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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B32B
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B32B
管理番号 1183898
審判番号 不服2005-11197  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-06-15 
確定日 2008-09-03 
事件の表示 平成11年特許願第377455号「吸収体及び該吸収体を使用するシーツ」拒絶査定不服審判事件〔平成13年 7月10日出願公開、特開2001-187438〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯
本願は、平成11年12月30日の出願であって、その手続の経緯の概要は、以下のとおりである。
・平成12年3月17日に手続補正書を提出
・平成16年6月22日付けで拒絶理由を通知
・平成16年8月30日に意見書及び手続補正書を提出
・平成17年5月11日付けで拒絶査定
・平成17年6月15日に拒絶査定に対する審判請求
・平成17年7月15日に手続補正書を提出
・平成17年9月13日に手続補正書を提出(審判請求書の請求の理由を補正)
・平成17年12月12日付けで前置報告
・平成19年9月4日付けで審尋
・平成19年11月12日(差出日)に回答書を提出


第2 平成17年7月15日付けの手続補正についての補正の却下の決定
[補正の却下の決定の結論]
平成17年7月15日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1 補正の内容
平成17年7月15日付けの手続補正(以下、「本件補正」という。)は、本件補正前の特許請求の範囲に
「【請求項1】
上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されていることを特徴とする吸収体。
【請求項2】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されており、少なくともその一方の面に、3mm以上の大きさの複数の凹部又は凸部が形成されていることを特徴とする吸収体。
【請求項3】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されており、前記上部吸水性紙層部、吸水性混合層部若しくは下部吸水性紙層部又はこれらの二以上には少なくとも一部に界面活性剤が含有されていることを特徴とする吸収体。
【請求項4】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されており、少なくともその一方の面に、3mm以上の大きさの複数の凹部又は凸部が形成されており、前記上部吸水性紙層部、吸水性混合層部若しくは下部吸水性紙層部又はこれらの二以上には少なくとも一部に界面活性剤が含有されていることを特徴とする吸収体。
【請求項5】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設されている中間吸水性紙層部と、前記上部吸水性紙層部及び中間吸水性紙層部の間に配設されている高吸水性樹脂層部と、前記中間吸水性紙層部及び下部吸水性紙層部間に配設され、5mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、高吸水性樹脂層部、中間吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されていることを特徴とする吸収体。
【請求項6】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設されている中間吸水性紙層部と、前記上部吸水性紙層部及び中間吸水性紙層部の間に配設されている高吸水性樹脂層部と、前記中間吸水性紙層部及び下部吸水性紙層部間に配設され、5mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、高吸水性樹脂層部、中間吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されており、少なくともその一方の面に、3mm以上の大きさの複数の凹部又は凸部が形成されていることを特徴とする吸収体。
【請求項7】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設されている中間吸水性紙層部と、前記上部吸水性紙層部及び中間吸水性紙層部の間に配設されている高吸水性樹脂層部と、前記中間吸水性紙層部及び下部吸水性紙層部間に配設され、5mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、高吸水性樹脂層部、中間吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されており、前記上部吸水性紙層部、高吸水性樹脂含有層部、中間吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部又はこれらの二以上には少なくとも一部に界面活性剤が含有されていることを特徴とする吸収体。
【請求項8】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設されている中間吸水性紙層部と、前記上部吸水性紙層部及び中間吸水性紙層部の間に配設されている高吸水性樹脂層部と、前記中間吸水性紙層部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、高吸水性樹脂含有層部、中間吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されており、少なくともその一方の面に、3mm以上の大きさの複数の凹部又は凸部が形成されており、前記上部吸水性紙層部、高吸水性樹脂含有層部、中間吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部又はこれらの二以上には少なくとも一部に界面活性剤が含有されていることを特徴とする吸収体。
【請求項9】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設されている中間吸水性紙層部と、上部吸水性紙層部及び中間吸水性紙層部の間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む上部吸水性混合層部と、前記中間吸水性紙層部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物並びに前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂及び配合物質を含む下部吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、中間吸水性紙層部、上部吸水性混合層部、下部吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されていることを特徴とする吸収体。
【請求項10】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設されている中間吸水性紙層部と、上部吸水性紙層部及び中間吸水性紙層部の間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む上部吸水性混合層部と、前記中間吸水性紙層部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む下部吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、中間吸水性紙層部、上部吸水性混合層部、下部吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されており、少なくともその一方の面に、3mm以上の大きさの複数の凹部又は凸部が形成されていることを特徴とする吸収体。
