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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 H01L
管理番号 1185064
審判番号 不服2007-24418  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-09-06 
確定日 2008-09-26 
事件の表示 特願2003-387741「半導体製造装置」拒絶査定不服審判事件〔平成17年 6月 9日出願公開、特開2005-150506〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 第1 手続の経緯・本件出願の発明
本件出願は、平成15年11月18日の特許出願であって、その請求項1ないし請求項17に係る発明は、願書に添付した特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、その特許請求の範囲の請求項1ないし請求項17に記載された事項により特定されるとおりのものであると認められるところ、請求項1に係る発明(以下「本件出願の発明」という。)は、次のとおりである。
「半導体ウエハを載置して加熱するためのヒータと、ヒータを冷却するための冷却ブロックとからなるウエハ保持体を備え、冷却ブロックはヒータのウエハ載置面と反対側の裏面に当接及び分離できるよう移動可能に配置され、且つ冷却ブロックのヒータに当接する当接面の反りが1mm以下であることを特徴とする半導体製造装置。」

第2 引用例
これに対して、原査定の拒絶の理由に引用された本件出願の出願前に日本国内において頒布された刊行物である特表2002-506279号公報(以下「引用例」という。)の記載内容は以下のとおりである。
1 引用例記載の事項
引用例には「低熱容量で、熱伝導性の加熱プレートを含む加熱/冷却装置」に関連して以下の事項が記載されている。
(ア)段落【0001】?【0002】
「(技術分野)
本発明は、好ましくは、少なくとも1つの加熱工程および少なくとも1つの冷却工程の両方またはいずれか一方を含んでいる温度プロフィルを介して加工品を処理するためのシステムおよび方法に関する。
特に、本発明は、温度プロフィルを介して加工品を処理する加熱/冷却装置に監視、この温度プロフィルは、第1平衡温度から所望の他の平衡温度にシフトするとき、迅速な応答により、一般的に、1つ以上の正確に平衡な温度に加工品を保持することを含んでいる。」
(イ)段落【0040】?【0042】
「図1a、図1b、図1cは、それぞれ、三つの構成を示す概略図である。これは、少なくとも一回の焼成工程と少なくとも一回の冷却工程とを含む温度プロフィルを通じて、半導体素子12などの加工品を循環させるのに適した加熱・冷却複合装置10(以下、「加熱/冷却装置10」と称する)の好適な実施形態の図である。加熱/冷却装置10は、底部ハウジング部材16と上部カバー18とを有するハウジング14を含む。底部ハウジング部材16と上部カバー18は、ハウジング14を繰り返し開閉するために、図1aで図示されているように互いに分離されているか、または図1b(焼成工程)および図1c(冷却工程)で図示されているように接触している。ハウジング14が開いている場合、半導体素子12をハウジング14に挿入して、加熱および冷却に備えて固定支持ピン19に設置することができる。
ウエハ12をハウジング14に挿入すると、ハウジング14は、閉じた、環境的に密閉された処理室を与えるために図1bおよび図1cに図示されるように閉じることができ、また、この処理室は、そうでなければ加熱および冷却時に起こり得る熱対流を実質的に回避するために十分小さい容量を有する。さらに、周囲環境の密閉によって処理室とその内容物を汚染から保護することになり、処理室をガスを用いてより効率的にパージしたり(特別な環境において処理することが望ましい場合)、所望に応じてガスを排出させたり(真空または部分的な真空において処理することが望ましい場合)することが可能になる。
ハウジング14は、加熱プレート20の形式である、比較的低熱容量で、熱伝導性の加熱部材と、冷却部材26の形式である、比較的高熱容量のヒートシンクとを含む。・・・(以下略)・・・。」
(ウ)段落【0044】?【0047】
