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審決分類 審判 査定不服 2項進歩性 特許、登録しない。 G02B
管理番号 1185123
審判番号 不服2007-23772  
総通号数 107 
発行国 日本国特許庁(JP) 
公報種別 特許審決公報 
発行日 2008-11-28 
種別 拒絶査定不服の審決 
審判請求日 2007-08-30 
確定日 2008-09-25 
事件の表示 特願2004-356617「光学顕微鏡及びオートフォーカス方法ならびにそれを用いた観察方法。」拒絶査定不服審判事件〔平成18年 6月22日出願公開、特開2006-163122〕について、次のとおり審決する。 
結論 本件審判の請求は、成り立たない。 
理由
第1 手続の経緯・本願発明の認定
本願は平成16年12月9日の出願であって、平成19年5月10日付けで拒絶の理由が通知され、平成19年7月9日付けで意見書及び手続補正書が提出されたが、平成19年7月26日付けで拒絶の査定がされたため、これを不服として平成19年8月30日付けで本件審判請求がされたものである。
そして、平成19年7月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲、明細書及び図面の記載からみて、平成19年7月26日付けの手続補正により補正された特許請求の範囲の請求項1における「前記第2次元光検出器で検出された第1の反射光に基づいて前記試料を観察する」という記載は、「前記2次元光検出器で検出された前記第1の反射光に基づいて前記試料を観察する」という記載の誤記であることは明らかである。
したがって、本願の請求項1に係る発明(以下、「本願発明」という。)は、次のとおりのものと認める。

「試料を観察するための照明光を出射する第1の光源と、
前記第1の光源からの光を集光して試料に入射させる対物レンズと、
前記対物レンズの瞳の片側半分の領域に入射する光を出射する第2の光源と、
前記第1の光源及び前記第2の光源の光を混合させ、前記試料に導くビームスプリッタと、
前記第1の光源から前記対物レンズを介して前記試料に入射した光のうち当該試料で反射された第1の反射光と前記第2の光源から前記対物レンズの瞳の片側半分の領域を介して前記試料に入射した光のうち当該試料で反射し、前記対物レンズの瞳の反対側の片側半分の領域を通過した第2の反射光とを検出する2次元光検出器とを備え、
前記2次元光検出器で検出された前記第2の反射光に基づいて、焦点位置を調整し、かつ、前記2次元光検出器で検出された前記第1の反射光に基づいて前記試料を観察する光学顕微鏡。」


第2 当審の判断
1 引用刊行物の記載事項
原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開平5-80246号公報(以下、「引用例1」という。)には、以下のアの記載が図示とともにある。

ア 「【0059】図10は本発明の自動合焦装置を顕微分光装置に適用したときの実施例2の要部概略図である。尚、本実施例では測定物の厚さ(審決注:「熱さ」は明らかな誤記である。)を測定する膜厚計測装置としても適用可能である。
【0060】同図においては白色の光源301から出た光束321は第1コンデンサーレンズ302により集光され、開口絞り201の面に結像される。更に視野絞り304を通過し第2コンデンサーレンズ305によりハーフミラー306を介して、対物レンズ308の瞳307の位置に再結像される。そして対物レンズ308を介して試料309を照明している。
【0061】同図では光源301の像が瞳307に結像される所謂ケーラー照明が構成されている。図10中における光束321が照明光束を示し、瞳面307での軸上及び最軸外の光束のみ示している。試料309上の照明範囲は視野絞り304の内径により決まる。又瞳面307での照明光束の通過領域径は開口絞り201の内径により決まる。
【0062】図11は瞳面307の光束の状態を示している。顕微分光装置においては図11に示すように照明光束の通過領域径72は瞳径71よりも若干小さくなるように設定されている。これは観察における解像力の向上、及び照明の際の試料の傾きを低減させることを目標として行われる。試料309からの反射光束322は最終的には試料309と光学的に共役位置におかれたピンホール313に入射する。
【0063】即ち、そのピンホール313の試料309面上への逆投影像の中に相当する位置から反射してくる光束のみが順にハーフミラー306、ハーフミラー208(審決注:段落【0064】及び段落【0066】の記載に照らすと、「ビームスプリッター208」の明らかな誤記である。)、結像レンズ310,ビームスプリッター311、そしてピンホール313を介して分光器314へと導光される。これにより試料309の各位置の分光特性を求めそれより試料9の膜厚が測定される。又ビームスプリッター311を透過した光はTVカメラ312上に結像され、試料309の観察の為に用いられる。
【0064】一方、601は焦点合わせ用の光源で例えばレーザーダイオード、LED(発光ダイオード)等から成っている。光源601からの光束(検出光束、AF光束)はコンデンサーレンズ602により集光される。コンデンサーレンズ602で集光された光束の一部は光軸に対して一方の側の部分が反射面603b、他方の側の部分が透過面603aになっているナイフエッジミラー603の透過面603aを通過する。透過面603aを通過した光束はビームスプリッター208により反射され、光束607としてハーフミラー306を通過し対物レンズ308に入射する。
【0065】対物レンズ8への入射光束は図11で示すようにその瞳面71上で対物レンズ308の光軸308aに対して主光線が偏心した光束であり、瞳面307中の斜線で示す領域73の前述した照明光束321と同じ領域72の一領域内を通過する。
【0066】対物レンズ308を通過した光束607は物体(被検面)309に投光され、その近傍に光源601の発光部のスポット像を結像する。物体309で反射した光束のうち、投光時とは光軸308aに対して略対象(審決注:「略対称」の明らかな誤記である。)な光路に沿って反射した光束608は対物レンズ308を再通過する。そしてビームスプリッター208で反射し、ナイフエッジミラー603の反射面603bで反射してコンデンサーレンズ604により集光されてバンドパスフィルター605を介して所定の波長の光束のみを通過させて焦点検出用の光電変換素子(光検出器、CCD)606の受光面にスポット像を形成する。
【0067】この結果、図12に示すようにCCD606からの出力は合焦位置では、通常試料309とCCD606は結像関係にある為、図12(B)に示すように急峻な信号81となる。更にCCD606面へは照明光束も導光される為、信号81は照明光束321の信号84の上に重なった形となる。試料309の上・下側のディフォーカスにより図12(A)、又は図12(C)に示すようにAF光束の信号82,83はそのピークが低下して、かつ左右に動いた形状になる。この時、信号84は大きな変化は起こさない。信号81,82,83の位置の変化から、対物レンズ308の焦点合せを行っている。
【0068】即ち、制御部4は光検出器606からの信号に基づいて駆動手段40に所定の指令信号を与えている。駆動手段40は制御部4からの信号に基づいて物体309を光軸方向に移動させている。これにより対物レンズ308の焦点合わせを行っている。」

