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審決分類 |
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 H01L 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L |
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管理番号 | 1183694 |
審判番号 | 不服2007-3074 |
総通号数 | 106 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-10-31 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-01-25 |
確定日 | 2008-08-28 |
事件の表示 | 特願2004-220852「発光モジュールおよび発光システム」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 2月 9日出願公開、特開2006- 41291〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1.手続の経緯 本願は、平成16年7月28日の出願であって、平成18年11月27日に手続補正がなされ、同年12月15日付で拒絶査定がなされ、これに対して、平成19年1月25日に拒絶査定不服審判請求がなされるとともに、同年2月26日に手続補正がなされたものである。 2.平成19年2月26日付手続補正についての補正却下の決定 [補正却下の決定の結論] 平成19年2月26日付の手続補正を却下する。 [理由] (1)補正の内容 上記平成19年2月26日付の手続補正(以下「本件補正」という。)は、補正前の請求項1に補正前の請求項2を組み込み、以下のように新たな請求項1とすることを含むものである。 「【請求項1】 少なくとも、第1の透光性絶縁基板、透明導電層、光電変換層、第1の金属層からなるシースルータイプまたは採光型の太陽電池部と、 第1の接着層と、 第2の透光性絶縁基板、第2の金属層、発光素子からなる発光部と、 第2の接着層と、 前記発光部の光を反射させる反射部と、が順次積層されてなり、 発光部が、複数の発光ユニットから構成され、これらの発光ユニットが、複数の発光素子を点在状に実装して構成され、 反射部が、少なくとも、反射層と第3の基板からなる保護部とで構成されていることを特徴とする発光モジュール。」 上記補正は、補正前の請求項1に、補正前の請求項2の「反射部が、少なくとも、反射層と第3の基板からなる保護部とで構成されている」との事項を付加し、さらに、補正前の請求項1の「発光ユニット」に「複数の発光素子を点在状に実装して構成され」との技術的限定を付加するものであって、平成18年改正前特許法第17条の2第4項第2号に規定された特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。 そこで、本件補正後の請求項1に係る発明(以下「本願補正発明」という。)が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか(平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか)否かについて検討する。 (2)引用例記載の発明 ア.原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開平11-15419号公報(以下「引用例1」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 a.「【0002】 【従来の技術】ビルの屋上や壁面、空き地には社名や商品広告等を描いた看板が多く設置されている。このような看板は、例えば鋼板の表面にペンキで文字や図柄等を描いたものを屋上等に据え付けた構造のものであって、その会社や商品の宣伝効果を高めるために人目に付く場所に設定される。このため、比較的太陽光線も良く当る。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】近年、環境への負荷を低減することのできる発電手段として、太陽光発電の普及活動が活発に行われている。・・・中略・・・そこで本発明は、太陽電池パネルを看板として利用することによって、太陽電池パネルの設置の普及と宣伝効果の増大とを同時に果たそうとするものである。」 b.「【0009】図3は、本願発明に係る第2の実施形態の看板の構造を説明するための断面構造図である。本看板は、たくさんの小孔16を有してなるアモルファスシースルー太陽電池モジュール1の裏面に、蛍光顔料が混入されて着色された蛍光フィルム2が色別に複数枚組み合わされて貼り付けられて広告の図柄が描かれ、さらにその裏に、ブラックライト光源31と反射板32とからなる照明装置3が設けられた構造を有している。本看板は、昼間、光が照射されると太陽電池モジュール1が発電を行ってこの電力が蓄電池に貯えられるようになっており、広告の図柄は太陽電池モジュール1を通して透けて見えるようになっている。また、夜は、蓄電池に貯えられた電力で光源31が点灯されて蛍光フィルム2が発光して広告が見えるようになっている。」 c.「【0010】図4は、面状発光装置の構造を説明する断面構造図である。本装置は、樹脂中に蛍光顔料が均一に混入されてなる板状の発光板4の上に、半透明のアモルファス太陽電池モジュール1が貼り付けられ、発光板4の裏に、ブラックライト光源31と反射板32とからなる照明装置3が設けられた構造を有している。これは上記例の看板構造の一部を少し改変したものであって、このような光を透過する太陽電池モジュールを発光板の発光面上に貼り付けた構造のものは、昼間は発電し、夜は発光する機能を有する面状の発光装置として利用することができる。また、これに蓄電池やコンデンサー等の蓄電装置を組み合わせると、外部電力供給の不要な発光装置とすることも可能である。