【請求項11】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設されている中間吸水性紙層部と、上部吸水性紙層部及び中間吸水性紙層部の間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む上部吸水性混合層部と、前記中間吸水性紙層部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む下部吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、中間吸水性紙層部、上部吸水性混合層部、下部吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されており、前記上部吸水性紙層部、中間吸水性紙層部、上部吸水性混合層部、下部吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部又はこれらの二以上には少なくとも一部に界面活性剤が含有されていることを特徴とする吸収体。
【請求項12】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設されている中間吸水性紙層部と、上部吸水性紙層部及び中間吸水性紙層部の間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む上部吸水性混合層部と、前記中間吸水性紙層部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む下部吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、中間吸水性紙層部、上部吸水性混合層部、下部吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は合わせられて一体に形成されており、少なくともその一方の面に、3mm以上の大きさの複数の凹部又は凸部が形成されており、前記上部吸水性紙層部、中間吸水性紙層部、上部吸水性混合層部、下部吸水性混合層部若しくは下部吸水性紙層部又はこれらの二以上には少なくとも一部に界面活性剤が含有されていることを特徴とする吸収体。
【請求項13】 上部吸水性紙層部若しくは下部吸水性紙層部又は前記上部吸水性紙層部及び下部吸水性紙層部には、その少なくとも一部に、着色性物質が含有されていることを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項14】 上部吸水性紙層部、中間吸水性紙層部、上部吸水性混合層部、下部吸水性混合層部若しくは下部吸水性紙層部又はこれらの二以上には、その少なくとも一部に、殺菌性を有する物質が含有されていることを特徴とする請求項9乃至12の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項15】 上部吸水性紙層部、中間吸水性紙層部、上部吸水性混合層部、下部吸水性混合層部若しくは下部吸水性紙層部又はこれらの二以上には、その少なくとも一部に、殺菌性を有する物質が含有されていることを特徴とする請求項9乃至12の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項16】 高吸水性樹脂が、一種の高吸水性樹脂又は二種以上の高吸水性樹脂の混合物であることを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項17】 高吸水性樹脂は、紙おむつ廃材、乳パッド廃材、尿パッド廃材、生理用ナプキン廃材若しくは高吸収性繊維廃材から分離回収された高吸水性樹脂又はこれら高吸水性樹脂の二以上の混合物であることを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項18】 高吸水性樹脂又は高吸水性樹脂の混合物は、該吸水性混合層部に、該吸水性混合層部に対し、5重量パーセント未満の含有率で含有されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項19】 高吸水性樹脂又は高吸水性樹脂の混合物は、上部吸水性混合層部若しくは下部吸水性混合層部又は上部吸水性混合層部及び下部吸水性混合層部に、該上部吸水性混合層部若しくは下部吸水性混合層部又は上部吸水性混合層部及び下部吸水性混合層部に対し、5重量パーセント未満の含有率で含有されることを特徴とする請求項9乃至12の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項20】 高吸水性樹脂又は高吸水性樹脂の混合物は、該吸水性混合層部に、該吸水性混合層部に対し、30重量パーセント以下の含有率で含有されていることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項21】 高吸水性樹脂又は高吸水性樹脂の混合物は、上部吸水性混合層部若しくは下部吸水性混合層部又は上部吸水性混合層部及び下部吸水性混合層部に、該上部吸水性混合層部若しくは下部吸水性混合層部又は上部吸水性混合層部及び下部吸水性混合層部に対し、30重量パーセント以下の含有率で含有されることを特徴とする請求項9乃至12の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項22】 高吸水性樹脂が30μm以下の平均粒度を有するものであることを特徴とする請求項1乃至12及び請求項16乃至21の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項23】 高吸水性樹脂が20μm以下の平均粒度を有するものであることを特徴とする請求項1乃至12及び請求項16乃至21の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項24】 上面を形成する透水性薄層部と、下面を形成する透水性又は不透水性薄層部とを備え、前記上面を形成する透水性薄層部の下面に上面を接し、前記下面を形成する透水性又は不透水性薄層部の上面に下面を接して、請求項1乃至23の何れか一項に記載の吸収体が設けられていることを特徴とするシーツ。
【請求項25】 上面を形成する透水性薄層部は、乾式不織布又は湿式不織布で形成されていることを特徴とする請求項24項に記載のシーツ。
【請求項26】 下面を形成する不透水性薄層部は、プラスチックフィルム又は柔軟なプラスチックシートで形成されていることを特徴とする請求項24項に記載のシーツ。
【請求項27】 下面を形成する透水性薄層部が、複数の孔が形成されているプラスチックフィルム又は柔軟なプラスチックシートで形成されていることを特徴とする請求項24項に記載のシーツ。
【請求項28】 上面を形成する透水性薄層部と、下面を形成する透水性又は不透水性薄層部とを備え、前記透水性薄層部の下面に上面を接し、前記下面を形成する透水性又は不透水性薄層部の上面に下面を接して、請求項1乃至23の何れか一項に記載の吸収体が設けられていることを特徴とする包装材料。
【請求項29】 上面を形成する透水性薄層部は、乾式不織布又は湿式不織布で形成されていることを特徴とする請求項28に記載の包装材料。
【請求項30】 下面を形成する不透水性薄層部は、プラスチックフィルム又は柔軟なプラスチックシートで形成されていることを特徴とする請求項28項に記載の包装材料。
【請求項31】 下面を形成する透水性薄層部が、複数の孔が形成されているプラスチックフィルム又は柔軟なプラスチックシートで形成されていることを特徴とする請求項28項に記載の包装材料。」
とあるのを、
