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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F 審判 査定不服 特174条1項 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F 審判 査定不服 特36条4項詳細な説明の記載不備 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F 審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) A63F |
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管理番号 | 1183630 |
審判番号 | 不服2005-11160 |
総通号数 | 106 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2005-06-15 |
確定日 | 2008-08-28 |
事件の表示 | 特願2003-379098「遊技機」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 2日出願公開、特開2005-137717〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
第1 手続の経緯 本願は、平成15年11月7日に出願された特願2003-378647号(国内優先権主張 平成14年11月20日)の一部を特許法44条1項の規定により新たな特許出願(同条4項の規定により、特願2003-378647号と同じ優先権主張がされているものとみなされる。)としたものであって、平成17年5月10日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として同年6月15日付けで本件審判請求がされるとともに、同年7月14日付けで特許請求の範囲についての手続補正がされたものである。 当審においてこれを審理した結果、平成17年7月14日付けの手続補正を却下するとともに、平成20年4月16日付けで新たな拒絶の理由(いわゆる「最後の拒絶理由」である。)を通知したところ、請求人は平成20年6月11日付けで意見書及び手続補正書を提出した(この手続補正を、以下「本件補正」という。)。 第2 補正の却下の決定 [補正の却下の決定の結論] 平成20年6月11日付けの手続補正を却下する。 [理由] 1.当審で通知した拒絶理由について 上記のとおり、平成20年4月16日付けの拒絶理由は最後の拒絶理由として通知したものであるが、請求人はそのうちの理由の1つが最後の拒絶理由とすべきでないため、最初の拒絶理由通知であると主張するので、まずこの点につき検討する。 請求人が問題としているのは、「(2)遊技情報表示と図柄表示領域の光透過率の関係」として、「前記表示制御手段は、前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を変化させる」との発明特定事項について検討した部分である。 請求人は、願書に最初に添付した特許請求の範囲に「前記表示制御手段は、前記図柄表示領域の光透過率を変化させる」との発明特定事項が記載されていること、及び当審の拒絶理由において、「前記図柄表示領域の光透過率を変化させる」という部分について実施可能要件を満たしていないと指摘しているだけであり、「前記遊技情報の表示と略同時に、」であるがゆえに実施可能要件を満たしていないと指摘しているわけではないことを理由としてあげている。 しかし、当審の拒絶理由では上記のとおり、表題として「(2)遊技情報表示と図柄表示領域の光透過率の関係」を掲げ、「前記表示制御手段は、前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を変化させる」との発明特定事項について検討する。」と断った上で、実施例における遊技情報である「ドーン」の視認性と「前記図柄表示領域の光透過率を変化させる」の関連を採り上げたことは拒絶理由に示したとおりであり、そもそも「前記遊技情報の表示と略同時に、」でなければ、採り上げる必要のない事項である。 したがって、請求人の上記主張を採用することはできず、当審で通知した拒絶理由は、最後の拒絶理由である。 2.補正内容及び補正目的 本件補正は特許請求の範囲(本件補正前後を通じて単一の請求項から成る。)を補正するものであり、補正前後の請求項1の記載は次のとおりである。なお、平成17年7月14日付けの手続補正が却下されたため、補正前とは平成17年1月19日付け手続補正後を意味する。 (補正前請求項1) 「遊技に関する結果を表示する遊技結果表示手段と、 該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段と を備えた遊技機において、 前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、該第2表示手段は前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域を有し、 該図柄表示領域に前記1又は複数の図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報を表示させる表示制御手段を備え、 前記表示制御手段は、前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を変化させることを特徴とする遊技機。」 (補正後請求項1) 「遊技に関する結果を表示する遊技結果表示手段と、 該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段と を備えた遊技機において、 前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、該第2表示手段は前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域を有し、 該図柄表示領域に、前記第1表示手段の図柄表示部における可変表示の停止態様が特定の停止態様である場合に、該特定の停止態様に重ねて表示しつつ該特定の停止態様を強調する遊技情報を表示させる表示制御手段を備え、 前記表示制御手段は、前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を低くすることを特徴とする遊技機。」 上記下線部が補正箇所であり、本件補正は特許請求の範囲の減縮を目的とするものと認める。そのため、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「補正発明」という。)については独立特許要件の判断も行う。 3.新規事項追加 「該図柄表示領域に、前記第1表示手段の図柄表示部における可変表示の停止態様が特定の停止態様である場合に、該特定の停止態様に重ねて表示しつつ該特定の停止態様を強調する遊技情報を表示させる表示制御手段を備え」との事項について検討する。 請求人はこの補正の根拠として、願書に最初に添付した特許請求の範囲、明細書又は図面(以下、これらを併せて「当初明細書」という。)の段落【0061】?【0064】及び【図10】(4)をあげている。 請求人が主張する段落に、「BBの内部当選が成立し、且つ遊技者が第1停止操作(リール3L,3C,3Rが変動後、停止ボタン11L,11C,11Rのうちから遊技者が任意に選択した1つの停止ボタンを遊技者が最初に押す操作)として停止ボタン11Lを押した場合の図柄表示領域21L,21C,21R及び演出表示領域23の表示態様を示している。ここでは、リール3Lの停止図柄は、「キャラクタ?キャラクタ?キャラクタ(ドンドンドン)」となっている。」(段落【0061】)、「図10(3)で説明したBBの内部当選を受けて、リール3Lに対応する表示領域である図柄表示領域21Lには、「ドーン」21aという遊技情報が表示され、遊技者に報知される。」(段落【0062】)及び「「ドーン」21aの報知を強調するため、遊技者から見てリール3Lの停止図柄(ドンドンドン)は「ドーン」21aによって遮蔽された状態になっている。」(段落【0064】)との記載があり、【図10】(4)には「ドーン」との文字が、左リールの3つの図柄(段落【0061】の「ドンドンドン」)に重ねて表示することが記載されていることは認める。 しかし、上記段落【0061】?【0062】及び【0064】並びに【図10】によれば、BBの内部当選が成立し、遊技者が第1停止操作によりリール3Lを停止操作し、その停止図柄が「キャラクタ?キャラクタ?キャラクタ(ドンドンドン)」という一連の遊技工程が偶々あった際に、「ドンドンドン」の図柄に「ドーン」が重なることが記載されているにすぎない。請求人が主張する段落【0063】には、「この報知によって第1表示手段のリール3Lの停止図柄態様の表示(ドンドンドン)に迫力を持たせることができ、興趣向上につながる。」との記載もあるが、これとて、上記一連の遊技工程が偶々あった際に、「ドーン」という遊技情報を表示し、その表示と停止態様に関連があることをいうにとどまり、「停止態様を強調する遊技情報」なる技術思想を開示するものとは認めることができない。 そして、本件補正後の請求項1が、上記一連の遊技工程につき何ら限定していないことは明らかであって、かかる限定をすることなく「該図柄表示領域に、前記第1表示手段の図柄表示部における可変表示の停止態様が特定の停止態様である場合に、該特定の停止態様に重ねて表示しつつ該特定の停止態様を強調する遊技情報を表示させる表示制御手段を備え」ることなど当初明細書に記載されていないし自明の事項でもない。 すなわち、本件補正は特許法17条の2第3項の規定に違反している。 4.独立特許要件欠如その1 「前記表示制御手段は、前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を低くする」について検討する。 上記事項につき、発明の詳細な説明には「「ドーン」21aの報知を強調するため、遊技者から見てリール3Lの停止図柄(ドンドンドン)は「ドーン」21aによって遮蔽された状態になっている。これは、図柄表示領域の光透過率を変化させることで実現できる。」(段落【0064】)及び「遊技情報が表示される場合に、図柄表示領域の光透過率(第1表示手段の見えやすさ)を変化するように構成しているので、例えば光透過率を低く(第1表示手段を見えにくく)変化させると、第1表示手段の表示が邪魔に成らず、遊技状態を正確に確認しやすくなる。」(段落【0076】)との記載があり、【図10】(4)がそれに対する説明図面と解されるものの、【図10】(4)においては、第1表示手段の表示内容が薄くなっており、薄いということは、図柄表示領域の光透過率を低くしたことと相反する。【図10】(4)では、遊技情報に該当する「ドーン」が黒表示されており、「ドーン」以外の部分の光透過率を低くしなければならないが、そうすると、第1表示手段の表示内容を含めて「ドーン」以外の部分全体が暗くなり、「ドーン」の視認性は低下すると考えられる。 