また、原査定の拒絶の理由に引用され、本願の出願前に頒布された刊行物である特開2003-29130号公報(以下、「引用例2」という。)には、以下のイ乃至コの記載が図示とともにある。

イ 「【請求項1】 第1の軸である光軸に沿って照射される観測用の第1の光線及び前記第1の軸と離れた第2の軸に沿って照射されるオートフォーカス用の第2の光線を射出する照明手段と、
前記照明手段により射出された光線を対象物に照射させ、前記対象物の反射、回折又は散乱光を結像位置に結像させる光学系と、
前記結像位置に配置された画像撮像手段と、
前記光学系を介して前記第2の光線を対象物に照射させると共に、前記対象物の反射光を前記画像撮像手段に結像させ、前記画像撮像手段により得られる信号に基づいて前記光学系における前記対象物の焦点位置の調整をするオートフォーカス手段とを具備することを特徴とする光学式顕微鏡。」

ウ 「【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、例えば半導体パターンの検査に使われる光学式顕微鏡に関し、特に対象物の焦点位置の調整をするオートフォーカス機構を有する光学式顕微鏡に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、光学式顕微鏡を用いた検査装置において、オートフォーカス手段としてTTL(Through the Lens)方式が広く普及している。
【0003】この場合光源としては、単色性の良いオートフォーカス用のレーザ光源を用いることが多い。また、光学式顕微鏡の対物レンズをオートフォーカス手段の一部として用いるが、この対物レンズは、一般には使用する波長領域で複数の硝子材料を組みあわせて、色消しが行われている。更に色消しが行われている対物レンズは、反射防止コートが色消し帯域で施されている。
【0004】一方、近年、半導体検査工程に代表される半導体パターンの光学式顕微鏡による顕微観察では、半導体パターンの微細化に伴って要求される光学分解能から、光源として使用される光源波長が、紫外域へと短波長化されるようになってきている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、300nmを切る紫外線領域では、光学透過材料が限られ、また光学式顕微鏡に求められる光学収差性能も、回折限界付近での周波数応答を求められるようになる。従って顕微観察で用いられる紫外線領域の光源波長とオートフォーカス用の光源波長との差が大きくなると、オートフォーカス用の光源波長における対物レンズの色消しが困難なものとなる。この結果、光学式顕微鏡の対物レンズの製造には、非常に高価なコストが掛かり、紫外線顕微鏡の普及の阻害要因となってきている。
【0006】例えば、半導体回路パターンの自動欠陥分類装置において光源とし使用している深紫外(DUV:Deep Ultra Violet)光では、オートフォーカスの為に行う対物レンズの色消しには、非常に高価な高純度蛍石と石英を多用する必要があり、コスト的に非常に高価になると言う欠点がある。
【0007】更に、この2種類の硝材の貼り合わせには紫外線透過型の接着剤を用いるが、この接着剤は深紫外光によりダメージを受け、透過率が経時的に低下していくという欠点をもっている。
【0008】また、通常オートフォーカスに用いる光源波長は赤色?赤外波長を多用する。従って、オートフォーカスに用いる光源波長の焦点深度は、顕微観察用光源として用いる深紫外波長の焦点深度に比べ波長比分深くなり、当然この分オートフォーカス精度は悪化する。
【0009】一方、光学式によらない撮影画像のコントラストより最適像面位置を求める画像オートフォーカス法、変位センサーを用いた測距型オートフォーカス法及びTTL(Through the Lens)方式によらない三角測距方式によるオートフォーカス法等が提案されているが、いずれも処理速度、測定誤差及び物理的制約等から、TTL方式に比べ劣っている。
【0010】本発明は、このような課題を解決するためになされるもので、対象物の観察用光源によりオートフォーカスできる光学式顕微鏡を提供することを目的としている。」

エ 「【0012】本発明では、対象物の観察をするときは光軸に沿った第1の光線を使用し、オートフォーカスするときは、第1の光線と同じ照明手段であって光軸と離れた第2の光線によることとしたので、TTL方式によるオートフォーカスとする場合における対物レンズの色消しの困難性は、解消されると共にフォーカス制御が非常に高精度となる。」

