスプリッタ」は、「第2の半導体レーザからのP偏光のレーザ光を部分反射するハーフミラーとして作用する」ものであるから、波長650?630nmの光のP偏光成分およびS偏光成分を、それぞれ一部分反射および透過するもので、「往路において第一の光源からの第一の波長の光の一部分を第二の光合分波手段へ導き、復路において第二の光合分波手段からの第一の波長の光の一部分を光検出器へ導く」ものである点。

(相違点2)
本願補正発明の「第二の光合分波手段」は、「第二の波長の光に対しては、P偏光成分、S偏光成分のいずれについても一部分を透過するかあるいは反射し、残りを反射するかあるいは透過し、第一の波長の光に対しては、P偏光成分、S偏光成分のいずれについても大部分を透過または反射する無偏光ビームスプリッタ」であって、「往路において第二の光源からの第二の波長の光の一部分を偏光状態に殆んど依存せずに対物レンズへ導き、復路において対物レンズからの第二の波長の光の一部分を偏光状態に殆んど依存せずに第一の光合分波手段へ導く」のに対し、引用発明の「第1のビームスプリッタ」は、「第1の半導体レーザからの波長780nmのS偏光のレーザ光に対してはこれを部分反射するハーフミラーとして作用すると共に第2の半導体レーザからの波長650?630nmのP偏光のレーザ光を透過し」と特定され、第1の半導体レーザから波長780nmのS偏光のレーザ光が入射されることにより、同波長の光に対して「一部分を透過するかあるいは反射し、残りを反射するかあるいは透過」するようにするとともに、第2の半導体レーザから波長650?630nmのP偏光のレーザ光が入射されることにより、同波長の光に対して、「大部分を透過または反射する」ようにされるもので、偏光状態を特定し、偏光状態に依存して「往路において第二の光源からの第二の波長の光の一部分を」「対物レンズへ導き、復路において対物レンズからの第二の波長の光の一部分を」「第一の光合分波手段へ導く」ようにしている点。

(相違点3)
本願補正発明が「前記第二の光源から出射する往路の光の偏光方向と前記第二の光源へ戻る復路の光の偏光方向を直交させる偏光変換手段」を含むのに対し、引用発明はそのような偏光変換手段を有しない点。

4.判断
(相違点1について)
「偏光変換手段」は、光ピックアップにおいて普通に用いられる光学素子であり、引用例1の【0026】段落に記載されているように、明らかに偏光変換手段である1/4波長板を、偏光ビームスプリッタとともに用い、直線偏光で出射されるレーザ光を、偏光ビームスプリッターでその大部分を反射(又は透過)させ、1/4波長板で円偏光に変換して記録媒体上に集光し、当該記録媒体からの反射光を再び前記1/4波長板を透過させることにより、レーザの出射する直線偏光と直交する方向の直線偏光に変換し、再度前記偏光ビームスプリッターに入射するときには、その大部分を透過(又は反射)させることで、レーザ光を効率よく利用する光ヘッドは、例えば、原査定の拒絶の理由に引用された引用例2、特開平10-134394号公報等にて周知の事項である。
前記引用例2に記載されている実施例1(【0012】段落、図1、図2参照。)を参照すると、波長板25が偏光変換手段に相当し、波長偏光フィルタ4a(前記波長板の直下におかれている方)は、光源である半導体レーザ(635nm)1aから出射される光に対して偏光ビームスプリッタとして作用するもので、往路において同波長の光の大部分を反射させ、復路において同波長の光の大部分を透過させて光検出器へ導く機能を果たしている。図2(a)に示されたP偏光成分、S偏光成分それぞれの波長に対する透過特性からは、半導体レーザ(635nm)1aから出射される光に対して、「P偏光成分については大部分を透過すると共にS偏光成分については大部分を反射」するものである。
また、前記特開平10-134394号公報では、図7、8を参照すると、偏光ビームスプリッタ43はレーザダイオード41の波長650nmに対して、また、偏光ビームスプリッタ49はレーザダイオード47の波長780nmに対して、それぞれ「P偏光成分については大部分を透過すると共にS偏光成分については大部分を反射し」との特性を有するとともに、偏光ビームスプリッタ43はレーザダイオード47の波長780nmに対して、また、偏光ビームスプリッタ49はレーザダイオード41の波長650nmに対して、それぞれ「P偏光成分、S偏光成分のいずれについても大部分を透過または反射する」との特性をするもので、偏光ビームスプリッタ49を「第一の光合分波手段」、偏光ビームスプリッタ43を「第二の光合分波手段」とすると、1/4波長板44を備えることにより「往路において第一の光源からの第一の波長の光の大部分を第二の光合分波手段へ導き、復路において第二の光合分波手段からの第一の波長の光の大部分を光検出器へ導くと共に、復路において第二の光合分波手段からの第二の波長の光の大部分を光検出器へ導」く光学系が記載されている。
すると、引用発明においても、引用例2及び前記周知例(特開平10-134394号公報)等にて周知の事項を参照することにより、DVDの記録再生には光の利用効率を重視して、波長650?630nmの第2のレーザ光が入射する第2のビームスプリッターを偏光ビームスプリッターとし、前記波長650?630nmの第2のレーザ光に対して、P偏光成分については大部分を透過すると共にS偏光成分については大部分を反射するように配置すると、往路において前記波長650?630nmの第2のレーザ光の大部分を第二の光合分波手段に相当する第1のビームスプリッターへ導き、復路において前記第二の光合分波手段に相当する第1のビームスプリッターからの波長650?630nmの光の大部分を受光素子へ導くように構成することができるから、「第一の光合分波手段」において、「第一の波長の光に対しては、P偏光成分については大部分を透過すると共にS偏光成分については大部分を反射し」「往路において第一の光源からの第一の波長の光の大部分を第二の光合分波手段へ導き、復路において第二の光合分波手段からの第一の波長の光の大部分を光検出器へ導く」ようにすることは、当業者が容易に想到しうるものにすぎない。

