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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G21C
審判 査定不服 5項独立特許用件 特許、登録しない。 G21C
管理番号 1185119
審判番号 不服2007-7001  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-03-08 
確定日 2008-09-25 
事件の表示 特願2004-178396「燃料集合体」拒絶査定不服審判事件〔平成16年11月11日出願公開、特開2004-317522〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由 I.手続の経緯
本件出願は、特許法第41条に基づく優先権主張を伴って平成14年5月22日(優先日、平成13年7月16日)に出願された特願2002-147853号の一部を新たな特許出願として、平成16年6月16日に適法に出願された、いわゆる分割出願であって、平成18年11月7日(発送日)に拒絶理由が通知され、それに対して平成19年1月9日付けで意見書の提出ならびに手続補正がなされたものの、同年2月6日に拒絶査定の謄本の発送がなされ、この査定に対し、同年3月8日に拒絶査定不服審判が請求されるとともに、同年4月9日に手続補正がされたものである。
その後当審において、平成20年1月8日(発送日)に審尋がなされ、その審尋に対して同年3月10日に回答書が提出された。

II.平成19年4月9日付け手続補正についての補正却下の決定
〔補正却下の決定の結論〕
平成19年4月9日付け手続補正(以下、「本件補正」という。)を却下する。
〔理由〕
1.本件補正の目的
本件補正は、特許請求の範囲ならびに明細書を補正するものであって、本件補正中、特許請求の範囲についてする補正は、補正前の請求項1(願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1。以下、同じ。)の、
「【請求項1】
複数本の燃料棒と、これらの燃料棒の上下端を支持する上部タイプレートおよび下部タイプレートを備えた原子炉用の燃料集合体であって、この燃料集合体は冷却材中に含まれる固体異物を燃料集合体の入口側で捕捉するフィルタを備え、このフィルタに形成された複数の貫通孔は、入口から出口を直線で見通せない曲がり部を有し、さらにこれらの複数の貫通孔を流路開口面において千鳥格子状に配列したことを特徴とする燃料集合体。」なる記載を、
「【請求項1】
複数本の燃料棒と、これらの燃料棒の上下端を支持する上部タイプレートおよび下部タイプレートを備えた原子炉用の燃料集合体であって、この燃料集合体は冷却材中に含まれる固体異物を燃料集合体の入口側で捕捉するフィルタを備え、このフィルタに形成された複数の貫通孔は、入口から出口を直線で見通せないく字形状の曲がり部を有し、さらにこれらの複数の貫通孔を流路開口面において千鳥格子状に配列したことを特徴とする燃料集合体。」(下線は補正箇所を示す。)と補正するものであって、「入口から出口を直線で見通せない曲がり部」を「入口から出口を直線で見通せないく字形状の曲がり部」と、曲がり部の形状を限定するものであるから、平成18年改正前の特許法第17条の2第4項第2号に掲げる、特許請求の範囲の減縮を目的とするものである。
そこで、本件補正後の特許請求の範囲に記載されている発明特定事項により特定される発明が、特許出願の際独立して特許を受けることができるものであるか否か、すなわち、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項において準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たすか否かを、請求項1に係る発明(以下、「本願補正発明」という。)について以下に検討する。

2.本願補正発明
本願補正発明は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数本の燃料棒と、これらの燃料棒の上下端を支持する上部タイプレートおよび下部タイプレートを備えた原子炉用の燃料集合体であって、この燃料集合体は冷却材中に含まれる固体異物を燃料集合体の入口側で捕捉するフィルタを備え、このフィルタに形成された複数の貫通孔は、入口から出口を直線で見通せないく字形状の曲がり部を有し、さらにこれらの複数の貫通孔を流路開口面において千鳥格子状に配列したことを特徴とする燃料集合体。」

