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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない(前置又は当審拒絶理由) H01L
管理番号 1184146
審判番号 不服2007-4001  
総通号数 106 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-10-31 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-02-08 
確定日 2008-09-11 
事件の表示 特願2001-297518「シリコン単結晶ウェーハ処理装置」拒絶査定不服審判事件〔平成15年 4月 4日出願公開、特開2003-100855〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯・本願発明
本願は、平成13年9月27日の出願であって、平成18年12月25日付で拒絶査定がなされ、これを不服とする審判が平成19年2月8日に請求されたものであり、当審の平成20年4月18日付拒絶理由に対し、同年6月20日付の手続補正がなされたものである。
本願の請求項1に係る発明は、平成20年6月20日付手続補正書により補正された明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、次のとおりのものと認められる。

「処理容器と、
該処理容器内に配され上面にシリコン単結晶ウェーハが載置されるサセプタと、
該サセプタに対し昇降動作可能に設けられ、シリコン単結晶ウェーハを下面側から支持した状態で前記昇降動作するのに伴わせてサセプタ上にシリコン単結晶ウェーハを着脱するためのリフトピンと、を備えるシリコン単結晶ウェーハ処理装置において、
前記リフトピンは、
シリコン単結晶ウェーハの主裏面との接触端面が、上に凸な曲面形状に形成されているとともに、該接触端面に研磨が施され、かつ、少なくとも前記接触端面がSiCからなり、
前記リフトピンの前記接触端面は、表面粗さ0.8μm以下に形成されていることを特徴とするシリコン単結晶ウェーハ処理装置。」(以下、「本件発明」という。)

2.刊行物記載の発明(事項)
本願の出願前に国内で頒布された刊行物であって、当審での拒絶の理由に引用された以下の刊行物には、以下の技術事項が記載されていると認められる。

刊行物1: 国際公開WO99/60184号明細書
(特表2002-515656号公報参照)
刊行物2: 特開2000-26192号公報

2.1 刊行物1
(特表2002-515656号公報の記載を翻訳文として採用する。)
a.(特許請求の範囲、請求項9)
「 【請求項9】 半導体基板堆積チャンバであって、
エンクロージャと、
前記エンクロージャ内に配置され、上部と下部分を有するチャンバ内に基板を支持するための支持部材と、前記支持部材の上部に形成された第1の窪みと、
前記第1の窪み内に収容される支持ピンと、
を有することを特徴とする半導体基板堆積チャンバ。」
b.(特許請求の範囲、請求項11?14)
「 【請求項11】 前記支持ピンは、基部と高さを有する弧状部分を有していることを特徴とする請求項9に記載の半導体基板堆積チャンバ。
【請求項12】 前記支持部材の下部は、支持ピンの弧状部分の反対側に開口を有する支持ピン内に形成された窪みと連通する第2の窪みを有し、前記第2の窪みは基部の幅より小さい大きさを有していることを特徴とする請求項11に記載の半導体基板堆積チャンバ。
【請求項13】 前記支持部材は、更に、前記支持部材にある窪みを通して前記支持ピンの窪みに摺動できるように結合されたリフトピンを有することを特徴とする請求項12に記載の半導体基板堆積チャンバ。
【請求項14】 前記支持部材は、上端と下端、基板を受ける領域および前記基板を受ける領域の周辺に沿う周辺領域を有し、且つ 前記支持部材の下端に形成された基部と前記支持部材の上端に形成された口を有する、前記周辺領域に形成された堆積収集チャネルを有することを特徴とする請求項13に記載の半導体基板堆積チャンバ。」
c.(特許請求の範囲、請求項23)
「 【請求項23】 前記支持部材に形成された3つのキャビティに配置された3つの支持ピンを有し、前記2つの支持ピンは三角形を形成していることを特徴とする請求項14に記載の半導体処理堆積チャンバ。」
d.(特許請求の範囲、請求項26)
「 【請求項26】 前記支持ピンは、リフトピンに結合されて、前記基板を昇降し、載置することができる三角形を形成することを特徴とする請求項23に記載の半導体処理堆積チャンバ。」
e.(発明の詳細な説明、段落27)
「 【0027】
図3は、窪み146内に設けられた支持ピン148を示す支持部材の基板を受ける領域の部分断面図である。本体部分152と弧状の上部154を有する支持ピン148が支持部材の上面上に少なくとも部分的に延びる弧状の部分154と共に窪み146内に置かれる。弧状の部分154の半径は、基板の裏側と支持ピンの弧状の部分との間のスペースが最小にされ、一方同時に支持ピンと接触している基板の裏側の領域155を最小に保つように最適化される。好ましくは、窪み146の幅158は、支持ピン148の幅162より少なくとも若干大きく、窪み146内で支持ピン148の横の動きを可能にする。窪み内で支持ピンの横の動きを可能にするために、窪み146と支持ピン148のサイズを最適化することは、ピンがシステムの振動を吸収することを可能にし、それによって、支持ピンと基板の間で相対的な動きを防止する。また、これによって、支持ピン148が、基板の熱的に誘発された運動の間、基板と共に若干シフトしたり回転したりするようになる。この柔軟性は、支持部材が動きと堆積プロセスの間に起きる振動を消散し、基板の裏側への引っ掻きや損傷を最小にする。支持ピンは、更に基板の引っ掻きを最小にするために、電気研磨されるか、摩擦を減少する物質で覆われたステンレススチールのピンであるのが好ましい。」
f.(発明の詳細な説明、段落31?32)
「 【0031】
図7は、支持部材に設けられたキャップ/支持ピン214に摺動できるように結合された引っ込むことができるリフトピン160を有する支持部材の基板を受ける領域の部分断面図である。この実施の形態では、窪み164がキャップ/支持ピン214内に形成され、リフトピン160の一部を受ける。リフトピン160は、支持部材の基板を受ける領域の下部に形成された窪み168を通過する。窪み168の大きさは、キャップ/支持ピン214の幅より小さく、キャップ/支持ピン214を窪み146の内部に保持しつつ、窪み164からのリフトピン160の引っ込みを可能にする。リフトピン160とキャップ/支持ピン214の大きさは、キャップと基板が基板の昇降中にシステムに発生する振動に応答して、協働して動くように調整される。リフトピンが引っ込められると、キャップ/支持ピン214は窪み146に残り、支持ピンとして働く。窪み146の大きさは、基板と支持ピンとして働いているキャップ/支持ピン214が基板の処理中にシステムに発生する振動に応答して、協働して動くことができるように調整される。
【0032】
図8は、3組のリフト/支持ピンを有する支持部材240の斜視図である。各組は、図7で説明された引っ込むことができるリフトピン160とキャップ/支持ピン214を有する。リフトピン160とキャップ/支持ピン214を結合すれば、支持部材のリフトおよび支持要素によって接触される基板の面積が減少し、したがって、基板が支持部材の要素に接触するときに発生する裏側の引っ掻きが減少する。」
g.(図3,図7及び図8)
支持ピンの弧状の上部が、基板の主裏面との接触端面であって、上に凸な曲面形状に形成されていることが理解される。