「【請求項1】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されており、少なくともその一方の面に、平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状、平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状又は平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の複数の突部、又は平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状、平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状又は平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の有底の穴状の複数の凹部が形成されていることを特徴とする吸収体。
【請求項2】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されており、少なくともその一方の面に、平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状、平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状又は平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の複数の突部、又は平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状、平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状又は平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の有底の穴状の複数の凹部が形成されており、前記上部吸水性紙層部、吸水性混合層部若しくは下部吸水性紙層部又はこれらの二以上には少なくとも一部に界面活性剤が含有されていることを特徴とする吸収体。
【請求項3】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設されている中間吸水性紙層部と、前記上部吸水性紙層部及び中間吸水性紙層部の間に配設されている高吸水性樹脂層部と、前記中間吸水性紙層部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、高吸水性樹脂層部、中間吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されており、少なくともその一方の面に、平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状、平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状又は平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の複数の突部、又は平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状、平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状又は平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の有底の穴状の複数の凹部が形成されていることを特徴とする吸収体。
【請求項4】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設されている中間吸水性紙層部と、前記上部吸水性紙層部及び中間吸水性紙層部の間に配設されている高吸水性樹脂層部と、前記中間吸水性紙層部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、高吸水性樹脂含有層部、中間吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されており、少なくともその一方の面に、平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状、平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状又は平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の複数の突部、又は平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状、平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状又は平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の有底の穴状の複数の凹部が形成されており、前記上部吸水性紙層部、高吸水性樹脂含有層部、中間吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部又はこれらの二以上には少なくとも一部に界面活性剤が含有されていることを特徴とする吸収体。
【請求項5】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設されている中間吸水性紙層部と、上部吸水性紙層部及び中間吸水性紙層部の間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む上部吸水性混合層部と、前記中間吸水性紙層部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む下部吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、中間吸水性紙層部、上部吸水性混合層部、下部吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されており、少なくともその一方の面に、平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状、平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状又は平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の複数の突部、又は平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状、平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状又は平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の有底の穴状の複数の凹部が形成されていることを特徴とする吸収体。
【請求項6】 上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設されている中間吸水性紙層部と、上部吸水性紙層部及び中間吸水性紙層部の間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む上部吸水性混合層部と、前記中間吸水性紙層部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む下部吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、中間吸水性紙層部、上部吸水性混合層部、下部吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は合わせられて一体に形成されており、少なくともその一方の面に、平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状、平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状又は平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の複数の突部、又は平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状、平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状又は平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の有底の穴状の複数の凹部が形成されており、前記上部吸水性紙層部、中間吸水性紙層部、上部吸水性混合層部、下部吸水性混合層部若しくは下部吸水性紙層部又はこれらの二以上には少なくとも一部に界面活性剤が含有されていることを特徴とする吸収体。