オ 「【0020】図1は本発明の第1の実施の形態に係る光学式顕微鏡を示す光学系及び制御系の構成図である。
【0021】図1に示すように、この光学式顕微鏡1は、保持機構及び移動手段として顕微観測する対象物2を載置すると共に移動させる可動ステージ3と、対象物2に光線を照射すると共に対象物2からの反射、回折又は散乱光を結像するための光学系4と、照明手段として光学系4に光線を照射するための光源17及び光源17から射出する光線が入射するケーラー照明光学系5と、光学系4により結像された像を撮像する画像撮像手段6と、画像撮像手段6により得られた画像を処理する画像処理系7と、光学式顕微鏡の全体の動きを制御する制御系8とを備えている。
【0022】例えば、光学式顕微鏡1により半導体ウェーハ9に存在する各種欠陥の検査及び半導体プロセスのリソグラフィ工程における半導体ウェーハ9上に形成されたパターンの寸法、重ね合わせ精度等を検査、計測する場合は、半導体ウェーハ9が顕微観測する対象物2となる。」

カ 「【0030】更に、光学式顕微鏡1における光源17としての深紫外線固体レーザは、装置自体が小型であり、リソグラフィ工程で盛んに用いられているエキシマレーザに比べ、波長安定性、単色性、ビームプロファイル、冷却対策、ガス補充対策、レーザ安全対策及び取り扱いの上でも優れている。
【0031】ケーラー照明光学系5は、光源17から射出した光線を導く光ファイバ18と、光ファイバ18によって導かれた光線を射出する射出部19と、射出部19から射出した光線を集光する補助集光レンズ20と、補助集光レンズ20から射出した光線が入射する開口絞り21,22と、開口絞り21,22から射出した光線が入射する視野絞り23,24と、視野絞り23,24から射出した光線が入射するコンデンサ25と、開口絞り21,22及び視野絞り23,24を駆動する絞り駆動手段27とを備えている。
【0032】開口絞り21,22のうち開口絞り21は、対象物2を顕微観測するときに使用されるもので、例えば板状をなし補助集光レンズ20からの射出光線の光軸上に開口部がくるように、開口絞り21の中央部に開口部が設けられている。
【0033】また、開口絞り22は、対象物2の焦点位置を調整するときに使用されるもので、顕微観測用の光線の光軸に対し離れた光線をケーラー照明光学系5から射出できるようにするため、例えば板状をなし光軸に対し離軸した開口絞りとなっている。すなわち、開口絞り22は開口部が開口絞り22の中央部より上方に設けられている。
【0034】更に、開口絞り22の離軸量は開口絞り22と対物レンズ瞳径との倍率が等倍であるので、最大で対物レンズ瞳径の大きさとなる。
【0035】ここで、開口絞り22は、対象物2を顕微観測するときは開口絞り21の開口部から射出した光線を遮断しないように開口絞り22の上端部が光線より下に下げられている。
【0036】視野絞り23,24のうち視野絞り23は、対象物2を顕微観測するときに使用されるもので、例えば板状をなし補助集光レンズ20からの射出光線の光軸上に開口部がくるように、視野絞り23の中央部に開口部が設けられている。
【0037】また、視野絞り24は、対象物2の焦点位置を調整するときに使用されるもので、視野絞り24は画像撮像手段6にスポットを結ぶように、例えば板状をなし視野絞り24の中央部に、画像撮像手段6の撮像範囲より十分に小さい開口部が設けられている。この開口部は丸孔に限られずスリット状であってもかまわない。
【0038】更に、視野絞り24は、対象物2を顕微観測するときは、視野絞り23の開口部から射出した光線を遮断しないように、視野絞り24の上端部が光線より下に下げられている。
【0039】これによって対象物2の観測用の光線を射出するときは開口絞り21と視野絞り23とをケーラー照明光学系として使用することができ、対象物面から見ると開口絞り21のすべてが光源となり、均質な照明が得られる。
【0040】更に、図3に示すように、対象物2の焦点位置調整用の光線を射出するときは絞り駆動手段27により、開口絞り21と開口絞り22とを入れ換えられると共に視野絞り23と視野絞り24とも入れ換えられる。このとき、顕微観測用の光線の光軸に対し離れた開口絞り22の開口部に入射する光線及び開口絞り22の開口部から射出する光線を遮断することとならないように、開口絞り21と視野絞り23とが下げられることとなる。