(相違点2について)
また、引用例1の【0026】段落に記載されているように、「このような偏光タイプは、レーザ光の利用効率は良好であるが、記録媒体の複屈折に弱く」との問題点も、本件出願当時既に当業者には周知の技術課題であり、他にも、例えば、特開平6-309690号公報に、無偏光ビームスプリッタ4を用いることで、光ディスク、特にDVDを再生可能な光学系(特に対物レンズの開口数)において、CDの複屈折により信号劣化の問題に対処した光ピックアップが記載されている。また、引用発明において、CDを再生するための光源である波長780nmの第1のレーザ光を出射する第1の半導体レーザが入射する第1のビームスプリッターを無偏光タイプとすることに特段、阻害要因となる事情もない。第1のビームスプリッターを無偏光タイプとした場合でも、波長650?630nmの第2のレーザ光については大部分透過する特性を維持するのは当然のことである。第1のビームスプリッターを無偏光タイプとした場合には、光は往路及び復路において、偏光状態にほとんど依存せずに透過又は反射することも明らかである。
すると、引用発明において、CD再生用の第1のビームスプリッターを、周知の複屈折の問題点に配慮して無偏光ビームスプリッターとすることにより、第二の波長に相当する波長780nmのレーザ光に対しては、P偏光成分、S偏光成分のいずれについても一部分を透過するかあるいは反射し、残りを反射するかあるいは透過し、第一の波長に相当する波長650?630nmの光に対しては、P偏光成分、S偏光成分のいずれについても大部分を透過または反射するようにし、これにより、往路において第二の光源からの第二の波長の光の一部分を偏光状態に殆んど依存せずに対物レンズへ導き、復路において対物レンズからの第二の波長の光の一部分を偏光状態に殆んど依存せずに第一の光合分波手段へ導くように構成することは、当業者が容易に想到しうるものである。

(相違点3について)
前記特開平6-309690号公報には、1/4波長板5を備えることで、光源には、出射光と偏光方向の異なる光が戻り光となることにより干渉ノイズによる信号劣化が起こりにくいことも記載されている(【0026】【0027】段落参照。)。他にも、特開平6-251414号公報、特開平11-250488号公報等にて、無偏光ビームスプリッタを用いる際にも1/4波長板を備えることで、「光源から出射する往路の光の偏光方向と前記」「光源へ戻る復路の光の偏光方向を直交させる偏光変換手段」を含む構成とすることは周知の事項にすぎない。すると、引用発明において、1/4波長板を備えるとともに、(相違点2について)で示したように、CD再生用の第1のビームスプリッターを、周知の複屈折の問題点に配慮して無偏光ビームスプリッターとすることにより、前記1/4波長板を「前記第二の光源から出射する往路の光の偏光方向と前記第二の光源へ戻る復路の光の偏光方向を直交させる偏光変換手段」とすることは、前記周知事項から当業者が容易に想到しうるものである。