【請求項7】 上部吸水性紙層部若しくは下部吸水性紙層部又は前記上部吸水性紙層部及び下部吸水性紙層部には、その少なくとも一部に、着色性物質が含有されていることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項8】 上部吸水性紙層部、中間吸水性紙層部、上部吸水性混合層部、下部吸水性混合層部若しくは下部吸水性紙層部又はこれらの二以上には、その少なくとも一部に、殺菌性を有する物質が含有されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の吸収体。
【請求項9】 上部吸水性紙層部、中間吸水性紙層部、上部吸水性混合層部、下部吸水性混合層部若しくは下部吸水性紙層部又はこれらの二以上には、その少なくとも一部に、殺菌性を有する物質が含有されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の吸収体。
【請求項10】 高吸水性樹脂が、一種の高吸水性樹脂又は二種以上の高吸水性樹脂の混合物であることを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項11】 高吸水性樹脂は、紙おむつ廃材、乳パッド廃材、尿パッド廃材、生理用ナプキン廃材若しくは高吸収性繊維廃材から分離回収された高吸水性樹脂又はこれら高吸水性樹脂の二以上の混合物であることを特徴とする請求項1乃至12の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項12】 高吸水性樹脂又は高吸水性樹脂の混合物は、該吸水性混合層部に、該吸水性混合層部に対し、5重量パーセント未満の含有率で含有されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項13】 高吸水性樹脂又は高吸水性樹脂の混合物は、上部吸水性混合層部若しくは下部吸水性混合層部又は上部吸水性混合層部及び下部吸水性混合層部に、該上部吸水性混合層部若しくは下部吸水性混合層部又は上部吸水性混合層部及び下部吸水性混合層部に対し、5重量パーセント未満の含有率で含有されることを特徴とする請求項5又は6に記載の吸収体。
【請求項14】 高吸水性樹脂又は高吸水性樹脂の混合物は、該吸水性混合層部に、該吸水性混合層部に対し、30重量パーセント以下の含有率で含有されていることを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項15】 高吸水性樹脂又は高吸水性樹脂の混合物は、上部吸水性混合層部若しくは下部吸水性混合層部又は上部吸水性混合層部及び下部吸水性混合層部に、該上部吸水性混合層部若しくは下部吸水性混合層部又は上部吸水性混合層部及び下部吸水性混合層部に対し、30重量パーセント以下の含有率で含有されることを特徴とする請求項9乃至12の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項16】 高吸水性樹脂が30μm以下の平均粒度を有するものであることを特徴とする請求項1乃至6及び請求項10乃至15の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項17】 高吸水性樹脂が20μm以下の平均粒度を有するものであることを特徴とする請求項1乃至6及び請求項10乃至15の何れか一項に記載の吸収体。
【請求項18】 上面を形成する透水性薄層部と、下面を形成する透水性又は不透水性薄層部とを備え、前記上面を形成する透水性薄層部の下面に上面を接し、前記下面を形成する透水性又は不透水性薄層部の上面に下面を接して、請求項1乃至17の何れか一項に記載の吸収体が設けられていることを特徴とするシーツ。
【請求項19】 上面を形成する透水性薄層部は、乾式不織布又は湿式不織布で形成されていることを特徴とする請求項18に記載のシーツ。
【請求項20】 下面を形成する不透水性薄層部は、プラスチックフィルム又は柔軟なプラスチックシートで形成されていることを特徴とする請求項18に記載のシーツ。
【請求項21】 下面を形成する透水性薄層部が、複数の孔が形成されているプラスチックフィルム又は柔軟なプラスチックシートで形成されていることを特徴とする請求項18に記載のシーツ。
【請求項22】 上面を形成する透水性薄層部と、下面を形成する透水性又は不透水性薄層部とを備え、前記透水性薄層部の下面に上面を接し、前記下面を形成する透水性又は不透水性薄層部の上面に下面を接して、請求項1乃至17の何れか一項に記載の吸収体が設けられていることを特徴とする包装材料。
【請求項23】 上面を形成する透水性薄層部は、乾式不織布又は湿式不織布で形成されていることを特徴とする請求項22に記載の包装材料。
【請求項24】 下面を形成する不透水性薄層部は、プラスチックフィルム又は柔軟なプラスチックシートで形成されていることを特徴とする請求項22に記載の包装材料。
【請求項25】 下面を形成する透水性薄層部が、複数の孔が形成されているプラスチックフィルム又は柔軟なプラスチックシートで形成されていることを特徴とする請求項28項に記載の包装材料。」
とし、さらに、発明の詳細な説明の段落【0008】?段落【0012】の記載を特許請求の範囲の記載と整合させる補正である。

2 補正の適否
本件補正のうち、特許請求の範囲についてする補正は、補正前の請求項1、3、5、7、9及び11を削除するとともに、請求項の削除に伴う請求項番号の繰上げと引用する請求項の整理を行い、さらに、補正前の請求項2、4、6、8、10及び12に係る発明を特定するために必要な事項である「3mm以上の大きさの複数の凹部又は凸部」について、その形状及び大きさを「平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状、平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状又は平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の複数の突部、又は平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状、平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状又は平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の有底の穴状の複数の凹部」とするものである。
そして、このような形状及び大きさについてする補正は、願書に最初に添付した明細書又は図面(以下、「当初明細書等」という。)における発明の詳細な説明の段落【0019】及び段落【0021】などの記載からみて、当初明細書等に記載した事項の範囲内においてしたものということができるから、本件補正は、平成14年法律第24号による改正前の特許法第17条の2第3項に規定する要件を満たすものである。
また、本件補正のうち特許請求の範囲についてする補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第4項第1号に掲げる「請求項の削除」及び平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするもので、平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第4項第1号及び第2号に規定する要件を満たすものである。