摘記事項eにおいて、支持ピンと基板との接触による基板の引っ掻きを最小にするという目的を勘案すると、支持ピンに研磨を施す範囲には基板の主裏面との接触端面が含まれることは、当業者が容易に理解し得る。そこで、上記摘記事項aないしf及び認定事項gの内容を本件発明の記載に沿って整理すると、刊行物1には、以下の発明が記載されていると認められる。
「エンクロージャと、該エンクロージャ内に配され上面に基板が載置される支持部材と、該支持部材に対し昇降動作可能に設けられ、基板を下面側から支持した状態で前記昇降動作するのに伴わせて支持部材上に基板を着脱するための支持ピンと、を備える半導体基板堆積チャンバにおいて、前記支持ピンは、基板の主裏面との接触端面が、上に凸な曲面形状に形成されているとともに、該接触端面に研磨が施されている半導体基板堆積チャンバ。」(以下、「刊行物1記載の発明」という。)

2.2 刊行物2
a.(特許請求の範囲、請求項1)
「【請求項1】 反応容器内に配置されたサセプタ上に基板を載置し、該反応容器内に原料ガスを供給しながら該基板上にシリコン単結晶薄膜を気相成長させる薄膜成長装置であって、
前記サセプタの基板載置用の座繰り部に設けられた貫通孔に、該サセプタの基材よりも熱伝導率の低い基材からなるリフトピンが挿通され、該リフトピンを昇降させて前記基板の裏面と接離させることにより、該サセプタ上における該基板の着脱を行うようになされたことを特徴とする薄膜成長装置。」
b.(発明の詳細な説明、段落8)
「【0008】上記サセプタ5の構成材料としては通常、黒鉛基材をSiC(炭化珪素)の被膜でコーティングしたものが用いられている。基材として黒鉛が選択されているのは、開発当初の気相成長装置の加熱方式の主流が高周波誘導加熱であったことと関連しているが、その他にも高純度品が得やすいこと、加工が容易であること、熱伝導率に優れていること、破損しにくい等のメリットがあるからである。ただし、黒鉛は多孔質体であるが故にプロセス中に吸蔵ガスを放出する可能性があること、また、シリコンエピタキシャル成長の過程では黒鉛と原料ガスが反応してサセプタの表面がSiCに変化すること等の問題があり、その表面を最初からSiC被膜で覆う構成が一般化したのである。SiC被膜は通常、CVD(化学的気相成長法)により形成されている。上記リフトピン8の構成材料もサセプタ5と同様、黒鉛基材のSiC被覆物とされている。」