そして、上記各相違点を総合的に判断しても、本願発明が奏する効果は、引用例1及び2に記載された発明、並びに周知事項から、当業者が十分に予測できたものであって、格別なものとはいえない。

5.本件補正についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、引用例1及び2に記載された発明,並びに周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。
したがって、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであるから、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 本願発明について
1.本願発明
平成17年1月26日付けの手続補正は上記のとおり決定を以て却下されたので、本願の請求項1ないし16に係る発明は、平成16年9月29日付け手続補正により補正された明細書の、特許請求の範囲の請求項1ないし16に記載されたとおりのものと認められるところ、請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という)は、次のとおりである。

「【請求項1】 各々異なる規格の光記録媒体に対応して設けられ、第一の波長の光を
出射する第一の光源及び第二の波長の光を出射する第二の光源と、前記第一及び第二の光源からの出射光を光記録媒体上に集光する対物レンズと、前記光記録媒体からの反射光を検出する光検出器と、前記第一の光源から対物レンズへ向かう往路の光と対物レンズから光検出器へ向かう復路の光を合成/分離する第一の光合分波手段と、前記第二の光源から対物レンズへ向かう往路の光と対物レンズから光検出器へ向かう復路の光を合成/分離する第二の光合分波手段とを含み、前記第一の光合分波手段は往路において第一の光源からの第一の波長の光の大部分を第二の光合分波手段へ導き、復路において第二の光合分波手段からの第一の波長の光の大部分を光検出器へ導くと共に、復路において第二の光合分波手段からの第二の波長の光の大部分を光検出器へ導き、前記第二の光合分波手段は往路において第二の光源からの第二の波長の光の一部分を偏光状態に殆んど依存せずに対物レンズへ導き、復路において対物レンズからの第二の波長の光の一部分を偏光状態に殆んど依存せずに第一の光合分波手段へ導くと共に、往路において第一の光合分波手段からの第一の波長の光の大部分を対物レンズへ導き、復路において対物レンズからの第一の波長の光の大部分を第一の光合分波手段へ導き、前記第二の光源から出射する往路の光の偏光方向と前記第二の光源へ戻る復路の光の偏光方向を直交させる偏光変換手段を更に含むことを特徴とする光ヘッド装置。」

2.引用例
原査定の拒絶の理由で引用された引用例及びその記載事項は、前記「第2 〔理由〕2.」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記「第2 〔理由〕」で検討した本願補正発明から、第一の光合分波手段についての「第一の波長の光に対しては、P偏光成分については大部分を透過すると共にS偏光成分については大部分を反射し、第二の波長の光に対しては、P偏光成分、S偏光成分のいずれについても大部分を透過または反射する偏光ビームスプリッタであり」との限定、及び第二の光合分波手段についての「第二の波長の光に対しては、P偏光成分、S偏光成分のいずれについても一部分を透過するかあるいは反射し、残りを反射するかあるいは透過し、第一の波長の光に対しては、P偏光成分、S偏光成分のいずれについても大部分を透過または反射する無偏光ビームスプリッタであり」との限定を、それぞれ削除したものに相当する。

そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、更に他の要件を付加したものに相当する本願補正発明が、前記「第2 〔理由〕4.」に記載したとおり、引用例1及び2に記載された発明、並びに周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1及び2に記載された発明、並びに周知事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、その余の請求項について論及するまでもなく、本願は拒絶すべきものである。

よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-26 
結審通知日 2008-07-01 
審決日 2008-07-14 
出願番号 特願2001-312806(P2001-312806)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G11B)
P 1 8・ 575- Z (G11B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田良島 潔  
特許庁審判長 山田 洋一
特許庁審判官 漆原 孝治
小松 正
発明の名称 光ヘッド装置  
代理人 木村 明隆  
代理人 机 昌彦  
代理人 谷澤 靖久  

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