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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A45D
管理番号 1183941
審判番号 不服2006-9563  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-11 
確定日 2008-09-04 
事件の表示 平成10年特許願第376805号「化粧料容器」拒絶査定不服審判事件〔平成12年7月11日出願公開、特開2000-189242号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本願は、平成10年12月25日の出願であって、平成18年4月4日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、平成18年5月11日に拒絶査定不服審判の請求がなされるとともに、平成18年6月6日付け手続補正により明細書の補正がなされたものである。

II.本願発明
本願の特許請求の範囲の請求項1は、平成17年10月19日付け手続補正書により補正された特許請求の範囲の請求項1?4、7、8を削除し、請求項2を引用する請求項5を独立形式で記載とするとともに、項番を1にあらためた、以下のとおりのものである。
「視覚や触覚で知覚しうる縞模様の立体形状を有し、該立体形状に1/fゆらぎを備える化粧料容器であって、
前記立体形状は、略球形状であり、複数の縞が積み上げられることにより形成され、
前記複数の縞のそれぞれは周囲の長さが異なるものであり、
前記1/fゆらぎを算出する数値は、前記立体形状の鉛直軸上の中心から同じ角度で切断面をつくり、該切断面に於ける前記縞模様を形成する幅を前記角度に対する関数とし、該関数を基に算出されるものであることを特徴とする化粧料容器。」(以下、この発明を「本願発明」という。)

III.引用例の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、特開平10-29614号公報(以下、「引用例」という。)には、図面とともに以下の事項が記載されている。
a.「ボトルの胴部に、周期的に軸方向の幅が変化し、奇数パターンでうねる周方向凹ビードを位相差をなして複数本形成したことを特徴とするプラスチックボトル。」(【請求項1】)
b.「【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解決するため、ボトルの胴部に、周期的に軸方向の幅が変化し、奇数パターンでうねる周方向凹ビードを位相差をなして複数本形成したことを特徴とするプラスチックボトルとした。」(【0005】段落)
c.「【作用】本発明によれば、特にミネラルウォーター等の透明性の良い飲料等をプラスチックボトルに充填した際に、きらめき、ゆらぎ感を提供することができる。(【0006】段落)
d.「プラスチックボトル1の下胴部4に形成した周方向凹ビード5は、周期的に軸方向の幅が変化し、第3図に示すように、3個の奇数パターンでうねるように、即ち、軸方向に幅が大きい部分5aと幅の小さい部分5bを、周方向に3個づつ設け、軸方向に位相差をなして複数本形成する。
そして、上記位相差の角度αは10度?60度で、特に、上記軸方向に幅が大きい部分5aと幅が小さい部分5bが、軸方向において、互いにそれぞれずれることによるきらめき、ゆらぎ感の点から特に30度?50度がに望ましい。」(【0010】?【0011】段落)
e.「【発明の効果】本発明によれば、ボトルの胴部に、周期的に軸方向の幅が変化し、奇数パターンでうねる周方向凹ビードを位相差をなして複数本形成したことより、プラスチックボトルの正面側と背面側で、上記周方向凹ビードのうねり形状が重ならずに干渉し、上記プラスチックボトルにミネラルウォーター等の透明性の高い飲料を充填した際に、きらめき感、ゆらぎ感を呈し、その商品価値を高めることが可能になる。」(【0019】段落)

ここで、引用例に記載された「周方向凹ビード5」は、「複数本形成した」と記載されている(a.参照)ので、いわゆる縞模様を形成しているということができ、また、凹形状であることから、立体形状であるとともに、視覚や触覚で知覚しうるものであるということができる。
また、周方向凹ビード5を位相差をなして複数本形成する旨記載され(a.b.d.e.参照)、敢えて「位相差」と記載することは、周方向凹ビード5を有する胴部が回転体形状であることを示唆し、加えて、ボトルの胴部は筒形状が普通であることを併せ勘案すると、引用例に記載された「周方向凹ビード5」は、略円筒形状部分に形成されたものと認められる。
さらに、各図面に記載された周方向凹ビード5は、容器の上下方向に複数本記載されることから、周方向凹ビード5は、複数の縞が積み上げられるように形成され、と表現することが可能である。
したがって、これら記載事項を総合し、本願発明の記載ぶりに則って整理すると、引用例には、次の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
「視覚や触覚で知覚しうる縞模様の立体形状を呈する複数本の周方向凹ビード5を有し、該複数本の周方向凹ビード5にゆらぎを備えるプラスチックボトルであって、
前記複数本の周方向凹ビード5は、略円筒形状であり、複数の縞が積み上げられるように形成されたプラスチックボトル。」

