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審決分類 審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 B62M
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 B62M
審判 査定不服 特17条の2、3項新規事項追加の補正 特許、登録しない。 B62M
管理番号 1185100
審判番号 不服2006-10078  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2006-05-18 
確定日 2008-09-25 
事件の表示 特願2002-264204号「自動二輪車の後部構造」拒絶査定不服審判事件〔平成16年 4月 2日出願公開、特開2004- 98884号〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 【1】手続の経緯
本願は、平成14年9月10日の出願であって、平成18年4月3日付けで平成18年2月13日付けの手続補正を却下するとともに、同日付けで拒絶査定がなされ、これに対し、同年5月18日に本件審判の請求がなされるとともに、同年6月12日付けで手続補正(前置補正)がなされたものである。

【2】平成18年6月12日付けの手続補正についての補正却下の決定
[補正却下の決定の結論]
平成18年6月12日付けの手続補正を却下する。
[理由]
1.補正後の本願発明
平成18年6月12日付けの手続補正(以下「本件補正」という。)により、特許請求の範囲の請求項1は、
「【請求項1】 車体に前から後へ前輪、エンジン、後輪をこの順に配置し、前記エンジンから上後方へ排気管を延ばし、この排気管の後端に消音器を備えた自動二輪車において、
前記消音器を、車体フレームの後部で左・右リヤフレーム間に且つ前記後輪の上方に配置し、
前記消音器は、その上部から上方に向かって突出した複数の取付部を車幅方向に備え、且つ該消音器は前記複数の取付部を左右のリヤフレームに跨って取り付けることで支持されており、
前記排気管の後部を、前記左リヤフレーム又は右リヤフレームに寄せて配置した後に前記消音器に接続し、
前記排気管の後部と右リヤフレーム又は左リヤフレームとの間に、車載部品を置くことのできるスペースを確保するとともに、消音器を左・右リヤフレーム後端から更に後方へ延出させ、消音器の前方に前記スペースを確保したことを特徴とする自動二輪車の後部構造。」
と補正された。
上記補正は、請求項1に記載した発明を特定するために必要な事項である排気管の延長方向に付き「エンジンから後方へ」としていたのを「エンジンから上後方へ」とすると共に、消音器の支持に関して「その上部から上方に向かって突出した複数の取付部を車幅方向に備え、且つ該消音器は前記複数の取付部を左右のリヤフレームに跨って取り付けることで支持されて」いるとの限定を付加して特定したものである。
このうち、消音器の支持に関する限定事項について検討する。
本願の図8を見ると、消音器ハンガ88がシートレール40の端部(図4と合わせて検討するとフランジ46aと見られる部分)よりも奥側(車体右側)に位置していることが見て取れる。一方、図9を見ると消音器ハンガ88がフランジ46aの後端部よりも奥側(車体前方)に位置していることが見て取れる。以上の関係から消音器ハンガ88の平面図における位置を検討するとフランジ46aの内部に存在すると記載されていることになってしまうが、斯かる構造は本願の図4等に記載された事項と矛盾するのでいずれの図面が正しく、いずれの図面が誤りであるのか特定できない。また、他に消音器ハンガ88の位置を特定しうる記載はない。結局、出願当初の明細書又は図面から消音器ハンガ88の取付構成を特定することは出来ないものである。したがって、消音器の「上部から上方に向かって突出した複数の取付部を車幅方向に備え、且つ該消音器は前記複数の取付部を左右のリヤフレームに跨って取り付けることで支持されて」いる構造に関する限定は、本願の出願当初の明細書又は図面に記載した事項の範囲内ではない。
以上のとおりであるから、本件補正は、特許法第17条の2第3項の規定に違反するものであり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものである。
よって、上記補正却下の決定の結論のとおり、決定する。