さらに、本件補正のうち特許請求の範囲についてする補正が、平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる「特許請求の範囲の減縮」を目的とするものであることから、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明が特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるかについて検討すると、本件補正後における特許請求の範囲に記載されている事項により特定される発明は、下記「3 特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない理由」に記載したとおり、特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない。

3 特許出願の際独立して特許を受けることができるものでない理由
3-1 この出願は、明細書の特許請求の範囲の記載が下記(1)?(3)の点で、「特許を受けようとする発明が明確であること。」との要件に適合しないから、平成14年法律第24号による改正前の特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たしていない。
(1) 本件補正後における特許請求の範囲の請求項1?6における、「平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状・・・の複数の突部」及び「平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状・・・の有底の穴状の複数の凹部」との規定は、具体的にどのような突部又は凹部の形状を指すのかが明確でない。
すなわち、「平面形状で・・・円形を有する円筒状・・・の突部(凹部)」との規定は、そもそも日本語として明確でないし、また、「平面形状で」との規定の技術的意味が明確でないから、突部又は凹部の具体的形状が明確でない。
なお、この点、この出願の願書に最初に添付した明細書には、「3mm以上の大きさの複数の凹部又は凸部が形成されている」(【請求項2】)、「吸収体の表面に孤立して形成される例えば複数の穴状の凹部即ち窪みまた凸部即ち突起の夫々の大きさは、例えば平面における突起又は窪みの形状を円形とする場合では、直径1乃至12mm好ましくは直径4乃至8mmの円形状の基部を有する山形の突起、直径2乃至12mm好ましくは直径4乃至8mmの円筒又は直径4乃至8mmの円形状の窪みとすることができ」(段落【0019】)及び「本発明において、凸部は、円筒状、円錐状、角柱状又は角錐状の突起或いは畝状の突出部又は凸条に形成することができ、これに対し、凹部は、円筒状、円錐状、角柱状又は角錐状の有底の穴或いは溝に形成することができる。」(段落【0021】)と記載されているだけである。
(2) 本件補正後における特許請求の範囲の請求項1?6における、「平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状・・・の複数の突部」及び「平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状・・・の有底の穴状の複数の凹部」との規定は、具体的にどのような突部又は凹部の形状を指すのかが明確でない。
そもそも、「半径が一辺の長さが・・・の四角形」との規定は、その意味が明確でなく、また、「一辺」が四角形(正方形だけではなく、任意の四角形を指すと解するのが自然であり、そして、溝形状の長方形も四角形である。)のどの辺を指し、他の辺との関係がどのようなものであるのかが明確でなく、そして、「平面形状で・・・四角形の角柱状若しくは角錐状・・・の突部(凹部)」との規定については、上記(1)において「平面形状で・・・円形を有する円筒状・・・の突部(凹部)」との規定についてした指摘と同様の理由で明確でないから、結局、具体的にどのような突部又は凹部の形状を指すのかが明確でない。
(3) 本件補正後における特許請求の範囲の請求項1?6における、「平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の複数の突部」及び「平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の有底の穴状の複数の凹部」との規定は、具体的にどのような突部又は凹部の形状を指すのかが明確でない。
そもそも、「平面上で中心を横切る方向」との規定は、「中心」が何を意味し「横切る方向」がどのような方向であるのかが明確でなく、また、「多角形」と「四角形」との関係も明確でなく、そして、「平面形状で・・・多角形の角柱状若しくは角錐状・・・の突部(凹部)」との規定については、上記(1)において「平面形状で・・・円形を有する円筒状・・・の突部(凹部)」との規定についてした指摘と同様の理由で明確でないから、結局、具体的にどのような突部又は凹部の形状を指すのかが明確でない。

3-2 本件補正後の請求項1に係る発明(以下、「本件補正発明」という。)は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1、7、8及び9に記載された発明に基いて、その出願前にその発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者(以下、「当業者」という。)が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
(1) 刊行物
刊行物1:特開平10-337238号公報
刊行物7:特開平6-39号公報
刊行物8:特開平11-308935号公報
刊行物9:特開平5-211825号公報
(2) 刊行物に記載されている事項
ア 刊行物1:特開平10-337238号公報
(ア-1)
「【請求項6】 上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、該第一紙層部の下面に接して位置する吸水性樹脂及び吸水性材料粉の混合層部と、該混合層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、前記第二紙層部の下方に位置して配置されており、前記第一紙層部、前記混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、焙煎コーヒー豆のコーヒー液抽出残渣についての抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツ。
【請求項7】 -略-
【請求項8】 吸水性材料粉が、木材パルプの粉砕物、古紙パルプの粉砕物、木粉、紙粉、紙おむつ廃材粉砕物、チタン紙又はパンチ屑などの屑紙の粉砕物或いはそれらの二以上の混合物であることを特徴とする請求項3乃至7の何れか一項に記載の衛生シーツ。」(【特許請求の範囲】の【請求項6】?【請求項8】)
(ア-2)
「【0015】本発明において、吸水性樹脂は、比較的吸水性能の小さい吸水性樹脂及び吸水性能の高い高吸水性樹脂を意味する。しかし、吸水性の高いものを使用すると、使用量を少なくできるので好ましい。また吸水性材料は、比較的高い吸水性を有する、機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプ、綿状パルプ等の木材パルプの粉砕物、古紙パルプの粉砕物、木粉、紙粉、紙おむつ廃材粉砕物、チタン紙又はパンチ屑などの屑紙の粉砕物或いはそれらの二以上の混合物である。これらの吸水性材料は、5mm以下の粒度、好ましくは3mm以下の粒度とするのが好ましい。」(段落【0015】)
(ア-3)
「【0020】本発明において、シーツの吸水性混合層部には、紙おむつ、生理用ナプキンや動物用シーツに、吸水性を保持させるために、高吸水性樹脂が配合された紙粉や綿状パルプが使用される。この場合の高吸水性樹脂の使用量は、生理用ナプキン及び動物用シーツの場合で、全量に対し、5乃至15重量%、好ましくは、7乃至10重量%であり、紙おむつの場合で、全量に対し、20?30重量部%、好ましくは24乃至27重量%である。」(段落【0020】)