【0041】これにより、ケーラー照明光学系から、対象物2の観測をするときはコンデンサ25の光軸上に沿って光線が射出され、対象物2の焦点位置調整をするときはコンデンサ25の光軸から離れた光線が射出されることとなる。
【0042】絞り駆動手段27は、例えば駆動用モータ又は電磁石等により制御系8の制御下、開口絞り21と開口絞り22とを入れ換えると共に視野絞り23と視野絞り24とを入れ換える。
【0043】これによって、迅速に且つ簡単に同じ光源17、ケーラー照明光学系5及び光学系4を使用し、対象物2の顕微観察ができると共に対象物2のオートフォーカスもできることとなる。
【0044】また、図1に示すように、光学系4はケーラー照明光学系5から射出された光線が入射するビームスプリッタ28と、ビームスプリッタ28により反射された光線が入射する対物レンズ26と、対象物2から反射され戻ってきた光線であって対物レンズ26及びビームスプリッタ28を透過した光線が入射する結像レンズ29と、アクチュエータ30とを備えている。
【0045】ビームスプリッタ28は、ケーラー照明光学系5から射出された光線を対物レンズ26へ反射させ、対象物2から反射され対物レンズ26を透過した光線は結像レンズ29へ透過させるものである。
【0046】対物レンズ26は、ビームスプリッタ28から射出されたケーラー照明光学系5から届いた光線を対象物2に照射するものである。また対物レンズ26は、対象物2からの反射光等をビームスプリッタ28を介して結像レンズ29に出射するように設けられている。
【0047】結像レンズ29は、対物レンズ26によって結ばれた像を更に拡大し画像撮像手段6に像を結ぶものであり、これによって微細な対象物2を顕微観察できることとなる。例えば、半導体ウェーハ9に存在する各種の欠陥を検査し、且つ半導体プロセスのリソグラフィ工程において、半導体ウェーハ9上に形成されたパターンの寸法、重ね合わせ精度等を検査、計測することができることとなる。
【0048】図4は離軸式オートフォーカスを示すケーラー照明光学系5及び光学系4である。
【0049】ここで、対象物2の焦点位置調整をするときはコンデンサ25の光軸から離れた光線が射出されることとなるが、この光線は例えば光学系4においては図4に示すように、ケーラー照明光学系5内のコンデンサ25の光軸に平行で少し離れビームスプリッタ28に入射し、ビームスプリッタ28によって対物レンズ26へ反射される。
【0050】ここで、対物レンズ26の物空間面では、対物レンズ26の光軸から離れたところから光線が射出されるため、光軸上の焦点位置に斜めに光線が進むこととなる。
【0051】従って、対象物2から反射等する光線は入射角と同じ角度θ_(1)をもって反射し、対物レンズ26の物空間面に入射することとなる。
【0052】また、角度θ_(1)をもって対物レンズ26に入射した光線は、ビームスプリッタ28及び結像レンズ29を介して画像撮像手段6のスポット位置に像を結ぶこととなる。
【0053】ここで、対象物2がΔd_(1)だけ対物レンズ26から離れたときは、対象物2からの反射光は反射位置が横方向にh_(1)だけずれることとなるので、ビームスプリッタ28及び結像レンズ29を介して画像撮像手段6に像を結ぶ位置は、光軸上画像撮像手段6からΔd_(2)だけ手前にスポットを結ぶこととなる。すなわち画像撮像手段6の受光面においては横方向にh_(2)だけずれることとなる。
【0054】また、横方向のずれh_(2)は光学式顕微鏡1の倍率が100倍であれば、対象物2での反射位置のずれh_(1)の100倍であり非常に高精度のオートフォーカスが可能となる。
【0055】このとき対象物2の焦点位置からのずれΔd_(1)が反射角θ_(1)と、画像撮像手段6の受光面における横方向のずれh_(2)と、対物レンズ26の焦点距離f_(1)と、結像レンズ29の焦点距離f_(2)とによって定まる事を利用して、オートフォーカスを行う手法が離軸式オートフォーカス手法と言われるものである。」