3.引用文献(以下の摘記における下線は、当審で付加したものである。)
原査定の拒絶の理由に引用された、本件出願前に頒布された刊行物である、特表平8-503771号公報(以下、「引用例5」という。)には、以下の技術的事項の記載がある。
(ア)第4頁第3?23行
「本発明は、燃料集合体の脚部用の濾過板の横断面が燃料集合体の脚部の横断面に合わされ、濾過開口が捕捉すべき異物の寸法に合わされている燃料集合体の脚部濾過板の製造方法に関する。更に本発明は、冷却材流を案内する孔および貫流開口の形状が一体形の板に非機械式材料切削法によって加工される請求項4の上位概念部分に記載の燃料集合体に関する。 燃料集合体を冷却するために原子炉の炉心を通して案内される冷却材流の中に特に不都合な状態において異物が入り込むことは完全に回避できない。…
……
従って最近においては、、そのような異物を冷却材によって貫流される燃料集合体の脚部内にある濾網によって捕捉することが要求されている。
図1は、冷却材流が矢印Kの方向に貫流する水冷却形燃料集合体の左側部分を縦断面図で示している。燃料集合体の頭部Hと燃料集合体の脚部Fとの間には互いに平行に延びる燃料棒1、2、3の束が配置されている。沸騰水形燃料集合体では例えば燃料棒2は支持棒として形成され、その上端にあるねじでナット4によって燃料集合体の頭部Hにおける棒支持板PHに、下端にあるねじでナット5によって燃料集合体の脚部Fにおける棒支持板Pに結合されている。」
(イ)第8頁第3?4行
「図8および図9は図はそれぞれ下側面から上側まで延びているウェブを備えた濾過板の異なった実施例の縦断面図、」
(ウ)第10頁第12行?第11頁第6行
「図6および図7においてSは燃料集合体の棒ピッチ、即ち,燃料棒軸線とそれに隣接する燃料棒あるいは案内管の軸線との間隔を示す。…
図6は、こわらの位置の間の間隔Sが正方形の貫流開口41によってどのように利用されているかを示している。穿孔された即ち円形をした貫流開口を利用する場合、貫流開口間に残存するウェブの同じ機械的強度にとって必要な幅は、その横断面全体が明らかに小さな流れ断面を形成するような貫流開口しか許さない。
図7は燃料集合体の脚部全体に広がる濾過板の半分を平面図で示したもので、案内管あるいは保持棒の位置40’の間における有用な面積は、必要な安定性および冷却材流の十分な分布に関して矩形の貫流開口41で占められている。
……
図9の板44ではまず下側から通路45が彫り加工され、その後で上側から深さdまで通路46が彫り加工される。二回の作業工程において送り方向は互いに角度を成しているので、板には折れ曲がった貫流開口が生ずる。貫流開口の間の板44に形成されたウェブ48は濾過板の平面(即ち図6の紙面)内では真っ直ぐに延び互いに交差しているが、このウェブ48は板平面に対して垂直方向に折れ曲がっているか角度がつけられている。」
(エ)第12頁末行?第13頁第3行
「図9?図14における貫流通路は、貫流開口が濾過板を真っ直ぐに一定した横断面で延びておらず、狭隘部、転移部および/または屈曲部を有しており、従って小さな断面積の線材および他の細長い異物をもその中に捕捉できる点で共通している。」
(オ)図6、図9
そして、図6には、貫流開口41が燃料棒と直交する平面に直交行列状に配列されている状態が図示され、図9には、く字形状に折れ曲がった貫流通路が形成された板材が図示されている。

これらの記載からして、引用例5には、
「複数本の燃料棒と、これらの燃料棒の頭部と脚部を支持する棒支持板PHと棒支持板Pを備えた原子炉用の燃料集合体であって、この燃料集合体は冷却材中の小さな断面積の線材および他の細長い異物を燃料集合体の脚部内で捕捉する濾過板を備え、この濾過板に形成された複数の貫流通路は、く字形状の曲がり部を有し、前記貫流通路の開口が燃料棒と直交する平面において直交行列状に配列されている燃料集合体。」の発明(以下、「引用発明」という。)が記載されている。

4.本願補正発明と引用発明との対比
そこで、本願補正発明と、引用発明とを対比する。
引用発明の(a)「燃料棒の頭部と脚部を支持する棒支持板PHと棒支持板P」、(b)「小さな断面積の線材および他の細長い異物」、(c)「燃料集合体の脚部」、(d)「濾過板」、(e)「貫流通路」、(f)「貫流通路の開口が燃料棒と直交する平面」が、それぞれ、本願補正発明の(a’)「燃料棒の上下端を支持する上部タイプレートおよび下部タイプレート」、(b’)「固体異物」、(c’)「燃料集合体の入口側」、(d’)「フィルタ」、(e’)「貫通孔」、(f’)「流路開口面」に相当することは、当業者の技術常識からして明らかである。

してみると、両者は、「複数本の燃料棒と、これらの燃料棒の上下端を支持する上部タイプレートおよび下部タイプレートを備えた原子炉用の燃料集合体であって、この燃料集合体は冷却材中に含まれる固体異物を燃料集合体の入口側で捕捉するフィルタを備え、このフィルタに形成された複数の貫通孔はく字形状の曲がり部を有し、さらにこれらの複数の貫通孔を流路開口面において配列した燃料集合体。」という点で一致し、以下の点で相違する。
(4-1)相違点1
貫通孔のく字形状の曲がり部が、
本願補正発明は、「入口から出口を直線で見通せない」のに対し、引用発明はそのような構造について記載されていない点。(以下、「相違点1」という。)
(4-2)相違点2
貫通孔の配列が、
本願補正発明は、「千鳥格子状」であるのに対し、引用発明は、直交行列状である点。(以下、「相違点2」という。)