2.独立特許要件の欠如
また、仮に上記限定事項が出願当初の明細書等に記載されていたものだとしても、本件補正後の上記請求項1に記載された事項により特定される発明(以下「本願補正発明」という。)は、以下で検討するように特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(1)引用例とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された、本願の出願前に頒布された刊行物である、実願昭52-102482号(実開昭54-28849号)のマイクロフィルム(以下「第1引用例」という。)には、「オートバイの車体フレーム」に関して、図面とともに次のア?エの事項が記載されている。
ア 「第1図において、1はオートバイの車体フレームで、この車体フレーム1は第2図に示したように鋼製パイプをU字状に成形して平行なパイプ部2a,2bを設けたフレーム本体2と、・・・パイプ部2aの中央部下面に固着された板状のレツグ8と、パイプ部2bの中央部下面に取り付けられた板状のレツグ9と・・・より構成されている。
レツグ8には、第3図に示した第1マフラー14を掛止させるための段部15(第2図)が形成されており、又、レツグ9側には第3図に示したエアクリーナ16及びバツテリー17を取り付けるための支持装置18が・・・設けられている。」(第2頁第15行?第3頁第17行)
イ 「第2図において・・・24はレツグ補強板12の後端部に形成された管挿通用切欠で、この切欠24には第1マフラー14と第2マフラー25(第3図)の連結管部26が嵌合されている。」(第4頁第4行?同第9行)
ウ 「この補強板12は、第1図に示したように後車輪30の上部に伸びるレツグ9(及び図示されていないレツグ8)の下縁に沿つて伸び、・・・第1図中、33はヘツドパイプ6に回動自在に保持されたフロントフオーク・・・35はフロントフオーク33の下端に取り付けられた前車輪、36はレツグ8,9に取り付けられたエンジン、37はレツグ9の下部に枢着されたスイングアーム・・・である。」(第4頁第17行?第5頁第13行)
エ 第3図には、第1マフラー14が車体平面視で右側(パイプ部2a側)に偏って設けられ、その左側のスペースにエアクリーナ16及びバツテリー17が設けられた配置が示されている。
ここで、第1図からエンジン36の上方に向かって管状の部材が延びているのが見て取れると共に、第2図の管挿通用切欠24は第1図と合わせて考察するとエンジンより高い位置にあることが判る。したがって排気管はエンジン36の上後方へ延びているとすることができる。
図面とともに上記各記載事項を総合すると、第1引用例には、
「車体に前から後へ前車輪35、エンジン36、後車輪30をこの順に配置し、前記エンジン36から上後方へ排気管を延ばし、この排気管の後端に第1マフラー14及び第2マフラー25を備えたオートバイにおいて、
前記第1マフラー14及び第2マフラー25を、車体フレーム1の後部で平行なパイプ部2a,2b間に配置し、
前記排気管の後部を、前記パイプ部2a又はパイプ部2bに寄せて配置した後に前記第1マフラー14に接続し、
前記第1マフラー14とパイプ部2a又はパイプ部2bとの間に、車載部品を置くことのできるスペースを確保したオートバイの後部構造。」
の発明(以下「引用発明」という。)が記載されていると認められる。

(2)発明の対比
本願補正発明と引用発明とを対比すると、引用発明の「前車輪35」は本願補正発明の「前輪」に相当し、以下同様に、「エンジン36」は「エンジン」に、「後車輪30」は「後輪」に、「オートバイ」は「自動二輪車」に、「車体フレーム1」は「車体フレーム」にそれぞれ相当する。そして、引用発明の第1マフラー14及び第2マフラー25は、形式の違いはあるものの消音器である限りにおいて本願補正発明の消音器に対応するものといえる。また、引用発明の平行なパイプ部2a,2bは、車体フレーム1と一体に繋がったものであるものの車体後部にあって車体の左右側部に延設されたフレームである限りにおいて本願補正発明の左・右リヤフレームに対応するものといえる。また、引用発明では車載部品を置くことのできるスペースを第1マフラー14とパイプ部2a又は2bとの間に確保しているが、斯かる構成における引用発明の第1マフラー14は排気系部材である限りにおいて本願補正発明の排気管の後部に対応するものといえる。
以上の対比から、本願補正発明と引用発明との一致点及び相違点を次のとおりに認定できる。
[一致点]「車体に前から後へ前輪、エンジン、後輪をこの順に配置し、前記エンジンから上後方へ排気管を延ばし、この排気管の後端に消音器を備えた自動二輪車において、
前記消音器を、車体フレームの後部で左側フレーム及び右側フレーム間に配置し、
前記排気管の後部を、前記左側フレーム又は右側フレームに寄せて配置した後に前記消音器に接続し、
排気系部材と右側フレーム又は左側フレームとの間に、車載部品を置くことのできるスペースを確保した自動二輪車の後部構造。」である点。
[相違点1]本願補正発明は左リヤフレームと右リヤフレームがそれぞれ別体に形成された後、車体フレームに組み付けられているのに対して、引用発明は車体フレームが一体に形成されている点。
[相違点2]本願補正発明は消音器が後輪の上方に配置されているのに対して、引用発明は消音器の位置が後輪の上方であるか明らかでない点。
[相違点3]本願補正発明は消音器がその上部から上方に向かって突出した複数の取付部を車幅方向に備え、且つ該消音器は前記複数の取付部を左右のリヤフレームに跨って取り付けることで支持されているのに対して、引用発明はそのような消音器の支持構造を備えていない点。
[相違点4]本願補正発明は単一の消音器に接続する排気管の後部と右側フレーム又は左側フレームとの間に、車載部品を置くことのできるスペースを確保したのに対して、引用発明は消音器が第1マフラー14と第2マフラー25からなり、排気管以外の排気系部材(第1マフラー14)と右側フレーム又は左側フレームとの間に、前記スペースを確保した点。
[相違点5]本願補正発明は消音器を左・右リヤフレーム後端から更に後方へ延出させ、消音器の前方に前記スペースを確保しているのに対して、引用発明はそのような消音器の配置ではない点。