キ 「【0063】アクチュエータ30は、内部に設けられたフォーカスコイル及びフォーカスマグネット等(図示せず)により構成され、制御系8によりフォーカスコイルに、電圧が印加されることによってフォーカス動作するように設けられている。
【0064】画像撮像手段6は、光学式顕微鏡1の光源17が深紫外線固体レーザ等の場合は、結像レンズ29によって結像された像を肉眼で直接見ることはできないので、CCD等で撮像するために結像レンズ29によって結像されるところに設けられている。
【0065】画像処理系7は、画像撮像手段6により撮像した情報をモニターテレビ等で見れるように処理するものである。
【0066】制御系8は、光源17、絞り駆動手段27、可動ステージ3の駆動用モータ13?16及びアクチュエータ30等の光学式顕微鏡1全体の制御をできるように設けられている。」

ク 「【0067】次に、上記のように構成された光学式顕微鏡1の動作について説明する。
【0068】例えば半導体ウェーハ9の各種欠陥を検査する場合は、まず検査される半導体ウェーハ9が可動ステージ3のXYステージ10上に載せられ、制御系8の電源が投入されると、光源17から光線が射出されると共に、半導体ウェーハ9が吸着プレートによって吸着され、XYステージ10上に固定される。これによって、検査中に半導体ウェーハ9がずれることを防止すると共に半導体ウェーハ9に傷をつけることを防げる。
【0069】次に、制御系8の制御下、駆動用モータ13によりXYステージ10が水平方向であるX方向に移動されると共に、駆動用モータ14によりXYステージ10が水平方向であるY方向に移動される。これによって、半導体ウェーハ9の検査すべき位置を光学系4直下に移動させることができる。
【0070】次に、オートフォーカスをすることとなるが、例えばオートフォーカス開始用スイッチをスイッチオンするとまず、絞り駆動手段27に制御系8の制御下、電源が投入され、開口絞り21の上端部が補助集光レンズ20を透過した光線を、遮断することとならないように下降する。
【0071】また、開口絞り22は開口絞り22の開口部が補助集光レンズ20の光軸から離れるように上昇する。
【0072】更に、視野絞り23は視野絞り23の上端部が開口絞り22の開口部から射出した光線を、遮断することとならないように下降する。また視野絞り24は、視野絞り24の開口部が補助集光レンズ20の光軸上に来るように上昇する。
【0073】次に、光源17から射出した光線が光ファイバ18によって射出部19に導かれ、射出部19から射出した光線が開口絞り22及び視野絞り24を経て、コンデンサ25から光軸から離れた光線として、光学系4のビームスプリッタ28に射出される。これによって、離軸された光線を使って極めて簡単に且つ正確にオートフォーカスをすることができることとなる。
【0074】すなわち、離軸した光線が光学系4のビームスプリッタ28に入射すると、対物レンズ26へ反射され、対物レンズ26の物空間面から半導体ウェーハ9の検査すべき位置に斜めに照射される。
【0075】更に、照射された光線は検査すべき位置の半導体ウェーハ9から反射され対物レンズ26に斜めに入射し、ビームスプリッタ28及び結像レンズ29を介して、画像撮像手段6例えばCCDに像が結ばれることとなる。このとき、図4に示すように検査すべき位置の半導体ウェーハ9の焦点がΔd_(1)だけずれているときは、結像レンズ29による結像位置では、拡大されたΔd_(2)だけずれることとなり、横方向ではh_(2)だけずれることとなる。
【0076】このh_(2)のずれが画像撮像手段6により電子情報化され、これにより制御系8からアクチュエータ30に設けられたフォーカスコイルに電圧が印加される。これによって、対物レンズ26がフォーカス方向に移動され適正な焦点位置が確保されることとなる。すなわち、画像撮像手段6によりh2のずれが認識できないこととなり、オートフォーカスが終了する。
【0077】次に、制御系8の制御下、特定された検査位置で通常の半導体ウェーハ9の各種欠陥を検査することとなる。
【0078】すなわち、絞り駆動手段27に制御系8の制御下電源が投入され、開口絞り21は開口絞り21の開口部が補助集光レンズ20の光軸上に来るように上昇される。また、開口絞り22は開口絞り21から射出された光線を遮断しないように開口絞り22の上端部が光線より下方に降下する。
【0079】更に、視野絞り23は視野絞り23の開口部が補助集光レンズ20の光軸上に来るように上昇される。また、視野絞り24は視野絞り23から射出された光線を遮断しないように視野絞り24の上端部が光線より下方に降下する。
【0080】これによって、コンデンサ25から光軸に沿った光線として、光学系4のビームスプリッタ28に射出される。更に、ビームスプリッタ28で反射され、対物レンズ26に射出されて検査すべき半導体ウェーハ9に光軸に沿った光線が照射されることとなる。
【0081】また、半導体ウェーハ9に照射された光線は、反射等され再び対物レンズ26に戻り、ビームスプリッタ28及び結像レンズ29を介して画像撮像手段6に像を結ぶこととなる。
【0082】更に、画像撮像手段6に結ばれた像の電子情報をモニターテレビ等で見れるように画像処理系7で処理され、モニターテレビ等で検査することとなる。
【0083】このように本実施形態によれば、ケーラー照明光学系5の開口絞り21と開口絞り22とを、更に視野絞り23と視野絞り24とを制御系8の制御下、切り換えることによって、対象物2の観察をするときは光軸に沿った光線を使用し、オートフォーカスするときは同じ光源17から射出され、光軸から離軸した光線を使用することとしたので、オートフォーカス用として別の光源を使用する場合に比べ、対物レンズ26の色消しの困難性は解消されると共に構造的に簡単であり安価に製造できることとなる。
【0084】また、光軸から離軸した光線を使用し対物レンズ26への入射角による画像撮像手段6における横変位量を測定し、フォーカス状況を把握することとしたので、極めて精密で正確なオートフォーカスができることとなった。更に、信号処理が極めて高速に行える為、同色オートフォーカス手法として広く行われている画像コントラスト法に比べ、収束速度が極めて速くなる。
【0085】従って、深紫外線を使用し例えば、半導体ウェーハ9に存在する各種欠陥及び、半導体プロセスのリソグラフィ工程において、半導体ウェーハ9上に形成されたパターンの寸法、重ね合わせ精度等を検査、計測する目的で使用するのに最適である。」

ケ 「【0110】なお、本発明は上述したいずれの実施形態にも限定されず、本発明の技術思想の範囲内で適宜変形して実施できる。
【0111】例えば、上述の実施形態では、オートフォーカス用の画像撮像手段6と顕微鏡観察用の画像撮像手段6とを兼用しているが、光路途中にビームスプリッタ等を設け、オートフォーカス用の光学系及び画像撮像手段を設けても良い。この場合、オートフォーカス用の光学系として、必要なオートフォーカス精度により光学系の焦点距離を決定すれば良い。」

コ 「【0113】更に、オートフォーカス用の画像撮像手段としては、2次元の画像撮像手段である必要は無く、2分割ディテクタ及びラインCCD等の離軸方向に感度及び変調度のある1次元型光電変換素子であっても構わない。この場合、視野絞り24は2分割ディテクタ等の受光素子の受光エリアに合わせて、領域を決定してやれば良い。」