なるほど、上記事項を採用すれば、「第1表示手段の表示が邪魔に成らず」との作用効果は奏するものの、それは「遊技状態を正確に確認」できることが大前提であり、この前提を保つことができるかどうか相当程度疑問であり、どのようにすれば遊技状態を正確に確認できるのか発明の詳細な説明からは把握できない。 この点請求人は、「本願発明では、図柄表示領域用のバックライト光源として第1表示手段からの光(LEDランプ29、蛍光ランプ38a、38b)の他に、図柄表示領域を照明するために導光板35を設けています。・・・図柄表示領域の光透過率を低くし第1表示手段の図柄を見えにくくした場合であっても、図柄表示領域を直接照明する導光板35を用いることで、図柄表示領域自体の明るさを一定度合い保つことができます。その結果、第1表示手段の図柄を見えにくくする一方で、遊技情報を正確に認識できる、という上記作用効果を奏することができます。」(平成20年6月11日付け意見書3頁下から2行?4頁15行)と主張するが、本願明細書に、「液晶表示装置31は、保護ガラス32、表示板33、液晶パネル34、導光板35、反射フィルム36、いわゆる白色光源(全ての波長の光を人の目に特定の色彩が目立たない割合で含む)である蛍光ランプ37a,37b,38a,38b、ランプホルダ39a?39h、液晶パネル駆動用のICを搭載したテーブルキャリアパッケージ(TCP)からなり液晶パネル34の端子部に接続したフレキシブル基板(図示せず)等により構成される。」(段落【0026】)及び「反射フィルム36は、例えば白色のポリエステルフィルムやアルミ薄膜に銀蒸着膜を形成したものが用いられ、導光板35に導入された光を導光板35の正面側に向けて反射させる。この反射フィルム36は、反射領域36A及び非反射領域(透過領域)36BL,36BC,36BRにより構成されている。非反射領域36BL,36BC,36BRは、透明な材料で形成され入射した光を反射することなく透過させる光透過部として形成され、リール3L,3C,3Rの回転が停止した場合に表示される図柄(合計3個の図柄)の各々の前方に位置に設けられている(リールシートに対応する領域を光透過部としている)。具体的には、非反射領域36BL,36BC,36BRの大きさ及び位置は、図柄表示領域21L,21C,21Rのものと一致するようになっている。」(段落【0030】)と記載されているとおり、「導光板35」だけではバックライト光源にならず、「反射フィルム36」との協働作用によってバックライト光源機能を有するところ、図柄表示領域該当部は「非反射領域36BL,36BC,36BR」として形成されているのだから、請求人が主張するような「図柄表示領域を直接照明する導光板35」などは存在しない。仮に、図柄表示領域を直接照明するのだとすると、図柄停止前において図柄表示領域が直接照明されていることになり(停止に伴い照明することは記載されていない。)、停止前に図柄を視認する際、眩しくなり視認性が低下するおそれが十分あることもつけ加えておく。請求人の主張を採用することはできない。 以上のとおり、本件補正後の発明の詳細な説明は、遊技状態を正確に確認できることを前提とした上で、「前記表示制御手段は、前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を低くする」ことを可能とする技術手段を開示していないから、補正発明を実施可能な程度に記載したものではなく、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。すなわち、補正発明は特許出願の際独立して特許を受けることができない。すなわち、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反している。 5.独立特許要件欠如その2 補正発明の実施可能性については上記のとおりであるが、以下では仮に実施可能であるとした場合の判断をしておく。 (1)引用刊行物の記載事項 原査定の拒絶の理由に引用された特開平7-124290号公報(以下「引用例」という。)には、以下のア?クの記載が図示とともにある。 ア.「複数の回転リールを横方向に並列し、各回転リールの外周の表面に複数のシンボルマークを所定間隔で表示し、各回転リールの外周の表面の一部をフロントパネルに開設した表示窓に臨ませるとともに、各回転リールを回転させてシンボルマークを移動表示するスロットマシンにおいて、 上記フロントパネルには、前記表示窓の位置に少なくとも液晶表示装置を配置し、ゲームの開始前には液晶を遮光状態とするとともに、その遮光面にインフォメーションを液晶表示し、ゲーム中は液晶を透光状態としたことを特徴するスロットマシン」(【請求項1】) イ.「センターパネル21のほぼ中央には、図2に示すように、3個の表示窓22?24を横並びに形成している。各表示窓22?24の内部には、各回転リール30?32の表面をそれぞれ臨ませている。そして、各表示窓22?24には、回転リール30?32を回転させることにより、上下方向に3個のシンボルマークを所定間隔で高速で移動表示させることができる。」(段落【0016】) ウ.「前記センターパネル21の裏側には、図1に示すように、液晶表示装置を構成する液晶パネル40が、センターパネル21の裏面のほぼ全体にわたって配置されている。」(段落【0018】) エ.「液晶パネル40の制御は、スロットマシン10内に設けたマイクロコンピュータ等からなる電気的制御装置(図示せず)により行われている。前記液晶パネル40の裏側には、図1に示すように、液晶パネル40をその裏側から照明するためのバックライトユニット50が配置されている。」