(3)相違点の検討
相違点1について
自動二輪車の車体構造において左リヤフレームと右リヤフレームをそれぞれ別体に形成し、車体フレームに組み付ける構成は周知の事項である(周知例:特開平10-95379号公報(シートレール8参照))。そして、斯かる構成は自動二輪車の設計において考慮される選択肢の一つであるといえ、特段の創意なく採用しうる事項である。したがって引用発明に上記周知の技術を採用して、本願補正発明の相違点1に係る構成とすることに、格別の困難性は要しない。
相違点2について
本願補正発明における消音器を「後輪の上方に配置」したとの記載について述べると、該記載は上面視で後輪と消音器に重なる部分がある程度の位置関係を表すものであって、必ずしも消音器の中心線が車体中央線と重なる(即ち、消音器が後輪の真上にある)場合のみを意味するものではない。上方とは真上だけの場合に限定解釈されるべきではなく、斜め上方をも含みえるものである。そうすると、自動二輪車の車体構造において消音器を後輪の上方(斜め上方)に配置する構成は周知の事項である(周知例:特開平10-95379号公報(図16等参照)、特開2001-114181号公報(【0033】段落参照))ことを考慮すると、このような周知の事項を引用発明における消音器の配置構造に採用して本願補正発明の相違点2に係る構成とすることに、格別の困難性は要しない。
相違点3について
消音器を自動二輪車に取り付けるにあたって、消音器の上部から上方に向かって突出した複数の取付部を車幅方向に備え、該複数の取付部を車体構造部材を外側から挟み込む状態で取り付けることは周知の事項である(周知例:実願昭57-197896号(実開昭59-104824号)のマイクロフィルム)。また、消音器を左右のリヤフレームに取り付けることも周知の事項である(周知例:特開平10-95379号公報)。さらに、左右のリアフレームを互いに結合して一体化することも周知の事項である。(周知例:特開2001-114181号公報【0021】段落参照)そして、消音器の取り付け先である車体構造材として適宜箇所を選択することは当業者が特段の創意なくなし得る設計上の事項であるといえ、斯かる選択において左右のリアフレームを互いに結合する箇所がある場合に該箇所を選択することに特段の支障があるとはいえない。したがって、引用発明における消音器の取り付けに関して前記各周知の事項をそれぞれ適用することにより、本願補正発明の相違点3に係る構成とすることに、格別の困難性は要しない。
相違点4について
引用発明では第1マフラー14を車体右側に寄せて配置することにより、該マフラーとパイプ部2bとの間に車載部品の設置スペースを確保している(記載事項エ)。また、自動二輪車においてマフラーが単一であることは周知の事項であるといえる。ここで、一般的に車載部品の搭載スペースは広い方が好ましいレイアウトであるといえ、引用発明において該スペースをより広く取ろうとした場合、前記周知の事項を考慮すると第1マフラー14部分を排気管として構成して単一のマフラーとすることは、特段の創意なくなし得る事項であるといえる。したがって、前記事項を引用発明に適用することにより、本願補正発明の相違点4に係る構成とすることに、格別の困難性は要しない。
相違点5について
自動二輪車の車体構造において消音器をリヤフレーム後端より後方へ延出させるように配置することは周知の事項である(周知例:特開平10-95379号公報、特開2001-114181号公報)。そして、斯かる周知の事項にしたがって消音器を配置した場合、消音器の前方にスペースが生じることは自明のことであるといえる。また、車両の構成部材を適宜の配置にすることは特段の創意なくなし得る事項であるといえるので、前記周知の事項を引用発明に適用することにより、本願補正発明の相違点5に係る構成とすることに、格別の困難性は要しない。
作用効果等について
上記の相違点1ないし5に係る構成を併せ備える本願補正発明の作用効果について検討しても、引用発明及び上記各周知の事項から、当業者が予測しうる域を超えるものがあるとは認められない。
したがって、本願補正発明は、引用発明及び上記各周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであり、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものである。

