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審決分類 |
審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G01T |
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管理番号 | 1185122 |
審判番号 | 不服2007-20141 |
総通号数 | 107 |
発行国 | 日本国特許庁(JP) |
公報種別 | 特許審決公報 |
発行日 | 2008-11-28 |
種別 | 拒絶査定不服の審決 |
審判請求日 | 2007-07-19 |
確定日 | 2008-09-25 |
事件の表示 | 特願2003-161204「ガンマ線方向性検出器及び放射線モニタリング方法、装置」拒絶査定不服審判事件〔平成16年12月24日出願公開、特開2004-361290〕について、次のとおり審決する。 |
結論 | 本件審判の請求は、成り立たない。 |
理由 |
1 手続の経緯 本願は、平成15年6月5日の出願であって、平成19年6月12日付けで拒絶査定がなされ、これに対して平成19年7月19日に拒絶査定不服審判の請求がなされたものである。 2 本願発明 本願の請求項1に係る発明は、平成19年4月11日付けの手続補正により補正された明細書及び図面の記載からみて、特許請求の範囲の請求項1に記載された次のとおりのものと認める。(以下「本願発明」という。) 「ガンマ線の入射方向を検出するためのガンマ線方向性検出器であって、 ガンマ線に対する発光強度が異なる2本の棒状のシンチレータを接合して柱状に形成された接合シンチレータと、 該接合シンチレータを構成する各シンチレータの底面と光学的に接合された受光面を有する受光素子とを備え、 各シンチレータにおいて、ガンマ線が他のシンチレータと相互作用すること無く直接入射する割合と、ガンマ線が他のシンチレータと相互作用した後に間接入射する割合が、周方向における入射方向により異なるようにされ、0度から180度の半周に亘る入射方向を検出するようにしたことを特徴とするガンマ線方向性検出器。」 3 引用刊行物に記載された発明 原査定の理由に引用され、本願出願前に頒布された刊行物である特開平4-132987号公報(以下「引用刊行物」という。)には、「放射線検出プローブ」の発明に関して、以下の事項が記載されている。 <記載事項1> 「[産業上の利用分野] 本発明は複数の放射線検出ブロックを用いて放射線を検出する放射線検出プローブに関する。」(第1ページ左下欄第14?15行) <記載事項2> 「[実施例] 以下、図面を参照して本発明を具体的に説明する。 第1図ないし第3図は本発明の第1実施例に係り、第1図は第1実施例の放射線検出プローブを示し、第2図は信号検出系の構成を示し、第3図は内視鏡のチャンネルを挿通した使用例を示す。」(第2ページ左上欄第12?18行) <記載事項3> 「第1図に示すように第1実施例の放射線検出プローブ1は、先端に複数の放射線検出センサとして例えば4種類のシンチレーションクリスタル2a、2b、2c、2dを有している。これらのシンチレーションクリスタル2a、2b、2c、2dは、例えばBGO,CWO,NaI,CsI等で形成され、γ線等の放射線が入射すると、それぞれ異なる波長の蛍光を発するようにしている。 上記シンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dは、円柱を4分割したような形状であって、それぞれ同じ体積、表面積を有している。これらシンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dは、-点鎖線で示すように薄いアル製のキャップ3によって覆われ、一方(先端)の端面及び側面は遮光されており、他方(後端)の端面にはライトガイドファイバ4の先端面がオプティカルセメント等を使用して、光学接合されている。 」(第2ページ左上欄第19行?同右上欄第16行) <記載事項4> 「上記ライトガイドファイバ4の後端は、波長分割可能な光電変換器5に接続されている。 この光電変換器5の出力信号は、信号ケーブル6を介して信号カウント表示器7に伝送され、シンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dで検出した放射線の検出回数に応じたカウント数が表示される。」(第2ページ右上欄第17行?同左下欄第3行) <記載事項5> 「上記光電変換器5は、第2図に示すように、フィルタ8a,8b,8c,8dと、各フィルタ8a,8b,8c,8dを通した光を光電変換するフォトセンサ9a,9b,9c,9d(第2図では9c,9dのみ示す、)とから構成されている。」(第2ページ左下欄第4?8行) <記載事項6> 「又、信号カウント表示器7は、フォトセンサ9a,9b,9c,9dをそれぞれ波形整形して2値化する2値化回路11a,llb,llc,11dと、2値化された信号をカウントするカウンタ12a,12b,12c,12dと、カウンタ出力を表示する表示器13a,13b,13c,13dとから構成されている。」(第2ページ左下欄第9?15行) <記載事項7> 「患部と思われる部位が放射線を発する場合には、放射線検出センサを構成するシンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dに入射された放射線の入射回数に応じて、各シンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dが蛍光を発する。」(第3ページ左上欄第2?6行) <記載事項8> 「この表示器13a,13b,13c,13dに表示される計数値は、蛍光の発生回数に比例したものとなる。」(第3ページ左上欄第19行?