(ア-4)
「【0022】本発明において、高吸水性樹脂は、例えば、不良品としての紙おむつ又は生理用ナプキン、紙おむつ又は生理用ナプキン裁断屑、紙おむつ廃材から回収された高吸水性樹脂含有物を使用することができる。このような回収された高吸水性樹脂は、人工尿に対して、吸水倍率が10?30g/gとその吸水性能は乏しいが、動物用シーツでは、この程度の吸水効果で十分使用できることがわかった。使用する高吸水性樹脂の粒度は、50乃至500μmであるのが好ましい。」(段落【0022】)
(ア-5)
「【0025】
【実施例】以下、本発明の実施の態様の例を説明するが、本発明は、以下の説明及び例示によって何等制限されるものではない。図1は、本発明の一実施例の動物用シーツの説明図である。図2は本発明の別の一実施例の動物用シーツの説明図である。図3は、本発明の動物用シーツを製造する工程を示す概略の工程図である。図1乃至図3において対応する箇所には同一の符号が付されている。
【0026】・・・
【0027】図2に示す例において、動物用シーツ1は、ポリエチレンフィルム2(3重量部)の上に、吸水紙4(2.1重量部)が配置され、その上に綿状パルプ6(16.9重量部)が配置され、その上に、高吸水性樹脂7(3重量部)が配置され、その上に焙煎コーヒー豆のコーヒー液抽出残渣の再抽出液の乾燥物を含む印刷インキが印刷されている吸水紙4(4.7重量部)が配置され、その上を、ポリプロピレン不織布5(2.2重量部)で覆い、ポリプロピレン不織布5の端部は、最下層のポレエチレンフィルム2の端部とホットメルト接着剤を介してホットメルト接着されている。
【0028】・・・
【0029】図3において、吸水紙4のロール8は、吸水紙送り出しローラ9により引き出されて、綿状パルプ6の供給ローラ10に送られて、粉砕機11で粉砕された綿状パルプ6が供給される。綿状パルプ6が供給された吸水紙4は、吸水紙4上の綿状パルプ6の量が一定となるように調整されている。・・・。焙煎コーヒー豆のコーヒー液抽出残渣の再抽出液が噴霧された吸水紙4は、高吸水性樹脂7の散布箇所14に送られる。高吸水性樹脂7の散布箇所14に送られた焙煎コーヒー豆のコーヒー液抽出残渣の再抽出液が噴霧された吸水紙4には、高吸水性樹脂7が散布機15から散布される。
【0030】高吸水性樹脂7が散布された吸水紙4は、上側吸水紙4の供給箇所16に送られて、吸水紙4のロール8から上方に吸水紙4が載せられる。上下に吸水紙4が配置された積層帯状物17は、エンボス機18に送られてエンボスが形成される。エンボスが形成された積層帯状物は17は、マットカッター19に送られて、長さ450mmの積層物に切断される。切断された積層物の下方には、下方からポレエチレンフィルム2がポレエチレンフィルム2のロール20から供給され、積層物は、ポレエチレンフィルム2の上に載せられて、ポリプロピレン不織布5を被せる箇所21に送られる。」(【実施例】中の段落【0029】?段落【0030】)
(ア-6)
「【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例の動物用シーツの説明図である。
【図2】発明の別の一実施例の動物用シーツの説明図である。
【図3】本発明の動物用シーツを製造する工程を示す概略の工程図である。
【符号の説明】
1 動物用シーツ
2 ポレエチレンフィルム
3 高吸水性ポリマーシート
4 吸水紙
5 ポリプロピレン不織布
6 綿状パルプ
7 高吸水性樹脂
8 吸水紙4のロール
9 吸水紙送り出しローラ
10 綿状パルプの供給ローラ
11 粉砕機
12 焙煎コーヒー豆のコーヒー液抽出残渣の再抽出液の噴霧箇所
13 焙煎コーヒー豆のコーヒー液抽出残渣の再抽出液の噴霧器
14 高吸水性樹脂7の散布箇所
15 散布機
16 上側吸水紙4の供給箇所
17 積層帯状物16
18 エンボス機
19 マットカッター
20 ポレエチレンフィルム2のロール
21 ポリプロピレン不織布5を被せる箇所
22 ポリプロピレン不織布のロール
23 ホットメルト接着剤噴霧器
24 サイドシール器
25 エンドシール機
26 製品カッター」(【図面の簡単な説明】)
(ア-7)
「【図2】

」(図2)
(ア-8)
「【図3】

」(図3)
イ 刊行物7:特開平6-39号公報
(イ-1)
「【請求項1】a)セルロース、セルロース誘導体及び/又はセルロース含有材料、
b)増量剤
c)増粘剤及び/又は結合剤
を包含し、かつ嵩密度が約500kg/m^(3)を上まわり、かつ粒度が1mmを上まわる粒子の形で存在する動物用敷きわら。
【請求項2】 セルロース含有材料を含有する請求項1記載の動物用敷きわら。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】及び【請求項2】)
(イ-2)
【0035】該方法への適用のために予定されているセルロース、セルロース誘導体もしくはセルロース含有材料の粒度が、記載したように1mmより下まわる、有利には0.5mmより下まわる、例えば0.1mmと0.3mmの間にまだなく、かつこれらが例えば木材、木片又は古いパレットである場合、この材料を本発明方法における適用の前に、例えばのこぎりで挽くとか、又は細かく切断する。
(イ-3)
「【0040】それぞれの由来により異なる鎖長の異なる源のセルロースを本発明による製法において使用することができる。天然の、又は産業上製造した親水性セルロース誘導体、例えばパルプ、ヘミセルロース又はアルカリセルロースも使用することができる。
【0041】植物性の、農業上の又は産業上の由来のセルロース及び/又はセルロース誘導体を含有する材料を有利に使用する。木材、木工の生成物、例えば厚紙、接着した木材、へぎ板、枕木を特に使用する。更に、使用可能であるのは木材様物質、例えばわら及びこれから派生したもの、デンプン製造の残分、砂糖産業の残分である。
【0042】セルロースを含有する材料、特に木材、木材加工製品又はわらを使用するのが有利である。
【0043】特にセルロース又はセルロース含有材料の農業上の又は産業上の加工において残分又は廃棄物として生じるか、又は有価物質回収、例えば木片、へぎ板片又は合版片、木くず、のこくずのような廃棄物、紙産業、合料品産業の廃棄物、使用済木製品、例えば古いパレット、木箱、家具、へぎ板、折れた木材、枕木又は例えば使用済のセルロースを基礎とするフィルター助剤から由来するセルロース、セルロース誘導体及び/又はセルロース含有材料を使用するのが特に有利である。」(段落【0040】?段落【0043】)
ウ 刊行物8:特開平11-308935号公報
(ウ-1)
「【0003】
【発明が解決しようとする課題】木粉は製材所などから、製材の過程で発生し、その量は膨大な量に上っており、その多くが、産業廃棄物として捨てられており、その扱いが製材産業の課題の一となっている。本発明は、木粉、殊にヒノキチオールを成分として含有する木粉が、保水機能を有する点に着目したもので、従来の動物排泄物処理材の問題点と木粉の産業廃棄物として問題点を解決することを目的としている。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明は、動物が排泄した尿の吸収及び保水性が良く、排泄物に接して塊状化でき、また焼却でき、産業廃棄物の木粉を有効に利用できる動物の排泄物処理材を提供することを目的としている。即ち、本発明は、ヒノキチオールを含有する木粉を主として含有し、1ミリメートル以上の粒径を有している乾燥造粒物であることを特徴とする動物の排泄物処理材にあり、また、本発明は、ヒノキチオールを含有する木粉並びに該ヒノキチオールを含有する木粉より少ない量の配合物質を含有し、1ミリメートル以上の粒径を有している乾燥造粒物であることを特徴とする動物の排泄物処理材にある。」(【0003】?【0004】)
エ 刊行物9:特開平5-211825号公報
(エ-1)
