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この審決には、下記の判例・審決が関連していると思われます。
審判番号(事件番号) データベース 権利
不服20052730 審決 特許
不服200423946 審決 特許
不服200511006 審決 特許
不服200320282 審決 特許
不服200516521 審決 特許

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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 4項1号請求項の削除 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 4項4号特許請求の範囲における明りょうでない記載の釈明 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 4項3号特許請求の範囲における誤記の訂正 特許、登録しない。 A61K
審判 査定不服 4号2号請求項の限定的減縮 特許、登録しない。 A61K
管理番号 1185077
審判番号 不服2005-7234  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2005-04-21 
確定日 2008-09-25 
事件の表示 特願2001- 89314「皮膚外用剤組成物」拒絶査定不服審判事件〔平成14年10月 3日出願公開、特開2002-284662〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 1.手続の経緯
本願は、平成13年3月27日の出願(特願2001-89314号)であって、平成16年11月15日付けの拒絶理由通知に対して平成17年1月21日付けで意見書及び手続補正書が提出され、これに対し同年3月9日付で拒絶査定がなされ、これに対し、同年4月21日付で拒絶査定に対する審判請求、及び手続補正書が提出されているものである。

2.平成17年4月21付の手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成17年4月21日付の手続補正を却下する。
[理由]
(1)補正後の本願発明
本件補正は、特許請求の範囲の請求項1及び2について、平成17年1月21日付けの手続補正書に記載された、

「【請求項1】N-アセチルグルコサミンと、レチノイドとを含有することを特徴とする皮膚外用剤組成物。
【請求項2】レチノイドが、全トランスレチノール、13-cisレチノール、全トランスレチノイン酸および13-シスレチノイン酸からなる群より選択される少なくとも一種以上のものである請求項1に記載の皮膚外用剤組成物。」を

「【請求項1】N-アセチルグルコサミンと、レチノイドとを含有することを特徴とする皮膚外用剤組成物。(但し、医薬組成物を除く。)
【請求項2】N-アセチルグルコサミンと、レチノイドとを含有することを特徴とする化粧料。」と補正するものである。

上記補正は、
(A)補正前の請求項1を、「(但し、医薬組成物を除く。)」という限定を付した新たな請求項1とする補正、及び補正前の請求項2を、レチノイドについての「全トランスレチノール、13-cisレチノール、全トランスレチノイン酸および13-シスレチノイン酸からなる群より選択される少なくとも一種以上のものである」との限定を削除するとともに、「皮膚外用剤組成物」を「化粧料」とした新たな請求項2とする補正、又は
(B)補正前の請求項1を、「(但し、医薬組成物を除く。)」という限定を付した新たな請求項1とする補正、及び補正前の請求項2を削除し、新たな請求項2として、「N-アセチルグルコサミンと、レチノイドとを含有することを特徴とする化粧料。」を追加する補正、の何れかの補正に該当する。なお、以下の記載の下線は当審において付したものである。

(A)の補正の場合
本願の当初明細書には、「…レチノイドとしては、レチノイン酸、レチナール、レチノールおよび脂肪酸レチニルエステル、ならびにデヒドロレチノール、デヒドロレチノール、脂肪酸デヒドロレチニルエステルを包含する。…レチノイン酸とは、以下のレチノイン酸の異性体を包含する:全trans-レチノイン酸、13-cis-レチノイン酸、11-cis-レチノイン酸、9-cis-レチノイン酸、3,4-デヒドロ-レチノイン酸である。…レチノールとは、以下のレチノールの異性体を包含する:全trans-レチノール、13-cis-レチノール、11-cis-レチノール、9-cis-レチノール、3,4-デヒドロ-レチノールである。」(【0014】?【0016】)と記載されていて、「レチノイド」は「全トランスレチノール、13-cisレチノール、全トランスレチノイン酸および13-シスレチノイン酸」以外の化合物を含むものである。
したがって、新たな請求項2は、「レチノイド」に含まれる化合物を、「全トランスレチノール、13-cisレチノール、全トランスレチノイン酸および13-シスレチノイン酸からなる群より選択される少なくとも一種以上のもの」以外の化合物をも含むように拡張するものである。
(B)の補正の場合
補正前の請求項1を「(但し、医薬組成物を除く。)」という限定を付けた新たな請求項1と、「皮膚外用剤組成物」を「化粧料」に限定した新たな請求項2の2つの請求項とするものである。
したがって、本件補正は、上記(A)又は(B)のいずれの補正と考えても、平成18年改正前特許法第17条の2第4項各号に掲げる請求項の削除、特許請求の範囲の減縮、誤記の訂正、及び明りょうでない記載の釈明のいずれを目的とするものにも該当しないから、本件補正は同法第17条の2第4項の規定に違反するので、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。