(段落【0019】) オ.「上記バックライトユニット50は、図1に示すように、各表示窓22?24の位置を除き、液晶パネル40の裏面のほぼ全体にわたって配置された面発光板51と、この乱反射板51の端面に配置された蛍光灯52とから構成されている。なお、面発光板51を、各表示窓22?24の位置を除いて配置したことから、液晶パネル40の透光状態では、スロットマシン10の内部に配置された各回転リール30?32のシンボルマークを、センターパネル21を透してスロットマシン10の前面より見ることができる。」(段落【0020】) カ.「液晶の透光面の一部を遮光状態として、図4に示すように、中央ライン60を液晶表示して、1本の有効ラインを表示する。」(段落【0024】) キ.「3個のストップスイッチ13?15を全て操作し、全ての回転リール30?32を停止させる。その結果、有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせが形成されると、特別の賞態様、例えば、図7に示す右下がりの斜めライン63上に「7」の文字から成る図柄が3個揃うと、いわゆる「ビッグボーナス」の役が成立し、15枚のメダルが遊技者に払い出される。」(段落【0028】) ク.「「ビッグボーナス」が成立すると、図8に示すように、上下に長く透光状態となっていた各表示窓22?24が、右下がりの斜めライン63上に揃った「7」の図柄を残して遮光状態となり、「ビッグボーナス」の当たり図柄を遊技者から見易いように強調する。さらに、各表示窓22?24の図7において向かって右側に表示されていた5個のメダル投入表示部70?74が、消灯し、その箇所に、図8に示すように、「ビッグボーナス」の文字が表示され、「ビッグボーナス」が成立したことを遊技者にわかり易く表示する。」(段落【0029】) (2)引用例記載の発明の認定 引用例の記載イ?オ及び【図1】?【図3】によれば、各表示窓22?24の位置に対応する液晶パネル部分にはバックライトユニットが設けられておらず、バックライトユニットと液晶パネルは略同サイズと認めることができ、表現を変えれば、液晶パネルと略同サイズのバックライトユニットに各表示窓22?24該当の開口部があるということができる。 遊技者側からみると、液晶パネル、バックライトユニット(表示窓22?24該当の開口部あり)及び3個の回転リールが並んでいる。 したがって、引用例には次のような発明が記載されていると認めることができる。 「遊技者側からみて、液晶パネル、バックライトユニット及び3個の回転リールが並んで配置されたスロットマシンであって、 各回転リールは、外周の表面に複数の図柄を所定間隔で表示したものであり、 バックライトユニットには3個の開口部が設けられ、液晶パネルが透光状態であれば、各開口部を通して背後の回転リールを各リールごとに3図柄を視認できるように構成され、 液晶パネルの透光面の一部を遮光状態として、有効ラインを表示し、 全ての回転リールが停止し、有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせとしてビッグボーナスが成立すると、特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態とし、常時はメダル投入表示部とされる液晶パネル部分にビッグボーナスの文字を表示するスロットマシン。」(以下「引用発明」という。) (3)補正発明と引用発明の一致点及び相違点の認定 引用発明において、「全ての回転リールが停止し、有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせとしてビッグボーナスが成立」したこと(それ以外にも、全ての回転リールが停止後に表示されるリール図柄も同じである。)及び「ビッグボーナスの文字」は「遊技に関する結果」であるから、引用発明の「3個の回転リール」及び「液晶パネル」は補正発明の「第1表示手段」及び「第2表示手段」にそれぞれ相当し、これらを併せたものが補正発明の「遊技結果表示手段」に相当する。 引用発明において「有効ライン上に、予め設定された特定の図柄の組み合わせ」となることは、補正発明の「遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合」と異ならず、引用発明においても「遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態」となることは明らかであるから、引用発明は補正発明の「利益状態発生手段」を備える。 引用発明における液晶パネルの開口部該当部分は、同部分に有効ラインの表示がされていても、3個の回転リールを視認できることは明らかであるから、上記開口部該当部分は補正発明の「前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域」に相当する。「前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され」ることも、当然一致点である。 引用発明において「特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態」とすることは、補正発明でいう「前記第1表示手段の図柄表示部における可変表示の停止態様が特定の停止態様である場合に、・・・該特定の停止態様を強調する遊技情報」の表示に当たる。 引用発明の「スロットマシン」が補正発明の「遊技機」に含まれることはいうまでもない。 