同右上欄第1行) <記載事項9> 「各シンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dの表面積及び体積は等しいので、放射線が入射して来る方向に面する位置にあるシンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dへの放射線入射量が多くなる。つまり、蛍光の発生回数が多くなる。 従って、コリメータがなくても、信号カウント表示器7のカウント数の多いシンチレーションクリスタル2i (i=a,b,c,dのいずれか)の位置する方向が放射線源の方向であることが分る。」(第3ページ右上欄第2?12行) <記載事項10> 「この第1実施例によれば、コリメータを使用せずに、放射線の入射方向を検知できるので、小型、細径で軽量な放射線検出プローブを実現でき、従って細径の管腔にも使用できる。」(第3ページ左下欄第1?4行) <記載事項11> 「例えば第1実施例において、信号カウント表示器7の構成は第2図に示すものに限定されるものでなく、例えばカウンタ・12a等の出力から演算して放射線の入射方向を表示できるようにしても良い。」(第4ページ右下欄第5?9行) そして、第1図に図示されたシンチレーションクリスタルからみて、シンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dが集まって円柱状に形成されたシンチレーションクリスタルが構成されていることを読み取ることができる。 してみると、引用刊行物には、以下の事項が記載されている。 (1)γ線等の放射線の入射方向を検出できる放射線検出プローブ(記載事項3,10) (2)BGO,CWO,NaI,CsIで形成され、円柱を4分割したような形状の4本のシンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2d(記載事項3) (3)シンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dが集まって円柱状に形成されたシンチレーションクリスタル(第1図) (4)シンチレーションクリスタルを構成するシンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dの端面と光学接合された先端面を有するライトガイドファイバ4(記載事項3) (5)各シンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dは、γ線等の放射線が入射して来る方向に面する位置にあるシンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dへのγ線等の放射線入射量が多くなる(記載事項1,9) したがって、上記記載事項1?11、及び図面に基づけば、引用刊行物には、 「γ線等の放射線の入射方向を検出できる放射線検出プローブであって、 BGO,CWO,NaI,CsIで形成され、円柱を4分割したような形状の4本のシンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dが集まって円柱状に形成されたシンチレーションクリスタルと、 該シンチレーションクリスタルを構成する各シンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dの端面と光学接合された先端面を有するライトガイドファイバ4とを有し、 各シンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dは、γ線等の放射線が入射して来る方向に面する位置にあるシンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dへのγ線等の放射線入射量が多くなり、γ線等の放射線の入射方向を検出できる放射線検出プローブ。」の発明(以下「引用発明」という。)が記載されている。 4 対比 本願発明と引用発明とを比較する。 (1)引用発明の「γ線等」、「検出できる」、「放射線検出プローブ」は、本願発明の「ガンマ線」、「検出するための」、「ガンマ線方向性検出器」に相当するから、引用発明の「γ線等の放射線の入射方向を検出できる放射線検出プローブ」は、本願発明の「ガンマ線の入射方向を検出するためのガンマ線方向性検出器」に相当する。 (2) ア 引用発明の「円柱を4分割したような形状の4本の」と本願発明の「2本の棒状」とは、複数本の棒状の点で一致する。 イ 引用発明の「シンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2d」は、本願発明の「シンチレータ」に相当する。 ウ 引用発明の「集まって円柱状に形成されたシンチレーションクリスタル」は、本願発明の「接合して柱状に形成された接合シンチレータ」に相当する。 エ したがって、引用発明の「γ線等の放射線が入射すると、それぞれ異なる波長の蛍光を発するBGO,CWO,NaI,CsIで形成され、円柱を4分割したような形状の4本のシンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dが集まって円柱状に形成されたシンチレーションクリスタル」と本願発明の「ガンマ線に対する発光強度が異なる2本の棒状のシンチレータを接合して柱状に形成された接合シンチレータ」とは、複数本の棒状のシンチレータを接合して柱状に形成された接合シンチレータの点で一致する。 (3)引用発明の「該シンチレーションクリスタルを構成する各シンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2d」、「端面」、「ライトガイドファイバ4」、「有し」は、本願発明の「該接合シンチレータを構成する各シンチレータ」、「底面」、「光学接合された先端面」、「光学的に接合された受光面」、「受光素子」、「備え」に相当する。 したがって、引用発明の「該シンチレーションクリスタルを構成する各シンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dの端面と光学接合された先端面を有するライトガイドファイバ4を有し」は、本願発明の「該接合シンチレータを構成する各シンチレータの底面と光学的に接合された受光面を有する受光素子とを備え」に相当する。 (4)引用発明の「γ線等の放射線の入射方向を検出できる」と本願発明の「0度から180度の半周に亘る入射方向を検出するようにした」とは、入射方向を検出するようにした点で一致する。 したがって、本願発明と引用発明の両者は、 「ガンマ線の入射方向を検出するためのガンマ線方向性検出器であって、 複数本の棒状のシンチレータを接合して柱状に形成された接合シンチレータと、 該接合シンチレータを構成する各シンチレータの底面と光学的に接合された受光面を有する受光素子とを備え、 入射方向を検出するようにしたガンマ線方向性検出器。」の点で一致し、以下の点で相違する。 [相違点1] 柱状に形成された接合シンチレータを構成し、接合される複数本の棒状のシンチレータが、本願発明は、「ガンマ線に対する発光強度が異なる2本の棒状のシンチレータ」であるのに対して、引用発明は、「BGO,CWO,NaI,CsIで形成され、円柱を4分割したような形状の4本のシンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2d」である点。 [相違点2] 本願発明は、「各シンチレータにおいて、ガンマ線が他のシンチレータと相互作用すること無く直接入射する割合と、ガンマ線が他のシンチレータと相互作用した後に間接入射する割合が、周方向における入射方向により異なるようにされ」るのに対して、引用発明は、「各シンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dは、γ線等の放射線が入射して来る方向に面する位置にあるシンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dへのγ線等の放射線入射量が多くな」る点。 [相違点3] 入射方向の検出に関して、本願発明は、「0度から180度の半周に亘る入射方向を検出するようにした」のに対して、引用発明は、その点の限定がされていない点。 5 当審の判断 (1)相違点1 引用発明で用いられる、4本のシンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2dは、BGO,CWO,NaI,CsIで形成されているが、BGO,CWO,NaI,CsIはガンマ線に対する発光強度が異なるから、相違点1に係る本願発明の発明特定事項のうち「ガンマ線に対する発光強度が異なる」点は引用発明の「シンチレーションクリスタル2a,2b,2c,2d」の有する特性でもある。 また、引用刊行物には、「第1図に示すように第1実施例の放射線検出プローブ1は、先端に複数の放射線検出センサとして例えば4種類のシンチレーションクリスタル2a、2b、2c、2dを有している。」と記載されている(記載事項3)。 この記載からみて、引用発明の4本のシンチレーションクリスタルを用いる点は、複数の放射線検出センサ(シンチレーションクリスタル)の1実施例であり、複数の放射線検出センサには、本願発明の2本の棒状のシンチレータも含まれることは明らかである。 したがって、相違点1に係る本願発明の発明特定事項は、格別なものではない。 (2)相違点2 ガンマ線は物質に対する透過力が大きいことから、引用発明においても、ガンマ線が入射して来る方向に面する位置にあるシンチレーションクリスタルに入射した(ガンマ線が他のシンチレータと相互作用すること無く直接入射する)ガンマ線が、該シンチレーションクリスタルと相互作用をしつつ通過した後、他のシンチレーションクリスタルに入射している(ガンマ線が他のシンチレータと相互作用した後に間接入射する)ことは明らかである。 そして、棒状のシンチレータの数が引用発明の「4本」、本願発明の「2本」であっても、引用発明と本願発明とは、複数の棒状のシンチレータを接合して柱状に形成された接合シンチレータを用いる点は同じであるから、引用発明においても、各シンチレーションクリスタル(シンチレータ)において、ガンマ線が他のシンチレーションクリスタル(シンチレータ)と相互作用すること無く直接入射する割合と、ガンマ線が他のシンチレータと相互作用した後に間接入射する割合が、本願発明と同様に、周方向における入射方向により異なるといえる。 したがって、相違点2は、実質的な相違点ではない。 (3)相違点3 本願発明は、「0度から180度の半周に亘る入射方向を検出する」ための棒状のシンチレータから出力を演算処理する手段等が限定されておらず、引用発明もガンマ線の入射方向を検出するものであるから、本願発明のように、0度から180度の半周に亘る入射方向を検出するようにしたと限定することは、棒状のシンチレーションクリスタルの本数に応じて当業者が容易に想到し得る事項である。 そして、本願発明の効果は、引用刊行物の記載から当業者が予測し得る範囲内のものである。 よって、本願発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものである。 6 むすび 以上のとおり、本願発明は、引用刊行物に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。 よって、結論のとおり審決する。 |
審理終結日 | 2008-07-16 |
結審通知日 | 2008-07-22 |
審決日 | 2008-08-08 |
出願番号 | 特願2003-161204(P2003-161204) |
審決分類 |
P
1
8・
121-
Z
(G01T)
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最終処分 | 不成立 |
前審関与審査官 | 青木 洋平、村田 尚英 |
特許庁審判長 |
江塚 政弘 |
特許庁審判官 |
安田 明央 末政 清滋 |
発明の名称 | ガンマ線方向性検出器及び放射線モニタリング方法、装置 |
代理人 | 松山 圭佑 |
代理人 | 高矢 諭 |
代理人 | 牧野 剛博 |