「加熱プレート20は、半導体素子12を支持するための第1の主表面22を有し、この加熱プレート20からの熱エネルギーが加熱中に半導体素子12に伝わることができるようにしている。また、加熱プレート20は、冷却部材26と熱接触するように配置可能な第2の主表面24も含む。「熱接触」とは、加熱プレート20と冷却部材とが十分に近接し、冷却部材26の冷却効果が加熱プレート20を通じて半導体素子12に伝わるようになっていることを意味する。最も急速な冷却は、図1cに示すように、第2の主表面24が冷却部材26に物理的に直接接触しているときに生じる。しかし、効率的な冷却は、たとえば好適な実施形態では加熱プレート20と冷却部材26との間において、最大で約3mmの、物理的な隔たりがある場合にも生じることが可能である。
加熱プレート20は、好ましくは、抵抗性加熱エレメント(特に図示せず)の形式である加熱ゾーン25を含み、この加熱エレメントは、電気接続36によって加熱ゾーン25に供給される電気エネルギー量を、それに相当する量の熱エネルギーに変換する。加熱プレート20は、比較的熱容量が低く、熱伝導性があるため、加熱プレート20に放散される熱エネルギーは、急速に半導体素子12へと伝達される。
表面領域については、加熱ゾーン25は、半導体素子12よりも大きいことがが好ましく、加熱ゾーン25がウエハ12の下にあるだけでなく同様にウエハ12の端縁13にまで伸びるようになっている。加熱ゾーン25が半導体素子12よりも小さいと、ウエハ12の非均一な加熱が生じる恐れがある。より好ましくは、環状部材40などのフレーム部材を含む装置10の実施形態において、加熱ゾーン25を、ウエハ12の下に配置されるだけでなく少なくとも環状部材40のほぼ全体を含むほど十分な大きさがあることが望ましい。このようにして、半導体素子12の非常に均一な加熱が得られる。たとえば、図1a、図1b、図1cに見られるように、加熱ゾーン25の表面領域は、ウエハ12と環状部材40との両方を合わせた表面領域とほぼ同じサイズである。
冷却部材26は、半導体素子12や加熱プレート20と比較して、比較的高い熱容量を有する。このため、冷却部材26は熱容量ヒートシンクとして機能し、たとえば、一般的に15℃から23℃で冷却を行うのに効率的であるように、所望の冷却温度を保持することが可能である。熱伝導を介して、加熱プレート20が冷却部材26と熱接触するように配置されると、加熱プレート20、それに伴ってウエハ12は急速に冷却される。冷却部材26は、冷却部材26の内部を貫通する冷却経路28を含む。これにより、たとえば水などの冷却された冷却媒体が冷却経路28を循環することによって、冷却部材26が所望の冷却温度に保持されることが可能になる。冷却媒体は、冷却部材の腐食を防ぐために腐食防止剤を含むことができる。」
(エ)段落【0050】?【0051】
「加熱プレート20および冷却部材26は、互いに往復移動可能であるため、加熱プレート20の第2主表面24および冷却部材26の上部表面30を、互いに分離または接触させることができ、それにより加熱および冷却を制御することができる。また、半導体素子12を最も急速に加熱するために、加熱プレート20と冷却部材26とを十分に離して、第2の主表面24と上部表面30とを熱接触させることができる(図1b参照)。加熱プレート20と冷却部材26とをこのように分離させると、冷却部材26の冷却効果は、加熱プレート20または半導体素子12に対してわずかまたはほとんどない。半導体素子12の最も急速な冷却を行うには、全く電気的エネルギーが加熱ゾーン25に供給されない間に、加熱プレート20の第2主表面24と冷却部材26の上部表面30とを互いに物理的に接触させるように配置することができる(図1c参照)。冷却および/または加熱の中間比率は、冷却部材26と加熱プレート20との間の間隔を調整すること、および/または加熱プレート20の熱出力を変えることにより得ることができる。例によっては、加熱プレート20に対する望ましい温度プロフィルは、同時にある程度まで半導体素子12を加熱および冷却している間に、加熱プレート20と冷却部材26との間の熱接触を維持することによって得ることができる。実際に、同時の加熱および冷却は、望ましい平衡温度(所望により、加熱あるいは冷却の平衡温度のいずれかでありうる)で、加熱プレート20、ひいてはウエハ12を維持するのに特に有益であり、その温度において、加熱プレートの平衡温度は±0.01℃以内に抑えられる。