3.本願発明について
平成17年4月21付の手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項1に係る発明(以下、同項記載の発明を「本願発明」という。)は、平成17年1月21日付けの手続補正書の特許請求の範囲の請求項1に記載された事項により特定される、以下のとおりのものである。

「N-アセチルグルコサミンと、レチノイドとを含有することを特徴とする皮膚外用剤組成物。」

(1)引用例の記載の概要
原査定の拒絶の理由に引用された米国特許第5804594号明細書(以下、「引用例A」という。)、特開平9-100211号公報(以下、「引用例B」という。)、国際公開第00/3700号パンフレット(以下、「引用例C」という。)、及び国際公開第00/62744号パンフレット(以下、「引用例D」という。)には以下の事項が記載されている。

引用例A;

(A-1)実施例3として、
「 成分 重量パーセント(% w/w) 量(mg)
N-アセチルグルコサミン 17.1重量% 140mg
ビタミンC(81.2%アスコルビン酸) 15 重量% 123.2mg
L-リジン(80%) 12.2重量% 100mg
L-プロリン 11 重量% 90mg
D-グルコサミン硫酸(75%) 6.5重量% 53.3mg
コンドロイチン硫酸(80%) 6.1重量% 50mg
ビタミンEスクシネート 4.3重量% 39.7mg
亜鉛モノメチオニン(20%) 3.7重量% 30mg
N-アセチルシステイン 3.7重量% 30mg
アスコルビン酸マンガン塩(13%Mn) 2.8重量% 23.1mg
ビタミンB3ナイアシンアミド 2.4重量% 20mg
クエルセチン粉末 2.4重量% 20mg
ブドウ種子抽出物 0.9重量% 7.5mg
ピリドキサール5リン酸塩-Co B6 0.6重量% 5mg
セレノインエチオニン(0.5%) 0.5重量% 4mg
ビタミンAパルミテート 0.5重量% 4mg
(500,000IU/GR)
銅セバシン酸塩(14%) 0.4重量% 2.9mg
赤カブ根粉末 6.1重量% 50mg
ステアリン酸 1.5重量% 12mg
ソルビトール 1.3重量% 11mg
AcdiSol 0.4重量% 3mg
ココナッツ油 0.1重量% 1mg
Syloid 0.1重量% 1mg
全量 820.7重量% 100mg」
([審決注]「AcdiSol」は「クロスカルメロースナトリウム」の登録商標、「Syloid」は「沈降シリカ」の登録商標、全量の欄の重量パーセント 820.7、量 100は、重量パーセント 100、量 820.7の明らかな誤記)なる成分組成を有する錠剤が記載され、この錠剤は、好ましい一つの例であると記載されている。また、実施例4に、この錠剤を、73名の女性被験者に対して、食事とともに錠剤を投与して皮膚の細かい筋、皺について調べた結果、2週間で皺が10%減少、細かい筋が8%減少し、5週間では皺と細かい筋が34%減少したことが記載されている。(10欄21行?12欄39行、TABLEI)
(A-2)「皺の急性及び慢性的処置におけるこの組成物の予防的及び治療的投与の量は治療すべき状態の重症度及び投与経路により変わるであろう。…一般に、一日の全投与量…は約10mgから20,000mgまでを経口的に、局所的に、経皮的に一回分又は複数回分、…投与される。」(8欄13?22行)
(A-3)「どのような投与経路もこの発明の方法に従った組成物の効果的調剤により患者に供給するために用いることが出来るであろう…。適切な投与経路は、例えば、経口、…、局所、経皮、…等を含み、投与に相当の形態を用いることが出来る。適切な調剤形態は錠剤、…、パッチ、…を含む…。」(8欄40?51行)

引用例B;

(B-1)「本発明による組成物は主として、ヒトの皮膚に局所適用する製品、特にスキンコンディショニング及びスムーシング剤、及び皺寄った、または老化した皮膚の出現を予防または低減する薬剤として企図されている。」(段落【0030】、4頁5欄9?12行)

引用例C;

(C-1)「本発明はさらに、乾燥肌、光損傷肌、老人性斑点、老人性皮膚、進行性角質層屈曲、しわ、細線、光線性しみ、皮膚異常変色および魚鱗癬からなる群から選ばれる1つまたはそれ以上の症状のある皮膚に、本発明の組成物の適用を含む上記症状の1つまたはそれ以上の症状の処置方法を提供する。」(11頁12?21行)
(C-2)「本発明の組成物は好ましくは、局所用…である。それらは、クリーム、軟膏およびジェルの形態であってもよい。それらはまた、組成物が皮膚に適用されたとき、それらの分配を容易にするように、組成物中の活性成分の希釈剤、分散剤または担体として働く化粧品的に許容され得る添加物を含んでいてもよい。」(15頁26行?16頁2行)」