5.検討・判断
(5-1)相違点1について
引用例5では、貫流通路に屈曲部を設けたことにより、小さな断面積の線材および他の細長い異物をその中に捕捉する作用を奏すること(前記摘記(エ)参照)、ならびに、貫通孔を入口から出口を直線で見通せるように設けた場合には、入口を通過した小さな断面積の線材や他の細長い異物は、貫通孔壁部と相互作用を生ずることなく素通りしてしまう可能性が高いことを勘案すると、貫通孔開口部を通過した異物に貫通孔壁部と相互作用を生ぜしめて小さな固体異物を捕捉できるよう、貫通孔のく字形状の曲がり部を「入口から出口を直線で見通せない」よう構成することは、当業者が格別の困難なく想到し得る事項にすぎない。
(5-2)相違点2について
本願補正発明において「千鳥格子状」の定義は必ずしも明確ではないものの、本件出願の【図5】の図示内容からして、隣接する行又は列の貫通孔が互いに半ピッチずれている態様を意味するものと解される。
ところで、引用例5の【図6】には、貫通孔が直交行列状に配列されている図が図示されているものの、【図6】を紙面に垂直な軸の回りに45度回転し、案内管あるいは保持棒40の対角方向から見た場合には、隣接する行又は列の貫通孔は互いに半ピッチずれることととなり、「直交行列状」と「千鳥格子状」とは、単に見る方向に依存して相違が生じるにすぎない。
しかも、燃料集合体の下部タイプレートに設けるフィルタの開口を、燃料集合体の各辺から見て「千鳥格子状」に設けることも、例えば、特開平7-306284号公報や特開平11-23763号公報(特に段落【0013】、【図2】参照)にも見られるように、当業者に周知の事項である。
してみると、貫通孔の配列を「千鳥格子状」とする点にも格別の進歩性を見出すことはできない。

そして、本願補正発明が奏する作用効果も、引用発明ならびに周知事項から、当業者が予測できる範囲のものである。
よって、本願補正発明は、引用発明ならびに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

6.本件補正についての結び
以上のとおり、本願補正発明は、特許法第29条第2項の規定により、特許出願の際独立して特許を受けることができないものであるから、本件補正は、平成18年改正前の特許法第17条の2第5項で準用する同法第126条第5項に規定する要件を満たさないものであり、特許法第159条第1項で読み替えて準用する同法第53条第1項の規定により却下すべきものである。

III.本願発明について
1.本願発明
平成19年4月9日付け手続補正は上記のとおり却下されたので、本件出願の特許請求の範囲に記載された発明は、本件出願の願書に最初に添付した特許請求の範囲の請求項1に記載されたとおりのものであるところ、その請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものである。
「【請求項1】
複数本の燃料棒と、これらの燃料棒の上下端を支持する上部タイプレートおよび下部タイプレートを備えた原子炉用の燃料集合体であって、この燃料集合体は冷却材中に含まれる固体異物を燃料集合体の入口側で捕捉するフィルタを備え、このフィルタに形成された複数の貫通孔は、入口から出口を直線で見通せない曲がり部を有し、さらにこれらの複数の貫通孔を流路開口面において千鳥格子状に配列したことを特徴とする燃料集合体。」

2.引用文献
原査定の拒絶の理由で引用された引用文献、および、その記載事項は、前記「II.〔理由〕3.」に記載したとおりである。

3.本願発明と引用発明との対比、検討・判断
本願発明は、上記「II.〔理由〕2.」で検討した本願補正発明の発明特定事項である「く字形状の」なる要件を削除したものに相当する。
そうすると、本願発明の発明特定事項をすべて含み、更に他の発明特定事項を付加したものに相当する本願補正発明が、「II.〔理由〕5.」に記載したとおり、引用発明ならびに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである以上、本願発明も、同様の理由により、引用発明ならびに周知事項に基づいて、当業者が容易に発明をすることができたものである。

4.むすび
以上のとおり、本件出願の請求項1に係る発明は、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができないものである。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-18 
結審通知日 2008-07-22 
審決日 2008-08-08 
出願番号 特願2004-178396(P2004-178396)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G21C)
P 1 8・ 575- Z (G21C)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 今浦 陽恵  
特許庁審判長 村田 尚英
特許庁審判官 末政 清滋
日夏 貴史
発明の名称 燃料集合体  
代理人 鹿股 俊雄  

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