「【請求項1】 水不不溶性の高吸収水性樹脂粉末5?30重量%と木粉50重量%以上との混合物を水分存在下に混練し粒状に成形して乾燥してなる事を特徴とするペットの液状排泄物処理材。」(【特許請求の範囲】の【請求項1】)
(エ-2)
「【0009】吸水性樹脂の配合量が5重量%以下であると吸液性が低下し、30重量%以上になると成形粒子の中心部への液体の浸透性が悪くなる。木粉としては使用する木粉の木種はとくに限定はない。通常の市販されている物または、材木加工業等にて廃棄される木粉(本くず)等を利用すればより低コストになる。木粉の長さ(大きさ)は0.01mm程度の粉末状の物がよい。」(段落【0009】)

3 判断
ア 刊行物1に記載された発明
上記摘示(ア-1)には、「上面を形成する透水性の多孔層部と、下面を形成するプラスチック製の不透水性膜部と、前記多孔層部の下面に接して位置する吸水性の第一紙層部と、該第一紙層部の下面に接して位置する吸水性樹脂及び吸水性材料粉の混合層部と、該混合層部の下面に接して位置する吸水性の第二紙層部とを備えており、前記不透水性膜部は、前記第二紙層部の下方に位置して配置されており、前記第一紙層部、前記混合層部及び第二紙層部の中の少なくとも何れか一つの層部に、焙煎コーヒー豆のコーヒー液抽出残渣についての抽出液の乾燥物が含まれていることを特徴とする衛生シーツ」について記載されており、このような衛生シーツは、摘示(ア-8)に図3に概略として示され、摘示(ア-5)に記載される工程、すなわち、吸水性の第二紙層部の上に、吸水性樹脂及び吸水性材料粉の混合層部を配設し、この上に吸水性の第一紙層部を設けて一体として積層帯状物とし、該積層帯状物をエンボス機に送りエンボス形成した後切断し、切断後の積層物を不透水性膜部に載せ、さらに、透水性の多孔層を被せることにより得られるものである。
ここで、エンボス形成した後切断して得られた積層物は、吸水性の第一の紙層部、吸水性の第二紙層部、第一紙層部と第二紙層部との間に配設された吸水性樹脂及び吸水性材料粉の混合層部、とを備え、これらが合わせられて一体に形成されたものであって、これは、衛生シーツにおける吸収部として独立して形成されるものであり、そして、積層物の少なくともその一方の面にエンボスが形成されたものということができる。
そうすると、刊行物1には、
「吸水性の第二紙層部の上に、吸水性樹脂及び吸水性材料粉の混合層部を配設し、この上に吸水性の第一紙層部を設けて一体として積層帯状物とし、該積層帯状物をエンボス機に送り少なくとも一方の面にエンボスを形成した後切断して得られる積層物」
に係る発明(以下、「引用発明」という。)が記載されているということができる。
イ 対比
本件補正発明と引用発明とを対比する。
引用発明における「吸水性の第二紙層部」、「混合層部」及び「吸水性の第一紙層部」は、本件補正発明における「下面を形成する下部吸水性紙層部」、「吸水性混合層部」及び「上面を形成する上部吸水性紙層部」にそれぞれ相当する。
また、引用発明における「積層帯状物」及びそれを切断した「積層物」は、いずれも本件補正発明における「吸収体」に相当する。
そうすると、本件補正発明と引用発明とは、
「上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設される吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されており、少なくともその一方の面にエンボスが形成されていることを特徴とする吸収体。」
である点で一致し、以下の(ア)?(イ)の点で相違する。
(ア) 上部及び下部吸水性紙層部間に配設される吸水性混合層部について、本件補正発明は、「3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む」ものであるのに対し、引用発明は、「吸水性樹脂及び吸水性材料粉」のものである点(以下、「相違点1」という。)
(イ) 本件補正発明の吸収体は、「少なくともその一方の面に、平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状、平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状又は平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の複数の突部、又は平面形状で半径が4乃至8mmの円形を有する円筒状若しくは円錐状、平面形状で半径が一辺の長さが4乃至8mmの四角形の角柱状若しくは角錐状又は平面形状で中心を横切る方向の長さが4乃至8mmの多角形の角柱状若しくは角錐状の有底の穴状の複数の凹部が形成されている」ものであるのに対し、引用発明の吸収体は、エンボス機に送られ少なくともその一方の面にエンボスが形成されたものである点(以下、「相違点2」という。)
ウ 相違点の検討
(ア) 相違点1について
引用発明における吸水性材料粉は、「木材パルプの粉砕物、古紙パルプの粉砕物、木粉、紙粉、紙おむつ廃材粉砕物、チタン紙又はパンチ屑などの屑紙の粉砕物或いはそれらの二以上の混合物」(摘示ア-1)、「また吸水性材料は、比較的高い吸水性を有する、機械パルプ、化学パルプ、セミケミカルパルプ、綿状パルプ等の木材パルプの粉砕物、古紙パルプの粉砕物、木粉、紙粉、紙おむつ廃材粉砕物、チタン紙又はパンチ屑などの屑紙の粉砕物或いはそれらの二以上の混合物である。これらの吸水性材料は、5mm以下の粒度、好ましくは3mm以下の粒度とするのが好ましい」(摘示ア-2)であって、さらに、綿状パルプを用いた具体例についても記載されている(摘示ア-5)ことからみて、引用発明における吸水性材料粉は、「3mm以下の粒度の繊維状の木材粒子を主として含有する木材粉砕物」に相当するものであるということができる。
また、引用発明における吸水性樹脂については、「シーツの吸水性混合層部には、紙おむつ、生理用ナプキンや動物用シーツに、吸水性を保持させるために、高吸水性樹脂が配合された紙粉や綿状パルプが使用される。この場合の高吸水性樹脂の使用量は、生理用ナプキン及び動物用シーツの場合で、全量に対し、5乃至15重量%、好ましくは、7乃至10重量%であり、紙おむつの場合で、全量に対し、20?30重量部%、好ましくは24乃至27重量%である」(摘示ア-3)からみて、「高吸水性樹脂」に相当するものであって、その使用量は、「木材粉砕物より少ない量」に相当する量であるということができる。
そうすると、引用発明における上部及び下部吸水性紙層部間に配設される吸水性混合層部は、「3mm以下の粒度の繊維状の木材粒子を主として含有する木材粉砕物及び前記木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む」ものであるということができるから、結局、相違点1は、所定の粒度の繊維状の木材粒子について、本件補正発明が「廃木材粉砕物」からのものであるのに対し、引用発明では廃木材からのものであることが明らかでない点(相違点1’)に整理することができる。
そして、相違点1’についてさらに検討すると、引用発明においては、吸水性材料粉として、古紙パルプや紙おむつ廃材粉砕物のような廃棄物を再利用することも記載されており、一方で、刊行物7には、廃木材の粉砕物を動物用敷きわらとすること(摘示イ-2及びイ-3)が、刊行物8には、吸水性材料粉として廃木材からの木粉を用いること(摘示ウ-1)が、刊行物9には、吸水性材料粉として、0.01mm程度の粉末状の木粉を用いること(摘示ウ-1及びエ-2)がそれぞれ記載されている。
したがって、これらの知見に基づけば、引用発明における所定の粒度の繊維状の木材粒子として廃木材粉砕物を用いることは、当業者が容易に想到することができたことであるから、結局、相違点1は、当業者が容易に想到することができたことである。
(イ) 相違点2について
相違点2は、本件補正発明の吸収体の少なくともその一方の面に形成される突部及び凹部に係るものであって、そして、これらについては、上記3-1において指摘したとおり明確でなく特許法第36条第6項第2号に規定する要件を満たさないものであるが、この出願の明細書及び図面の記載からみて、例えば突部が円柱状のものである場合には、【図2】及び【図3】のようなものであることを意味し、四角形又は多角形である場合は【図3】における円が四角形又は多角形であることを意味するものと解し、相違点2についての検討を行う。