したがって、補正発明と引用発明は、 「遊技に関する結果を表示する遊技結果表示手段と、 該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段と を備えた遊技機において、 前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、該第2表示手段は前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域を有し、 該図柄表示領域に、前記第1表示手段の図柄表示部における可変表示の停止態様が特定の停止態様である場合に、該特定の停止態様を強調する遊技情報を表示させる表示制御手段を備える遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。 〈相違点〉「表示制御手段」につき、補正発明が「該特定の停止態様に重ねて表示しつつ該特定の停止態様を強調する遊技情報を表示させる」及び「前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を低くする」と限定しているのに対し、引用発明にはかかる限定がない点。 (4)相違点の判断及び補正発明の独立特許要件の判断 引用発明では、ビッグボーナス成立(特定の停止態様)時に、図柄表示領域ではなく、常時はメダル投入表示部とされる液晶パネル部分にビッグボーナスの文字(これは「特定の停止態様を強調する遊技情報」の1つである。)を表示しているが、図柄表示領域における文字の視認性を十分確保できるのであれば、ビッグボーナスの文字表示箇所を図柄表示領域に変更することを妨げる理由はない。 液晶パネルを用いるものではないものの、図柄表示領域に、リーチ時や大当り時に、特定の停止態様に重ねて、特定の停止態様を強調する遊技情報を表示すること自体は例えば特開2000-350805号公報【図16】?【図20】にみられるように周知であるから、なお一層上記の変更は当業者にとって想到容易である。 その際、第1表示手段(停止態様)の視認性を重視するのか、それとも第2表示手段(遊技情報)の視認性を重視するのか普通に考えても選択事項であるばかりか、ビッグボーナス成立後はリールを停止する必要がないことを考慮すれば、遊技情報の方が遊技者にとってより重要であるから、遊技情報の視認性を確保した上で停止態様の視認性を低下することに不都合な点がないのならば、そのようにすることも設計事項である。引用発明の図柄表示領域は液晶パネルの一部であるから、停止態様の視認性を低下するに当たり「前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を低くする」ことは、誰もが考えつく制御形態である。 以上のとおりであるから、発明の詳細な説明に実施可能要件違反がないとの前提のもとでは、相違点に係る補正発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、補正発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。すなわち、本件補正は平成18年改正前特許法17条の2第5項で準用する同法126条5項の規定に違反している。 [補正の却下の決定のむすび] 以上によれば、特許法159条1項で読み替えて準用する同法53条1項の規定により本件補正は却下されなければならない。 よって、補正の却下の決定の結論のとおり決定する。 第3 本件審判請求についての判断 1.特許請求の範囲の記載 平成17年7月14日付けの手続補正及び本件補正が却下されたから、本願の請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は、平成17年1月19日付け手続補正により補正された特許請求の範囲【請求項1】に記載された事項によって特定されるものである。その記載は、「第2[理由]2」において「補正前請求項1」として示したとおりであり、再掲すると次のとおりである。 「遊技に関する結果を表示する遊技結果表示手段と、 該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段と を備えた遊技機において、 前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、該第2表示手段は前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域を有し、 該図柄表示領域に前記1又は複数の図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報を表示させる表示制御手段を備え、 前記表示制御手段は、前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を変化させることを特徴とする遊技機。」 2.新規事項追加 請求項1記載の「該図柄表示領域に前記1又は複数の図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報を表示させる表示制御手段を備え」との事項について検討する。 「第2[理由]3」で述べたように、当初明細書にはBBの内部当選が成立し、遊技者が第1停止操作によりリール3Lを停止操作し、その停止図柄が「キャラクタ?キャラクタ?キャラクタ(ドンドンドン)」という一連の遊技工程が偶々あった際に、「ドンドンドン」の図柄に「ドーン」が重なることが記載されているが、上記一連の遊技工程につき何ら限定をすることなく「該図柄表示領域に前記1又は複数の図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報を表示させる表示制御手段を備え」ることなど当初明細書に記載されていないし自明の事項でもない。 