加熱プレート20と冷却部材26との互いに往復移動は、当技術において公知のいずれかの便宜な移送機構を使うことによって達成することができる。図1a、図1b、図1cに図示された1つの代表的な技術によると、加熱プレート20は、加熱プレートポスト32上に支持され、それに対応する加熱プレート20の独立した運動を行うために上昇したり下降したりすることができる。好適な実施形態では、加熱プレートポスト32は、加熱ゾーン25に電気的エネルギーを双方向に移送するハウジングの電気配線36のために中空になっている。望ましくは、中空の加熱プレートポスト32内に収容された電気配線36は、外観上のために見えないように隠されているだけでなく、加熱プレートポスト32の壁面によって十分保護されている。同様に、冷却部材26は、上昇または下降が可能な冷却部材ポスト34上に支持されて、冷却部材26のそれに対応する独立した運動を行うようになっている。ポスト32、34も同時に作動可能であり、所望であれば、加熱プレート20と冷却部材26との協働運動を行うことができる。」
(オ)段落【0071】?【0073】
「図1a、図1b、図1cは、どのようにして加熱および冷却を実行できるかを詳細に示す装置10の三つの形態を概略的に示す。図1aは、ハウジング14が開いており、半導体素子12を装置10に挿入して固定支持ピン19を配置することが可能になっている「準備段階」形態における装置10を示す。加熱プレート20は、当初は、冷却部材26の上に載置する好適な「アイドル」位置にある。
図1bは、装置10の第2形態を示し、加熱サイクルが冷却部材26とは関係なく加熱プレート20を持ち上げることにより開始され、冷却部材26から加熱プレート20の第2主表面24を熱的に分離させる。この形態では、加熱プレート20の第1主表面は、支持ピン19と少なくとも同一の面上または所望であればそれよりも高く持ち上げられることによって、半導体素子12が加熱プレート20の第1主表面22に熱接触される。半導体素子12は、所望であれば低圧の真空を用いて加熱プレート20の上に固定することができる。加熱ゾーン25が電気的な抵抗ヒータによって与えられている本発明の実施形態では、所望の加熱プロフィルを提供するために効率的に加熱ゾーン25を通じて電流を流すことにより加熱される。
図1cは、急速な冷却を与えるために効率的な装置10の構成を示す。この構成では、冷却部材26は加熱プレート20の第2主表面24と熱接触するまで上昇している。冷却部材26の冷却効果が、熱伝導によって加熱プレート20を通じて半導体素子12に伝達される。最も急速な冷却速度は、冷却中に加熱ゾーン25を完全にオフにすることで得られるが、もっとゆるやかな温度降下は単に加熱ゾーン25の熱出力を調整することで得られる。図1cの形態は、冷却部材26の冷却効果が十分な大きさになることで所望の加熱速度が得られるまで加熱ゾーン25の熱出力を増加させることによって比較的低速な加熱速度を得るために使用することもできる。加熱プレート20と半導体素子12とは、冷却が完了すると冷却部材26から熱的に分離可能である。熱的な分離は加熱プレート20と冷却部材26とを分離させて、図1bの構成にすることで最もよく行われる。代わりに、比較的少量だが十分な量のエネルギーを加熱ゾーン25に与えることで所望の冷却平衡温度にウエハ12を維持しておくことができる一方で、加熱プレート20と冷却部材26とを結合したままにしておくことが可能である。」
(カ)ここで、図面の図1aを参照すると、加熱プレート20の半導体素子12が載置される面が第1の主表面22であり、この第1の主表面22と反対側の裏面が第2の主表面24であることが分かる。
2 引用例記載の発明
引用例の上記(ア)ないし(オ)の摘記事項、及び(カ)の認定事項を本件出願の発明に照らして整理すると引用例には以下の発明が記載されていると認める。
「半導体素子12を載置して加熱するための加熱プレート20と、加熱プレート20を冷却するための冷却部材26とを備え、冷却部材26は加熱プレート20の半導体素子12を支持するための第1の主表面22と反対側の裏面である第2の主表面24に分離または接触させることができるよう往復移動可能に配置されている加熱/冷却装置10。」

第3 対比
本件出願の発明と引用例記載の発明とを対比すると以下のとおりである。
引用例記載の発明の「半導体素子12」、「加熱プレート20」及び「冷却部材26」は、それぞれ本件出願の発明の「半導体ウエハ」、「ヒータ」及び「冷却ブロック」に相当する。そうすると、引用例記載の発明の「加熱プレート20と冷却部材26」は、合わせて「ウエハ保持体」と言えるものであることは明らかである。
引用例記載の発明の「半導体素子12を支持するための第1の主表面22」は、本件出願の発明の「ウエハ載置面」に相当する。
引用例記載の発明の「分離または接触させることができる」ことは、本件出願の発明の「当接及び分離できる」ことに相当する。
また、引用例記載の発明は「加熱/冷却装置」として表現されているが、半導体素子を加熱したり冷却したりするものであるので、本件出願の発明と同様に「半導体製造装置」としても表現できるものである。