引用例D;

(D-1)「本発明は、スキンケア活性物質、…、及び少なくとも1つの追加のスキンケア活性物質を含有する局所適用組成物に関する。このような組成物は、皮膚の状態の調整、特に、皮膚に関連する、目に見える及び/又は触知できる不連続性、例えば、皮膚の老化の調整に有効である。」(1頁4?7行)

(2)対比
引用例Aには、実施例3として、N-アセチルグルコサミンとビタミンAパルミテートとその他成分を含有する錠剤が記載されており、実施例4として、その錠剤を経口投与して薬理効果を試験したところ、皮膚の皺、細かい筋が減少したことが記載されている(摘記事項(A-1))。
したがって、引用例Aには、「N-アセチルグルコサミンとビタミンAパルミテートを含有する皮膚の皺改善用の経口投与用錠剤」(以下、「引用発明」という。)が記載されている。
そこで、本願発明と引用発明とを対比する。
レチノイドとは、ビタミンA作用を持つレチノール、レチナール、レチノイン酸とその脂肪酸エステルなどの一連の化合物を総称するものである(例えば、「化粧品ハンドブック、平成8年11月1日発行、代表者 関根 茂、編集者 蔵多 淑子 外4名、日光ケミカルズ株式会社 外2社」の「16.ビタミン」(第381?384頁)の項、及び「新しい化粧品素材の効能・効果・作用(上)」1998年8月31日 第1刷発行、監修 鈴木 正人、 株式会社シーエムシー、の「1.5.2 レチノイン酸」(第188?190頁)の項参照)から、引用発明のビタミンAパルミテートは、本願発明のレチノイドに含まれる。そして、引用発明の錠剤は組成物であることは明らかである。さらに、本願発明の皮膚外用剤の用途は、本願明細書の段落【0001】に「本発明は、N-アセチルグルコサミンとレチノイドとを含有する皮膚外用剤組成物に関するものである。詳しくは、皮膚のハリや潤いを維持して皺、乾燥肌、日焼け肌、老化肌を予防または改善することのできる皮膚外用剤組成物に関する。」と記載されているとおり、引用発明の皮膚の皺改善を含むものである。
そうすると、本願発明と引用発明は、「N-アセチルグルコサミンと、レチノイドとを含有する皮膚用の組成物」である点で一致し、剤形が、本願発明は、皮膚外用剤であるのに対して、引用発明は、経口投与剤である点で相違する。

(3)判断
引用例Aは、「皺及びその他の皮膚の状態を改善するための薬用組成物及びその方法」と題する文献であり、薬用組成物の投与経路については、「皺の急性及び慢性的処置におけるこの組成物の予防的及び治療的投与の量は治療すべき状態の重症度及び投与経路により変わるであろう。一般に、経口的に、局所的に、経皮的に投与される。」(摘記事項(A-2))、及び「どのような投与経路もこの発明の方法に従った組成物の効果的調剤により患者に供給するために用いることが出来るであろう。適切な投与経路は、例えば、経口、局所、経皮を含み、投与に相当の形態を用いることが出来る。適切な調剤形態は錠剤、パッチを含む。」(摘記事項(A-3))と記載されている。
すなわち、引用例Aには、引用例Aに記載の「皺及びその他の皮膚の状態を改善するための薬用組成物」の適切な投与経路として、経口投与だけでなく、局所投与、経皮投与が記載されており、さらに、皺改善用の薬組成物の投与経路として、皮膚外用剤としての投与は慣用の投与形態であること(摘記事項(B-1)、(C-1)、(C-2)、(D-1))を勘案すれば、引用例Aに実施例3として記載されている引用発明を、経口投与剤に代えて皮膚外用剤とすることは当業者が容易に想到し得ることであり、皮膚外用剤として製剤化することに困難性はない。

そして、本願発明の効果も、引用例A乃至Dの記載事項から、当業者が予測し得るものである。

(4)むすび
したがって、本願発明は引用例A乃至引用例Dに記載された発明に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-24 
結審通知日 2008-07-29 
審決日 2008-08-12 
出願番号 特願2001-89314(P2001-89314)
審決分類 P 1 8・ 573- Z (A61K)
P 1 8・ 571- Z (A61K)
P 1 8・ 574- Z (A61K)
P 1 8・ 572- Z (A61K)
P 1 8・ 121- Z (A61K)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 岩下 直人  
特許庁審判長 塚中 哲雄
特許庁審判官 谷口 博
弘實 謙二
発明の名称 皮膚外用剤組成物  
代理人 伊藤 健  

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