すなわち、特許法17条の2第3項に規定する要件を満たさない補正がされている。 3.記載不備 請求項1記載の「前記表示制御手段は、前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を変化させる」について検討する。 「第2[理由]4」で述べたように、上記事項を「前記表示制御手段は、前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を低くする」と限定した事項について、本件補正後の発明の詳細な説明は、遊技状態を正確に確認できることを前提とした上で、「前記表示制御手段は、前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を低くする」ことを可能とする技術手段を開示していないのであるが、本件補正は発明の詳細な説明を補正するものではないから、同技術手段は本願明細書の発明の詳細な説明にも開示されていない。 そうすると、「前記表示制御手段は、前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を低くする」ことを含む請求項1記載の上記事項について、発明の詳細な説明は、遊技状態を正確に確認できることを前提とした上で実施可能な程度に開示していないというよりなく、特許法36条4項1号に規定する要件を満たしていない。 4.進歩性 (1)本願発明と引用発明の一致点及び相違点の認定 「第2[理由]5(3)」で述べたことを踏まえると、本願発明と引用発明は、 「遊技に関する結果を表示する遊技結果表示手段と、 該遊技結果表示手段に特定の遊技結果が表示された場合に、遊技者に有利な利益状態を発生させる利益状態発生手段と を備えた遊技機において、 前記遊技結果表示手段は、第1表示手段と、正面側から見て該第1表示手段の表示領域よりも手前側に設けられた第2表示手段とを含んで構成され、該第2表示手段は前記第1表示手段の表示を透過して表示可能な図柄表示領域を有し、 該図柄表示領域に前記1又は複数の図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報を表示させる表示制御手段を備る遊技機。」である点で一致し、次の点で相違する。 〈相違点〉「表示制御手段」につき、本願発明が「前記表示制御手段は、前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を変化させる」と限定しているのに対し、引用発明では、「特定の図柄の組み合わせが形成された図柄該当部分を残して液晶パネルの開口部該当部分を遮光状態」とすることが「図柄表示領域」における「前記1又は複数の図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報」であり、遮光は光透過率の変化ではあるものの、「前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を変化させる」とはいえない点。 (2)相違点の判断及び本願発明の進歩性の判断 ここでも、発明の詳細な説明に実施可能要件の不備がないとした場合の判断を行う。 上記の前提のもとに、引用発明におけるビッグボーナスの文字(これも本願発明の「前記1又は複数の図柄表示部の可変表示の停止態様を強調する遊技情報」に相当する。)表示箇所を図柄表示領域に変更すること、及びその際に「前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を低くする」ことが当業者にとって想到容易であることは「第2[理由]5(4)」で述べたとおりであり、本願発明は「前記遊技情報の表示と略同時に、前記図柄表示領域の光透過率を低くする」ことを含むから、相違点に係る本願発明の構成を採用することは当業者にとって想到容易であり、同構成を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。 したがって、本願発明は引用発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法29条2項の規定により特許を受けることができない。 第4 むすび 以上のとおり、本件補正は却下されなければならず、本願において特許法17条の2第3項に規定する要件を満たさない補正がされ、及び発明の詳細な説明の記載が同法36条4項1号に規定する要件を満たしていない若しくは本願発明が特許法29条2項の規定により特許を受けることができないのであるから、本願は拒絶を免れない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-06-26 |
結審通知日 | 2008-07-01 |
審決日 | 2008-07-14 |
出願番号 | 特願2003-379098(P2003-379098) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
WZ
(A63F)
P 1 8・ 536- WZ (A63F) P 1 8・ 561- WZ (A63F) P 1 8・ 121- WZ (A63F) P 1 8・ 55- WZ (A63F) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 鉄 豊郎、池谷 香次郎 |
特許庁審判長 |
津田 俊明 |
特許庁審判官 |
有家 秀郎 伊藤 陽 |
発明の名称 | 遊技機 |
代理人 | 藤田 和子 |