上記摘記事項を整理すると、刊行物2には、以下の事項が記載されていると認める。
「反応容器と、該反応容器内に配され上面に基板が載置されるサセプタと、該サセプタに対し昇降動作可能に設けられ、基板を下面側から支持した状態で前記昇降動作するのに伴わせてサセプタ上に基板を着脱するためのリフトピンと、を備える薄膜成長装置において、前記リフトピンがSiCで被覆されている薄膜成長装置。」(以下、「刊行物2記載の事項」という。)

3.対比
本件発明と刊行物1記載の発明とを対比すると、後者の「エンクロージャ」、「基板」、「支持部材」、「支持ピン」が、前者の「処理容器」、「シリコン単結晶ウェーハ」、「サセプタ」、「リフトピン」にそれぞれ相当することは明白であり、後者の「半導体基板堆積チャンバ」は前者の「シリコン単結晶ウェーハ処理装置」の範疇に属するから、両者は次の点で一致及び相違すると認められる。
<一致点>
「処理容器と、
該処理容器内に配され上面にシリコン単結晶ウェーハが載置されるサセプタと、
該サセプタに対し昇降動作可能に設けられ、シリコン単結晶ウェーハを下面側から支持した状態で前記昇降動作するのに伴わせてサセプタ上にシリコン単結晶ウェーハを着脱するためのリフトピンと、を備えるシリコン単結晶ウェーハ処理装置において、
前記リフトピンは、
シリコン単結晶ウェーハの主裏面との接触端面が、上に凸な曲面形状に形成されているとともに、該接触端面に研磨が施されているシリコン単結晶ウェーハ処理装置。」である点。
<相違点1>
リフトピンは、前者では少なくとも接触端面がSiCからなるのに対し、後者ではこのようなものでない点。
<相違点2>
リフトピンのウェーハ主裏面への接触端面が、前者では表面粗さ0.8μm以下に形成されているのに対し、後者ではそのような特定がない点。

4.当審の判断
上記各相違点について検討する。

4.1 <相違点1>につき
刊行物2には、リフトピンがSiCで被覆されている薄膜成長装置が記載されているが、刊行物2記載の事項の「薄膜形成装置」は、刊行物1記載の発明の「半導体基板堆積チャンバ」と同種の装置と認められる。刊行物1には「支持ピンは、更に基板の引っ掻きを最小にするために、電気研磨されるか、摩擦を減少する物質で覆われたステンレススチールのピンであるのが好ましい。」(摘記事項e参照。)との記載もあり、両者の技術分野の同一性も考慮すると、刊行物2記載の事項を刊行物1記載の発明に適用して、リフトピンの接触端面を含む表面をSiCで被覆することは、当業者が容易に想到し得るものである。
なお、審判請求人は平成20年6月20日付の意見書において、「本願発明では、リフトピンの接触端面にSiCを用いるとともに、当該接触端面を所定の形状,表面粗さとしており、これにより、ウェーハ裏面の傷を防止できるという顕著な効果を奏するようになっている。」、「また、刊行物2記載の発明では、SiCをリフトピンに用いてはいるものの、その目的はリフトピンを通じた放熱の防止であり、傷防止という本願の目的とは異なっている。」と主張している。しかしながら、刊行物2記載の事項においては、リフトピンを通じた放熱の防止は、リフトピンの表面でなく、基材をSiC等の熱伝導率の低い材料とすることによって達成しようとしているのであり、リフトピン表面のSiC被覆は放熱防止を目的とするものではない。また、本願の明細書及び図面にはリフトピンの接触端面にSiCを用いることの目的または作用効果について記載は見当たらず、SiCを用いることが傷を防止する効果に寄与することが自明であったとも認められないため、リフトピンの接触端面にSiCを用いることが傷防止を目的とするものと断定することもできない。よって、審判請求人の上記主張は採用することができない。

4.2 <相違点2>につき
刊行物1記載の発明のリフトピンはその接触端面が電気研磨されているが、その目的は「基板の引っ掻きを最小にするため」(摘記事項e参照。)とされている。してみると、引っ掻きすなわち傷を最少にするためには、研磨された接触端面の表面粗さが小さい程効果的であることは一般常識として理解され得るものであり、本件発明のように0.8μm以下に限定することに臨界的意義も認められないため、<相違点2>に係る発明特定事項は、当業者にとっては設計上の選択に過ぎないものというべきである。

4.3 まとめ
本件発明には、刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基づいて当業者が普通に予測し得る範囲を超える格別の作用効果も認めることはできないから、本件発明は刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものである。

5.むすび
以上のとおり、本願の請求項1に係る発明は刊行物1記載の発明及び刊行物2記載の事項に基いて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものであるため、本願は拒絶すべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-10 
結審通知日 2008-07-15 
審決日 2008-07-28 
出願番号 特願2001-297518(P2001-297518)
審決分類 P 1 8・ 121- WZ (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 嘉章  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 尾家 英樹
豊原 邦雄
発明の名称 シリコン単結晶ウェーハ処理装置  
代理人 荒船 良男  

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