したがって、本件出願の発明と引用例記載の発明とは、以下の一致点と相違点とを有しているということができる。
[一致点]
「半導体ウエハを載置して加熱するためのヒータと、ヒータを冷却するための冷却ブロックとからなるウエハ保持体を備え、冷却ブロックはヒータのウエハ載置面と反対側の裏面に当接及び分離できるよう移動可能に配置されている半導体製造装置。」
[相違点]
本件出願の発明では、冷却ブロックのヒータに当接する当接面の反りが1mm以下であるとしているのに対して、引用例記載の発明では、冷却ブロックに相当する冷却部材26とヒータに相当する加熱プレート20とが、そのようになっているのかどうか明らかでない点。

第4 相違点についての検討
上記第2の1に摘記したように、摘記事項(ウ)には「加熱プレート20は、冷却部材26と熱接触するように配置可能な第2の主表面24も含む。「熱接触」とは、加熱プレート20と冷却部材とが十分に近接し、冷却部材26の冷却効果が加熱プレート20を通じて半導体素子12に伝わるようになっていることを意味する。最も急速な冷却は、図1cに示すように、第2の主表面24が冷却部材26に物理的に直接接触しているときに生じる。」と記載されており、また、摘記事項(エ)には「半導体素子12の最も急速な冷却を行うには、全く電気的エネルギーが加熱ゾーン25に供給されない間に、加熱プレート20の第2主表面24と冷却部材26の上部表面30とを互いに物理的に接触させるように配置することができる(図1c参照)。」と記載されている。
そうしてみると、加熱プレート20から冷却部材26への熱伝達を最も効率よく行うためには、加熱プレート20の裏面と冷却部材26の加熱プレート20に当接する当接面(以下単に「冷却部材の当接面」という。)とが物理的に直接接触していること、換言すれば、加熱プレート20の裏面と冷却部材の当接面とが密着するように構成することが必要である。
一般に、2つの部材を密着させるためには、両方の部材の接触面をともに平坦な面とすることは、例示するまでもなく従来周知の事項である。ここで、引用例の【図1c】を参照すると、加熱プレート20の裏面は平坦である。加熱プレート20の裏面が平坦であるならば、加熱プレート20に対して冷却部材の当接面を密着させるためには、冷却部材の当接面も反りや波打ちがないように平坦にする必要があることは、当業者が格別の創意を要することなく容易に想到するところである。
ところで、本件出願の発明では、当接面の反りを、「1mm以下」であると特定している。
しかしながら、冷却ブロックの当接面の反りをどの程度に抑えるかは、そのために要する費用や時間とその結果得られる効果とを勘案して適宜設定すればよい単なる設計的事項にすぎない。
また、冷却ブロックの当接面を、反りを少なくして平坦にすることにより、冷却ブロックと加熱プレートとを密着させれば、冷却速度が向上するだけでなく、冷却ブロックと加熱プレートとが均一に接触することにより、均一に熱伝導が起こり、それだけ温度分布が均一となるので、冷却開始時から同終了時までの温度移行時のヒータの温度分布が均一となるであろうことは当業者が容易に予想できる事項である。してみると、本件出願の明細書の段落【0066】の【表1】に挙げられたデータのとおり、冷却ブロックの当接面の反りを1mm以下とすることにより、ウエハ載置面における温度の均一性及び冷却能力が大きく向上しているとしても、それは当業者が予想する範囲の延長上のものに過ぎないと考えざるを得ない。

第5 むすび
したがって、本件出願の発明は、引用例記載の発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許をすることができない。
よって、本件出願のその余の請求項に係る発明について逐次検討するまでもなく本件出願は拒絶されるべきであるから、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-15 
結審通知日 2008-07-22 
審決日 2008-08-04 
出願番号 特願2003-387741(P2003-387741)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (H01L)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 田村 嘉章  
特許庁審判長 野村 亨
特許庁審判官 福島 和幸
豊原 邦雄
発明の名称 半導体製造装置  
代理人 二島 英明  
代理人 中野 稔  
代理人 山口 幹雄  

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