また、蓄光性物質を発光板内の顔料等として用いれば、より低電力で所定の発光輝度を得ることができて好ましい。」 d.図3から、太陽電池モジュール1と、蛍光フィルム2と、ブラックライト光源31と、反射板32とが、この順に積層されていることが看て取れる。 e.図4から、太陽電池モジュール1と、発光板4と、ブラックライト光源31と、反射板32とが、この順に積層されていることが看て取れる。 上記aないしeによれば、引用例1には、 「シースルー又は半透明のアモルファス太陽電池モジュールと、蛍光顔料が混入された蛍光フィルム又は発光板とが貼り合わせられ、さらにその裏に、ブラックライト光源と反射板とがこの順に積層されてなる照明装置が設けられてなる、ビルの屋上や壁面に設置される看板や面状発光装置の構造において、 昼間は発電し、この電力が蓄電池に貯えられ、夜は蓄電池に貯えられた電力で発光する、ビルの屋上や壁面に設置される看板や面状発光装置の構造。」の発明(以下「引用発明1」という。)が記載されているものと認められる。 イ.同じく、原査定の拒絶の理由に引用された、本願出願前に頒布された刊行物である特開2003-249666号公報(以下「引用例2」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。 a.「【特許請求の範囲】 【請求項1】 透明導電層が形成された透明な基板表面に、少なくともIIIA族元素から選択される1以上の元素とVA族元素から選択される1以上の元素とを含む半導体層、IIIA族元素から選択される1以上の元素とVA族元素から選択される1以上の元素とIVA族元素から選択される1以上の元素とを含む半導体層、及び電極をこの順に有してなることを特徴とする太陽電池。」 b.「【0018】-基板- 本発明で使用する基板20としては、導電性でも絶縁性でもよく、結晶あるいは非晶質でもよい。但し、前記のように、本発明の太陽電池は透明である必要があるため、基板20は、少なくとも可視光領域で透明な基板である必要がある。」 c.「【0056】-電極- 前記半導体層23の表面に設けられる電極24の形状は、特に制限されるものではないが、透明な太陽電池とするためには、前記電極24は、短冊をストライプ状にしたものや細線で形成されることが好ましい。 ・・・中略・・・ 【0058】前記細線の電極24は集電電極としての機能を果たす。当該電極24は透明であることが好ましいが、電極24が金属である場合は半透明であってもよい。・・・中略・・・このような観点から、前記電極24は金属、金属酸化物であることが好ましい。」 d.「【0010】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、前記従来における問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。すなわち、本発明の目的は、有害で不要な紫外光を有効利用して発電を行うことができ、表示素子等に重ねて使用しても太陽電池の存在を意識させない本質的に透明で高効率の太陽電池、及びこの太陽電池を用いた表示パネル、窓材を提供することである。」 (3)対比 本願補正発明と引用発明1とを以下に対比する。 ア.引用発明1の「シースルー又は半透明のアモルファス太陽電池モジュール」が、本願補正発明の「シースルータイプまたは採光型の太陽電池部」に相当し、引用発明1の「ビルの屋上や壁面に設置される看板や面状発光装置の構造」は発光するものであるから、本願補正発明の「発光モジュール」に相当するということができる。 イ.引用発明1の「蛍光フィルム又は発光板」は「ブラックライト光源」からの光を受けて発光するものであるから、引用発明1の「『蛍光フィルム又は発光板』及び『ブラックライト光源』」が、本願補正発明の「発光部」に相当し、引用発明1の「反射板」は、本願補正発明の「反射部」に相当する。 ウ.引用発明1では、「シースルー又は半透明のアモルファス太陽電池モジュール」と、「蛍光フィルム又は発光板」とが貼り合わせられ、さらにその裏に、ブラックライト光源と反射板とがこの順に積層されてなる照明装置が設けられているのであるから、上記アないしイを併せ考慮すると、引用発明1は、本願補正発明の「太陽電池部と、・・・発光部と、・・・反射部と、が順次積層されてなり」との事項を備えているといえる。 以上ア?ウによれば、本願補正発明と引用発明1とは、 「シースルータイプまたは採光型の太陽電池部と、発光部と、発光部の光を反射させる反射部と、が順次積層されてなる発光モジュール。」である点で一致し、次の点で相違する。 [相違点1] 太陽電池部の構造が、本願補正発明では、少なくとも、第1の透光性絶縁基板、透明導電層、光電変換層、第1の金属層からなるものであるのに対し、引用発明1では、その具体的な構造が明らかでない点。 [相違点2] 本願補正発明が、太陽電池部と発光部との間に「第1の接着層」を有するのに対して、引用発明1では、太陽電池部と発光部との「貼り合わせ」が接着層を介して行われているのか否かが明らかでない点。 [相違点3] 発光部、反射部及び両者の積層構造に関し、本願補正発明が、「第2の透光性絶縁基板、第2の金属層、発光素子からなる発光部と、第2の接着層と、前記発光部の光を反射させる反射部と、が順次積層されてなり」との構成、及び「前記反射部が、少なくとも、反射層と第3の基板からなる保護部とで構成されている」との構成を有するのに対して、引用発明1は、これらの具体的構成を有していない点。 [相違点4] 発光部が、本願発明では、複数の発光ユニットから構成され、これらの発光ユニットが、複数の発光素子を点在状に実装して構成されたものであるのに対して、引用発明1では、このような構成を有していない点。 (4)判断 上記相違点について以下に検討する。 [相違点1]について ア.上記(2)のイによれば、引用例2には、次の発明(以下「引用発明2」という。)が記載されているものと認められる。 「本質的に透明で高効率の太陽電池において、 透明導電層(本願補正発明の「透明導電層」に相当。)が形成された透明な絶縁性の基板(本願補正発明の「第1の透光性絶縁基板」に相当。)