2 引用例1,2記載の発明の認定
(1)引用例1記載の発明の認定
引用例1の上記記載事項アより、引用例1には次のような発明が記載されていると認めることができる。

「白色の光源301から出た照明光束321がハーフミラー306を介して対物レンズ308の瞳307の位置に再結像され、前記対物レンズ308を介して試料309を照明し、前記照明光束321の前記試料309からの反射光束322を前記ハーフミラー306、ビームスプリッター208、結像レンズ310、ビームスプリッター311を介して分光器314へ導光して前記試料309の各位置の分光特性を求めるとともに、前記ビームスプリッター311を透過した前記反射光束322はTVカメラ312上に結像されて前記試料309を観察し、
焦点合わせ用の光源601からの光束をコンデンサーレンズ602により集光し、前記コンデンサーレンズ602により集光された光束の一部は、光軸に対して一方の側の部分が反射面603b、他方の側の部分が透過面603aになっているナイフエッジミラー603の透過面603aを通過し、前記透過面603aを通過した光束607は、前記ビームスプリッター208により反射され、前記ハーフミラー306を通過し、前記対物レンズ308の光軸308aに対して主光線が偏心した光束として前記対物レンズ308に入射し、前記対物レンズ308を通過した前記光束607は前記試料309に投光され、その近傍に前記光源601の発光部のスポット像を結像し、前記試料309で投光時とは前記光軸308aに対して略対称な光路に沿って反射された光束608は前記対物レンズ308を再通過して前記ビームスプリッター208で反射し、前記ナイフエッジミラー603の反射面603bで反射してコンデンサーレンズ604により集光されて焦点検出用のCCD606の受光面にスポット像を形成し、前記CCD606から出力される信号の位置の変化から、前記対物レンズ308の焦点合せを行う、
顕微分光装置。」(以下、「引用発明1」という。)

(2)引用例2記載の発明の認定
引用例2の上記記載事項ケ及びコから、画像撮像手段6が2次元の画像撮像手段であることは明らかである。
また、引用例2の上記記載事項カの段落【0048】乃至【0055】の記載及び引用例2の上記記載事項クの段落【0070】乃至【0076】の記載から、引用例2の「光学式顕微鏡」では、「2次元の画像撮像手段6」により得られる前記第2の光線の結像位置の信号に基づいて「対物レンズ」の焦点位置を「離軸式オートフォーカス手法」により調整していることは明らかである。
したがって、引用例2の上記記載事項イ乃至コから、引用例2には次のような発明が記載されていると認めることができる。

「第1の軸である光軸に沿って照射される顕微鏡観察用の第1の光線及び前記第1の軸と離れた第2の軸に沿って照射されるオートフォーカス用の第2の光線を射出する照明手段と、前記照明手段により射出された前記光線を対物レンズへ反射させるビームスプリッタと、前記ビームスプリッタで反射された前記光線を対象物に照射する前記対物レンズと、前記対象物から反射された光線であって前記対物レンズ及び前記ビームスプリッタを透過した光線が入射し2次元の画像撮像手段6に像を結ぶ結像レンズと、前記結像レンズにより結像された像を撮像する前記2次元の画像撮像手段6と、前記2次元の画像撮像手段6により撮像された像の電子情報をモニターテレビで見れるように処理する画像処理系と、前記画像処理系で処理された像の電子情報を見るための前記モニターテレビと、前記2次元の画像撮像手段6により得られる前記第2の光線の結像位置の信号に基づいて前記対物レンズの焦点位置を離軸式オートフォーカス手法により調整するオートフォーカス手段とを具備し、オートフォーカス用の2次元の画像撮像手段6と顕微鏡観察用の2次元の画像撮像手段6とを兼用した光学式顕微鏡。」

3 本願発明と引用発明1の一致点及び相違点の認定
ア 引用発明1の「試料309を照明」する「照明光束321」を出す「白色の光源301」、「顕微分光装置」は、それぞれ、本願発明の「試料を観察するための照明光を出射する第1の光源」、「光学顕微鏡」に相当する。
また、光学顕微鏡の対物レンズは、通常、試料を観察するための照明光を集光して前記試料に入射させるものであるから、引用発明1の「対物レンズ308」は本願発明の「前記第1の光源からの光を集光して試料に入射させる対物レンズ」に相当する。

イ 引用発明1の「顕微分光装置」では、「焦点合わせ用の光源601からの光束をコンデンサーレンズ602により集光し、前記コンデンサーレンズ602により集光された光束の一部は、光軸に対して一方の側の部分が反射面603b、他方の側の部分が透過面603aになっているナイフエッジミラー603の透過面603aを通過し、前記透過面603aを通過した光束607は」「対物レンズ308の光軸308aに対して主光線が偏心した光束として前記対物レンズ308に入射」するから、引用発明1の「顕微分光装置」のうち「対物レンズ308の光軸308aに対して主光線が偏心した光束として前記対物レンズ308に入射」する「光束607」を出す「焦点合わせ用の光源601」、「コンデンサーレンズ602」及び「ナイフエッジミラー603」からなる部分が、本願発明の「前記対物レンズの瞳の片側半分の領域に入射する光を出射する第2の光源」に相当する。

ウ 引用発明1の「顕微分光装置」では、「白色の光源301から出た照明光束321がハーフミラー306を介して」「試料309を照明」するとともに、「焦点合わせ用の光源601からの光束」「の一部は、光軸に対して一方の側の部分が反射面603b、他方の側の部分が透過面603aになっているナイフエッジミラー603の透過面603aを通過し、前記透過面603aを通過した光束607は」「ハーフミラー306を通過し」て、「前記試料309に投光され」るから、引用発明1の「ハーフミラー306」は、本願発明の「前記第1の光源及び前記第2の光源の光を混合させ、前記試料に導くビームスプリッタ」に相当する。