引用発明の吸収体は、エンボス機に送られて、少なくともその一方の面にエンボスを形成したものであって、ここで、形成されたエンボスが複数の突部又は複数の凹部であることは技術常識からみて明らかであるから、引用発明の吸収体も、少なくともその一方の面に複数の突部又は複数の凹部が形成されているということができる。
そして、吸収体の少なくともその一方の面にエンボスを形成することで、複数の突部又は複数の凹部を形成することは、周知慣用の技術(例えば、前置報告書で周知文献としてあげられた特開昭59-204955号公報(以下、「周知文献1」という。)の第8図、第9図及び第11図も参照。)にすぎないものであるし、エンボスを形成して複数の突部又は複数の凹部を形成する際に、エンボスの形状等、すなわち、面に形成する複数の突部又は複数の凹部の形状等をどのようなものとするかは、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないものであるから、結局、相違点2は、当業者が適宜なし得る設計的事項にすぎないものである。
エ 本件補正発明の効果について
審判請求人は、相違点1に関連して、「廃物とされていた木粉を有効に利用することができる旨、また、相違点2に関連して、所定の形状の突部又は凹部とすることで、突部又は凹部に水をためることができ水を吸収しやすい吸収体とすることができる旨主張し、本件補正発明が顕著な作用効果を有するものであると主張するので検討する。
しかしながら、既に指摘したとおり、引用発明においても、古紙パルプや紙おむつ廃材粉砕物のような廃棄物の再利用について言及しているところであるし、さらに、刊行物7?9には、廃木材の粉砕物を有効利用することについて記載されているのであるから、引用発明における木粉を、廃材からのものとすれば、廃物とされていた木(粉)を有効に利用し得るという効果を得ることができることは、当業者であれば容易に予測し得ることである。
さらに、吸収体の表面に(エンボス加工により)複数の突部又は複数の凹部を設けることで、吸収体の吸水性能を向上し得ることについては、周知文献1(3ページ左下欄1?6行)などにあるとおり周知の効果であるし、また、複数の突部又は複数の凹部が水をためるための空間としても作用し得ることも、当業者であれば容易に予測し得ることである。
しかも、この出願の明細書の記載(特に、実施例に係る段落【0046】、【0048】、【0049】、【0052】、【0054】、【0060】、【0062】、【0064】、【0075】、【0084】及び【0087】)をみても、吸収体の少なくともその一方の面に形成される複数の突部又は複数の凹部の形状等を、本件補正発明のようなものとすることで、格別顕著な効果が得られているということもできない。
そうすると、審判請求人が主張するような効果は、格別顕著なものでなく、当業者であれば十分に予測し得る程度のものである。
エ 小括
以上のとおり、本件補正発明は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物1、7、8及び9に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。

4 むすび
以上のとおり、本件補正発明は、特許出願の際独立して特許を受けることができるものではないので、本件補正は、平成18年法律第55号による改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項の規定に違反し、その余のことを検討するまでもなく、同法第159条第1項の規定において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。


第3 この出願の発明
平成17年7月15日付けの手続補正は、上記のとおり却下されたので、この出願の発明は、平成16年8月30日付けの手続補正書により補正された明細書の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1?31に記載された事項により特定されるものであって、そのうち、請求項1及び請求項2は、下記のとおりである。
1 請求項1(以下、「本願発明1」という。)
「上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されていることを特徴とする吸収体。」
2 請求項2 (以下、「本願発明2」という。)
「上面を形成する上部吸水性紙層部と、下面を形成する下部吸水性紙層部と、前記上部及び下部吸水性紙層部間に配設され、3mm以下の粒度の繊維状の廃木材粒子を主として含有する廃木材粉砕物及び前記廃木材粉砕物より少ない量の高吸水性樹脂を含む吸水性混合層部とを備えており、前記上部吸水性紙層部、吸水性混合層部及び下部吸水性紙層部は、合わせられて一体に形成されており、少なくともその一方の面に、3mm以上の大きさの複数の凹部又は凸部が形成されていることを特徴とする吸収体。」


第4 原査定の理由の概要
原査定の理由は、本願発明1及び本願発明2は、その出願前日本国内又は外国において頒布された下記の刊行物1、7、8及び9に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない、という理由を含むものである。
ここで、刊行物1、2、7、8及び9は、それぞれ、
刊行物1:特開平10-337238号公報
刊行物7:特開平6-39号公報
刊行物8:特開平11-308935号公報
刊行物9:特開平5-211825号公報
であって、上記「第2」において引用された刊行物1、2、7、8及び9と同じものであり、そして、その記載事項は、上記「第2」に示したとおりである。


第5 当審の判断
本願発明1は、吸収体の少なくともその一方の面に所定の複数の突部又は所定の複数の凹部を形成することについて何ら特定しないものであり、また、本願発明2は、吸収体の少なくともその一方の面に3mm以上の大きさの複数の凹部又は凸部が形成されていることを特定したものであって、これらは、いずれも上記第2における本件補正発明を包含する発明である。
しかしながら、本件補正発明は、上記「第2」の「3-2」において示したとおり、その出願前に日本国内において頒布された刊行物1、7、8及び9に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、このような本件補正発明を包含する本願発明1及び本願発明2も、同様の理由で、その出願前に日本国内において頒布された刊行物1、7、8及び9に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。


第6 むすび
以上のとおり、本願発明1及び本願発明2は、その出願前に日本国内において頒布された刊行物1、7、8及び9に記載された発明に基いて、その出願前に当業者が容易に発明をすることができたもので、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるから、この出願は、その余について検討するまでもなく、拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-06-13 
結審通知日 2008-06-24 
審決日 2008-07-15 
出願番号 特願平11-377455
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B32B)
P 1 8・ 121- Z (B32B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 深草 祐一芦原 ゆりか  
特許庁審判長 原 健司
特許庁審判官 橋本 栄和
安藤 達也
発明の名称 吸収体及び該吸収体を使用するシーツ  
代理人 滝口 昌司  
代理人 中里 浩一  

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