表面に、少なくともIIIA族元素から選択される1以上の元素とVA族元素から選択される1以上の元素とを含む半導体層、IIIA族元素から選択される1以上の元素とVA族元素から選択される1以上の元素とIVA族元素から選択される1以上の元素とを含む半導体層(両半導体層が、本願補正発明の「光電変換層」に相当。)、及び金属からなる電極(本願補正発明の「第1の金属層」に相当。)を、この順に有してなる太陽電池。」 イ.そして、引用発明1のシースルータイプまたは採光型の太陽電池部として、本質的に透明で高効率の太陽電池である、引用発明2の太陽電池の上記アの構成、すなわち、「第1の透光性絶縁基板、透明導電層、光電変換層、第1の金属層からなる」構成を採用し、相違点1に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことである。 [相違点2]について 引用発明1における、太陽電池部と発光部との貼り合わせを、接着層を介して行う程度のことは当業者が容易になし得たことである。 [相違点3]について 透光性絶縁基板、金属層、発光素子からなる発光部と、接着層と、前記発光部の光を反射させる反射部と、が順次積層されてなり、前記反射部が、反射層と(前記透光性絶縁基板とは異なる)基板からなる保護部とで構成されている光源は、本願出願前周知である(例えば、特開2000-277812号公報(【0026】?【0030】、【0044】、【0053】?【0059】、及びライン光源装置1Cを参照。)、特開平11-266035号公報(【0034】?【0035】、【0043】、【0060】?【0066】、及び図6(a)?(c)を参照。)、及び特開平1-143366号公報(特許請求の範囲第1項、第4項、3頁右上欄6行?右下欄8行、4頁右上欄6行?11行を参照。))。 したがって、引用発明1の発光部として、上記周知の光源を採用し、相違点3に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が容易に想到し得たことである。 [相違点4]について 発光ユニットが、複数の発光素子を点在状に実装して構成されたものであり、複数の前記発光ユニットから構成された大型発光部は、本願出願前周知(例えば、特開平8-125231号公報(【0003】及び図7参照。「LEDモジュール8」が本願補正発明の「発光ユニット」に相当。)及び特開平11-149262号公報(【0003】?【0004】、図3参照。「電光表示ユニット50」が本願補正発明の「発光ユニット」に相当。)であるところ、引用発明1の発光モジュールは、ビルの屋上や壁面に設置される、看板などにも採用される構造であるから、引用発明1の発光部として、上記周知の大型発光部を採用し、相違点4に係る本願補正発明の構成となすことは当業者が容易になし得たことである。 そして、本願補正発明の効果は、引用発明1ないし2、及び上記周知技術から当業者が予測し得るものである。 よって、本願補正発明は、引用例1に記載された発明、引用例2に記載された発明、及び上記周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許出願の際独立して特許を受けることができない。 (5)むすび 以上のとおり、本件補正は、平成18年改正前特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反するものであるから、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。 3.本願発明について (1)本願発明 本件補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成18年11月27日付け手続補正により補正された明細書の特許請求の範囲の請求項1?10に記載されたとおりのものと認められるところ、その請求項1に係る発明(以下「本願発明」という。)は次のものである。 「【請求項1】 少なくとも、第1の透光性絶縁基板、透明導電層、光電変換層、第1の金属層からなるシースルータイプまたは採光型の太陽電池部と、第1の接着層と、第2の透光性絶縁基板、第2の金属層、発光素子からなる発光部と、第2の接着層と、前記発光部の光を反射させる反射部とが、順次積層されてなり、発光部が、複数の発光ユニットから構成されていることを特徴とする発光モジュール。」 (2)引用例記載の発明 原査定の拒絶の理由に引用された引用例及びその記載事項は、上記2.の(2)に記載したとおりである。 (3)対比・判断 本願発明は、本願補正発明から、「反射部が、少なくとも、反射層と第3の基板からなる保護部とで構成されている」との技術的限定、及び「発光ユニット」に関する「複数の発光素子を点在状に実装して構成され」との技術的限定をそれぞれ削除したものに相当する。 そうすると、本願発明の構成要件を全て含み、さらに上記限定を付加したものに相当する本願補正発明が、上記2.の(4)に記載したとおり、引用例1ないし2に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願発明も、同様の理由により、引用例1ないし2に記載された発明、及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。 (4)むすび 以上のとおり、本願発明は、引用例1ないし2に記載された発明及び周知技術に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-06-27 |
結審通知日 | 2008-07-01 |
審決日 | 2008-07-16 |
出願番号 | 特願2004-220852(P2004-220852) |
審決分類 |
P
1
8・
575-
Z
(H01L)
P 1 8・ 121- Z (H01L) |
最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 角地 雅信、近藤 幸浩 |
特許庁審判長 |
小牧 修 |
特許庁審判官 |
稲積 義登 里村 利光 |
発明の名称 | 発光モジュールおよび発光システム |
代理人 | 野河 信太郎 |