エ 引用発明1の「顕微分光装置」では、「白色の光源301から出た照明光束321が」「前記対物レンズ308を介して試料309を照明し」、「前記照明光束321」が「前記試料309」で反射されて「反射光束322」となるから、引用発明1の前記「反射光束322」が本願発明の「前記第1の光源から前記対物レンズを介して前記試料に入射した光のうち当該試料で反射された第1の反射光」に相当する。
また、引用発明1の「顕微分光装置」は、「前記照明光束321の前記試料309からの反射光束322」「はTVカメラ312上に結像されて前記試料309を観察」するものであるから、引用発明1の「TVカメラ312」は、前記「TVカメラ312」上に結像された「試料309」の像を観察するためのものである。そして、前記「試料309」の像は2次元の像であるから、かかる「試料309」の像を観察するための前記「TVカメラ」も2次元の光検出器であることは明らかである。
したがって、本願発明の「2次元光検出器」と引用発明1の「TVカメラ312」とは、「前記第1の光源から前記対物レンズを介して前記試料に入射した光のうち当該試料で反射された第1の反射光」「を検出する2次元光検出器」である点で一致し、引用発明1の「前記照明光束321の前記試料309からの反射光束322」「はTVカメラ312上に結像されて前記試料309を観察」することは、本願発明の「前記2次元光検出器で検出された前記第1の反射光に基づいて前記試料を観察する」ことに相当する。

オ 引用発明1の「顕微分光装置」では、「焦点合わせ用の光源601からの光束をコンデンサーレンズ602により集光し、前記コンデンサーレンズ602により集光された光束の一部は、光軸に対して一方の側の部分が反射面603b、他方の側の部分が透過面603aになっているナイフエッジミラー603の透過面603aを通過し、前記透過面603aを通過した光束607は」「対物レンズ308の光軸308aに対して主光線が偏心した光束として前記対物レンズ308に入射し、前記対物レンズ308を通過した前記光束607は前記試料309に投光され、その近傍に前記光源601の発光部のスポット像を結像し、前記試料309で投光時とは前記光軸308aに対して略対称な光路に沿って反射された光束608は前記対物レンズ308を再通過」するから、引用発明1の前記「光束608」が本願発明の「前記第2の光源から前記対物レンズの瞳の片側半分の領域を介して前記試料に入射した光のうち当該試料で反射し、前記対物レンズの瞳の反対側の片側半分の領域を通過した第2の反射光」に相当する。
したがって、本願発明の「前記第2の光源から前記対物レンズの瞳の片側半分の領域を介して前記試料に入射した光のうち当該試料で反射し、前記対物レンズの瞳の反対側の片側半分の領域を通過した第2の反射光とを検出する2次元光検出器」と引用発明1の前記「光束608」の「スポット像」が「形成」される「CCD606」とは、「前記第2の光源から前記対物レンズの瞳の片側半分の領域を介して前記試料に入射した光のうち当該試料で反射し、前記対物レンズの瞳の反対側の片側半分の領域を通過した第2の反射光」「を検出する光検出器」である点で一致し、本願発明の「前記2次元光検出器で検出された前記第2の反射光に基づいて、焦点位置を調整」することと引用発明1の前記「光束608」の「スポット像」が「形成」される「CCD606から出力される信号の位置の変化から、前記対物レンズ308の焦点合せを行う」こととは、「光検出器で検出された前記第2の反射光に基づいて、焦点位置を調整」する点で一致する。

カ したがって、本願発明と引用発明1とは、
「試料を観察するための照明光を出射する第1の光源と、
前記第1の光源からの光を集光して試料に入射させる対物レンズと、
前記対物レンズの瞳の片側半分の領域に入射する光を出射する第2の光源と、
前記第1の光源及び前記第2の光源の光を混合させ、前記試料に導くビームスプリッタと、
前記第1の光源から前記対物レンズを介して前記試料に入射した光のうち当該試料で反射された第1の反射光とを検出する2次元光検出器とを備え、
光検出器で検出された、前記第2の光源から前記対物レンズの瞳の片側半分の領域を介して前記試料に入射した光のうち当該試料で反射し、前記対物レンズの瞳の反対側の片側半分の領域を通過した第2の反射光に基づいて、焦点位置を調整し、かつ、前記2次元光検出器で検出された前記第1の反射光に基づいて前記試料を観察する光学顕微鏡。」

である点で一致し、以下の点で相違する。

〈相違点〉
本願発明の「2次元光検出器」は「前記第2の光源から前記対物レンズの瞳の片側半分の領域を介して前記試料に入射した光のうち当該試料で反射し、前記対物レンズの瞳の反対側の片側半分の領域を通過した第2の反射光」も「検出する」とされ、その結果、「前記2次元光検出器で検出された前記第2の反射光に基づいて、焦点位置を調整」するのに対し、引用発明1の「TVカメラ312」は「光束608」を受光せず、前記「TVカメラ312」とは別に設けられた「CCD606」が前記「光束608」を受光するとされ、その結果、前記「CCD606から出力される信号の位置の変化から、対物レンズ308の焦点合せを行う」点。