VI. 対比
本願発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「プラスチックボトル」は、容器である点では、本願発明の「化粧料容器」と共通しており、引用発明の「複数本の周方向凹ビード5」は、容器に設けられ、視覚や触覚で知覚しうる縞模様の立体形状を呈するものである点では、本願発明の「立体形状」に相当し、引用発明の「複数の縞が積み上げられるように形成された」点は本願発明の「複数の縞が積み上げられることにより形成され」の点に相当する。
また、引用発明の「複数本の周方向凹ビード5」に「ゆらぎ」を備えることと、本願発明の「立体形状」に「1/fゆらぎ」を備えることとは、ともに「ゆらぎ」を備えることにおいては共通する。
さらに、引用発明の「複数本の周方向凹ビード5」の「略円筒形状」と、本願発明の「立体形状」の「略球形状」とは、ともに略回転体形状である点で共通する形状を呈している。
また、引用例には、周方向凹ビード5が位相差を有して複数本あることにより、ゆらぎ感を与える旨記載されており(c.e.参照)、引用例のプラスチックボトルは、立体形状にゆらぎを備えるプラスチックボトルであり、同ゆらぎは、プラスチックボトルの軸方向の位相差により形成される(d.e.参照)のであるから、そのゆらぎの程度の算出は、立体形状をなす略円筒形状の鉛直軸上の中心から同じ角度で切断面をつくり、該切断面に於ける複数本の周方向凹ビード5が形成する縞模様の幅は、切断面を特定する角度に対する関数として表現されると記載することが可能なものである。
そして、引用発明の「ゆらぎ」は、ゆらぎを算出する数値が、立体形状の鉛直軸上の中心から同じ角度で切断面をつくり、該切断面に於ける縞模様を形成する幅を前記角度に対する関数とし、該関数を基に算出されるものであると表現されるゆらぎであるので、本願発明の発明特定事項である「・・前記立体形状の鉛直軸上の中心から同じ角度で切断面をつくり、該切断面に於ける前記縞模様を形成する幅を前記角度に対する関数とし、該関数を基に算出されるものであること」との特定は、引用発明を何等排除するものではない。

そこで、本願発明の用語を用いて表現すると、両発明は次の点で一致する。
(一致点)
「視覚や触覚で知覚しうる縞模様の立体形状を有し、該立体形状にゆらぎを備える容器であって、
前記立体形状は、略回転体形状であり、複数の縞が積み上げられることにより形成され、
前記ゆらぎを算出する数値は、前記立体形状の鉛直軸上の中心から同じ角度で切断面をつくり、該切断面に於ける前記縞模様を形成する幅を前記角度に対する関数とし、該関数を基に算出されるものである容器。」

そして、両発明は、次の相違点1?3で相違する。
(相違点1)
本願発明の容器は、化粧料容器であるのに対して、引用発明の容器は、プラスチックボトルであり、化粧料容器ではない点。
(相違点2)
本願発明の立体形状は、略球形状であり、複数の縞のそれぞれは周囲の長さが異なるものであるのに対して、引用発明の立体形状を呈する複数本の周方向凹ビード5は、回転体形状ではあるものの、略円筒形状をなし、複数の縞をなす周方向凹ビード5のそれぞれは周囲の長さが異なるものとはされない点。
(相違点3)
本願発明の立体形状が備えるゆらぎは、1/fゆらぎであるのに対して、引用発明の立体形状を呈する複数本の周方向凹ビード5の備えるゆらぎは、1/fゆらぎかどうか明らかでない点。

V.相違点の判断
以下、上記各相違点について検討する。
(1)相違点1,2について
容器の用途として化粧料容器は、特段の例示を待つまでもなく周知の用途であり、引用例の容器の形状に係る技術は、鉛直軸上の中心からの角度に依存して定めるものであるから、その設計にあたり、中心からの角度に依存して定める回転体形状の周知な容器より選定すべきところ、化粧料容器として、略球形の容器も、特段の例示を待つまでもなく周知の形状であり、周知の球形を採用することに格別困難性はない。
そして、周知の球形の採用により、複数の縞を形成する複数本の周方向凹ビード5のそれぞれは、周囲の長さが必然的に異なるものとなる。
したがって、引用発明を周知の化粧料容器に適用して、相違点1,2に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。
(2)相違点3について
引用例は、立体形状を呈する複数本の周方向凹ビード5によりゆらぎを与えるものであり、ゆらぎを形成する手法として「1/fゆらぎ」は、原査定の拒絶の理由に引用された特開平3-100246号公報、実願平2-44683号(実開平4-6304)号のマイクロフィルムなどにも見られるように周知技術であり、1/fゆらぎは、自然でストレスを与えない変動として多方面でよく知られているものである。
してみると、相違点3に係る本願発明の発明特定事項は、引用発明のゆらぎを単に周知の1/fゆらぎに特定したにすぎず、引用発明のゆらぎを設計するにあたり、周知の1/fゆらぎを適用して、相違点3に係る本願発明の発明特定事項のようにすることは当業者が容易に想到し得たことである。

そして、1/fゆらぎがストレスを与えない変動であることは周知であり、しかも、ストレスが肌荒れによくないことも普通によく知られている事項であるから、本願発明が奏する効果は、引用発明及び周知技術から予測し得る以上の格別のものとはいえない。

よって、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。

VI.むすび
以上のとおり、本願発明は、引用発明及び周知技術に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により、特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-07 
結審通知日 2008-07-08 
審決日 2008-07-22 
出願番号 特願平10-376805
審決分類 P 1 8・ 121- Z (A45D)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 氏原 康宏  
特許庁審判長 川本 真裕
特許庁審判官 八木 誠
新井 克夫
発明の名称 化粧料容器  
代理人 川口 嘉之  
代理人 遠山 勉  
代理人 松倉 秀実  

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