(4)むすび
以上のとおりであるから、本件補正は、旧法第17条の2第5項において準用する特許法第126条第5項の規定に違反するものでもあり、特許法第159条第1項において読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下されるべきものでもある。

【3】本願発明について
1.本願発明
平成18年6月12日付けの手続補正は上記のとおり却下されたので、本願の請求項に係る発明は、平成17年4月15日付けの手続補正並びに平成17年9月29日付けの手続補正に係る特許請求の範囲の請求項1?4に記載された事項により特定されるとおりのものと認められるところ、そのうちの請求項1に係る発明は、以下のとおりである。
「【請求項1】 車体に前から後へ前輪、エンジン、後輪をこの順に配置し、前記エンジンから後方へ排気管を延ばし、この排気管の後端に消音器を備えた自動二輪車において、
前記消音器を、車体フレームの後部で左・右リヤフレーム間に且つ前記後輪の上方に配置し、
前記排気管の後部を、前記左リヤフレーム又は右リヤフレームに寄せて配置した後に前記消音器に接続し、
前記排気管の後部と右リヤフレーム又は左リヤフレームとの間に、車載部品を置くことのできるスペースを確保するとともに、消音器を左・右リヤフレーム後端から更に後方へ延出させ、消音器の前方に前記スペースを確保したことを特徴とする自動二輪車の後部構造。」(以下「本願発明」という。)
(なお、本願明細書について、平成18年2月13日付けで手続補正書が提出されたが、この補正は同年4月3日付けで補正却下の決定がされているので、本願発明を上記のとおりに認定した。)

2.引用例とその記載事項
原査定の拒絶の理由に引用された引用例とその記載事項は、上記「【2】2.(1)」に記載したとおりである。

3.対比・判断
本願発明は、上記【2】2.で検討した本願補正発明から、排気管の延長方向に関する発明特定事項である、エンジンから「上」後方、及び消音器の支持に関しての発明特定事項である「その上部から上方に向かって突出した複数の取付部を車幅方向に備え、且つ該消音器は前記複数の取付部を左右のリヤフレームに跨って取り付けることで支持されて」いるとする構成を除いたものである。
そうすると、本願発明の発明特定事項を全て含み、更に上記したような発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、上記「【2】2.」に記載したとおり、引用発明及び上記各周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、本願補正発明の上位概念発明である本願発明も、本願補正発明と同様の理由により、引用発明及び上記各周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるといえる。

4.むすび
以上のとおり、本願発明(請求項1に係る発明)は、引用発明及び各周知の事項に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。
そうすると、このような特許を受けることができない発明を包含する本願は、本願の請求項2ないし4に係る発明について検討するまでもなく拒絶されるべきものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-14 
結審通知日 2008-07-22 
審決日 2008-08-05 
出願番号 特願2002-264204(P2002-264204)
審決分類 P 1 8・ 575- Z (B62M)
P 1 8・ 121- Z (B62M)
P 1 8・ 561- Z (B62M)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 山内 康明加藤 信秀早野 公惠  
特許庁審判長 藤井 俊明
特許庁審判官 中川 真一
佐藤 正浩
発明の名称 自動二輪車の後部構造  
代理人 下田 容一郎  

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