4 相違点についての判断
ア 引用例2に記載された発明の「第1の軸である光軸に沿って照射される顕微鏡観察用の第1の光線」を「対物レンズ」を介して「対象物に照射」して「前記対象物から反射された光線」は、本願発明の「前記対物レンズを介して前記試料に入射した」「試料を観察するための照明光」「のうち当該試料で反射された第1の反射光」に相当し、引用例2に記載された発明の「第1の軸と離れた第2の軸に沿って照射されるオートフォーカス用の第2の光線」を「対物レンズ」を介して「対象物に照射」して「前記対象物から反射された光線」は、本願発明の「前記対物レンズの瞳の片側半分の領域を介して前記試料に入射した光のうち当該試料で反射し、前記対物レンズの瞳の反対側の片側半分の領域を通過した第2の反射光」に相当する。
そして、引用例2に記載された発明の「光学式顕微鏡」では、「第1の軸である光軸に沿って照射される顕微鏡観察用の第1の光線」の「前記対象物から反射された光線」の「像」を撮像する「顕微鏡観察用の2次元の画像撮像手段6」と「第1の軸と離れた第2の軸に沿って照射されるオートフォーカス用の第2の光線」の「前記対象物から反射された光線」の「像」を撮像する「オートフォーカス用の2次元の画像撮像手段6」とを「兼用した」ことが記載されているから、引用例2に記載された発明の前記「2次元の画像撮像手段6」が、本願発明の「前記対物レンズを介して前記試料に入射した」「試料を観察するための照明光」「のうち当該試料で反射された第1の反射光」と「前記対物レンズの瞳の片側半分の領域を介して前記試料に入射した光のうち当該試料で反射し、前記対物レンズの瞳の反対側の片側半分の領域を通過した第2の反射光とを検出する2次元光検出器」に相当する。
また、引用例2に記載された「第1の軸と離れた第2の軸に沿って照射されるオートフォーカス用の第2の光線」を「対物レンズ」を介して「対象物に照射」して「前記対象物から反射された光線」の「像」を「2次元の画像撮像手段6」で「撮像」し、「前記2次元の画像撮像手段6により得られる前記第2の光線の結像位置の信号に基づいて前記対物レンズの焦点位置を離軸式オートフォーカス手法により調整する」ことが、本願発明の「前記2次元光検出器で検出された前記第2の反射光に基づいて、焦点位置を調整」することに相当し、引用例2に記載された発明の「第1の軸である光軸に沿って照射される顕微鏡観察用の第1の光線」を「対物レンズ」を介して「対象物に照射」して「前記対象物から反射された光線」の「像」を「2次元の画像撮像手段6」で「撮像」し、「前記2次元の画像撮像手段6により撮像された像の電子情報」を「モニターテレビで」「見る」ことが、本願発明の「前記第2次元光検出器で検出された第1の反射光に基づいて前記試料を観察する」ことに、それぞれ相当する。

イ そして、引用発明1と引用例2に記載された発明とは、本願の発明の詳細な説明の欄の段落【0002】乃至【0003】において定義されるいわゆる光てこ方式のオートフォーカス機能を備えた光学顕微鏡である点で共通するから、引用発明1に引用例2に記載された発明の「オートフォーカス用の2次元の画像撮像手段」と「顕微鏡観察用の2次元の画像撮像手段とを兼用」するという技術的事項を適用して、引用発明1の「CCD606」を「TVカメラ312」で兼用し、引用発明1の「CCD606」で受光していた「光束608」も引用発明1の「TVカメラ312」で受光するようにすることは、当業者にとって容易に想到し得る。
なお、引用例2の上記記載事項ケから、引用例2には「オートフォーカス用の画像撮像手段」と「顕微鏡観察用の画像撮像手段」とを兼用してもよいし、両者を兼用せずに別々に設けてもよいことが記載されていると認めることができるので、引用例2に記載された発明において「顕微鏡観察用の第1の光線」と「オートフォーカス用の第2の光線」とを同じ「照明手段」から射出するようにすることと「オートフォーカス用の画像撮像手段」と「顕微鏡観察用の画像撮像手段」とを兼用することとは直接関係がないと解するのが相当であるから、引用例2に記載された発明の「光学式顕微鏡」において「顕微鏡観察用の第1の光線」と「オートフォーカス用の第2の光線」とが同じ「照明手段」から射出するようにされていることは、引用発明1に引用例2に記載された発明の「オートフォーカス用の2次元の画像撮像手段」と「顕微鏡観察用の2次元の画像撮像手段とを兼用」するという技術的事項を適用することの阻害要因とはならない。

ウ したがって、前記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用することは、当業者にとって想到容易である。
また、前記相違点に係る本願発明の発明特定事項を採用したことによる格別の作用効果を認めることもできない。

5 むすび
したがって、本願発明は引用例1及び2に記載された発明に基づいて当業者が容易に発明をすることができたものであるから、特許法第29条第2項の規定により特許を受けることができない。そして、本願発明が特許を受けることができない以上、本願のその余の請求項に係る発明について検討するまでもなく、本願は拒絶を免れない。
よって、結論のとおり審決する。
 
審理終結日 2008-07-16 
結審通知日 2008-07-22 
審決日 2008-08-08 
出願番号 特願2004-356617(P2004-356617)
審決分類 P 1 8・ 121- Z (G02B)
最終処分 不成立  
前審関与審査官 吉川 陽吾  
特許庁審判長 末政 清滋
特許庁審判官 佐藤 昭喜
日夏 貴史
発明の名称 光学顕微鏡及びオートフォーカス方法ならびにそれを用いた観察方法。  
代理人 岩瀬 康弘  
代理人 家入 健  

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